神様転生~うどんを食べてスローライフをしつつ、領地を豊かにしようとする話、の筈だったのですけれど~

於田縫紀

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第14話 予定外の産物

62 加工貿易開始?

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 まもなく雨期も終盤戦に入る4月1日。
 開設から1ヶ月経った醸造所と製麺所は、すっかり村の施設として定着した。
 規模も製麺所は当初の3倍、醸造所に至っては5倍以上になった。
 人員も、醸造所の方は3人増やして合計8人になっている。

 なお醸造所の商品販売は1週間に2日だけになった。
 もちろんこれはアル中対策だ。
 何せ販売日には酒とみりんを買うために、朝から列が出来てしまう状態だったりする。

 販売もケカハの村民だけでなく、近くの島民、更には島民の交易船経由で他の地域にまでしている状態だ。

 ◇◇◇

 3月半ば、酒やみりんの島民や交易船への販売について、島にある神社経由で要請があった。
 調査と関係者の意見を聞き、島民側にも状況確認をした後、幹部会議を開催。
 出席者は村の幹部であるビブラム、クエルチェ、エイダン、メルサ、イルザに、醸造所の実質的な長をして貰っているミマスだ。

 他は10歳以上歳上の幹部ばかりなので、ミマスが非常に居づらそうにしている。
 しかし仕方ない。ミマスはこの先も醸造所担当の幹部として動いて貰うことになる。
 だからここは諦めて早く慣れて貰おう。
 せめてもという事で、イルザとクエルチェで両側を固めてはいるようだけれど。

 話し合いは私による、こんな問いからはじまった。

「ケカハに属するシワク島やアズキ島から、要望が届きました。酒やミリンを買い出ししたいが、他の島民の分も購入したいし、出来れば他との交易商材ともしたいから、規制量以上の販売をしてほしいというものです。
 それでこちらの意見を聞きたいと思うのですけれど、どうでしょうか?」

 最初は醸造所担当のミマスだろうけれど、こういう場には慣れていない。
 なのでクエルチェがミマスの方を見て頷いた後、口を開く。

「製造能力そのものは十分です。現在の醸造所では、みりんと酒を週に350合ずつしかつくっていませんが、施設の拡充なしでこの20倍程度の生産は可能です。
 また販売の方も問題ありません。既にミソとショウユについては、シワク島やアズキ島に販売しています。強いて言えば販売用の樽が幾つか必要になる事くらいでしょう」

 ここでの酒は、熟成をしていない。
 だからアルコール発酵が終わった液体を蒸溜すれば、それで完成となる。

 発酵中は当番が魔法で最適温度を維持させ、期間短縮と品質均等化なんて事をもやっている。
 もちろん品質安定化の為に複数ロットつくって、味をみながら混ぜたり水を加えたり調整しているけれど。

 だから麦の段階からでも10日間程度で製造可能だ。

 実は販売必要量以上につくって、熟成を期待して寝かしているなんてものも結構あるのだけれど、それはそれとして。 

 次に口を開いたのは、エイダンだ。

「材料である小麦の方は、それほど余裕はありません。現在の麦や豆の在庫はあわせて2,000斗、全て食料に使ったとしても、300人が4ヶ月暮らせる程度です。
 もちろん5月には麦が収穫できます。このままで行けばおそらくは豊作でしょう。ですが実際に収穫するまでは、豊作という事をあてにはしたくありません」

 エイダン、なかなか堅実だ。
 
「ただ麦以外にも、豆や芋はある程度出来るだろう。今は水利も完備しているし、魔法で水まきを毎日やれば、それなりの収穫は期待していいと思うが」

 これはビブラム。
 エイダンは頷いて、口を開く。

「昨年の9月から12月の間で、豆と芋をあわせて180斗(2.7t)の収穫がありました。ですから虫害や鳥害がなければ、今期もそれなりの収穫が期待出来るでしょう。
 ですが倉庫担当としては、これからの生産にかけるという事はあまりしたくありません。ですから増産するなら、実際に麦が収穫される5月後半以降にしたいというのが、私の考えです」

 流石倉庫番、堅実かつ厳しい。
 しかし実は此処で話は終わらないのだ。
 クエルチェとミマス、そしてイルザが、この会議より前に動いている。

 もちろん土地神である私はそのことを知っている。
 でもここでは口を出さない。

 口を開いたのは、イルザだった。

「実はこの酒とミリンの件について、旧ケカハの勘定頭だったオーギから話が来ています」

「オーギが来ていたのか!」

 前のめりになったのはエイダン、沈着冷静な倉庫番である彼としては珍しい反応だ。
 しかしこの場の皆はミマスを除いては、その辺の事情を知っている。 
  
「ええ。ケカハが新しい神を迎えて再興したことの確認を兼ねて、本人がやってきました。エイダンに会わなかったのは、会うと判断が情に流されそうだというオーギの意思です。ビブラムではなく私に会ったのは、ヨーナリ達に従わざるをえなかったビブラムではなく、袂を分かった筈の私の意見を聞きたかったからと言っていました。
 だから最小限の関係者以外には、オーギの事を話していません」

「オーギや、奴と一緒に行ったカラハ達は元気なのか」

 これはビブラムだ。イルザは頷く。

「オーギと出て行った20人は、全員元気だそうです。その辺は後ほど、本人が来た時に聞けばいいでしょう。
 さて、本題に戻ります。オーギは現在、シワク本島で3隻の大型交易船を束ねる船団長となっています。その立場で、このような申し出がありました。
『もし酒やミリンの材料が足りないのなら、昨年豊作だったセキテツから買い付ける準備がある。今の酒なら、塗り瓶計量で5斗あたり麦20斗で買い取ろう』と」

 イルザがミマスの方に視線を向けて、軽く頷いた。
 どうやら次はミマスの番のようだ。
 頑張れ、そう思いつつ口は出さずに見守る。

「現在の醸造所では、酒5斗をつくるのに、麦を10斗3升使用しています。この申し出を受けた場合、単純計算で、2週間で9斗7升儲けがでる計算です。
 もちろん現在のケカハの麦と、セキテツの麦で同じ結果になるとは限りません。ですからまずは50斗の樽で出来る範囲で、試してみたいと思っています」

 この計算は、日本では小学校レベルだ。
 しかし現時点のケカハにおいては、かなり難しい範疇になる。
 でも今の説明の為に、ミマスが頑張って計算したのだ。

 2ヶ月前は20までの足し算引き算がやっとだったのに。
 そう思うと、私は思い切り拍手したくなる。
 もちろん今はやらないけれど。

※ この世界の単位についての補足
  この世界の斗、升、合は、体積の単位です。ですから同じ表記であっても、物が違えば重さも違います。
  なので『計算があわない!』という苦情は無しということで、お願いできれば幸いです……
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