神様転生~うどんを食べてスローライフをしつつ、領地を豊かにしようとする話、の筈だったのですけれど~

於田縫紀

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第15話 モ・トーの企て

65 そろそろ収穫時期

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 モ・トーの領地が一気に増えてから10日過ぎた、5月21日第1曜日。いつもの岩場で昼食会。

 本日のメニューはぶっかけうどんだが、正しい讃岐うどん風ではない。
 ネギ、天かす、刻みのり、生卵を最初からのせて、やや味が濃い目で甘みが強い出汁を少量かけたもの。

 つまり倉敷ぶっかけうどん、ふるいち風に仕上げた代物だ。
 モ・トーとの最初の陣取り合戦の現場が、日本ならば岡山市と倉敷市の市境付近だったなと何となく思ったので、作ってみた。

 前世では倉敷というか岡山県とは、敵対というよりは仲間意識があった。
 同じテレビせとうち文化圏でザグザグのCMが流れ、瀬戸大橋で繋がっている間柄として。
 井島の領土問題による対立はあったけれど。

 うん、悪くはない。ちょい甘いこの方向性もありだな。
 そう思いつつ食べながら、キンビーラの説明を聞いている。

「モ・トーについては、動く様子はない。理由は不明だ。
 ここからは私の推測だ。おそらくは領地を貸し与えたタケヤとの間に、何らかの協定があるのだろうと思う。
 万が一領地を貸し与えたままの状態で、モ・トーが敗北して消滅した場合、貸し与えた部分を含む広大な領地が全て敵の手に渡ってしまう。
 だから領民の信仰対象をモ・トーから元の土地神に戻し、領地が元の状態に戻った直後に攻撃してくるという可能性が考えられる」

 すかさず全知からの解説が入る。

『領地や領民を失っても、一日程度の間は以前の神力の上限が維持されています。つまりこの一日の間は、領地を元に戻す前の神力を保持した状態で、万が一消滅しても以前より少ない現在の領地を失うだけで済むという事になります』

 なるほど。

「それならモ・トーに領地を貸した神々も、少ないリスクで済むというわけですね」

 私の言葉にキンビーラは頷いた。

「その通りだ。もちろんこの予想が正しいかはわからない。
 あとビシューからの住民脱出の支援は、一時中止する。今のモ・トーの神力を考えると、いざという時に安全を確保出来ない。
 あとは交易停止も効果が出ていない。交易の一大拠点であるセッシューのスミノエはタケヤの領地だ。そこから配下の神が収納を利用して物資をビシューとやりとりしているらしい。
 削れる陸地は、ほぼ削り取った。これ以上削ると住民の被害が大きくなる。現状では打つ手が無くなった」

 なるほど。状況は理解できた。
 そう思ったところで、アルツァーヤが口を開く。

「ところでモ・トーの神力はどのくらいなのでしょうか。もちろん正確な値はわからないと思います。ですがキンビーラなら、私達より実態に近い値を推測できると思うのですけれども」

「今朝、海から見える場所にモ・トーが一瞬だけ出現した。その時確認した神力は40万。おそらくこちらへの牽制として全神力を集中させた状態の顕現を出したのだろう。しかし余力が無いとは限らない」

 最低でも40万か。
 キンビーラが神力30万程度で、私は薪燃料を使っても15万。
 アルツァーヤはビシューと接していないから、戦力とは計算しない

 それでも私とキンビーラの戦力を足し算すれば、何とかモ・トーを上回る。
 これで何とかなると信じるしか無い。
 もちろん何か方法がないか、今後も考えるつもりではあるけれど。

◇◇◇

 村の方は、まもなく麦の収穫がはじまる。
 予想通り豊作だけれど、だからこそ収穫が大変だろうと予想されておる。

 魔法を使用した事により、1人あたりの耕作面積は3倍以上に増えた。
 耕したり草取りしたりは魔法で可能だから、少ない労力でより広い場所を作業するようになったのだ。

 しかし収穫する際の作業というか動きは、基本的に魔法無し状態と変わらない。
 後処理部分の作業がまた面倒だ。

 だから何か楽が出来ないか、前世の知識で考えてみた。

『小麦の収穫には刈り取り、乾燥、脱穀、選別といった作業が必要となります。このうち刈り取りは魔法を使えばそれほど力は必要ありませんし、乾燥は魔法で一気に行えます。脱穀については、コトーミがかつて見た道具を使用すれば、効率化が出来ます』

 全知からの情報で思い出す。
 そういえば五色台にある瀬戸内海れき歴史民俗資みん料館で、足踏み式脱穀機や唐箕とうみなんて道具を見たなと。

 そこまで思い出せば、あとは全知と全在のコンボで実物を作るのは簡単だ。
 という訳でとりあえず2台ずつ作製。

 実際に使ってみればわかってもらえるだろう。
 という事で、とりあえず神社の元醸造試験場の建物に設置して、ロシュ達にビブラムを呼びに行って貰う。

 ビブラム、クエルチェ、アルトラと一家総出で出てきたところで、これらの道具の使い方を説明だ。

「これは脱穀する装置と、選別する装置です。使えるかどうかを、実際に見て判断して貰いたいと思います。試す為にアルトラの畑の一部の麦を使ってもいいでしょうか」

「ええ、大丈夫です。でも収穫まであと2週間くらいは必要だと思います」

 そこは問題ない。

「そこは神の力で調整するから大丈夫です」

 そう説明しつつ、アルトラ君の麦畑の一部に恩恵を使って、麦を収穫可能な状態にする。
 全在でさくっと刈り取って収納して、麦わらで適当な束にして、近くの木箱に出せば準備完了。

「まずは魔法で乾燥させます」

『水分量は12%くらいが目安です』

 こんな感じで全知がフォローしてくれるので、私の作業は基本的に失敗しない。

「こうやって乾燥した麦の束に対して、次はこの機械を使って脱穀します」

 足踏みペダルを踏んで適当な回転数にして、全知の指示通り麦束の穂先を機械に入れる。
 少しずつ全体を当てるようにすると、茎は残って、穂の部分がバラバラになって、外れた麦粒が機械の後ろ部分にたまる。

「手作業より何倍も速いようです。これなら脱穀は大分楽になる」

『今までは鉄製や竹製の千歯扱きを使用していました。ですがあまり効率はよくなく、1時間あたり50束処理するのがやっとでした。しかしこの足踏み式なら、慣れれば1時間で300束くらいは脱穀が可能です。更に作業そのものに体力を使わず、比較的楽に脱穀できます』 

 数値にするとたった6倍だけれど、作業する側は助かるだろう。
 そう思いつつ持ってきた束全てを脱穀して、脱穀機の後ろから麦粒を取り出して見せる。

「今回はほぼ綺麗に粒がとれていますが、慣れないうちは穂がそのまま入ってしまうこともあるかもしれません。その場合はある程度手でこすってとってもいいですし、力の魔法でこすり合わせて取ってもいいでしょう。
 この段階では、この中に麦粒以外のゴミが混じっています。これを今度は、こちらの道具で取り去ります」
 
 この作業用に作った箒とちりとりっぽい道具で麦粒を集めて、唐箕に投入する。

「これは風を送って、軽いものを飛ばすことで物を分ける装置です。風の送り方次第で豆にも使えます」

 唐箕に2回かけて、ほぼ麦粒だけを選別。

「この道具は持ち帰って、複製してもいいでしょうか。あと一週間で作れるだけ作れば、麦の作業が大分楽になります」

「ええ。ただ今回は制作期間が短いですから、私の方で10個ずつまでは作りましょう。それ以降の増産などについてはお任せします。また説明が必要なら、この場所をそのまま使ってください。必要ならアルトラの畑から今と同じように成長させた麦を刈り取って、作業しやすいようにここに束ねて置いておきます」

 実はアルトラ君の畑を使うのは、私なりの理由がある。
 勿論ビブラム達も気づいてはいると思うけれど。

「ありがとうございます。それでは2面分、お願いしてよろしいでしょうか」

 ビブラムは遠慮しているようだ。しかし2面では私の意図にそぐわない。

 此処の畑は1面が20間36m×15間27mの300坪ずつに区画整理してある。これは1人の作業で維持できる麦畑の広さが600坪とされていたからだ。
 つまり普通なら1人で2面分。

 しかし魔法を使う事に慣れた頃に麦畑の割り振りをしたため、この村では1人あたり6面が標準だ。
 ちなみにビブラム一家は、大人2人子供1人で15面。
 来期からは1人分にするとしても、これをアルトラ君メインでやるのは地獄に近い。

 なので、此処はちょい押させて貰おう。

「それでは作業の説明にぎりぎりでしょう。見本を見せるだけで無く、実際に此処で練習をして貰う必要があるでしょうから。
 ですので6面分くらいは、此処に準備して起きましょう」

 残り9面なら、アルトラ君+ビブラムやクエルチェの手伝いでも、何とかなるだろう。

「ありがとうございます」

 うん、通じたようだ。よしよし。


※ 五色台にある瀬戸内海れき歴史民俗資みん料館
  五色台とは、高松市街と坂出市街の間にある高台のこと。香川県の公立・・・・・・中学2年生は全員・・・・・・・・、ここにある少年自然センター2泊3日の宿泊学習を受けるので、よく知っている。
  瀬戸内海れき歴史民俗資みん料館とは、その五色台でも少年自然センターから結構離れた海側、展望台近くにある県立の博物館。収蔵物以上に凝った博物館の建物が有名、というと怒られるかもしれない(けれど本当)。

※ 間、坪
  日本のかつての単位と同じですが、これはケカハで使われている標準語を日本語に翻訳する際の都合によるもの、だと思ってください。
  なおケカハの1間は地球の1.8mくらい、1坪は1.8m四方(=3.24m²)くらいだと思っていただけると幸いです。
(日本の1間は1.82mくらい、坪は3.3m²くらいなので、ケカハの方が少し短く、小さいです)
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