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第5部 厳しさにこめられた優しい想い
4-3尖った個性とマイルドな個性ってどっちがいいんだろう?
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夜、静まり返った、屋根裏部屋で。私は、例のごとく、お勉強中だった。いつもは、何となく、順番通りに勉強をしている。でも、今日は珍しく、テーマを持って勉強していた。今開いている学習ファイルは、接客についてだ。
先日、メイドカフェで働いてから、物凄く接客が、気になるようになった。あの時は、役割や対応法が、完全に決まっていた。
それに、客様も、仕組みを分かったうえで、来ていたから。なので、自然に楽しんでくれていたんだと思う。ノリのいいお客様も、多かったからね。ある意味、お客様に、助けられてた感じがする。
でも、シルフィードの場合は、決まった接客がある訳ではない。一応、一般的な言葉づかいや、定番のセリフはあるけど、皆それぞれに個性を持っていた。
私は、リリーシャさんみたいな、柔らかな対応ができる、ふんわり系のシルフィードを目指している。でも、全く同じになることは、不可能だ。
そもそも、素材が違うし、性格も全く違う。さらに言えば、能力が違いすぎる……。ま、そこら辺は、最初から、分かってたことだけどね。
ただ、先日のメイドカフェでは、全員、違うキャラ付けで、接客していた。それでも、どの子もみんな、お客様に、喜んでもらえていたし。
ナギサちゃんなんか、かなり厳しい言葉づかいで、きわどい接客をやっていた。それでも、お客様は喜んでくれていたので。これって、能力というより、個性が大事なんだと思う。
ちなみに、来店したお客様のアンケートでは、ナギサちゃんは全メイドの中で、ダントツで一位だった。何と、対応したお客様、全員『満点の評価』だったそうだ。
まぁ、性格的に、ハマってたのもあるけど。元から上品だし、細かいところにも気づくから、元々接客レベルが、高かったのだろう。でも、個性が際立っていたのが、一番のポイントだったと思う。
つまり、接客には、絶対の決まりはなくて。よい接客とは、人によって、違うんじゃないだろうか? ただ、マニュアル通りにやるんじゃなくて、個性も大事なんじゃないだろうか?
今までの接客は全て、マニュアル通りや、リリーシャさんの真似をしていた。しかし、メイドをやって以降、自分らしさを考えるようになった。
でも、自分らしい接客って、何なんだろうか? リリーシャさんとは、当然、違うわけだし。接客の学習ファイルを見ても、基本的なことしか、書いていない。
試しに、スピで『上位階級』のシルフィードを調べてみると、全員、全く違う個性を持っていた。というか、人気のあるシルフィードたちは、物凄く個性が強いんだよね。
それに、よくよく考えてみたら、ナギサちゃん、フィニーちゃん。あと、キラリスちゃん、アンジェリカちゃん、カレンちゃん。今まで知り合いになった、シルフィードの子たちは、みんな個性が強い。
でも、私って、昔からこれと言った、個性がないんだよね。みんなと比べると、物凄く地味な感じがする。ただ、元気なだけじゃ、個性としては弱いし。
うーむ、個性って、どうやったら付くんだろ――?
うんうん、唸りながら考えていると、マギコンから着信音が鳴った。サッと確認すると、ユメちゃんからだ。私は、急いで『EL』を立ち上げ、メッセージを確認する。
『こんばんはー、風ちゃん。元気ー?』
『ユメちゃん、こんばんは。超超元気だよー!』
『今日は、テンション高いねー。何かいいことあった?』
『うーん、有ったような、無かったような……』
先日のメイドカフェの仕事は、とても有意義な経験だ。けど、逆に色々考えることが増え、悩むようになってしまった。
『どうしたの? 何かあった?』
ユメちゃんは、相変わらず鋭い。まぁ、特に重い話題でもないし、相談したほうがいいかも――。
『先日、知り合いに頼まれて、新店のオープニングの、手伝いに行ったんだ』
『へぇー、どんなお店?』
『〈新南区〉にできた、メイド喫茶なんだけどね』
それにしても、まさか、メイド喫茶で仕事することになるとは、思いもしなかった。偶然、キラリスちゃんに会わなければ、一生、縁のないお店だっただろう。
『おぉー、超面白そう!』
『まぁ、確かに。面白いお店では、あったね』
独特な接客はもちろん、お客さんが、今までにないタイプの人たちだった。何か、お客さん自体が、メイド喫茶に、慣れてる感じ。だから、妙にノリがよかったし、多少のミスも、むしろ好意的に受け取ってくれた。
私なんか、オムライスのケチャップで、文字を書くのを、大失敗しちゃって。でも、お客さんは『ドジっ子カワイイ』とか、むしろ喜んでくれてた。まぁ、私の場合、演技じゃなくて、素で不器用なだけなんだけど……。
『風ちゃんも、メイドやったの?』
『うん、私のシル友も、全員メイドの衣装に着替えて、接客したよ。写真あるけど、見る?』
『うん、見る、超見たい!!』
『じゃ、ちょっと、待っててね――』
まぁ、ちょっと恥ずかしいけど、ユメちゃんならいいかな。今まで、散々愚痴をこぼしたり、恥ずかしい姿も見せて来てるので。いまさら、気にする必要ないよね。
私は、写真フォルダから、メイドが全員、集合した写真。あと、ナギサちゃん、フィニーちゃん、キラリスちゃんと四人で撮った写真を選び、ユメちゃんに送信する。
『うわぁー、みんな超かわいい!! メイドさん、こんなに沢山いるんだ!』
『オープニングだから、普段より人数、多目に参加したんだよね』
メイドもキッチンスタッフも、通常よりも、はるかに人数が多く参加していた。でも、あれだけ混んだので、増員しておいて、正解だよね。
『へぇぇー。風ちゃんも、超かわいいね。凄く元気な感じが、伝わって来る』
『えへへっ、そうかな? まぁ、実際、元気メイドが担当だったけど』
『なに、担当って?』
『それぞれの、メイドごとに、属性っていうのがあって。それに沿って、言葉づかいとか、接客とかするんだ。高飛車・妹キャラ・ふしぎ系とかね』
それにしても、ナギサちゃんの、ハマりっぷりと言ったら。帰り際、店長さんに『また来て欲しい』って、しつこく誘われてたもんね。ああいう、厳しい態度が上手くできる人って、意外と少ないんだって。
『へぇー、ちゃんと、キャラづくりするんだ。なんか、演劇みたいで楽しそう。風ちゃんは、元気系だったの?』
『うん。元気で、ちょっとお馬鹿なキャラ、って設定だった』
『でも、元気なのは、風ちゃんらしいじゃない?』
『そうだけど、お馬鹿ってのが……。店長さんには、風歌ちゃんは、そのままでも行けるから大丈夫、って言われたし』
話し方は、ちょっと変えたけど。割と、素のままだったよね。途中からは、普通に馴染んでたし。
『あははっ。元気な子は、そういうキャラのほうが「分かりやすい」ってだけじゃない? 行動力があると、あまり考えないから』
『まぁ、そうかもだけどねぇー』
『お客さんの反応は、どうだったの?』
『うん、超喜んでくれてた。なぜか、ミスしても喜んでくれたし――』
ある意味、お馬鹿な子のキャラが、ハマっていたとも言える。
『あー、それ分かる。風ちゃんって、愛されキャラだから、お得だよね』
『ん、何それ……?』
フィニーちゃんなら、まさに、愛されキャラだと思う。誰からも、可愛がられるもんね。見た目はもちろん、性格も素直で可愛いから。
『世の中には、何をやっても、許されちゃう人がいるんだよ。愛嬌があるから、絶対に恨めないんだよね』
『それって、褒めてる――?』
『もちろん、褒めてるよ。凄く羨ましいもん』
『うーむ、よく分かんない……』
まぁでも、学生時代も、色々失敗は、やらかしたけど。『風歌だから、しょうがないかぁ』みたいな感じで、笑って済まされたことは、結構あった気もする。お馬鹿な子は、割と何やっても、許されるんだろうか――?
『でも、楽しかったんでしょ?』
『うん、超楽しかった! 他の子とも、お客さんとも、すっごく楽しめたよ』
『なら、よかったじゃない。何が問題なの?』
『問題って訳じゃないけど。個性について、色々考えちゃってね』
私は、一緒に仕事をしていた、ナギサちゃん、フィニーちゃん、キラリスちゃんたちのことを説明する。三人とも個性が強いし、他にいたメイドの子たちも、なかなか個性的な人が多かった。
なにより、店長さん自身が、滅茶苦茶、個性的だったよね。メイドの子以上に、強く印象に残っている。
『話を聴く限り、どの子も、物凄く個性が強いね。シルフィードって、みんなそんな感じなの?』
『いやー、どうだろう? でも、私が知り合うシルフィードって、みんな個性的な人ばかりなんだよねぇ』
現役の人だけじゃなくて、元シルフィードの人たちも、物凄く個性的だ。
『風ちゃんは、自分が個性がないと、思ってるの?』
『うん。みんなに比べると、存在感が、薄いのかぁーって』
『そんなことないよ。ノア・マラソンの時は、滅茶苦茶、存在感あったじゃない』
『あれは、たまたま、MVに映ったからで。普段は、全然、存在感ないよ』
ノア・マラソンは、世界中の人たちが見ている、注目度の高いイベントだったから、たまたま目立っただけだ。日常においては、個性が強くないと、誰も見てくれないと思う。
『まぁ、風ちゃんの友達は、確かに尖ってるよね。でも、個性って、尖ってるものばかりじゃないよ』
『そうなの?』
『風ちゃんのは、平たい個性だから。ぱっと見で、目立たないだけだよ』
『ん、どうゆうこと……?』
尖った個性は、何となく分かる。見た瞬間に分かるぐらい、目立つもんね。でも、平たい個性って何? そもそも、個性って言うの?
『つまり、万人向けな個性ってこと。風ちゃんは、誰とでも仲良くなれるでしょ?』
『どんな人とでも、仲良くなりたいって、いつも思ってるからね』
『でも、それが出来るのは、コミュ力の高さと、愛されキャラだからなんだよ』
『コミュ力はまだしも、愛されキャラって、全く自覚ないんだけど?』
学生時代『風歌はコミュ力高いよね』とは、言われていた。普通に、見ず知らずの人と、仲良く話してたし。他のクラスや、学年の違う子とも、仲良かったし。誰彼構わず、仲良くしていた。
『誰とでも仲良くなれる人の、必須能力だと思う。だって、好かれないと、仲よくなれないでしょ?』
『うーむ、そう言われれば、そうかも?』
『逆に、尖った人は、人と仲良くするのが、難しいと思う。受け入れてくれる人と、そうじゃない人に、くっきり分かれるから』
『あー、それは、あるかもね』
ナギサちゃんは、気難しいうえに、そもそも、人を寄せ付けないし。キラリスちゃんは、癖が強すぎるから、かなり付き合う人を、選ぶと思う。フィニーちゃんは、誰からも好かれるけど、自由過ぎて、人によっては合わないかも。
『平たくて、万人向けな個性のほうが、誰とでも上手くいくんだよ』
『なるほど。そんなものなのかなぁ――』
『リリーシャさんなんかも、万人向けな、個性じゃない?』
『そうかもね。誰に対しても、礼儀正しく優しくて。とても柔らかい性格だから、尖ったところが、1ミリも、ないんだよね』
全てを包み込むような、とても柔らかくて、包容力のある性格。私が、リリーシャさんを尊敬しているのは、その部分が大きい。
『まさに、平たくて万人向けだけど、それも個性だと思わない?』
『そうだね。あそこまで、柔らかくてマイルドだと、それも個性だよね』
リリーシャさんは、物凄く控えめで、目立つ人じゃない。というか、地位や知名度にしては、物凄く地味な感じがする。
特に何かが、際立って見える訳ではない。ただ、器用で何でも出来る人だし、無個性という訳では、ないと思う。
『だから、尖る必要は、ないと思うよ。風ちゃんも、マイルドに、全ての人と合わせられる個性だもん』
『なるほど、全ての人と合わせるのも、個性なんだ』
『むしろ、万人向けな個性のほうが、シルフィード向きだと思うよ。あらゆるお客様に、対応できるんだから』
『なるほど、そうかもねぇ』
みんなが、あまりにも際立った個性だから、つい、自分が無個性に、感じてしまう。でも、無理にとがらせる必要は、ないのかもね。
私って、どちらかというと、自己主張するよりは、周りに合わせるタイプだから。昔から、友達付き合いも、みんなの好みに、合わせて行動していたし。
『それにしても、この子すっごい綺麗だね。メイド服も、超ハマってるし』
『ナギサちゃんは、上品だし美人だからね。お母さんも、超美人だし』
『もしかして、この子が『白金の薔薇』の娘さん?』
『そうそう。見た目が綺麗なだけで目立つし、美人って得だよねぇ』
メイド喫茶でも、そうだったけど。普段も、ナギサちゃんが歩いていると、視線を向けてくる人が、多いもんね。当の本人は、全く気付いてないみたいだけど。
『でも、風ちゃんだって、健康的でカワイイじゃない。私は、風ちゃんのほうが好きだよ。そういう人も、一杯いると思うな』
『えー、そうかなぁ?』
ユメちゃんは、何かと、私をひいき目に見てくれる。なので、ちょっと、過大評価し過ぎだと思う。
『高級ステーキよりも、ハンバーガーが、好きな人もいるじゃない?』
『って、私って、ハンバーガーなの?』
『いいじゃない。私もハンバーガー大好きだし。肩こらないから、好きだよ』
何となく、言いたいことは分かる。ナギサちゃんが、高級レストランだとしたら、私はファーストフードみたいな、庶民的な存在なのだろう。
その後も、二人で色んな世間話をして、大いに盛り上がる。相変わらず物知りで、お勧めの本や、美味しいお店なんかを、色々教えてもらった。
見ただけで分かる、尖った個性も、魅力的だけど。私は、万人向けで、地味な個性でも、いいのかもしれない。これからも、全ての人と、仲良くしていきたいし。
よし、ハンバーガー……もとい、全ての人に好かれるシルフィードを目指して、頑張りまっしょい!
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
次回――
『たまには童心に戻って子供たちと遊ぶのも悪くないかもな』
人生を楽しく生きるコツは 童心を忘れねーことだよ
先日、メイドカフェで働いてから、物凄く接客が、気になるようになった。あの時は、役割や対応法が、完全に決まっていた。
それに、客様も、仕組みを分かったうえで、来ていたから。なので、自然に楽しんでくれていたんだと思う。ノリのいいお客様も、多かったからね。ある意味、お客様に、助けられてた感じがする。
でも、シルフィードの場合は、決まった接客がある訳ではない。一応、一般的な言葉づかいや、定番のセリフはあるけど、皆それぞれに個性を持っていた。
私は、リリーシャさんみたいな、柔らかな対応ができる、ふんわり系のシルフィードを目指している。でも、全く同じになることは、不可能だ。
そもそも、素材が違うし、性格も全く違う。さらに言えば、能力が違いすぎる……。ま、そこら辺は、最初から、分かってたことだけどね。
ただ、先日のメイドカフェでは、全員、違うキャラ付けで、接客していた。それでも、どの子もみんな、お客様に、喜んでもらえていたし。
ナギサちゃんなんか、かなり厳しい言葉づかいで、きわどい接客をやっていた。それでも、お客様は喜んでくれていたので。これって、能力というより、個性が大事なんだと思う。
ちなみに、来店したお客様のアンケートでは、ナギサちゃんは全メイドの中で、ダントツで一位だった。何と、対応したお客様、全員『満点の評価』だったそうだ。
まぁ、性格的に、ハマってたのもあるけど。元から上品だし、細かいところにも気づくから、元々接客レベルが、高かったのだろう。でも、個性が際立っていたのが、一番のポイントだったと思う。
つまり、接客には、絶対の決まりはなくて。よい接客とは、人によって、違うんじゃないだろうか? ただ、マニュアル通りにやるんじゃなくて、個性も大事なんじゃないだろうか?
今までの接客は全て、マニュアル通りや、リリーシャさんの真似をしていた。しかし、メイドをやって以降、自分らしさを考えるようになった。
でも、自分らしい接客って、何なんだろうか? リリーシャさんとは、当然、違うわけだし。接客の学習ファイルを見ても、基本的なことしか、書いていない。
試しに、スピで『上位階級』のシルフィードを調べてみると、全員、全く違う個性を持っていた。というか、人気のあるシルフィードたちは、物凄く個性が強いんだよね。
それに、よくよく考えてみたら、ナギサちゃん、フィニーちゃん。あと、キラリスちゃん、アンジェリカちゃん、カレンちゃん。今まで知り合いになった、シルフィードの子たちは、みんな個性が強い。
でも、私って、昔からこれと言った、個性がないんだよね。みんなと比べると、物凄く地味な感じがする。ただ、元気なだけじゃ、個性としては弱いし。
うーむ、個性って、どうやったら付くんだろ――?
うんうん、唸りながら考えていると、マギコンから着信音が鳴った。サッと確認すると、ユメちゃんからだ。私は、急いで『EL』を立ち上げ、メッセージを確認する。
『こんばんはー、風ちゃん。元気ー?』
『ユメちゃん、こんばんは。超超元気だよー!』
『今日は、テンション高いねー。何かいいことあった?』
『うーん、有ったような、無かったような……』
先日のメイドカフェの仕事は、とても有意義な経験だ。けど、逆に色々考えることが増え、悩むようになってしまった。
『どうしたの? 何かあった?』
ユメちゃんは、相変わらず鋭い。まぁ、特に重い話題でもないし、相談したほうがいいかも――。
『先日、知り合いに頼まれて、新店のオープニングの、手伝いに行ったんだ』
『へぇー、どんなお店?』
『〈新南区〉にできた、メイド喫茶なんだけどね』
それにしても、まさか、メイド喫茶で仕事することになるとは、思いもしなかった。偶然、キラリスちゃんに会わなければ、一生、縁のないお店だっただろう。
『おぉー、超面白そう!』
『まぁ、確かに。面白いお店では、あったね』
独特な接客はもちろん、お客さんが、今までにないタイプの人たちだった。何か、お客さん自体が、メイド喫茶に、慣れてる感じ。だから、妙にノリがよかったし、多少のミスも、むしろ好意的に受け取ってくれた。
私なんか、オムライスのケチャップで、文字を書くのを、大失敗しちゃって。でも、お客さんは『ドジっ子カワイイ』とか、むしろ喜んでくれてた。まぁ、私の場合、演技じゃなくて、素で不器用なだけなんだけど……。
『風ちゃんも、メイドやったの?』
『うん、私のシル友も、全員メイドの衣装に着替えて、接客したよ。写真あるけど、見る?』
『うん、見る、超見たい!!』
『じゃ、ちょっと、待っててね――』
まぁ、ちょっと恥ずかしいけど、ユメちゃんならいいかな。今まで、散々愚痴をこぼしたり、恥ずかしい姿も見せて来てるので。いまさら、気にする必要ないよね。
私は、写真フォルダから、メイドが全員、集合した写真。あと、ナギサちゃん、フィニーちゃん、キラリスちゃんと四人で撮った写真を選び、ユメちゃんに送信する。
『うわぁー、みんな超かわいい!! メイドさん、こんなに沢山いるんだ!』
『オープニングだから、普段より人数、多目に参加したんだよね』
メイドもキッチンスタッフも、通常よりも、はるかに人数が多く参加していた。でも、あれだけ混んだので、増員しておいて、正解だよね。
『へぇぇー。風ちゃんも、超かわいいね。凄く元気な感じが、伝わって来る』
『えへへっ、そうかな? まぁ、実際、元気メイドが担当だったけど』
『なに、担当って?』
『それぞれの、メイドごとに、属性っていうのがあって。それに沿って、言葉づかいとか、接客とかするんだ。高飛車・妹キャラ・ふしぎ系とかね』
それにしても、ナギサちゃんの、ハマりっぷりと言ったら。帰り際、店長さんに『また来て欲しい』って、しつこく誘われてたもんね。ああいう、厳しい態度が上手くできる人って、意外と少ないんだって。
『へぇー、ちゃんと、キャラづくりするんだ。なんか、演劇みたいで楽しそう。風ちゃんは、元気系だったの?』
『うん。元気で、ちょっとお馬鹿なキャラ、って設定だった』
『でも、元気なのは、風ちゃんらしいじゃない?』
『そうだけど、お馬鹿ってのが……。店長さんには、風歌ちゃんは、そのままでも行けるから大丈夫、って言われたし』
話し方は、ちょっと変えたけど。割と、素のままだったよね。途中からは、普通に馴染んでたし。
『あははっ。元気な子は、そういうキャラのほうが「分かりやすい」ってだけじゃない? 行動力があると、あまり考えないから』
『まぁ、そうかもだけどねぇー』
『お客さんの反応は、どうだったの?』
『うん、超喜んでくれてた。なぜか、ミスしても喜んでくれたし――』
ある意味、お馬鹿な子のキャラが、ハマっていたとも言える。
『あー、それ分かる。風ちゃんって、愛されキャラだから、お得だよね』
『ん、何それ……?』
フィニーちゃんなら、まさに、愛されキャラだと思う。誰からも、可愛がられるもんね。見た目はもちろん、性格も素直で可愛いから。
『世の中には、何をやっても、許されちゃう人がいるんだよ。愛嬌があるから、絶対に恨めないんだよね』
『それって、褒めてる――?』
『もちろん、褒めてるよ。凄く羨ましいもん』
『うーむ、よく分かんない……』
まぁでも、学生時代も、色々失敗は、やらかしたけど。『風歌だから、しょうがないかぁ』みたいな感じで、笑って済まされたことは、結構あった気もする。お馬鹿な子は、割と何やっても、許されるんだろうか――?
『でも、楽しかったんでしょ?』
『うん、超楽しかった! 他の子とも、お客さんとも、すっごく楽しめたよ』
『なら、よかったじゃない。何が問題なの?』
『問題って訳じゃないけど。個性について、色々考えちゃってね』
私は、一緒に仕事をしていた、ナギサちゃん、フィニーちゃん、キラリスちゃんたちのことを説明する。三人とも個性が強いし、他にいたメイドの子たちも、なかなか個性的な人が多かった。
なにより、店長さん自身が、滅茶苦茶、個性的だったよね。メイドの子以上に、強く印象に残っている。
『話を聴く限り、どの子も、物凄く個性が強いね。シルフィードって、みんなそんな感じなの?』
『いやー、どうだろう? でも、私が知り合うシルフィードって、みんな個性的な人ばかりなんだよねぇ』
現役の人だけじゃなくて、元シルフィードの人たちも、物凄く個性的だ。
『風ちゃんは、自分が個性がないと、思ってるの?』
『うん。みんなに比べると、存在感が、薄いのかぁーって』
『そんなことないよ。ノア・マラソンの時は、滅茶苦茶、存在感あったじゃない』
『あれは、たまたま、MVに映ったからで。普段は、全然、存在感ないよ』
ノア・マラソンは、世界中の人たちが見ている、注目度の高いイベントだったから、たまたま目立っただけだ。日常においては、個性が強くないと、誰も見てくれないと思う。
『まぁ、風ちゃんの友達は、確かに尖ってるよね。でも、個性って、尖ってるものばかりじゃないよ』
『そうなの?』
『風ちゃんのは、平たい個性だから。ぱっと見で、目立たないだけだよ』
『ん、どうゆうこと……?』
尖った個性は、何となく分かる。見た瞬間に分かるぐらい、目立つもんね。でも、平たい個性って何? そもそも、個性って言うの?
『つまり、万人向けな個性ってこと。風ちゃんは、誰とでも仲良くなれるでしょ?』
『どんな人とでも、仲良くなりたいって、いつも思ってるからね』
『でも、それが出来るのは、コミュ力の高さと、愛されキャラだからなんだよ』
『コミュ力はまだしも、愛されキャラって、全く自覚ないんだけど?』
学生時代『風歌はコミュ力高いよね』とは、言われていた。普通に、見ず知らずの人と、仲良く話してたし。他のクラスや、学年の違う子とも、仲良かったし。誰彼構わず、仲良くしていた。
『誰とでも仲良くなれる人の、必須能力だと思う。だって、好かれないと、仲よくなれないでしょ?』
『うーむ、そう言われれば、そうかも?』
『逆に、尖った人は、人と仲良くするのが、難しいと思う。受け入れてくれる人と、そうじゃない人に、くっきり分かれるから』
『あー、それは、あるかもね』
ナギサちゃんは、気難しいうえに、そもそも、人を寄せ付けないし。キラリスちゃんは、癖が強すぎるから、かなり付き合う人を、選ぶと思う。フィニーちゃんは、誰からも好かれるけど、自由過ぎて、人によっては合わないかも。
『平たくて、万人向けな個性のほうが、誰とでも上手くいくんだよ』
『なるほど。そんなものなのかなぁ――』
『リリーシャさんなんかも、万人向けな、個性じゃない?』
『そうかもね。誰に対しても、礼儀正しく優しくて。とても柔らかい性格だから、尖ったところが、1ミリも、ないんだよね』
全てを包み込むような、とても柔らかくて、包容力のある性格。私が、リリーシャさんを尊敬しているのは、その部分が大きい。
『まさに、平たくて万人向けだけど、それも個性だと思わない?』
『そうだね。あそこまで、柔らかくてマイルドだと、それも個性だよね』
リリーシャさんは、物凄く控えめで、目立つ人じゃない。というか、地位や知名度にしては、物凄く地味な感じがする。
特に何かが、際立って見える訳ではない。ただ、器用で何でも出来る人だし、無個性という訳では、ないと思う。
『だから、尖る必要は、ないと思うよ。風ちゃんも、マイルドに、全ての人と合わせられる個性だもん』
『なるほど、全ての人と合わせるのも、個性なんだ』
『むしろ、万人向けな個性のほうが、シルフィード向きだと思うよ。あらゆるお客様に、対応できるんだから』
『なるほど、そうかもねぇ』
みんなが、あまりにも際立った個性だから、つい、自分が無個性に、感じてしまう。でも、無理にとがらせる必要は、ないのかもね。
私って、どちらかというと、自己主張するよりは、周りに合わせるタイプだから。昔から、友達付き合いも、みんなの好みに、合わせて行動していたし。
『それにしても、この子すっごい綺麗だね。メイド服も、超ハマってるし』
『ナギサちゃんは、上品だし美人だからね。お母さんも、超美人だし』
『もしかして、この子が『白金の薔薇』の娘さん?』
『そうそう。見た目が綺麗なだけで目立つし、美人って得だよねぇ』
メイド喫茶でも、そうだったけど。普段も、ナギサちゃんが歩いていると、視線を向けてくる人が、多いもんね。当の本人は、全く気付いてないみたいだけど。
『でも、風ちゃんだって、健康的でカワイイじゃない。私は、風ちゃんのほうが好きだよ。そういう人も、一杯いると思うな』
『えー、そうかなぁ?』
ユメちゃんは、何かと、私をひいき目に見てくれる。なので、ちょっと、過大評価し過ぎだと思う。
『高級ステーキよりも、ハンバーガーが、好きな人もいるじゃない?』
『って、私って、ハンバーガーなの?』
『いいじゃない。私もハンバーガー大好きだし。肩こらないから、好きだよ』
何となく、言いたいことは分かる。ナギサちゃんが、高級レストランだとしたら、私はファーストフードみたいな、庶民的な存在なのだろう。
その後も、二人で色んな世間話をして、大いに盛り上がる。相変わらず物知りで、お勧めの本や、美味しいお店なんかを、色々教えてもらった。
見ただけで分かる、尖った個性も、魅力的だけど。私は、万人向けで、地味な個性でも、いいのかもしれない。これからも、全ての人と、仲良くしていきたいし。
よし、ハンバーガー……もとい、全ての人に好かれるシルフィードを目指して、頑張りまっしょい!
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次回――
『たまには童心に戻って子供たちと遊ぶのも悪くないかもな』
人生を楽しく生きるコツは 童心を忘れねーことだよ
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ヒトと魔族が今日もドンパチやっている世界。行方不明の勇者を捜す使命を帯びて……訂正、押しつけられて召喚された俺は、スキル≪物質変換≫の使い手だ。
木を鉄に、紙を鋼に、雪をオムライスに――あらゆる物質を望むがままに変換してのけるこのスキルは、しかし何故か召喚師から「役立たずのド三流」と罵られる。その挙げ句、人界の果てへと魔法で追放される有り様。
そんな俺は、≪物質変換≫でもって生き延びるための武器を生み出そうとして――キャンピングカーを創ってしまう。
もう一度言う。
手違いだったのだ。もしくは事故。
出来てしまったキャンピングカーで、渋々出発する俺。だが、実はこの平和なクルマには俺自身も知らない途方もない力が隠されていた!
そんな俺とキャンピングカーに、ある願いを託す人々が現れて――
※本作は他サイトでも掲載しています
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
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