私異世界で成り上がる!! ~家出娘が異世界で極貧生活しながら虎視眈々と頂点を目指す~

春風一

文字の大きさ
15 / 363
第1部 家出して異世界へ

2-3どこの世界も若者はSNSが大好きだよね

しおりを挟む
 私は広場のベンチに座り、パン屋で買ってきたカレーパンを取り出した。まだ焼きたてなので、ホカホカで温かく、香ばしい匂いが漂ってくる。ちょうどお昼時なので、周りにも昼食中の人達が多い。

 町の中には、至るところに広場があった。ちょっと道を歩けば、広場が見つかるぐらい、どこにでもある。ベンチやテーブルが設置してあるので、簡易的な公園のような感じだ。

 一休みする観光客たちはもちろん、地元の人たちも、広場を気軽に使っている。休憩時間になると、お茶をしたり、食事をしたりする人も多く、データファイルを開いて勉強している学生たちもいた。

 この町では『広場会議』という言葉がよく使われる。私のいた世界でいえば『井戸端会議』に近いかな。しかし、世間話だけでなく、スーツ姿で商談や仕事の会議をする人たちもいた。

 かつて〈グリュンノア〉の創成期。町の開発計画や予算会議など、政治に関する重要な話し合いが、広場で行われていた。町の人たちは、自由に視聴することが可能で、時には意見を言うことも出来たらしい。

 普通、政治などの重要な話を、屋外でやるのは考えられないが、創始者の魔女たちが『オープン政治』を目指していた為だと言われている。

 その名残で、今でも『広場会議』は、盛んに行われていた。ご近所の奥様方はもちろん、小さな子供からお年寄りまで。

 時には、会社の経営陣や政治家まで集まり、熱い議論を交わしている。向こうの世界じゃ、絶対にあり得ない光景だけど、広場会議は〈グリュンノア〉にとって、欠かせない文化の一つだった。

 もちろん、一人でくつろいでいる人もおり、たいていはマギコンを開いて、色んなサイトを閲覧したり、アプリを使っていたりする。

 私もマギコンを開き『ELエル』を立ち上げる。ELとは『エンゲージ・リンク』という、コミュニケーション・アプリの略称。向こうの世界の『LINE』と同じようなものだ。

 若者たちの間で大人気で、暇さえあれば立ち上げて、全てのやり取りをELだけで済ませる子もいる。ただ、リアルでのコミュニケーションに支障が出るとして、社会問題にもなっていた。

 私の場合ELは、主にリリーシャさんや、ナギサちゃんとの連絡に使っている。あと、以前スピで知り合った、ユメちゃんとも頻繁にやり取りをしていた。

 ユメちゃんは、私の日記にコメントを付けてくれた、初めてのスピ友だ。直接、会ったことはないけど、私と同年代で思考が近く、話していてとても楽しい、気の合う友達だった。

 私はモニターを操作し『写真撮影モード』に切り替えた。スマホと同じで写真撮影ができるが、カメラを自分に向ける必要はない。モニターを操作し、写真を撮る場所や距離を自由に調整できる。

 そもそも、カメラで『写真を撮る』のではなく『念写魔法』の応用技術だ。一歩も動かずに、好きな場所を好きな角度で撮れるので、自撮りも超簡単。

 しかも、撮影する前に、様々な補正ができる。スマホと違い、撮った写真の画質が、劣化や変色することがない。モニターに映ったままの画像が写真になるので、撮影前に補正を済ませられるのだ。本当に、マギコンって便利だよね。

 私はこんがり揚げたてのカレーパンの写真を撮って、ELに貼り付けた。

『今日の昼食はカモメ屋のカレーパン。サクッとして超おいしー』 
 一言入れると、ユメちゃんに送信した。すると、

『凄く美味しそう!私も今日はカレーパンにしようかな』
 すぐにレスが飛んできた。いつもながら、返信が超早い。

『今日は風が気持ちいいねー、天気もいいし』
『また練習で飛んでるの?』 

『今日も町中を飛び回ってるよ。ユメちゃんは学校?』
『今ちょうどお昼休み中。学校サボって私も空飛びたいな』
『アハハッ、天気のいい日の授業はサボりたくなるよね』

 私も中学時代は、よく外を眺めて、飛び出したい気持ちにかられていた。とにかく、じっとしていられない性格なので。

『私もシルフィードになりたいなぁ』
『なっちゃえばいいじゃん、私だってなれたんだから』

『でも、うちは親が賛成してくれないから。理解のある親だといいね』
『いやー、理解というか放任主義なだけで』

 実際には、全く理解して貰えてないんだけどね……。嘘をつくのは心苦しいけど、家の事情は重くなるので話せない。もちろん、家出のことも全く話していないので。

 それに、ユメちゃんは、シルフィードに憧れる純粋無垢な少女。だから、彼女の夢を壊すようなことは、言いたくないのだ。

『仕事は順調?』 
『今のところは順調かな。覚えること多いけど楽しいよ』

『私もシルフィード学校に行きたいなぁ』
『まぁ、私は専門学校行ってないんだけどね』
 そもそも、そんな学校がある事自体、全く知らなかった。

『それ凄いよね、普通は行かなきゃダメなんでしょ?』
『他の人にきいたら、みんな行ってるみたい』

『やっぱり、ふうちゃんは天才だね』
『ないない、偶然潜り込めただけだから。向こうの学校では成績悪かったし』
 
 ちなみに『風』とは、スピで使っている私のハンドルネームね。

『色々教えてくれるから、風ちゃん頭よさそうだけど』
『飛び回って、色んなものを直接みてるだけだよ』
 昔から実戦ありき。何事も知識ではなく、行動から体で学ぶタイプだ。

『いいなぁ、私家にいることが多いから。全然、行動的じゃないし』
『昇級したら、ユメちゃんを乗せて町中案内してあげるよ』

 ユメちゃんは物凄くインドアで、いつも部屋で本を読んでいることが多いらしい。私とは真逆の性格だよね。知的で、おしとやかで、いいとこのお嬢様な感じがする。

『わぁ楽しみにしてるね!』
『思いっ切り楽しみにしてて!』

 まだ、かなり先だろうけど、一生懸命、頑張るよ私。いつも私を元気づけてくれているので、その恩返しがしたいから。

 思えば、今までもユメちゃんに、物凄く勇気づけられてきた。まだ見習いなのに、いつも私のことを『凄い』と褒めてくれる。

『お昼ごはんに呼ばれたので、ちょっと行ってくるね』
『いてらー、またね』
『うん、またね』

 おそらく、これから学校の友達とランチなのだろう。何か青春している感じで、楽しそうだよねぇ。

 つい数ヶ月前までは、私も中学に行ってたのに、今では遠い過去のように懐かしく感じる。あのころは、親に守られて、世間の厳しさなんかも、全く知らなかったから、甘々な世界だった。

 学生の子を見ると、ちょっと羨ましく思うこともあるけど、いまさら元に戻りたいとは全く思わない。この実力が全ての世界で必死に頑張るのも、物凄く生きがいがあるからね。

 私は残りのパンを口に突っ込みながら、天気予報と風予報をチェックする。風予報は、空を飛ぶ仕事をしている者にとっては、絶対に欠かせない情報だ。

「天気は引き続き快晴。南西の風、2メートルか。特に問題なさそうだね」

 私は立ち上がって服のパンくず払い落とすと、紙袋をくるくるっと丸めて、近くのゴミ箱にシュートした。マギコンの電源を落とし胸ポケットにしまうと、颯爽とエア・ドルフィンに乗り込んだ。

 さて、午後も頑張りまっしょい!

 心の中で気合を入れると、再び町の上空を飛び回るのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

次回――
『親の同意をもらってないので実は入社(仮)です』

(仮)って便利な言葉だよね……
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい

ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。 強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。 ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ

天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。 ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。 そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。 よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。 そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。 こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。

召喚学園で始める最強英雄譚~仲間と共に少年は最強へ至る~

さとう
ファンタジー
生まれながらにして身に宿る『召喚獣』を使役する『召喚師』 誰もが持つ召喚獣は、様々な能力を持ったよきパートナーであり、位の高い召喚獣ほど持つ者は強く、憧れの存在である。 辺境貴族リグヴェータ家の末っ子アルフェンの召喚獣は最低も最低、手のひらに乗る小さな『モグラ』だった。アルフェンは、兄や姉からは蔑まれ、両親からは冷遇される生活を送っていた。 だが十五歳になり、高位な召喚獣を宿す幼馴染のフェニアと共に召喚学園の『アースガルズ召喚学園』に通うことになる。 学園でも蔑まれるアルフェン。秀な兄や姉、強くなっていく幼馴染、そしてアルフェンと同じ最底辺の仲間たち。同じレベルの仲間と共に絆を深め、一時の平穏を手に入れる これは、全てを失う少年が最強の力を手に入れ、学園生活を送る物語。

はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~

さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。 キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。 弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。 偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。 二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。 現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。 はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!

キャンピングカーで走ってるだけで異世界が平和になるそうです~万物生成系チートスキルを添えて~

サメのおでこ
ファンタジー
手違いだったのだ。もしくは事故。 ヒトと魔族が今日もドンパチやっている世界。行方不明の勇者を捜す使命を帯びて……訂正、押しつけられて召喚された俺は、スキル≪物質変換≫の使い手だ。 木を鉄に、紙を鋼に、雪をオムライスに――あらゆる物質を望むがままに変換してのけるこのスキルは、しかし何故か召喚師から「役立たずのド三流」と罵られる。その挙げ句、人界の果てへと魔法で追放される有り様。 そんな俺は、≪物質変換≫でもって生き延びるための武器を生み出そうとして――キャンピングカーを創ってしまう。 もう一度言う。 手違いだったのだ。もしくは事故。 出来てしまったキャンピングカーで、渋々出発する俺。だが、実はこの平和なクルマには俺自身も知らない途方もない力が隠されていた! そんな俺とキャンピングカーに、ある願いを託す人々が現れて―― ※本作は他サイトでも掲載しています

外れスキルは、レベル1!~異世界転生したのに、外れスキルでした!

武蔵野純平
ファンタジー
異世界転生したユウトは、十三歳になり成人の儀式を受け神様からスキルを授かった。 しかし、授かったスキルは『レベル1』という聞いたこともないスキルだった。 『ハズレスキルだ!』 同世代の仲間からバカにされるが、ユウトが冒険者として活動を始めると『レベル1』はとんでもないチートスキルだった。ユウトは仲間と一緒にダンジョンを探索し成り上がっていく。 そんなユウトたちに一人の少女た頼み事をする。『お父さんを助けて!』

異世界に転生したけど、頭打って記憶が・・・え?これってチート?

よっしぃ
ファンタジー
よう!俺の名はルドメロ・ララインサルって言うんだぜ! こう見えて高名な冒険者・・・・・になりたいんだが、何故か何やっても俺様の思うようにはいかないんだ! これもみんな小さい時に頭打って、記憶を無くしちまったからだぜ、きっと・・・・ どうやら俺は、転生?って言うので、神によって異世界に送られてきたらしいんだが、俺様にはその記憶がねえんだ。 周りの奴に聞くと、俺と一緒にやってきた連中もいるって話だし、スキルやらステータスたら、アイテムやら、色んなものをポイントと交換して、15の時にその、特別なポイントを取得し、冒険者として成功してるらしい。ポイントって何だ? 俺もあるのか?取得の仕方がわかんねえから、何にもないぜ?あ、そう言えば、消えないナイフとか持ってるが、あれがそうなのか?おい、記憶をなくす前の俺、何取得してたんだ? それに、俺様いつの間にかペット(フェンリルとドラゴン)2匹がいるんだぜ! よく分からんが何時の間にやら婚約者ができたんだよな・・・・ え?俺様チート持ちだって?チートって何だ? @@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@ 話を進めるうちに、少し内容を変えさせて頂きました。

処理中です...