神様転生~うどんを食べてスローライフをしつつ、領地を豊かにしようとする話、の筈だったのですけれど~

於田縫紀

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第17話 セート海域攻防戦

69 セート海域防衛戦 ⑴

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 8月。かつてのケカハなら、乾期で農閑期だった時期だ。
 しかしケカハ用水が出来て、畑のすぐ近くの用水路までは年中水が来るようになった。

 そしてケカハやミョウドーの住民は、水が近くにあれば魔法で綺麗な水を出す事が可能だ。
 慣れてくれば薪を消費しつつ、歩きながら左右の畑に一斉に水をやる事すら難しくない。

 なのでこの前まで小麦畑だった場所に、瓜だの豆だの芋だのといった作物が育っていたりする。
 多いのは豆類で、ヒヨコ豆に近い品種とレンズ豆に近い品種。

 これらの豆は追加の肥料がいらないばかりか、逆に土を肥えさせてくれるらしい。
 ただ貝殻や水で洗った海藻を燃やした灰を混ぜれば、更にいいとのこと。
 しかも高温でも案外平気で丈夫、水をやりすぎない限り問題ないそうだ。
 
 なのでこの時期のケカハの畑には、豆が多い。
 あとは麦を育てず畑を休めていたり、麦の代わりにソラマメを植えていた等の場所に芋が育っているとか。

 来月に来る900人分の労働力を見込んで、畑作業は進んでいるそうだ。
 魔法で耕耘、播種、草取り等が出来るが、収穫は手作業部分が多い。
 逆に言うと収穫以外は、その気になれば以前の10人分位を1人で面倒見る事が出来たりする。

 そうやって余分に作物を育てた分は、9月の引き渡し時に成果を確認して日々の給金に反映する事になっている。
 その収入向上を期待して、かなりの人がそうやって自分の分以上の畑を世話している。

 そして幹部連中は、相変わらず多忙だ。
 来月に来る900人への家や畑の分配、配布物の準備、受け入れ時の流れと説明体制、更には人口が増えた事による事務・受付体制の強化など、やることは山ほどある。

 ◇◇◇

 そして8月18日。
 いつもなら沖に数隻はいる漁船や交易船の姿は、今日は見えない。
 沿海神キンビーラや私から、今日は海に出るなという指示が出ているからだ。

 更には海側で、ビブラムを筆頭に30人ほどが警戒警備中。
 ただ立っているだけではなく、魔法で造った即席の基地に、武器まで持ち込んでいる。

 速射できるように改良された棒弓や、大口径にした弩棒砲といった、その気になれば木造船どころか外側に鉄板を張った軍船さえも10町1,090m先まで攻撃出来そうな状態だ。

 ケカハの村だけでは無い。
 ハヤシマからタケヒカタ島までの住民は、ケカハや他の島に退避している。
 そのほかの島々の住民はケカハから持ち込まれた武器を構え、周囲を警戒している。
 
 今日の私は、2体の顕現を出している。
 1体はビブラム達と一緒に海側の警戒に。そしてもう1体はキンビーラと共にハヤシマの北側、かつてモ・トーが出した山状の塊の上に。

 キンビーラがモ・トーの領地が増えた事に気づいたのは100日前の正午過ぎ。

 つい先程、此処の太陽時が正午を回った。
 モ・トーが攻めてくるのは、ビシュー以外のモ・トーの領地が元の土地神の名義に戻った直後だろう。
 だからキンビーラの別顕現が、バンシューとセッシューが見える場所で観測をしている。

 そして……

「セッシューとバンシューの土地神が変わった」

 キンビーラがそう言った直後、左、西側海上に巨大な土塊が出現した。
 海底に着地して、更にビシューの領地と繋がった状態になるまでは、誰の領地でも無い。
 だからキンビーラと私で、全力で収納をかける。

 領地化する前に、何とか出現した土塊の収納に成功。ただし今のは、まだご挨拶程度だろう。
 そう思ったところで、私達のいる場所の対岸、ミツダと呼ばれる辺りに神力が凝集した。
 あっという間に、あのモ・トーの姿となる。

「我を下に見た愚か者の沿海神と土地神よ。我が力を思い知るがいい」

 そんな口上とともに、いきなり抜刀し、横なぎに刀を振るった。
 とっさに100m東側へと全在で移動をかけ、避ける。
 全知が状況を知らせてきた。 

『私達がいた山頂部分が消失しています。かなり強力な神器です。能力は刀身の延長線上にある全てのものを切り崩すというもので、6km程度の攻撃範囲があるようです』

「言葉にも攻撃にも趣が無いな」

 私の左横に出現したキンビーラが、そんな感想を述べる。
 まだまだいつもの態度を崩さない程度の余裕はあるようだ。

「新時代の神に趣など不要! タケヤ様から与えられた神器『佐比布都刀』の威力と我が神力を思い知るがいい」
 
 そう怒鳴るように返答するモ・トーが持つ刀が気になる。
 あの刀は危険だ。
 無闇に振るわれたら、間違いなく島そのものに被害が出る。
 他神の領地や領域に対して神の力を行使するのには制限があるが、あの刀はその制限を無視し、攻撃を通す事が可能だ。

『タケヤから与えられた神器で山を崩し谷を埋め、元からの住民を全滅させた後、自らの信徒で占領するという方法をとっています』

 全知に受けた説明を思い出す。
 今の攻撃から見て、あの刀こそがその神器なのだろう。
 なら出来ればあの神器を壊したい。
 しかし一般的な神器は神の身体と同様の扱いだから、神力で修復が可能だ。その辺を何とか出来ないだろうか。

『あの神器はモ・トーのものではなく、タケヤから貸し与えられたものです。ですからタケヤ自身が手に取らない限り、修復は不可能です。ただし破壊には神力換算で80,000程度の熱量が必要となります。コトーミの現在の神力は41,923です』

 私の神力では足りない。しかし私には奥の手がある。こんな序盤に使うとは思っていなかったけれど。

『収納した樹木のうち、2,880,000本を薪として使用すれば同等の熱量を発生可能です。なお現在収納している樹木は3,820,063本です』 

 神力10万相当分を伐採した後も、機会をみつけてはちまちま伐採しては収納していた。
 それでも神力6,000分程度しか増やせなかったけれど、やるしかない。
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