異世界立志伝

小狐丸

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再挑戦

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 その日、多くの獣人族がドラーク伯爵領を訪れた。

「久しぶりだな、シバとディーガだったっけ」

 総勢500人程の団体で、ドラーク伯爵領に現れたのは、以前、深淵の森外縁部での訓練中に出会って、一勝負した獣人族のシバとその補佐役のディーガだった。

「……あゝ、俺は会いたくなかったけどな」

「ドラーク卿、今日はお願いがあってまいりました」

 嫌そうな顔のシバと、真面目な顔して要件を切り出すディーガ。

「……移民の受け入れだな。あゝ、歓迎するよ」

 ディーガが全てを言い終える前に、先に了承する。
 シバとディーガが連れて来た獣人族達は、戦闘に耐えれない女子供や老人だったから、何を言いたいのかは一目瞭然だった。

「感謝します」

 ディーガが俺に頭を下げる。

「おい!もう一度俺と勝負しろ!」

 黙って見ていたシバがいきなり俺に勝負を挑んで来た。改めてシバを観察すると、確かに以前と比べても随分鍛えて来たのが分かる。

「おい!シバ!」

「構わないよ」

 俺はシバ達が連れて来た獣人族達の案内を任せて、シバとディーガを連れて訓練所へ向かった。




「さあ、何処からでもかかって来て良いぞ」

「なっ!得物はどうした!」

 刀もバルディッシュも持たずに立っている俺に、シバが苛立った様に声を荒げる。

「シバは、自分の剣を使って良いぞ」

「舐めるなよ!」

 シバは無手で走り出す。

 俺の顔を狙ってパンチが繰り出される。それを踏み込みながら、シバの背中側に避ける。シバは、パンチが避けられたと分かると、そのまま裏拳を俺の顔に叩き込もうとする。俺はシバが裏拳を放つ始動を見切って肩をそっと押すと、シバの体勢が崩れて裏拳が流れる。

 至近距離でシバのパンチやケリを避け続け、死角に回り込みながら、時折そっと押す。その度、シバの体勢が崩れ、時には盛大に地面を這うことになる。

 シバの攻撃が段々と激しくなって行く。パンチの他に、爪や牙まで使い、獣人族特有の体術を駆使して俺に挑む。
 その拳の速度や体捌きに、研鑽の後がうかがえる。前回、俺に一方的に負けてから、かなり激しく自分を追い込んで鍛錬したんだろう。久しぶりに対峙するシバは別人のようだった。

 だからと言って、俺との差が縮まっているかと言えばそうでもなかったのだが。

 シバの動きが益々激しく速くなっていくが、それをさばき続けると、段々シバの動きが悪くなって来た。

 突き出された拳を躱すと同時に、その拳の勢いを利用して投げを放つ。

 ダンッ!

「がっ!」

 背中を打ち付けられ、シバの動きが止まる。

「……まだあんたには届かないみたいだな。だが、何時かあんたを超えてやる」

 やがてゆっくり起き上がったシバは、そう言うとその場から立ち去った。

「ドラーク卿、シバの我儘につき合わせてすまない」

 その場に残っていたディーガが俺に頭を下げる。

「いいさ、少しはあいつも発散出来ただろう。
 それよりも、もし本気で未開地に国を作りたいのなら、ちゃんとした基盤が必要だ。何時までもゴンドワナ帝国やローラシア王国の村や町を襲っていては、盗賊と変わらないからな。虐げられた獣人族の保護は大事な事だけど、受け入れる体制作りがしっかりしていないと、今回のように俺に頼る事になる。まぁ、それも一つの手だから、悪いってわけじゃないけどな」

「あゝ、俺達は同胞を助け出す事が目的で、その先の事を考えていなかった。その所為で、真面な村すら立ち上げる事が出来なかった」

「まぁ、困った事があれば、何時でも相談に乗るから」

「かたじけない」

 シバを支える苦労人のディーガにそう声を掛けると、少し肩の荷が下りたのか、ニヤリと笑ってとして去って行った。

「これで少しはあいつらの組織も変わるかな」

「そうなれば良いですね」

 俺が去って行くディーガの後ろ姿を見ながら呟くと、イリアが頷きながらそう言った。





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