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シバの限界
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ゴンドワナ帝国とローラシア王国の北側に広がる未開地を縄張りにしている獣人族の集団がいた。
もともと未開地には小さな獣人族の集落が点在していたが、その集落を襲う奴隷狩に遭う事が多く、それを義賊の集団が纏めてまわった。
その集団の中心人物が一人、思い悩んでいた。
この集団の参謀である虎人族のディーガは、この集団の未来について思い悩んでいた。
集団の人数が増えるにつれ、組織としての運営の難しさに頭を痛めていた。
本来、獣人族は小さな集落単位で狩や農業をして暮らす種族で、大きな人数がまとまる事は少ない。それは獣人族の性質として、文官として国という単位で組織を運営出来る者が居ないという理由があった。小さな集落や村程度なら問題ないが、それ以上となると、まとめるのが難しくなる。
「はぁ~…………」
「どうしたディーガ、溜息なんかはいて」
思わず溜息を吐いたディーガに声を掛けたのは、鬣が雄々しい獅子人族の男、この集団のトップに君臨するシバだ。
「……人数が増えたのは分かっているな」
「当然じゃないか、俺達が小さな部族を勧誘して来たんだからな」
シバは誇らしげに胸をはる。
それを見てディーガは、再び溜息を吐く。
「シバ、人数が増え過ぎて統率が取れていない。食糧や衣料品、薬品も足りなくなっている」
「なんだ、そんな事か、ならまたゴンドワナ帝国かローラシア王国を襲撃すれば良いんじゃねえか」
「…………シバ、お前はこの集団をどうしたいんだ?」
「??」
シバにはディーガの問う意味が分からない。
シバが率いるこの集団も人数が膨れ上がり、組織としてしっかりとしたカタチを構築しなければならない時期にきていた。
しかし、この獣人族の集団には、超えなければならないハードルが高過ぎた。
先ず、この獣人族の集団の中で、文字の読み書き計算が出来る者は、10人にも満たない。これは国としてのカタチを造る以前の問題だった。このままでは税金を幾ら集めればいいのか?どういうカタチの税金にするのか?何も決められない。それをディーガはシバに出来るだけ分かりやすく説明する。
「それに、俺達の集団が大きくなれば大きくなる程、ゴンドワナ帝国やローラシア王国から守る事が難しくなる。昔みたいに逃げるには集団として大きくなり過ぎた。それとも戦えない者や年寄りと子供を見捨てるのか?」
「俺達が守ればいいんじゃねえか!なに弱気になってるんだディーガ」
「シバ、俺達が一度逃げ出して、ドラーク伯爵のお陰で命が救われた事を忘れたのか。あの時は、俺達のほとんどが兵士だったが、今は兵士以外の護らなければならない者達が大勢いるんだ」
「…………じゃあどうするんだよ」
シバの頭にも、命からがら深淵の森外縁部へ逃げ出し、そこで圧倒的な強者と出会い、助けられた事が、悔しさとともに思い出された。
ディーガは思っていた。獣人族の集落を纏めるのは失敗だったと。獣人族が小さな単位の集落しか造らないのは、自分達ではそれが限界だからだ。それ以上の集団に成ろうとすれば、文官に向く種族と力を合わせる事も必要なのだと。
「いくつかの方法はある」
「おお、それで行こうや!」
「一つ、人族やエルフ、ドワーフ、ホビット、種族を問わず仲間に引き入れる事だ。だが、これは非常に難しい。何せ、他の種族には、俺達に合流するメリットはないのだから」
「いや!あるだろうメリット!俺達は種族で差別なんかしねえぞ!」
「馬鹿かシバ、種族間差別をしないなんて、俺達にとってメリットじゃない。何故ならもっと差別が無く、豊かで安全に暮らせる場所があるのだから」
「…………ドラーク伯爵領か」
シバの頭でも、どちらが暮らしやすいかは、考えるでも無く分かった。
「もう一つは、バスターク辺境伯かドラーク伯爵に保護を求めて受け入れてもらうかだ」
「なっ!」
「全員でなくても良い。戦えない者や女子供、老人を受け入れてもらうだけでも良い。
考えておいてくれ…………」
そう言ってディーガは去って行った。
残されたシバは、正解が分からない問題を考え続けた。
もともと未開地には小さな獣人族の集落が点在していたが、その集落を襲う奴隷狩に遭う事が多く、それを義賊の集団が纏めてまわった。
その集団の中心人物が一人、思い悩んでいた。
この集団の参謀である虎人族のディーガは、この集団の未来について思い悩んでいた。
集団の人数が増えるにつれ、組織としての運営の難しさに頭を痛めていた。
本来、獣人族は小さな集落単位で狩や農業をして暮らす種族で、大きな人数がまとまる事は少ない。それは獣人族の性質として、文官として国という単位で組織を運営出来る者が居ないという理由があった。小さな集落や村程度なら問題ないが、それ以上となると、まとめるのが難しくなる。
「はぁ~…………」
「どうしたディーガ、溜息なんかはいて」
思わず溜息を吐いたディーガに声を掛けたのは、鬣が雄々しい獅子人族の男、この集団のトップに君臨するシバだ。
「……人数が増えたのは分かっているな」
「当然じゃないか、俺達が小さな部族を勧誘して来たんだからな」
シバは誇らしげに胸をはる。
それを見てディーガは、再び溜息を吐く。
「シバ、人数が増え過ぎて統率が取れていない。食糧や衣料品、薬品も足りなくなっている」
「なんだ、そんな事か、ならまたゴンドワナ帝国かローラシア王国を襲撃すれば良いんじゃねえか」
「…………シバ、お前はこの集団をどうしたいんだ?」
「??」
シバにはディーガの問う意味が分からない。
シバが率いるこの集団も人数が膨れ上がり、組織としてしっかりとしたカタチを構築しなければならない時期にきていた。
しかし、この獣人族の集団には、超えなければならないハードルが高過ぎた。
先ず、この獣人族の集団の中で、文字の読み書き計算が出来る者は、10人にも満たない。これは国としてのカタチを造る以前の問題だった。このままでは税金を幾ら集めればいいのか?どういうカタチの税金にするのか?何も決められない。それをディーガはシバに出来るだけ分かりやすく説明する。
「それに、俺達の集団が大きくなれば大きくなる程、ゴンドワナ帝国やローラシア王国から守る事が難しくなる。昔みたいに逃げるには集団として大きくなり過ぎた。それとも戦えない者や年寄りと子供を見捨てるのか?」
「俺達が守ればいいんじゃねえか!なに弱気になってるんだディーガ」
「シバ、俺達が一度逃げ出して、ドラーク伯爵のお陰で命が救われた事を忘れたのか。あの時は、俺達のほとんどが兵士だったが、今は兵士以外の護らなければならない者達が大勢いるんだ」
「…………じゃあどうするんだよ」
シバの頭にも、命からがら深淵の森外縁部へ逃げ出し、そこで圧倒的な強者と出会い、助けられた事が、悔しさとともに思い出された。
ディーガは思っていた。獣人族の集落を纏めるのは失敗だったと。獣人族が小さな単位の集落しか造らないのは、自分達ではそれが限界だからだ。それ以上の集団に成ろうとすれば、文官に向く種族と力を合わせる事も必要なのだと。
「いくつかの方法はある」
「おお、それで行こうや!」
「一つ、人族やエルフ、ドワーフ、ホビット、種族を問わず仲間に引き入れる事だ。だが、これは非常に難しい。何せ、他の種族には、俺達に合流するメリットはないのだから」
「いや!あるだろうメリット!俺達は種族で差別なんかしねえぞ!」
「馬鹿かシバ、種族間差別をしないなんて、俺達にとってメリットじゃない。何故ならもっと差別が無く、豊かで安全に暮らせる場所があるのだから」
「…………ドラーク伯爵領か」
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「もう一つは、バスターク辺境伯かドラーク伯爵に保護を求めて受け入れてもらうかだ」
「なっ!」
「全員でなくても良い。戦えない者や女子供、老人を受け入れてもらうだけでも良い。
考えておいてくれ…………」
そう言ってディーガは去って行った。
残されたシバは、正解が分からない問題を考え続けた。
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