48 / 52
安住の地を求める勇者とぬいぐるみ
勇者仲間 ⑤
しおりを挟む
今日は真面目に冒険者稼業に精を出そうと思います。
お金はあるけど、働かない者食うべからずの精神で、労働の汗を流し生活費を稼ごうと橘一家は決めました。まぁ……真面目に働いても私たちの実力じゃ一日のご飯代ぐらいだけどさ。
「冒険者ギルドに行くか」
兄が身支度を整え私たちに声をかける。その兄の上着の胸ポケットからちょこんと顔を覗かせているのは、昨日私が作った編みぐるみのフクロウである。名前は「フォレス」
「あら、薬草採取なら掲示板で依頼を見なくても常設依頼だから大丈夫よ?」
姉も身支度を整え終えているが……私たちと同じようにこの世界の古着――だいたい平民の普段着は古着だ――を着ているのに、どこかへお出かけするような装いに見える。美人は徳だなぁ。
「僕も用意できました」
正直、身支度を整える手伝いが必要なのは、成人して働いていた姉ではなく、まだ子どもで小学生の小次郎なのに、姉に手間がかかるせいで、小次郎は自分で身支度を完璧に整えてしまった。ちなみ私は姉の身支度を手伝いがてら済ませている。
「……ここら辺でカラーシープが狩れるかどうか、冒険者ギルドで確認してみる?」
謎の編みぐるみは兄と私で一体ずつ。もし、この編みぐるみの戦闘能力が高いのならば、姉と小次郎の分も作りたい。姉の分を作るときは、姉の要望は一切無視するが……。余裕があるなら、移動用の馬とか癒しの兎とか作りたい。でも……カラーシープの毛糸が高いんだよぉぉぉっ。
「そうだな。ここら辺の魔物棲息場所の確認もしておこう。俺たちはレベルが低いし攻撃魔法が使えないから、強い魔物は避けないと」
昨日から、姉の怪しい知識による魔力増幅特訓もしているが、効果があるのかどうかわからない。寝る前に魔力枯渇ギリギリまで使って寝るって、本当に意味があるんでしょうね? 異世界人はみんなこの方法で魔力を増やしているって、信じていいんでしょうね?
私はぎろりと姉の顔を睨みつけてから、鞄に括りつけた白い犬の編みぐるみをギュッと握りしめて、部屋の扉を開けた。
「……菊華ちゃん、ブランはオオカミだってば」
小次郎の呆れた呟きが聞こえてきた気もするが、気にしない、気にしない。
街をぐるりと囲む壁のすぐ近くでプチプチと薬草を取っている。手が草臭くなるから、ちょっとヤダ。地味だし、しゃがんでて腰が痛いし、頑張って毟っても、小銭の報酬にヤる気がでない。
しかし……心の中でグチっている私と違って、ひとつずつ丁寧に採取している小次郎と、たかが薬草に眼をキラキラと輝かして妄想している姉の姿に、自身を反省します。文句ばっかですんません。
兄は……この薬草は食べられるかな? と考えて採取するのはやめてよ。薬草なんて苦いだけじゃない。山菜採りに来てんじゃないんだから。
「……ちょっと休まない?」
冒険者ギルドに寄ってから馬車に揺られて街を出て、ギルドお勧めの新人冒険者の薬草採取場所で作業すること数時間。そろそろお腹が減りました。
「そうだな。薬草採取はこれぐらいで、あとは俺たちのレベル上げに最適な魔物の出没場所でも確認しておくか」
……やっぱり、魔物を倒すことからは離れられないんだ……くすん。
そもそも、小次郎の聖剣が、所有者つまり小次郎の魔力を注いでぶった斬る代物だったからだ。私の編みぐるみが所有者の魔力で動くように、聖剣がその能力を最大限に活かすには、所有者の魔力が必要。あのワイバーンの首をスパーッと斬ったとき、小次郎は無意識に剣に魔力を注いでいた……いや、聖剣が小次郎の魔力を奪ったんじゃないの? まぁ、そのことはいいわ。
そんな厄介な代物を日常使いするわけにはいかない。ダンジョンのボス部屋には私と小次郎しかいなかった。今後も聖剣を使うなら、私たちだけがいる場所、ダンジョンのボス部屋みたいな閉鎖された空間がベスト。
つまり、ぐちゃぐちゃ遠回しに言ったけど、小次郎のレベルを上げるなら、聖剣で強い魔物を倒すのが手っ取り早い。その聖剣をこっそり使うなら、ダンジョンのボス部屋が最適だ。じゃあ、みんなでダンジョンに挑戦しよう……って、なんでよっ!
私はすっごく反対したのに、私が作った編みぐるみが多少の攻撃ができるからと兄に言い負かされた。ちっ。
姉も反対しないし、むしろ行きたそうだったし、橘一家の中で最弱のくせに。
小次郎は……言葉にはしなかったけど、ダンジョンに挑戦したいんだろうなぁ。なんとなく、あの子は私たちを守るために強くなりたいとか思ってそう。別に私たちが異世界に転移させられたのは小次郎のせいじゃないのに……。
「菊華ー、昼メシ作るの手伝ってくれ」
「はぁ~い」
とにかく、子どもを守るのは大人の役目。私がしっかりしなきゃ!
兄に頼まれて、バッグに収納していたパンや果物を取り出して、平たい石の上に出したお皿に並べていく。果実水のポットとコップを人数分出して、兄と小次郎が火おこしして焼いた肉を切り分けるナイフと……。
「お姉ちゃん、手伝わないならちょっとどいて。じっと見てられると気が散るんだけど?」
「……菊華ちゃん。お姉ちゃん、こういう編みぐるみがほしいわっ」
はいっと見せられた紙に描かれた編みぐるみのデザインは、著作権を侵害するヤベェものでした。
「……却下」
異世界でもルールは守りましょー。
お金はあるけど、働かない者食うべからずの精神で、労働の汗を流し生活費を稼ごうと橘一家は決めました。まぁ……真面目に働いても私たちの実力じゃ一日のご飯代ぐらいだけどさ。
「冒険者ギルドに行くか」
兄が身支度を整え私たちに声をかける。その兄の上着の胸ポケットからちょこんと顔を覗かせているのは、昨日私が作った編みぐるみのフクロウである。名前は「フォレス」
「あら、薬草採取なら掲示板で依頼を見なくても常設依頼だから大丈夫よ?」
姉も身支度を整え終えているが……私たちと同じようにこの世界の古着――だいたい平民の普段着は古着だ――を着ているのに、どこかへお出かけするような装いに見える。美人は徳だなぁ。
「僕も用意できました」
正直、身支度を整える手伝いが必要なのは、成人して働いていた姉ではなく、まだ子どもで小学生の小次郎なのに、姉に手間がかかるせいで、小次郎は自分で身支度を完璧に整えてしまった。ちなみ私は姉の身支度を手伝いがてら済ませている。
「……ここら辺でカラーシープが狩れるかどうか、冒険者ギルドで確認してみる?」
謎の編みぐるみは兄と私で一体ずつ。もし、この編みぐるみの戦闘能力が高いのならば、姉と小次郎の分も作りたい。姉の分を作るときは、姉の要望は一切無視するが……。余裕があるなら、移動用の馬とか癒しの兎とか作りたい。でも……カラーシープの毛糸が高いんだよぉぉぉっ。
「そうだな。ここら辺の魔物棲息場所の確認もしておこう。俺たちはレベルが低いし攻撃魔法が使えないから、強い魔物は避けないと」
昨日から、姉の怪しい知識による魔力増幅特訓もしているが、効果があるのかどうかわからない。寝る前に魔力枯渇ギリギリまで使って寝るって、本当に意味があるんでしょうね? 異世界人はみんなこの方法で魔力を増やしているって、信じていいんでしょうね?
私はぎろりと姉の顔を睨みつけてから、鞄に括りつけた白い犬の編みぐるみをギュッと握りしめて、部屋の扉を開けた。
「……菊華ちゃん、ブランはオオカミだってば」
小次郎の呆れた呟きが聞こえてきた気もするが、気にしない、気にしない。
街をぐるりと囲む壁のすぐ近くでプチプチと薬草を取っている。手が草臭くなるから、ちょっとヤダ。地味だし、しゃがんでて腰が痛いし、頑張って毟っても、小銭の報酬にヤる気がでない。
しかし……心の中でグチっている私と違って、ひとつずつ丁寧に採取している小次郎と、たかが薬草に眼をキラキラと輝かして妄想している姉の姿に、自身を反省します。文句ばっかですんません。
兄は……この薬草は食べられるかな? と考えて採取するのはやめてよ。薬草なんて苦いだけじゃない。山菜採りに来てんじゃないんだから。
「……ちょっと休まない?」
冒険者ギルドに寄ってから馬車に揺られて街を出て、ギルドお勧めの新人冒険者の薬草採取場所で作業すること数時間。そろそろお腹が減りました。
「そうだな。薬草採取はこれぐらいで、あとは俺たちのレベル上げに最適な魔物の出没場所でも確認しておくか」
……やっぱり、魔物を倒すことからは離れられないんだ……くすん。
そもそも、小次郎の聖剣が、所有者つまり小次郎の魔力を注いでぶった斬る代物だったからだ。私の編みぐるみが所有者の魔力で動くように、聖剣がその能力を最大限に活かすには、所有者の魔力が必要。あのワイバーンの首をスパーッと斬ったとき、小次郎は無意識に剣に魔力を注いでいた……いや、聖剣が小次郎の魔力を奪ったんじゃないの? まぁ、そのことはいいわ。
そんな厄介な代物を日常使いするわけにはいかない。ダンジョンのボス部屋には私と小次郎しかいなかった。今後も聖剣を使うなら、私たちだけがいる場所、ダンジョンのボス部屋みたいな閉鎖された空間がベスト。
つまり、ぐちゃぐちゃ遠回しに言ったけど、小次郎のレベルを上げるなら、聖剣で強い魔物を倒すのが手っ取り早い。その聖剣をこっそり使うなら、ダンジョンのボス部屋が最適だ。じゃあ、みんなでダンジョンに挑戦しよう……って、なんでよっ!
私はすっごく反対したのに、私が作った編みぐるみが多少の攻撃ができるからと兄に言い負かされた。ちっ。
姉も反対しないし、むしろ行きたそうだったし、橘一家の中で最弱のくせに。
小次郎は……言葉にはしなかったけど、ダンジョンに挑戦したいんだろうなぁ。なんとなく、あの子は私たちを守るために強くなりたいとか思ってそう。別に私たちが異世界に転移させられたのは小次郎のせいじゃないのに……。
「菊華ー、昼メシ作るの手伝ってくれ」
「はぁ~い」
とにかく、子どもを守るのは大人の役目。私がしっかりしなきゃ!
兄に頼まれて、バッグに収納していたパンや果物を取り出して、平たい石の上に出したお皿に並べていく。果実水のポットとコップを人数分出して、兄と小次郎が火おこしして焼いた肉を切り分けるナイフと……。
「お姉ちゃん、手伝わないならちょっとどいて。じっと見てられると気が散るんだけど?」
「……菊華ちゃん。お姉ちゃん、こういう編みぐるみがほしいわっ」
はいっと見せられた紙に描かれた編みぐるみのデザインは、著作権を侵害するヤベェものでした。
「……却下」
異世界でもルールは守りましょー。
85
あなたにおすすめの小説
異世界のんびり放浪記
立花アルト
ファンタジー
異世界に転移した少女リノは森でサバイバルしながら素材を集め、商人オルソンと出会って街アイゼルトヘ到着。
冒険者ギルドで登録と新人訓練を受け、採取や戦闘、魔法の基礎を学びながら生活準備を整え、街で道具を買い揃えつつ、次の冒険へ向けて動き始めた--。
よくある異世界転移?です。のんびり進む予定です。
小説家になろうにも投稿しています。
人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)
葵セナ
ファンタジー
主人公 39歳フリーターが、初めての旅行に行こうと家を出たら何故か森の中?
管理神(神様)のミスで、異世界転移し見知らぬ森の中に…
不思議と持っていた一枚の紙を読み、元の世界に帰る方法を探して、異世界での冒険の始まり。
曖昧で、都合の良い魔法とスキルでを使い、異世界での冒険旅行? いったいどうなる!
ありがちな異世界物語と思いますが、暖かい目で見てやってください。
初めての作品なので誤字 脱字などおかしな所が出て来るかと思いますが、御容赦ください。(気が付けば修正していきます。)
ステータスも何処かで見たことあるような、似たり寄ったりの表示になっているかと思いますがどうか御容赦ください。よろしくお願いします。
錬金術にしか興味のない最弱職アルケミストの異世界勘違い道中
奏穏朔良
ファンタジー
「俺は人外じゃないし、女神の子供でもないし、救国の英雄でも、治癒を司る神でもないし、権力も信仰も興味無いから錬金術だけやらせてよ。」
女神の事情でVRゲームの元になった異世界に転移した男子高校生が何故かめちゃくちゃ勘違いされる話。
****
またもや勘違いものです。
主人公に対して各キャラ(男女問わず)から矢印を向けられる総愛され気味ですが、本編で特定の誰かとくっ付くことはありません。
目指せ毎週月、金16時更新。(1話と2話のみ同日更新です。)
どうしても間に合わない場合はXにて告知します。
感想!貰えたら!!嬉しいです!!
本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜
あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい!
ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット”
ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで?
異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。
チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。
「────さてと、今日は何を読もうかな」
これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。
◆小説家になろう様でも、公開中◆
◆恋愛要素は、ありません◆
おばさんは、ひっそり暮らしたい
蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。
もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。
異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。
ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。
残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、
同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、
追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、
清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
昨今の聖女は魔法なんか使わないと言うけれど
睦月はむ
恋愛
剣と魔法の国オルランディア王国。坂下莉愛は知らぬ間に神薙として転移し、一方的にその使命を知らされた。
そこは東西南北4つの大陸からなる世界。各大陸には一人ずつ聖女がいるものの、リアが降りた東大陸だけは諸事情あって聖女がおらず、代わりに神薙がいた。
予期せぬ転移にショックを受けるリア。神薙はその職務上の理由から一妻多夫を認められており、王国は大々的にリアの夫を募集する。しかし一人だけ選ぶつもりのリアと、多くの夫を持たせたい王との思惑は初めからすれ違っていた。
リアが真実の愛を見つける異世界恋愛ファンタジー。
基本まったり時々シリアスな超長編です。複数のパースペクティブで書いています。
気に入って頂けましたら、お気に入り登録etc.で応援を頂けますと幸いです。
連載中のサイトは下記4か所です
・note(メンバー限定先読み他)
・アルファポリス
・カクヨム
・小説家になろう
※最新の更新情報などは下記のサイトで発信しています。
https://note.com/mutsukihamu
※表紙などで使われている画像は、特に記載がない場合PixAIにて作成しています
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる