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第二章 いきなり社長と同棲生活
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壁には、しわも伸びてまるで本当にクリーニングに出したかのような仕上がりのスーツがハンガーに吊り下げられていた。
あれ、私、本当に記憶がない。椅子に座ったまま寝てしまった気がする。ということは、ベッドまで運んでくれたのは社長だろう。
うわ~、もう初日からやっちゃったよ。
頭を抱えて恥ずかしさで身悶える。
椅子に座りながら爆睡って、お酒を飲んだわけでもないのに。
連日の疲れが残っている中、深夜の階段爆走。それに加えていきなり結婚することになって初日から同棲。心身共に疲れ切っていたとはいえ、さすがに抱きかかえられた時に起きろよと自分に突っ込みを入れる。
起き上がってスーツに着替えた。私が家に帰っていないことを知った継娘や継母は怒り心頭だろう。なにせ朝ご飯を作る人がいないのだから。
(知るか。私は、私の人生を生きる)
二人の携帯を着信拒否する。ラインもブロックだ。
身支度を終えた私は、リビングに行ってみた。
「うっわ、広い」
朝日が入り込むリビングは想像していた以上に解放感があって、思わず声が漏れ出た。
壁は一面ガラス張りのワイドスパン。一人暮らしでこの広さ必要? と疑問を投げかけたくなる間取りだ。
床は光沢のある木目調のフローリングで、大きな窓から陽光が差し込みキラキラと輝いていた。
ソファは大人二人が余裕で横になれる広さだし、壁にかけられているテレビはスクリーンのように大きい。部屋の隅には緑が映える立派な観葉植物があって、高級マンションのモデルルームをそのまま採用したかのような家具の配置だ。
キッチンカウンターは漆黒の大理石で、一見すると冷たくて重い雰囲気があるけれど、日差しを浴びると柔らかな光沢が生まれ、輝きを放っている。
キッチンには、コーヒーメーカーやオーブンなど最新の高性能な調理器具や食器が揃っていた。
大きな冷蔵庫を前にして、開けていいのか一瞬ためらったけれど、社長の分の朝食を作っておかなければと思った。
冷蔵庫を開けると、中身はミネラルウォーターや缶ビール等のお酒類などしか入っていなかった。
そっか、社長が料理なんてするはずないか。
朝食はいらないタイプなのかもしれないと思って、そっと冷蔵庫のドアを閉める。その時だった。
「おはよう、早いな」
背後から社長に話しかけられて、驚きすぎて肩が上がった。
「おはようございます! 勝手に冷蔵庫開けてすみ……」
すみませんと謝るつもりだったのに、振り返った目線の先にいた社長の姿に言葉を失った。
鍛え上げられた上半身に目が釘付けになる。サテン生地の黒色のパジャマズボンは履いているものの、上半身裸に濡れた髪の毛。シャワーを浴びたてなのか、首筋にタオルをかけている。
いつもはしっかり髪の毛をセットした社長しか知らないので、おろしてある髪を見るのは新鮮だった。
(腹筋が割れている!)
かっこいいとか眼福とかの次元を超えてくるほどの色気だ。タイプとかタイプじゃないとか、好きとか嫌いとか、もうそういう感情を越える圧倒的な雄としての魅力が社長にはある。側にいるだけでクラクラしてくるのだから、とんでもない人物だ。ここまできたら歩く兵器だ。危険だ、野放しにしちゃいけない。
「家にあるものは勝手に使っていいからな。駄目なものはちゃんと言うから」
社長は濡れた髪のままキッチンに入り、冷蔵庫を開けてミネラルウォーターを取り出した。
(近い、近い、近い)
歩く兵器が来たので、思わずあとずさりしてしまう。
「昨夜はあの、寝室に運んでくれたのって社長ですか?」
ミネラルウォーターの蓋を開けようとしていた社長の手が一瞬止まった。
「俺の他に誰がいる」
「そ、そうですよね。大変失礼いたしました! 持ち上げられた時点で起きろという話ですよね、もう自分でもびっくりです!」
恥ずかしすぎて早口で言うものの、社長は私の顔を見ずに蓋を開けた。
「いや、別に……」
あれ? なんだろ、この反応。体重が重すぎて引いたとか? 申し訳なさすぎる!
「それだけ疲れていたってことだろ。もっと寝ていれば良かったのに」
「いつもこの時間に起きているので大丈夫です。家族の朝ご飯の準備とか色々やることが多いので」
その言葉に、社長は私の顔をじっと見つめた。
「仕事しているのに、家族の朝ご飯をお前が作っていたのか?」
「学生の時からなので、もう慣れています」
「遅くまで仕事して、朝早くから家事もして。体壊すぞ」
「大丈夫です! 見ましたでしょ、私の走りを。体力と根性には自信があります!」
胸を張って言うと、社長は眉間を寄せた。
「無理しすぎだ。お前はいつも昔から……」
「昔から?」
私が小首を傾げると、社長はハッとしたように視線を逸らした。
「なんでもない。着替えてくるからゆっくりしていろ」
社長はそう言って、リビングから出て行った。
勝手に使っていいなんて、社長は太っ腹だな。神経質なタイプじゃなくて良かった。
社長の言葉に甘えて、キッチンの棚を開けていく。生活する上でどこになにがあるのか知ることは大切だ。
そうしていると、いつものビシっと決めたスーツ姿の社長が戻ってきて、会社に行くことになった。
あれ、私、本当に記憶がない。椅子に座ったまま寝てしまった気がする。ということは、ベッドまで運んでくれたのは社長だろう。
うわ~、もう初日からやっちゃったよ。
頭を抱えて恥ずかしさで身悶える。
椅子に座りながら爆睡って、お酒を飲んだわけでもないのに。
連日の疲れが残っている中、深夜の階段爆走。それに加えていきなり結婚することになって初日から同棲。心身共に疲れ切っていたとはいえ、さすがに抱きかかえられた時に起きろよと自分に突っ込みを入れる。
起き上がってスーツに着替えた。私が家に帰っていないことを知った継娘や継母は怒り心頭だろう。なにせ朝ご飯を作る人がいないのだから。
(知るか。私は、私の人生を生きる)
二人の携帯を着信拒否する。ラインもブロックだ。
身支度を終えた私は、リビングに行ってみた。
「うっわ、広い」
朝日が入り込むリビングは想像していた以上に解放感があって、思わず声が漏れ出た。
壁は一面ガラス張りのワイドスパン。一人暮らしでこの広さ必要? と疑問を投げかけたくなる間取りだ。
床は光沢のある木目調のフローリングで、大きな窓から陽光が差し込みキラキラと輝いていた。
ソファは大人二人が余裕で横になれる広さだし、壁にかけられているテレビはスクリーンのように大きい。部屋の隅には緑が映える立派な観葉植物があって、高級マンションのモデルルームをそのまま採用したかのような家具の配置だ。
キッチンカウンターは漆黒の大理石で、一見すると冷たくて重い雰囲気があるけれど、日差しを浴びると柔らかな光沢が生まれ、輝きを放っている。
キッチンには、コーヒーメーカーやオーブンなど最新の高性能な調理器具や食器が揃っていた。
大きな冷蔵庫を前にして、開けていいのか一瞬ためらったけれど、社長の分の朝食を作っておかなければと思った。
冷蔵庫を開けると、中身はミネラルウォーターや缶ビール等のお酒類などしか入っていなかった。
そっか、社長が料理なんてするはずないか。
朝食はいらないタイプなのかもしれないと思って、そっと冷蔵庫のドアを閉める。その時だった。
「おはよう、早いな」
背後から社長に話しかけられて、驚きすぎて肩が上がった。
「おはようございます! 勝手に冷蔵庫開けてすみ……」
すみませんと謝るつもりだったのに、振り返った目線の先にいた社長の姿に言葉を失った。
鍛え上げられた上半身に目が釘付けになる。サテン生地の黒色のパジャマズボンは履いているものの、上半身裸に濡れた髪の毛。シャワーを浴びたてなのか、首筋にタオルをかけている。
いつもはしっかり髪の毛をセットした社長しか知らないので、おろしてある髪を見るのは新鮮だった。
(腹筋が割れている!)
かっこいいとか眼福とかの次元を超えてくるほどの色気だ。タイプとかタイプじゃないとか、好きとか嫌いとか、もうそういう感情を越える圧倒的な雄としての魅力が社長にはある。側にいるだけでクラクラしてくるのだから、とんでもない人物だ。ここまできたら歩く兵器だ。危険だ、野放しにしちゃいけない。
「家にあるものは勝手に使っていいからな。駄目なものはちゃんと言うから」
社長は濡れた髪のままキッチンに入り、冷蔵庫を開けてミネラルウォーターを取り出した。
(近い、近い、近い)
歩く兵器が来たので、思わずあとずさりしてしまう。
「昨夜はあの、寝室に運んでくれたのって社長ですか?」
ミネラルウォーターの蓋を開けようとしていた社長の手が一瞬止まった。
「俺の他に誰がいる」
「そ、そうですよね。大変失礼いたしました! 持ち上げられた時点で起きろという話ですよね、もう自分でもびっくりです!」
恥ずかしすぎて早口で言うものの、社長は私の顔を見ずに蓋を開けた。
「いや、別に……」
あれ? なんだろ、この反応。体重が重すぎて引いたとか? 申し訳なさすぎる!
「それだけ疲れていたってことだろ。もっと寝ていれば良かったのに」
「いつもこの時間に起きているので大丈夫です。家族の朝ご飯の準備とか色々やることが多いので」
その言葉に、社長は私の顔をじっと見つめた。
「仕事しているのに、家族の朝ご飯をお前が作っていたのか?」
「学生の時からなので、もう慣れています」
「遅くまで仕事して、朝早くから家事もして。体壊すぞ」
「大丈夫です! 見ましたでしょ、私の走りを。体力と根性には自信があります!」
胸を張って言うと、社長は眉間を寄せた。
「無理しすぎだ。お前はいつも昔から……」
「昔から?」
私が小首を傾げると、社長はハッとしたように視線を逸らした。
「なんでもない。着替えてくるからゆっくりしていろ」
社長はそう言って、リビングから出て行った。
勝手に使っていいなんて、社長は太っ腹だな。神経質なタイプじゃなくて良かった。
社長の言葉に甘えて、キッチンの棚を開けていく。生活する上でどこになにがあるのか知ることは大切だ。
そうしていると、いつものビシっと決めたスーツ姿の社長が戻ってきて、会社に行くことになった。
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