異世界立志伝

小狐丸

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職人カイト

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 何故かアンナさんが我が家に転がり込んだ。

 アンナさんいわく、エルの側で一生仕えると決めていたそうだ。エルが家を飛び出したあと、慌てて追い掛けたらしい。


「なぁ」

「……」

「あれ良いの?」

「……私に言われても……」

 俺とエルの視線の先には、我が家に居るような顔してソファーに座り、優雅にお茶を飲むアンナさんが居た。

「ここ俺の家だよね」
「……」

 その時、トコトコトコとルキナがアンナさんに近づいていった。

「おばちゃんも、カイトおにいちゃんのお家に住むの?」

「「ぷっ!」」

 バッ!

 思わず吹き出した俺達を、鬼の形相で睨むアンナさん。元の表情に戻すとルキナにニッコリ微笑む。

「アンナお姉さんね」
「アンナおねえさん?」

 ルキナがコテッと首をかしげる。

「そうよ、アンナお姉さんです」
「わかった!」

 ルキナも何か感じたらしい。





 俺はエルとギルドの依頼について話していた。

「まぁアンナさんが居てくれるなら、エルの鍛錬がてら依頼を受ける事も出来るか……」
「ただ遠出はまだ無理だと思うわ」
「ルキナも無理だと思うわ~」

 俺の膝の上でゴロゴロしながら、エルの真似をするルキナ。

「そうだよな~。いっその事、ルキナを連れて行っても大丈夫な方法を考えようか」
「大丈夫なの?」
「だいじょうぶなの~?」

 エルの真似がルキナのマイブームみたいだ。

「ちょっと工房に行って来るよ」







「さて、どうしよう」

 魔物使いのスキルを持っていない現状、俺に出来る事で考えれば、ゴーレムかどちらかと言うとオートマトンか。

 ならいっその事、移動用も兼ねるか?
 この街でもゴーレム馬車は見た事がある。ただそのゴーレム馬車は、ただの箱みたいな物か、ゴーレム馬が馬車を引くタイプの物かだった。

「さすがにあのゴーレム馬車はカッコ悪いよな。それにただのゴーレム馬車じゃ、ルキナの護衛にならないしな」

 ゴーレム馬を造るか、そうすると二頭必要だな。

「そうだ、馬じゃなくても良いよな」

 本当は俺の移動用に、バイクが欲しかったんだけど、ゴーレム馬にすれば、護衛の助けくらいにはなると諦める。



 地竜の骨を成形魔法(モーディング)で成形していく。馬の骨格そのままを、竜骨で2セット作成していく。
 出来上がった骨格に、靭性強化と硬化のエンチャントをかける。
 骨をアダマンタイトコーティングする。

 魔導筋肉を錬金術を駆使して作成する。

 メインの動力に地竜の魔石を使い。ワイバーンの魔石を人工知能用に使う。その術式が複雑で大変だったが、二個目は術式をコピーするだけだ。
 また、身体制御用に術式を刻んだ魔石を補助で設置する。

 外装は、アダマンタイトと鋼鉄の合金で造った。全身フルプレートの馬鎧状態なので、かなりの重量になった。眉間に攻撃用の角を装備する。

 全く同じゴーレム馬が工房に並んだ。

 片方は漆黒のゴーレム馬が、ブリッツ。
 もう片方は白銀のゴーレム馬が、ラヴィーネと名付けた。

 ブリッツは、雷撃を放ち。
 ラヴィーネは、氷撃を放つ。

 二頭のゴーレム馬には、

  重量軽減
  自動修復
  物理耐性
  魔法耐性

 のエンチャントをかけている。

 ゴーレム馬を起動する前に、ルキナを護衛する為だけのゴーレムを造る。


 深淵の森で狩った、フォレストタイガーをアイテムボックスから取りだす。
 解体していき、肉と内臓は裏庭に穴を掘り捨てた。実際の骨格を見本に、竜骨で縮小コピーして造っていく。さすがにそのままの大きさでは、大き過ぎる。それでも尾を除く体長が3メートル、尾まで含めると4.5メートルにもなる。

 毛皮はフォレストタイガーの物を脱色した後、薄いブルーに染める。

 虎型ゴーレムをルフトと名付けた。

  重量軽減
  自動修復
  物理耐性
  魔法耐性

 ルフトには、風魔法を使った風爪と言う技を放つ。


 出来上がった三体のゴーレムを起動する為に、工房にエル達を呼ぶ。 


「わぁ~~!虎さんと大っきいお馬さんだ~!」

 ルキナがルフトに抱きつく。

「……カイト、これは?」

 エルが呆然としている。

「ゴーレム馬とルキナの護衛用ゴーレムだよ」
「ゴーレム馬って、大きくない?」

 確かに普通の馬と比べるとひと回り大きい。

「カイトおにいちゃん、虎さん達動かないよ」
「ちょっと待ってね」

 ブリッツ、ラヴィーネ、ルフトの首の裏を開き、魔力認証用魔石を露出させる。

「この石を触ってごらん」

 みんなで順番に魔石を触っていく。特に魔力を込めなくても、普段から自然に溢れる余剰魔力で十分だ。
 そこで何故かアンナさんが一緒に魔力を込めているのに気づく。

「……えっと、アンナさん?」
「男の子は、細かい事を気にしてはダメですよ」

 気にしない事にして、魔石のカバーを閉じる。

「さて、【サモンゴーレム】」

 三体が一瞬光ると、三体が起動する。

「黒い馬が、ブリッツ。白銀の馬が、ラヴィーネ。虎がルフトだ」
「鉄の馬って、威圧感が凄いわね。白銀の方はまだマシに見えるけど」
「ブリッツ、こっちへおいで」

 俺がブリッツを呼ぶと、ゆっくりと近寄ってくる。

「言ってる事が分かるの?!」

 エルが驚愕の表情でカイトに詰め寄る。

「その為に魔力を登録したんだよ。俺達以外の命令は聞かないようになっているよ」

 早速ルキナが試してみる。

「ルフトおいで~」
「ガゥ」

 ひと鳴きして返事すると、ルフトがルキナのもとへ歩いて行く。

「わぁ~、ふかふかだぁ」

 ルフトに抱きつきルキナはご機嫌なようだ。

「……今、返事したの?えっと、ラヴィーネ」

 エルも恐る恐るラヴィーネを呼んでみる。

「ブルッ」

 蹄の音を立てながら、ラヴィーネがエルのもとへ近づく。


 俺はブリッツに鞍や鎧などの馬具を取り付けていると、背後に気配がして振り向くと、アンナさんがジッと俺を見ていた。

「……何か?」
「私のゴーレム馬はどこに?」
「……えっ?アンナさんの?いや、造ってませんけど」
「それはおかしいですね。それではお嬢様に、ついて行けないではないですか」

 アンナさんが、俺の理解を超えることを言っている。

「あの……、ひょっとしてなんですが、アンナさんは、僕らに四六時中一緒について来るつもりですか?」

 少し疑問に思って聞いてみた。

「当然です。私は常にお嬢様と共にあります」

 はぁ、どうしようこの人。

「えっと、じゃあ、エルと二人乗り出来る馬具を作ります」

 俺がそう言うと、アンナさんの顔がパァと明るくなる。

「それは素晴らしいですね。お嬢様とタンデム。それしかありません」

 何とか納得してくれたみたいでホッとする。


 その後、動作確認を兼ねて遠乗りした。俺は前にルキナを乗せ、エルはアンナさんと、ルフトは俺達の後を追って来る。
 街道を走ったり、道を外れて走ったり、テストを兼ねて走る。

「……カイト、このゴーレム馬速すぎる……」

 エルが疲れた顔で訴える。まだ軽く流した程度だけど、時速にして80キロ以上でている。
 ブリッツとラヴィーネは、本物の馬に比べて振動も少なく、走るほどに学習して乗り易くなっていく。

「これでもまだ6分くらいだよ」
「カイトおにいちゃん、速いね~」

 ルキナは楽しそうだ。

「さっ、帰ろうか」

 俺はノトスへ馬首を向け駆け出す。

「ちょっと、待ってカイト!」

 エルの叫び声が聞こえる。

「さあ、お嬢様!カイト様を追いますよ!」

 アンナさんがラヴィーネを駆って疾走する。

 エルの叫び声だけが響いていた。

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