迷惑異世界のんびり道中記~ちびっ子勇者とともに~

沢野 りお

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安住の地を求める勇者とぬいぐるみ

勇者仲間 ⑥

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さて、やってきました初心者用ダンジョンに。
橘一家勢ぞろいで、挑戦します……したくないけど……。

なんとか薬草を採取しつつ、弱い魔物を倒してチビチビと経験値を稼ぎ、地味にレベル上げをしてきました。でも、レベルはそんなに簡単には上がらない。くっそう。

「たぶん……弱い魔物を倒しても、経験値が入らない仕様の世界だと思うわ」

オタクの姉の推測だが、経験値というものは、例えば、自分がどんなに強くても最弱魔物スライムを倒せば経験値がもらえるパターンと、スライムよりもかなり強くなった状態では、何体倒しても経験値が入らないパターンがあるらしい。つまり、レベル上げをしたかったら、スライムばっかり倒さず強い魔物にレッツチャレンジ! というシステム。迷惑だわ~。

「だから、スライムでもらえる経験値のレベルは過ぎてしまったと思うのよ」

……薬草採取しながらスライム突いて倒してたから、そりゃそうなるのよね? スライム最弱だし……。でも安牌で倒せるお得な魔物だったのにぃ。
兄と小次郎は、スライムにはとっくに見向きもせず、ネズミ型魔物やウサギ型魔物を倒している。だから、経験値も入って順調にレベルを上げていっている。

「菊華~、俺がサポートしてやるから、ネズミぐらい倒せ。お前のレベルが上がらないと、編みぐるみ隊が作れないだろう?」

「なによ、その編みぐるみ隊って」

兄曰く、橘一家の攻撃力は小次郎のみ。大人である兄、姉、私はほぼ無力。兄が頑張って『生活魔法』から攻撃できないか試行錯誤しているが、この『生活魔法』もレベル上げをしなければ威力を増すことはできない。
手っ取り早く攻撃を増やすのは、私の編みぐるみを動かす『手芸創作』が有効だ。……しかし、このスキルもレベルを上げなければいけない。そして、お金を稼いで、材料であるカラーシープの毛糸をたんまりと購入しなければならない。改めて整理して考えると問題ばっかりだよね?

「ブランとフォレス。他にも小次郎と桜の相棒が欲しいし。……攻撃だけでなく防御ができる仲間も欲しいよなぁ」

兄の要求が天井知らずで腹が立つ! しかし……子どもの小次郎とへっぽこ治癒魔法しかスキルのない姉にもサポート役が必要なのは間違いない。

「なに、ここまで来てグダグダ言ってんだよ。いい加減、薬草採取だけじゃなくて、それなりの活動しないと窓口のお姉さんの笑顔が怖いって言い出したのは菊華だろう?」

兄の呆れた視線が痛い。心にザクザクと刺さる。

「だって……今日またいつもの薬草ですねって、チョー笑顔で圧をかけてくるんだもん」

ここまで異世界でお世話になった冒険者パーティーの「ライゼ」の皆さんからは、薬草採取などで細々と生活している冒険者もいるって聞いたのに、ギルド職員の眼は厳しかった。まあ……大人が三人もいて薬草採取しかしてなかったら、そう思うのかもしれないが。

「たまには、ダンジョンに潜ってきたらどうですか? とか勧められたら拒否できないよ」

ただでさえ、断るのが苦手な日本人。空気を読むことを要求され続け、ヤバイ状況でもとりあえず「大丈夫です」と答える日本人なんだもん。

そうして、冒険者ギルド職員の眼を気にして、やってきました初心者用ダンジョンに。
「ライゼ」の皆さんに教えてもらった通りに準備して、でも怖いから日帰りアタックで。

「桜は無理せず、自分の身を守ることだけ考えろ。ポーションも怪我をしたら気にせず飲めよ」

「うん、ありがと。でも私も魔物をガンガン倒さないとレベル上げできないわ。早くスキルのレベルを上げて、みんなの怪我をちゃちゃと治せるようにならないと!」

むんっと両手を握って気合を入れる姉には悪いが、大人しくしていてほしい。じゃないと、ダンジョンのトラップにかかりそうで心臓に悪いのよっ。
小次郎もナイフを手に覚悟を決めた顔をしないで! ここのダンジョンに出る魔物はネズミ型とウサギ型、犬型だから、無理せず確実に仕留めていけば危ないことはないはずだから!

「俺と小次郎はいいとして、菊華も魔物を倒せよ」

「……ヒドイ」

兄からの扱いに格差を感じる今日この頃……グレるぞ。

だが、私にはブランがいる。嬉しいことにブランが倒した魔物の経験値はしっかりと私に入ってくるのだ! そして、私のレベルが上がればブランも強くなるという、ウインウインの関係。嬉しい。

名前を付けたことにより絆ができ、動くときは常時私の魔力を吸い取っているが、何度か試してみて小型のままだと省エネになることがわかった。敵と対したときは大型になってもらって、移動中は小型でとすれば魔力の消費も少なくて済む。

日々、魔力増幅に努めているけど、そんな急には増えないので、しばらくはこの方法でいこうと思う。
兄も、フォレスを小型のまま肩に乗せていた。

「じゃあ、行こう!」

先頭は兄と小次郎、真ん中が姉、最後は私とブラン……って、私が最後なの怖いんですけど?

「ブ……ブラン。ちゃんと私のこと守ってよ」

頼むよ!
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