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しおりを挟む僕は、パトリック殿下の正式な婚約者となるために、王宮に出向いて儀式を行った。
長文が書かれた書類を交わし、国王の国璽が押された婚約の契約書を取り交わす。
全ての儀式が終わった後、王家の方々と僕の両親とともにサロンで語り合った。全くの私的な場であり、堅苦しいことはない。
「エティエンヌがわたしの息子になってくれることを大変喜ばしく思っているよ」
「これからも、パトリックをよろしくね」
国王陛下と王妃様がにこやかにそう言ってくださる。僕の父上と母上も嬉しそうにしている。
パトリック殿下は僕の隣で、『氷晶の王子殿下』の風情のまま、僕の手を握りしめている。そんな僕たちを見て、カミーユ殿下とジャンヌ様は、微笑まし気に笑っている。
そして、僕はこの日のために領地へ足を運んで仕上げたものを皆様に見せなければならないのだ。
「僕たちが卒業と同時に婚約する予定であったので、それに間に合うように品種改良をしたものがあります。それをご披露してもよろしいでしょうか?」
僕は国王陛下の許可を得て、用意していた植木鉢をその場に運び込ませた。もちろん、土で辺りが汚れることがないようにしてある。
「どうぞ、こちらをご覧ください」
覆いをとると、その場に驚嘆の声が上がった。
僕が、この日のために品種改良をして育てたのは、淡い青紫色の薔薇だ。薔薇の樹に花が咲き誇っている。
「ああ、パトリックの瞳の色、そのままではないか」
「素晴らしい美しさだわ」
「花びらが波打っていて優雅な風情だな」
「なんて美しいのでしょう」
皆様が称賛してくださるのが嬉しい。一足先にそれを見ていた父上は、自分の方が誇らしいと思っているような顔をしている。僕が頑張ったのではあるが、父上の援助があったのは確かなので感謝しかない。
そして、僕の婚約者となったパトリック殿下は、薔薇に静かに近づき、香りを確かめている。
深みのあるブルーローズ特有の香りに、柑橘のような香りが混じっているのが特徴だ。離れた場所でもその芳香を感じ取ることができるだろう。
パトリック殿下は、僕の方を向くとそのまま強く抱きしめた。
「わたしの婚約者は、なんて素晴らしいのだろうか」
僕の婚約者は、なんて愛しいのだろうか。
◇◇◇◇
神殿での厳かな式典の後、王宮で開かれた婚姻式では、パトリック殿下と僕が住む別邸の庭で増やされた淡い青紫色の薔薇『モン・パトリック』と、黄金色の薔薇『エティエンヌ』が飾られた。
2つの薔薇の香りに包まれて僕たちは幸せな夫夫になった。
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