70 / 84
第17話 セート海域攻防戦
69 セート海域防衛戦 ⑴
しおりを挟む
8月。かつてのケカハなら、乾期で農閑期だった時期だ。
しかしケカハ用水が出来て、畑のすぐ近くの用水路までは年中水が来るようになった。
そしてケカハやミョウドーの住民は、水が近くにあれば魔法で綺麗な水を出す事が可能だ。
慣れてくれば薪を消費しつつ、歩きながら左右の畑に一斉に水をやる事すら難しくない。
なのでこの前まで小麦畑だった場所に、瓜だの豆だの芋だのといった作物が育っていたりする。
多いのは豆類で、ヒヨコ豆に近い品種とレンズ豆に近い品種。
これらの豆は追加の肥料がいらないばかりか、逆に土を肥えさせてくれるらしい。
ただ貝殻や水で洗った海藻を燃やした灰を混ぜれば、更にいいとのこと。
しかも高温でも案外平気で丈夫、水をやりすぎない限り問題ないそうだ。
なのでこの時期のケカハの畑には、豆が多い。
あとは麦を育てず畑を休めていたり、麦の代わりにソラマメを植えていた等の場所に芋が育っているとか。
来月に来る900人分の労働力を見込んで、畑作業は進んでいるそうだ。
魔法で耕耘、播種、草取り等が出来るが、収穫は手作業部分が多い。
逆に言うと収穫以外は、その気になれば以前の10人分位を1人で面倒見る事が出来たりする。
そうやって余分に作物を育てた分は、9月の引き渡し時に成果を確認して日々の給金に反映する事になっている。
その収入向上を期待して、かなりの人がそうやって自分の分以上の畑を世話している。
そして幹部連中は、相変わらず多忙だ。
来月に来る900人への家や畑の分配、配布物の準備、受け入れ時の流れと説明体制、更には人口が増えた事による事務・受付体制の強化など、やることは山ほどある。
◇◇◇
そして8月18日。
いつもなら沖に数隻はいる漁船や交易船の姿は、今日は見えない。
沿海神キンビーラや私から、今日は海に出るなという指示が出ているからだ。
更には海側で、ビブラムを筆頭に30人ほどが警戒警備中。
ただ立っているだけではなく、魔法で造った即席の基地に、武器まで持ち込んでいる。
速射できるように改良された棒弓や、大口径にした弩棒砲といった、その気になれば木造船どころか外側に鉄板を張った軍船さえも10町先まで攻撃出来そうな状態だ。
ケカハの村だけでは無い。
ハヤシマからタケヒカタ島までの住民は、ケカハや他の島に退避している。
そのほかの島々の住民はケカハから持ち込まれた武器を構え、周囲を警戒している。
今日の私は、2体の顕現を出している。
1体はビブラム達と一緒に海側の警戒に。そしてもう1体はキンビーラと共にハヤシマの北側、かつてモ・トーが出した山状の塊の上に。
キンビーラがモ・トーの領地が増えた事に気づいたのは100日前の正午過ぎ。
つい先程、此処の太陽時が正午を回った。
モ・トーが攻めてくるのは、ビシュー以外のモ・トーの領地が元の土地神の名義に戻った直後だろう。
だからキンビーラの別顕現が、バンシューとセッシューが見える場所で観測をしている。
そして……
「セッシューとバンシューの土地神が変わった」
キンビーラがそう言った直後、左、西側海上に巨大な土塊が出現した。
海底に着地して、更にビシューの領地と繋がった状態になるまでは、誰の領地でも無い。
だからキンビーラと私で、全力で収納をかける。
領地化する前に、何とか出現した土塊の収納に成功。ただし今のは、まだご挨拶程度だろう。
そう思ったところで、私達のいる場所の対岸、ミツダと呼ばれる辺りに神力が凝集した。
あっという間に、あのモ・トーの姿となる。
「我を下に見た愚か者の沿海神と土地神よ。我が力を思い知るがいい」
そんな口上とともに、いきなり抜刀し、横なぎに刀を振るった。
とっさに100m東側へと全在で移動をかけ、避ける。
全知が状況を知らせてきた。
『私達がいた山頂部分が消失しています。かなり強力な神器です。能力は刀身の延長線上にある全てのものを切り崩すというもので、6km程度の攻撃範囲があるようです』
「言葉にも攻撃にも趣が無いな」
私の左横に出現したキンビーラが、そんな感想を述べる。
まだまだいつもの態度を崩さない程度の余裕はあるようだ。
「新時代の神に趣など不要! タケヤ様から与えられた神器『佐比布都刀』の威力と我が神力を思い知るがいい」
そう怒鳴るように返答するモ・トーが持つ刀が気になる。
あの刀は危険だ。
無闇に振るわれたら、間違いなく島そのものに被害が出る。
他神の領地や領域に対して神の力を行使するのには制限があるが、あの刀はその制限を無視し、攻撃を通す事が可能だ。
『タケヤから与えられた神器で山を崩し谷を埋め、元からの住民を全滅させた後、自らの信徒で占領するという方法をとっています』
全知に受けた説明を思い出す。
今の攻撃から見て、あの刀こそがその神器なのだろう。
なら出来ればあの神器を壊したい。
しかし一般的な神器は神の身体と同様の扱いだから、神力で修復が可能だ。その辺を何とか出来ないだろうか。
『あの神器はモ・トーのものではなく、タケヤから貸し与えられたものです。ですからタケヤ自身が手に取らない限り、修復は不可能です。ただし破壊には神力換算で80,000程度の熱量が必要となります。コトーミの現在の神力は41,923です』
私の神力では足りない。しかし私には奥の手がある。こんな序盤に使うとは思っていなかったけれど。
『収納した樹木のうち、2,880,000本を薪として使用すれば同等の熱量を発生可能です。なお現在収納している樹木は3,820,063本です』
神力10万相当分を伐採した後も、機会をみつけてはちまちま伐採しては収納していた。
それでも神力6,000分程度しか増やせなかったけれど、やるしかない。
しかしケカハ用水が出来て、畑のすぐ近くの用水路までは年中水が来るようになった。
そしてケカハやミョウドーの住民は、水が近くにあれば魔法で綺麗な水を出す事が可能だ。
慣れてくれば薪を消費しつつ、歩きながら左右の畑に一斉に水をやる事すら難しくない。
なのでこの前まで小麦畑だった場所に、瓜だの豆だの芋だのといった作物が育っていたりする。
多いのは豆類で、ヒヨコ豆に近い品種とレンズ豆に近い品種。
これらの豆は追加の肥料がいらないばかりか、逆に土を肥えさせてくれるらしい。
ただ貝殻や水で洗った海藻を燃やした灰を混ぜれば、更にいいとのこと。
しかも高温でも案外平気で丈夫、水をやりすぎない限り問題ないそうだ。
なのでこの時期のケカハの畑には、豆が多い。
あとは麦を育てず畑を休めていたり、麦の代わりにソラマメを植えていた等の場所に芋が育っているとか。
来月に来る900人分の労働力を見込んで、畑作業は進んでいるそうだ。
魔法で耕耘、播種、草取り等が出来るが、収穫は手作業部分が多い。
逆に言うと収穫以外は、その気になれば以前の10人分位を1人で面倒見る事が出来たりする。
そうやって余分に作物を育てた分は、9月の引き渡し時に成果を確認して日々の給金に反映する事になっている。
その収入向上を期待して、かなりの人がそうやって自分の分以上の畑を世話している。
そして幹部連中は、相変わらず多忙だ。
来月に来る900人への家や畑の分配、配布物の準備、受け入れ時の流れと説明体制、更には人口が増えた事による事務・受付体制の強化など、やることは山ほどある。
◇◇◇
そして8月18日。
いつもなら沖に数隻はいる漁船や交易船の姿は、今日は見えない。
沿海神キンビーラや私から、今日は海に出るなという指示が出ているからだ。
更には海側で、ビブラムを筆頭に30人ほどが警戒警備中。
ただ立っているだけではなく、魔法で造った即席の基地に、武器まで持ち込んでいる。
速射できるように改良された棒弓や、大口径にした弩棒砲といった、その気になれば木造船どころか外側に鉄板を張った軍船さえも10町先まで攻撃出来そうな状態だ。
ケカハの村だけでは無い。
ハヤシマからタケヒカタ島までの住民は、ケカハや他の島に退避している。
そのほかの島々の住民はケカハから持ち込まれた武器を構え、周囲を警戒している。
今日の私は、2体の顕現を出している。
1体はビブラム達と一緒に海側の警戒に。そしてもう1体はキンビーラと共にハヤシマの北側、かつてモ・トーが出した山状の塊の上に。
キンビーラがモ・トーの領地が増えた事に気づいたのは100日前の正午過ぎ。
つい先程、此処の太陽時が正午を回った。
モ・トーが攻めてくるのは、ビシュー以外のモ・トーの領地が元の土地神の名義に戻った直後だろう。
だからキンビーラの別顕現が、バンシューとセッシューが見える場所で観測をしている。
そして……
「セッシューとバンシューの土地神が変わった」
キンビーラがそう言った直後、左、西側海上に巨大な土塊が出現した。
海底に着地して、更にビシューの領地と繋がった状態になるまでは、誰の領地でも無い。
だからキンビーラと私で、全力で収納をかける。
領地化する前に、何とか出現した土塊の収納に成功。ただし今のは、まだご挨拶程度だろう。
そう思ったところで、私達のいる場所の対岸、ミツダと呼ばれる辺りに神力が凝集した。
あっという間に、あのモ・トーの姿となる。
「我を下に見た愚か者の沿海神と土地神よ。我が力を思い知るがいい」
そんな口上とともに、いきなり抜刀し、横なぎに刀を振るった。
とっさに100m東側へと全在で移動をかけ、避ける。
全知が状況を知らせてきた。
『私達がいた山頂部分が消失しています。かなり強力な神器です。能力は刀身の延長線上にある全てのものを切り崩すというもので、6km程度の攻撃範囲があるようです』
「言葉にも攻撃にも趣が無いな」
私の左横に出現したキンビーラが、そんな感想を述べる。
まだまだいつもの態度を崩さない程度の余裕はあるようだ。
「新時代の神に趣など不要! タケヤ様から与えられた神器『佐比布都刀』の威力と我が神力を思い知るがいい」
そう怒鳴るように返答するモ・トーが持つ刀が気になる。
あの刀は危険だ。
無闇に振るわれたら、間違いなく島そのものに被害が出る。
他神の領地や領域に対して神の力を行使するのには制限があるが、あの刀はその制限を無視し、攻撃を通す事が可能だ。
『タケヤから与えられた神器で山を崩し谷を埋め、元からの住民を全滅させた後、自らの信徒で占領するという方法をとっています』
全知に受けた説明を思い出す。
今の攻撃から見て、あの刀こそがその神器なのだろう。
なら出来ればあの神器を壊したい。
しかし一般的な神器は神の身体と同様の扱いだから、神力で修復が可能だ。その辺を何とか出来ないだろうか。
『あの神器はモ・トーのものではなく、タケヤから貸し与えられたものです。ですからタケヤ自身が手に取らない限り、修復は不可能です。ただし破壊には神力換算で80,000程度の熱量が必要となります。コトーミの現在の神力は41,923です』
私の神力では足りない。しかし私には奥の手がある。こんな序盤に使うとは思っていなかったけれど。
『収納した樹木のうち、2,880,000本を薪として使用すれば同等の熱量を発生可能です。なお現在収納している樹木は3,820,063本です』
神力10万相当分を伐採した後も、機会をみつけてはちまちま伐採しては収納していた。
それでも神力6,000分程度しか増やせなかったけれど、やるしかない。
65
あなたにおすすめの小説
不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます
天田れおぽん
ファンタジー
ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。
ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。
サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める――――
※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。
10歳で記憶喪失になったけど、チート従魔たちと異世界ライフを楽しみます(リメイク版)
犬社護
ファンタジー
10歳の咲耶(さや)は家族とのキャンプ旅行で就寝中、豪雨の影響で発生した土石流に巻き込まれてしまう。
意識が浮上して目覚めると、そこは森の中。
彼女は10歳の見知らぬ少女となっており、その子の記憶も喪失していたことで、自分が異世界に転生していることにも気づかず、何故深い森の中にいるのかもわからないまま途方に暮れてしまう。
そんな状況の中、森で知り合った冒険者ベイツと霊鳥ルウリと出会ったことで、彼女は徐々に自分の置かれている状況を把握していく。持ち前の明るくてのほほんとしたマイペースな性格もあって、咲耶は前世の知識を駆使して、徐々に異世界にも慣れていくのだが、そんな彼女に転機が訪れる。それ以降、これまで不明だった咲耶自身の力も解放され、様々な人々や精霊、魔物たちと出会い愛されていく。
これは、ちょっぴり天然な《咲耶》とチート従魔たちとのまったり異世界物語。
○○○
旧版を基に再編集しています。
第二章(16話付近)以降、完全オリジナルとなります。
旧版に関しては、8月1日に削除予定なのでご注意ください。
この作品は、ノベルアップ+にも投稿しています。
スローライフ 転生したら竜騎士に?
梨香
ファンタジー
『田舎でスローライフをしたい』バカップルの死神に前世の記憶を消去ミスされて赤ちゃんとして転生したユーリは竜を見て異世界だと知る。農家の娘としての生活に不満は無かったが、両親には秘密がありそうだ。魔法が存在する世界だが、普通の農民は狼と話したりしないし、農家の女将さんは植物に働きかけない。ユーリは両親から魔力を受け継いでいた。竜のイリスと絆を結んだユーリは竜騎士を目指す。竜騎士修行や前世の知識を生かして物を売り出したり、忙しいユーリは恋には奥手。スローライフとはかけ離れた人生をおくります。
転生したら神だった。どうすんの?
埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの?
人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。
勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。
克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。
元勇者パーティーの雑用係だけど、実は最強だった〜無能と罵られ追放されたので、真の実力を隠してスローライフします〜
一ノ瀬 彩音
ファンタジー
元勇者パーティーで雑用係をしていたが、追放されてしまった。
しかし彼は本当は最強でしかも、真の実力を隠していた!
今は辺境の小さな村でひっそりと暮らしている。
そうしていると……?
※第3回HJ小説大賞一次通過作品です!
ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者
哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。
何も成し遂げることなく35年……
ついに前世の年齢を超えた。
※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。
※この小説は他サイトにも投稿しています。
アワセワザ! ~異世界乳幼女と父は、二人で強く生きていく~
eggy
ファンタジー
もと魔狩人《まかりびと》ライナルトは大雪の中、乳飲み子を抱いて村に入った。
村では魔獣や獣に被害を受けることが多く、村人たちが生活と育児に協力する代わりとして、害獣狩りを依頼される。
ライナルトは村人たちの威力の低い攻撃魔法と協力して大剣を振るうことで、害獣狩りに挑む。
しかし年々増加、凶暴化してくる害獣に、低威力の魔法では対処しきれなくなってくる。
まだ赤ん坊の娘イェッタは何処からか降りてくる『知識』に従い、魔法の威力増加、複数合わせた使用法を工夫して、父親を援助しようと考えた。
幼い娘と父親が力を合わせて害獣や強敵に挑む、冒険ファンタジー。
「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる