神様転生~うどんを食べてスローライフをしつつ、領地を豊かにしようとする話、の筈だったのですけれど~

於田縫紀

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第14話 予定外の産物

59 主食うどん化計画、の筈が……

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 私が授与したからだけれど、ケカハの住民は全員が魔法が使える。
 魔法で水を出して、魔法で沸騰させるなんて簡単。
 その気になれば、すぐうどんを茹でる事が出来る。

 茹でたてのうどんは、むちゃくちゃ美味しい。
 面倒な時は、あれこれおかずを用意する必要もない。
 湯を切って、うどん用の醤油をちょっと垂らして、かき混ぜるだけで充分以上。
 この手早さは、他の主食ではありえないだろう。

 更にケカハで採れる小麦は、成分がうどんに最適だ。
 これはもう、神が主食にしろと言っているようなもの。
 少なくともケカハの土地神である私は、そう思っている。

 ただ、うどんを自分で美味しく打つのは難しい。
 手間だってそれなりにかかる。
 だからまずは初心者でも簡単に食べられる、既製品のうどんを作ろうと思う。

 そんな話を夕食時、カモシカ肉で作った三徳風甘辛肉うどんを食べながらロシュとブルージュにした。
 そうしたら、翌日昼にクエルチェがやってきた。

「あのうどんが、茹でるだけで食べられる状態で手に入るというのは、いつからでしょうか」

 クエルチェは週に1回以上は、神社うちで食事を食べている。
 村の幹部会議、読書会兼、本の希望調査、村からの要望とりまとめ等、割と何でも対応してもらっているから。

「どんな形で作るかは、これから考えようと思っているところだけれどね。3月1日の貨幣制度実施には、あの醸造のお店で売り出そうと思っているのだけれど」

「作るための人数が足りないなら集めましょう。幹部会を開かなくても持ち回りで話していけば、すぐに5人くらいの増員は出来ます」

 クエルチェ、反応が早すぎる。

「その前に、どういう形のものを流通させようかと思って。長持ちする方を優先するか、手軽さを優先するか、その中間を狙うか」

 日本で販売しているうどんは冷凍、ゆで、生、半生、乾麺の5種類有った。
 このうち冷凍はタピオカでんぷんを使った特殊なものなので、今回の検討からは除外。
 ゆでうどんはどうしても腰が弱くなるから、やっぱり除外。

 だからケカハで作って売り出すうどんは、生、半生、乾麺のどれか。
 それぞれ一長一短があるので、どれにしようか考えている最中だったのだ。

「具体的には乾燥具合の違いなんだけれどね。作ってすぐに近い状態だと、ゆで時間は短いし一番美味しいけれど、5日間持つかどうか。
 しっかり乾かしたものだと1年以上持つけれど、ゆで時間がちょっとかかるし、少し堅めになる。それがいいという人もいるけれどね。
 そこそこ程度に乾かしたものは、この中間。持ちは2ヶ月程度で、ゆで時間や堅さは乾燥と生の中間」

「一度食べてみないと、味の違いはわかりません。しかし1年持つものは、村全体の非常備蓄として有用です。小麦の形で備蓄すると、いざという時に食べるまでが面倒ですから。薄焼きパンで貯蔵可能なものは、堅くて美味しくありません。だから調理が比較的簡単で美味しいうどんは、間違いなく需要があります」

 なるほど、非常備蓄というのがある訳か。
 私の収納は時間停止が可能なので、気を抜くとそういった常識が抜けてしまうのだ。

「だから私は3種類とも作るという意見です。ただ実際の味を確かめないと、確かなことは言えません。あと作って販売する要員も確保が必要です。
 ですから明日の昼、ロシュちゃん達とうちの3人で食べ比べをしましょう。それで味や作る手間に問題が無ければ、全部を作ることにしたいと思います」

 あっという間にそこまで決まって、そして翌日の昼食。
 今回は生、半生、乾麺を最高の茹で具合にして、 食べたいときに収納から出すという神の権限ありきの方法で確認だ。

「どれも美味しいと思う」

「私もそう思います」

 アルトラ君とビブラムの感想は、食べ比べには役に立たない。
 
「好みでいえば生。他は少しだけ硬め。でもどれも美味しい」

「ものにもよると思います。茹でた後に冷水でしめないで、そのままショーユをかけて食べるなら、半生の固さが一番美味しいと思いますから。ちょっと煮込むなら乾麺でしょうし、茹でて締めてが出来るならやっぱり生という気がします」

 ブルージュの意見が、きっと普通なのだろう。
 クエルチェの意見は何というか……食べ過ぎ。

 クエルチェ、割と味にこだわりがあるタイプなのかもしれない。
 料理本なんてのもよく読んでいるし、家でもいろいろ作っているらしいから。

 そして乾麺を1束、半生を1玉、生麺を2玉食べて、やっと村のリーダーらしい思考が戻ってきたビブラムが、やっとまともな意見を出した。

「貨幣制度が実施になっても、当分はその日の金を貰って、そのまま食事を買うという者がほとんどだろうと思います。なら売るのは調理時間が少しでも短い生麺を中心にして、その上で村の保存食用の乾麺を時々作る。こんな形でいいのではないでしょうか」

 確かにそれが正しいだろう。
 半生を茹でて釜玉にするのは最高なのだけれど、この村ではまだ卵は流通していないから仕方ない。
 そう思った時だった。
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