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夫の償い
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リーンリアナは死産した影響で床に伏していることになった。
実際は、アルバートが出産直後に衝撃を与えた為だ。立ち去る際、アルバートは気を失って眠っているだけだと思ったが、そのあと様子を見に来た侍女が容体が悪化していることに気付き、また医師を呼ばなければいけない状態になった。
女騎士や侍女たちにはアルバートを止めることができなくても、リーンリアナの部屋には離宮の住人たちの誰かしかがいて、いくらアルバートでも親族の側妃である彼女らを振り切ってリーンリアナに会うことはできない。
立ち塞がるハルスタッド一族の女たちの頭越しに垣間見えたリーンリアナの顔色は蠟のように白かった。宮廷の医師が処方したした薬が良く効いているのか、顔色はともかく寝顔は穏やかだ。
リーンセーラにすらきついことを言われたが、アルバートはそんなことはどうでもよかった。
アルバートは初めて自分の手で誰かを寝込むほど傷付けた事実と直面して愕然としていた。
護身術程度の剣や弓などは習っていたが、それは自分より技術のある人物が相手だったので怪我をさせたことはなく、学校の剣術の時間ですら打ち身や切り傷程度だった。
リーンリアナが安静にしているしかない状況は以前にもあったが、その時は離宮に入ることすら禁じられているような非常事態が起きていた時で目にすることはなかった。
それまで散々リーンリアナを傷付け、苦しめてきたことはすべて目に見える傷跡などはなかったからこそ、今度のことでようやく自分の所業に気付いたのだ。
ただひたすら、自分がしでかしたことの罪悪感に襲われた。
リーンリアナとの面会は許されなくても、アルバートは毎日離宮に足を運んだ。
会うことができないとわかるとあとで見舞いの品を届けさせていたが、あとで届けさせるよりはと持参して来るようになった。
心身共に疲労困憊で寝込んでいるリーンリアナの居間に置かれていく花や菓子、装飾品などを姉や叔母たちは困惑した表情で見ていた。
起き上がれるようになったリーンリアナも隣の部屋の状態に戸惑いながら深い溜め息を一つ吐く。
居間に置かれた離宮中から集めただろう花瓶に活けられている花を一輪抜き取って、くるくると指で回して遊びながらリーンリアナは思った。
これがもし、あの事件の時だったら――
そうだったら、私は喜んだに違いない。
今のリーンリアナはあの時のリーンリアナではない。
アルバートに優しくされようが嬉しくも何も感じない。
初恋に破れ、傷心を抱えていたリーンリアナはアルバートの手で既に殺されていた。
そして残ったのは、実家にいた時よりも皮肉家になったリーンリアナ。
姉や叔母たちのように夫に好意や敬意を持っていない、王族に嫁ぐしきたりを政略結婚として捉えている貴族らしい貴族。
しきたりではあっても、政略結婚だとは誰も思っていなかった。
それなのに、一人だけ政略結婚だと冷めて見るようになってしまった。
”もし”や”たら”をいくらいっても変わらない。
リーンリアナは政略結婚をしたものだと認識している。
今更、贈り物をもらっても煩わしいだけだった。
どうして、今頃になって・・・。
手にしていた花を思わずリーンリアナは握り潰してしまった。
あんな男。どうでもいい。
実際は、アルバートが出産直後に衝撃を与えた為だ。立ち去る際、アルバートは気を失って眠っているだけだと思ったが、そのあと様子を見に来た侍女が容体が悪化していることに気付き、また医師を呼ばなければいけない状態になった。
女騎士や侍女たちにはアルバートを止めることができなくても、リーンリアナの部屋には離宮の住人たちの誰かしかがいて、いくらアルバートでも親族の側妃である彼女らを振り切ってリーンリアナに会うことはできない。
立ち塞がるハルスタッド一族の女たちの頭越しに垣間見えたリーンリアナの顔色は蠟のように白かった。宮廷の医師が処方したした薬が良く効いているのか、顔色はともかく寝顔は穏やかだ。
リーンセーラにすらきついことを言われたが、アルバートはそんなことはどうでもよかった。
アルバートは初めて自分の手で誰かを寝込むほど傷付けた事実と直面して愕然としていた。
護身術程度の剣や弓などは習っていたが、それは自分より技術のある人物が相手だったので怪我をさせたことはなく、学校の剣術の時間ですら打ち身や切り傷程度だった。
リーンリアナが安静にしているしかない状況は以前にもあったが、その時は離宮に入ることすら禁じられているような非常事態が起きていた時で目にすることはなかった。
それまで散々リーンリアナを傷付け、苦しめてきたことはすべて目に見える傷跡などはなかったからこそ、今度のことでようやく自分の所業に気付いたのだ。
ただひたすら、自分がしでかしたことの罪悪感に襲われた。
リーンリアナとの面会は許されなくても、アルバートは毎日離宮に足を運んだ。
会うことができないとわかるとあとで見舞いの品を届けさせていたが、あとで届けさせるよりはと持参して来るようになった。
心身共に疲労困憊で寝込んでいるリーンリアナの居間に置かれていく花や菓子、装飾品などを姉や叔母たちは困惑した表情で見ていた。
起き上がれるようになったリーンリアナも隣の部屋の状態に戸惑いながら深い溜め息を一つ吐く。
居間に置かれた離宮中から集めただろう花瓶に活けられている花を一輪抜き取って、くるくると指で回して遊びながらリーンリアナは思った。
これがもし、あの事件の時だったら――
そうだったら、私は喜んだに違いない。
今のリーンリアナはあの時のリーンリアナではない。
アルバートに優しくされようが嬉しくも何も感じない。
初恋に破れ、傷心を抱えていたリーンリアナはアルバートの手で既に殺されていた。
そして残ったのは、実家にいた時よりも皮肉家になったリーンリアナ。
姉や叔母たちのように夫に好意や敬意を持っていない、王族に嫁ぐしきたりを政略結婚として捉えている貴族らしい貴族。
しきたりではあっても、政略結婚だとは誰も思っていなかった。
それなのに、一人だけ政略結婚だと冷めて見るようになってしまった。
”もし”や”たら”をいくらいっても変わらない。
リーンリアナは政略結婚をしたものだと認識している。
今更、贈り物をもらっても煩わしいだけだった。
どうして、今頃になって・・・。
手にしていた花を思わずリーンリアナは握り潰してしまった。
あんな男。どうでもいい。
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