9 / 41
第二章 いきなり社長と同棲生活
②
しおりを挟む
「ちゃんとお前の部屋もある。ついてこい」
「私の部屋?」
靴を脱いでスリッパに履き替えて、社長の後ろに続くと、玄関からわりと近いドアの前で立ち止まった。
「ゲストルームだ」
社長が扉を開けると、私は驚きを隠せなかった。
ゲストルームは広々としていて、とても清潔感があった。シックで落ち着いた内装に、快適そうな大きなベッド。部屋の片隅には化粧台と小さな机、そして座り心地の良さそうな椅子も置かれていた。まるで高級ホテルの一室のような部屋に心が弾む。
「ゲストルームがあるのですか、社長の家には!」
興奮しながら中に入る。隅々まで綺麗でどこにも埃がたまっていない。
「まあ、社長だからな」
それもそうか。しかも一流の大手企業。親もお金持ちだし、別世界の住人だなあと思う。
「とても綺麗ですね。社長って掃除好きなのですね!」
「俺じゃなくて、毎日ハウスキーパーが掃除してくれている」
ホテルかよ、と心の中で突っ込む。
そりゃ社長自ら掃除なんてするわけないか。
社長はゲストルームのウォークインクローゼットを開けると、ホテルで置いてあるようなパジャマやバスローブ、タオル類などが置いてあった。
「ここにあるものは全部遠慮なく使え」
さらに化粧台の中には、メイク落としや化粧水などのアメニティ類がしっかり揃っている。
本当に高級ホテル仕様。急なお泊りでもなんの不都合もない徹底ぶりだ。
「そして、こっちの部屋は風呂場と洗面所だ。洗濯乾燥機があるから、少量ならすぐに乾くし、スーツはこっちの除菌用低温乾燥機を使えばクリーニングに出したみたいになるぞ」
うわ~、凄い。コンビニで色々買ってこようと思っていたけど、その必要は一切ないみたい。
「俺は朝に風呂に入るから、お前はゆっくり入って早く寝ろ」
「なんか、至れり尽くせりしてもらってすみません」
「なにを言っている。俺の嫁になるのだから、でかい顔して居座っていればいい」
社長はにこやかに笑って、私の頭をポンポンとなでた。
うわ~、頭ポンされた。こんなナチュラルに一切の嫌味なくできる社長って凄い。
嫌味どころか、不覚にも胸が高鳴ってしまった。
こんな女心を鷲掴みにされる行為をされたら、意外といい人なんじゃないかって思ってしまう。
最上位ランクの男の人ってやっぱり凄い。普通の男性が同じことをしてきたら、触るな、セクハラだって思うところだ。
「俺はこっちの寝室にいるから。なにかわからないことがあれば遠慮なく言えよ」
「は、はい……」
あれ、意外と紳士的で優しい。
「じゃあ、おやすみ」
「おやすみなさい……」
色男って凄い。息を吐くように女性に甘い笑顔を向けることができるのか。
これは勘違いしてしまう気持ちがわかる。私だけに特別なのかなって。
まあ、私は勘違いしないけどね! なにせ離婚前提だし!
お風呂に入る準備をして、そそくさと浴室に入る。バスルームも広々としていて、ここにも充分な設備が整っていた。大理石のタイルが高級感をただよわせている。
下着類は洗濯乾燥機に入れて、クリーム色のスカートスーツはロッカーのような形をしたクローゼット型のホームクリーニング機に入れた。
ハウスキーパーさんが毎日掃除してくれているからか、浴室も水滴一つなく清潔だ。
なんでこんなことになったのかと思いつつ、手早く体を洗う。
この選択は正しいのか、それとも間違いなのか。
不安な気持ちは当然あるけれど、継娘や継母の住むあの家に帰らなくて済むと思うと清々しさもある。
長年ずっと夢見てきた。
何度も何度も、あの家からどうやったら出られるのか考えて、そして最後は絶望するのだ。現実的に、どうやったって無理だって。
感情に任せて家出したところで住むあてもお金もない。奴隷のような生活は悔しいけれど、家を出たところで新たな地獄が待っているだけだ。
社長と結婚するという選択は地獄?
いや、こんな素敵な場所で生活できることが地獄なわけがない。きっと大丈夫。この選択は間違いなんかじゃない。
自分に言い聞かせるように納得させて、浴室を出ると下着はすでに乾燥が終わっていた。
パジャマに着替えて、髪をゆっくり乾かしたけれど、スーツの除菌はまだ終わっていなかった。
あと十分か……ここでこのまま終わるのを待っていようかな。
部屋に戻ってベッドに入ったらそのまま寝てしまいそうだ。
(はあ、疲れた……)
椅子に座りながら、クリーニング機を見つめる。瞼の重みに必死に耐えながら、なんとか起きていようと頑張ったけれど、結局睡魔には勝てずに眠りに落ちてしまった。
携帯のアラーム音が深い眠りから私を引きずり出す。
ああ、もう朝だ。洗濯して朝ご飯作って……。
そうだ、リビングも掃除機かけなきゃ。きっと、お菓子の食べかす等が床に散らばっている。
目を開けると、見慣れぬ光景が広がっていた。ふかふかのベッドに、シックな壁紙。
(あれ、私……)
誰もいない部屋で、記憶を手繰り寄せる。
そうだ、昨日……っていうか今日か。社長の家に泊まることになったのだ。お風呂に入って、スーツの除菌終わりを待っていたところで……ええと、私、どうやってこの部屋に来たのだろう。
「私の部屋?」
靴を脱いでスリッパに履き替えて、社長の後ろに続くと、玄関からわりと近いドアの前で立ち止まった。
「ゲストルームだ」
社長が扉を開けると、私は驚きを隠せなかった。
ゲストルームは広々としていて、とても清潔感があった。シックで落ち着いた内装に、快適そうな大きなベッド。部屋の片隅には化粧台と小さな机、そして座り心地の良さそうな椅子も置かれていた。まるで高級ホテルの一室のような部屋に心が弾む。
「ゲストルームがあるのですか、社長の家には!」
興奮しながら中に入る。隅々まで綺麗でどこにも埃がたまっていない。
「まあ、社長だからな」
それもそうか。しかも一流の大手企業。親もお金持ちだし、別世界の住人だなあと思う。
「とても綺麗ですね。社長って掃除好きなのですね!」
「俺じゃなくて、毎日ハウスキーパーが掃除してくれている」
ホテルかよ、と心の中で突っ込む。
そりゃ社長自ら掃除なんてするわけないか。
社長はゲストルームのウォークインクローゼットを開けると、ホテルで置いてあるようなパジャマやバスローブ、タオル類などが置いてあった。
「ここにあるものは全部遠慮なく使え」
さらに化粧台の中には、メイク落としや化粧水などのアメニティ類がしっかり揃っている。
本当に高級ホテル仕様。急なお泊りでもなんの不都合もない徹底ぶりだ。
「そして、こっちの部屋は風呂場と洗面所だ。洗濯乾燥機があるから、少量ならすぐに乾くし、スーツはこっちの除菌用低温乾燥機を使えばクリーニングに出したみたいになるぞ」
うわ~、凄い。コンビニで色々買ってこようと思っていたけど、その必要は一切ないみたい。
「俺は朝に風呂に入るから、お前はゆっくり入って早く寝ろ」
「なんか、至れり尽くせりしてもらってすみません」
「なにを言っている。俺の嫁になるのだから、でかい顔して居座っていればいい」
社長はにこやかに笑って、私の頭をポンポンとなでた。
うわ~、頭ポンされた。こんなナチュラルに一切の嫌味なくできる社長って凄い。
嫌味どころか、不覚にも胸が高鳴ってしまった。
こんな女心を鷲掴みにされる行為をされたら、意外といい人なんじゃないかって思ってしまう。
最上位ランクの男の人ってやっぱり凄い。普通の男性が同じことをしてきたら、触るな、セクハラだって思うところだ。
「俺はこっちの寝室にいるから。なにかわからないことがあれば遠慮なく言えよ」
「は、はい……」
あれ、意外と紳士的で優しい。
「じゃあ、おやすみ」
「おやすみなさい……」
色男って凄い。息を吐くように女性に甘い笑顔を向けることができるのか。
これは勘違いしてしまう気持ちがわかる。私だけに特別なのかなって。
まあ、私は勘違いしないけどね! なにせ離婚前提だし!
お風呂に入る準備をして、そそくさと浴室に入る。バスルームも広々としていて、ここにも充分な設備が整っていた。大理石のタイルが高級感をただよわせている。
下着類は洗濯乾燥機に入れて、クリーム色のスカートスーツはロッカーのような形をしたクローゼット型のホームクリーニング機に入れた。
ハウスキーパーさんが毎日掃除してくれているからか、浴室も水滴一つなく清潔だ。
なんでこんなことになったのかと思いつつ、手早く体を洗う。
この選択は正しいのか、それとも間違いなのか。
不安な気持ちは当然あるけれど、継娘や継母の住むあの家に帰らなくて済むと思うと清々しさもある。
長年ずっと夢見てきた。
何度も何度も、あの家からどうやったら出られるのか考えて、そして最後は絶望するのだ。現実的に、どうやったって無理だって。
感情に任せて家出したところで住むあてもお金もない。奴隷のような生活は悔しいけれど、家を出たところで新たな地獄が待っているだけだ。
社長と結婚するという選択は地獄?
いや、こんな素敵な場所で生活できることが地獄なわけがない。きっと大丈夫。この選択は間違いなんかじゃない。
自分に言い聞かせるように納得させて、浴室を出ると下着はすでに乾燥が終わっていた。
パジャマに着替えて、髪をゆっくり乾かしたけれど、スーツの除菌はまだ終わっていなかった。
あと十分か……ここでこのまま終わるのを待っていようかな。
部屋に戻ってベッドに入ったらそのまま寝てしまいそうだ。
(はあ、疲れた……)
椅子に座りながら、クリーニング機を見つめる。瞼の重みに必死に耐えながら、なんとか起きていようと頑張ったけれど、結局睡魔には勝てずに眠りに落ちてしまった。
携帯のアラーム音が深い眠りから私を引きずり出す。
ああ、もう朝だ。洗濯して朝ご飯作って……。
そうだ、リビングも掃除機かけなきゃ。きっと、お菓子の食べかす等が床に散らばっている。
目を開けると、見慣れぬ光景が広がっていた。ふかふかのベッドに、シックな壁紙。
(あれ、私……)
誰もいない部屋で、記憶を手繰り寄せる。
そうだ、昨日……っていうか今日か。社長の家に泊まることになったのだ。お風呂に入って、スーツの除菌終わりを待っていたところで……ええと、私、どうやってこの部屋に来たのだろう。
23
あなたにおすすめの小説
契約結婚のはずなのに、冷徹なはずのエリート上司が甘く迫ってくるんですが!? ~結婚願望ゼロの私が、なぜか愛されすぎて逃げられません~
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
恋愛
「俺と結婚しろ」
突然のプロポーズ――いや、契約結婚の提案だった。
冷静沈着で完璧主義、社内でも一目置かれるエリート課長・九条玲司。そんな彼と私は、ただの上司と部下。恋愛感情なんて一切ない……はずだった。
仕事一筋で恋愛に興味なし。過去の傷から、結婚なんて煩わしいものだと決めつけていた私。なのに、九条課長が提示した「条件」に耳を傾けるうちに、その提案が単なる取引とは思えなくなっていく。
「お前を、誰にも渡すつもりはない」
冷たい声で言われたその言葉が、胸をざわつかせる。
これは合理的な選択? それとも、避けられない運命の始まり?
割り切ったはずの契約は、次第に二人の境界線を曖昧にし、心を絡め取っていく――。
不器用なエリート上司と、恋を信じられない女。
これは、"ありえないはずの結婚"から始まる、予測不能なラブストーリー。
ホストと女医は診察室で
星野しずく
恋愛
町田慶子は開業したばかりのクリニックで忙しい毎日を送っていた。ある日クリニックに招かれざる客、歌舞伎町のホスト、聖夜が後輩の真也に連れられてやってきた。聖夜の強引な誘いを断れず、慶子は初めてホストクラブを訪れる。しかし、その日の夜、慶子が目覚めたのは…、なぜか聖夜と二人きりのホテルの一室だった…。
ストーカーに狙われたので歳上騎士様に護衛をお願いしました。
ねーさん
恋愛
「氷の彫刻」と呼ばれる美貌の兄を持つ公爵令嬢のクラリッサは不審な視線に悩まされていた。
卒業を二日後に控えた朝、教室のクラリッサの机に置かれた一通の偏執狂者からの手紙。
親友イブを通じてイブの婚約者、近衛騎士団第四分団員のジョーンズに相談すると、第四分団長ネイトがクラリッサのパートナーとして卒業パーティーに出席してくれる事になって───
〈注〉
このお話は「婚約者が記憶喪失になりました。」と「元騎士の歳上公爵様がまさかの××でした!?」の続編になります。
結婚する事に決めたから
KONAN
恋愛
私は既婚者です。
新たな職場で出会った彼女と結婚する為に、私がその時どう考え、どう行動したのかを書き記していきます。
まずは、離婚してから行動を起こします。
主な登場人物
東條なお
似ている芸能人
○原隼人さん
32歳既婚。
中学、高校はテニス部
電気工事の資格と実務経験あり。
車、バイク、船の免許を持っている。
現在、新聞販売店所長代理。
趣味はイカ釣り。
竹田みさき
似ている芸能人
○野芽衣さん
32歳未婚、シングルマザー
医療事務
息子1人
親分(大島)
似ている芸能人
○田新太さん
70代
施設の送迎運転手
板金屋(大倉)
似ている芸能人
○藤大樹さん
23歳
介護助手
理学療法士になる為、勉強中
よっしー課長(吉本)
似ている芸能人
○倉涼子さん
施設医療事務課長
登山が趣味
o谷事務長
○重豊さん
施設医療事務事務長
腰痛持ち
池さん
似ている芸能人
○田あき子さん
居宅部門管理者
看護師
下山さん(ともさん)
似ている芸能人
○地真央さん
医療事務
息子と娘はテニス選手
t助
似ている芸能人
○ツオくん(アニメ)
施設医療事務事務長
o谷事務長異動後の事務長
雄一郎 ゆういちろう
似ている芸能人
○鹿央士さん
弟の同級生
中学テニス部
高校陸上部
大学帰宅部
髪の赤い看護師(川木えみ)
似ている芸能人
○田來未さん
准看護師
ヤンキー
怖い
それは、ホントに不可抗力で。
樹沙都
恋愛
これ以上他人に振り回されるのはまっぴらごめんと一大決意。人生における全ての無駄を排除し、おひとりさまを謳歌する歩夢の前に、ひとりの男が立ちはだかった。
「まさか、夫の顔……を、忘れたとは言わないだろうな? 奥さん」
その婚姻は、天の啓示か、はたまた……ついうっかり、か。
恋に仕事に人間関係にと翻弄されるお人好しオンナ関口歩夢と腹黒大魔王小林尊の攻防戦。
まさにいま、開始のゴングが鳴った。
まあね、所詮、人生は不可抗力でできている。わけよ。とほほっ。
あまやかしても、いいですか?
藤川巴/智江千佳子
恋愛
結婚相手は会社の王子様。
「俺ね、ダメなんだ」
「あーもう、キスしたい」
「それこそだめです」
甘々(しすぎる)男子×冷静(に見えるだけ)女子の
契約結婚生活とはこれいかに。
恋色メール 元婚約者がなぜか追いかけてきました
國樹田 樹
恋愛
婚約者と別れ、支店へと異動願いを出した千尋。
しかし三か月が経った今、本社から応援として出向してきたのは―――別れたはずの、婚約者だった。
Marry Me?
美凪ましろ
恋愛
――あの日、王子様があたしの目の前に現れた。
仕事が忙しいアパレル店員の彼女と、王子系美青年の恋物語。
不定期更新。たぶん、全年齢でいけるはず。
※ダイレクトな性描写はありませんが、ややそっち系のトークをする場面があります。
※彼の過去だけ、ダークな描写があります。
■画像は、イトノコさまの作品です。
https://www.pixiv.net/artworks/85809405
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる