迷惑異世界のんびり道中記~ちびっ子勇者とともに~

沢野 りお

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安住の地を求める勇者とぬいぐるみ

勇者仲間 ④

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ホーッ、ホーッ。
私たち橘家が囲むテーブルの上を、小さなフクロウが旋回するように飛んでいる。

「……動いたな」

私が作った編みぐるみに魔力を注いだ兄は、呆然とクルクル回るフクロウを眺めている。姉と小次郎はワクワクと期待の眼で私を見るが、新しい編みぐるみを作るのはちょっと待ってほしい。

「たぶん、カラーシープの毛糸じゃないと魔力を注いでも動かないと思うの。そして、そのカラーシープの毛糸はバカ高い」

シーン……。

そう、編みぐるみを作ってほしかったら、冒険者ギルドで依頼をこなして稼がないといけないのだ。小次郎はまだしも、ちょっとしたかすり傷しか治せない姉にはハードルが高い条件だろう。ま、姉に動く編みぐるみなどという危ないものは渡したくない気もするから、これでいいと思う。

「おい、菊華。こいつ……どうやったら言うこときくんだ?」

「別に? 命令すればいいじゃない」

最初に作った白い犬じゃなかった、オオカミはちゃんと命令すれば言うことを聞きますよ?

「さっきから、こいつに下りてこいって言っても無視するんだが?」

……あれ? もしかして私のスキル「手芸創作」がミスったか?

「名前じゃないかな?」

小次郎がフクロウを目で追いながらポツリと呟いた。

「名前? そういえば、オオカミにはブランって名前を付けたっけ?」

「そうよ! 名づけってとっても重要なのよ! この子も名前を付ければきっと言うことをきいてくれるわよ」

両手を祈りの形に組んで目をキラキラとさせる姉にやや圧倒された兄は、ポリポリと後ろ頭を掻き困り顔だ。

「名前か……。俺にそのセンスがあるのか……」

そうだね。私の兄だもんね。きっと、ピーちゃんみたいベタな名前しか思いつかないでしょうね。

「橘一号とかどうだ?」

そんな、キラーンとした瞳で見てもダメ。私は思いっきり顔を顰めたし、姉は「あらあら」と苦笑い。小次郎はそぉーっと顔を背けた。心なしか編みぐるみ状態のブランの鼻が不満げに鳴らされた気がした。

「ダメか……。フクロウの名前なんて気にしたことないしなぁ。インコじゃないからピーちゃんはダメだし……」

やっぱり「ピーちゃん」は名前候補に上がっていたらしい。ピーちゃんはないでしょ? ピーちゃんは!

「そうねぇ。オウルはそのままの意味だし、茶色の毛糸だから色から……キャメルとかは意味が違うし」

フクロウにラクダでは頭がこんがらがってしまう。茶色でかわいい名前だとマロンとかキャラメルとか……。あ~甘いもの食べたい。

「フクロウ……森の哲学者や森の忍者って呼ばれているんだよね」

小次郎が大人三人を超える知識を披露する。哲学者はともかく忍者ってなに?

「フクロウは獲物を仕留めるとき、音もなく飛んでくるらしい。視野は狭いが首がグルグル動くから見えないわけじゃないしな」

兄からのミニ知識に、私と姉は感嘆の声をあげた。

「へぇ~」

やばい。茶色の毛糸と作れる編みぐるみから適当に選んだフクロウだったという事実は隠蔽しよう。ええ、ええ、私はフクロウがとっても役に立つとわかって作りましたとも! 頭は良さそうと思ってたし。

「じゃあ、森にちなんで名前を付ける?」

「森……フォレスト。じゃあフォレスだな。お~い、お前の名前、フォレスにしたからなぁ」

姉のヒントから兄が安直に名前を付けた。付けてしまった。「フォレス」と呼ばれたフクロウはヒラリとテーブルの上に着地し、コテンと首を傾げた。

「もしかして、お兄ちゃんの魔力を与えて名づけするんじゃないの?」

「菊華のとはきそうだったのか?」

「さあ? そもそもブランは勝手に大きくなって動き出したから、よくわからないわ」

こっそりと魔力を盗まれていても気づかないと思う。むしろ、名前を付けたことによって私とブランの間にかが繋がった気がするし。

「そうか。じゃあ、もう一度だな。魔力を注ぎながら……お前の名前はフォレスだ」

フクロウの頭に手を乗せた兄はゴクリと唾を飲み込み、ぐっと力を込めて名前を呼んだ。

「あっ……」

パァーッと広がる光の奔流。兄とフクロウから放たれる眩しい光に私たちはきつく目を瞑った。

























名前 フォレス
レベル 1
HP 10/10
MP 5/5
風魔法 ←NEW
身体強化 ←NEW
気配察知
ネズミ捕り

眩しい光が収まって、小次郎にフクロウ改めフォレスの鑑定をしてもらった。レ……レベルが1しかない……。よわっ。

「しょうがないだろう? ブランはダンジョンでボスモンスターを倒すアシストをした経験値でレベルが上がったんだから。まぁ、レベル1も3もたいしてかわらないって」

カラカラと兄は笑うが、ブランが聞いたら拗ねると思います。

「じゃあ、フォレスも魔物を倒せばレベルが上がるんじゃないかしら?」

「お姉ちゃん……」

その理屈は私たちにも当てはまるでしょ? 私たちもレベルを上げるために魔物を倒さないとダメなのよ。怖いから弱い魔物限定になるけど。弱い魔物だと経験値なんてたかが知れているから、レベルが上がるのは長い道のりだよ。トホホ。

「明日……薬草採取で森の近くまで行ってみるか。ネズミ捕りのスキルがあるんだから、フォレスも小さな魔物なら倒せるよな」

ツンツンと兄の指に突かれたフォレスは、てちてちと二、三歩歩いて主人である兄と距離を置いた。

「薬草採取か……。冒険者最初の仕事にはいいんじゃない?」

隣でハスハスと鼻息の荒い姉のことは放っておいて。小次郎もどこか嬉しげに笑っているし。よし! 明日は編みぐるみたちのレベル上げを兼ねた薬草採取だ!
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