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おまけの後日談
①
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捺美が帰ってきた。最強な俺、復活だ。
今なら世界を獲れそうな気がする。そんなことを言ったら、高城に仕事を増やされた。あいつは鬼だ、容赦がない。でも、捺美奪還に向けて尽力してくれたので、特別ボーナスを支給したら、目を輝かせて喜んでくれた。可愛い奴め。
捺美が帰ってきてから、色々なことが変わった。
まず、捺美のお父さん。正直、俺は捺美のお父さんは好きになれない。捺美の意思を自在に操るラスボス的な悪の存在だった。
でも、どうやら彼も被害者だったらしい。捺美が死にたいと思うほど実家が嫌いで、長年苦しみ続けてきたということを知ったお父さんは、なんと行方不明になった。
捺美のお父さんが行方不明になったと知った俺と高城は、慌てて探し出すよう探偵に依頼をかけた。
また捺美の前に突然現れて、捺美に余計なことを吹き込んで連れ去られたら、たまったものじゃない。
捺美にはお父さんが行方不明になったことは伏せ、秘密裏に探した。そして三ヶ月ほど経った頃、ようやく見つけ出した。
こんなに時間がかかったのも無理はない。見つけた場所は九州の田舎町だった。住み込みで、大手工場の製造業をしていた。
高城と二人で会いに行ったら、日焼けをし、筋肉もついて別人のような顔つきになっていた。最初は下働きが多く、肉体労働が主できつかったが、仕事ぶりが認められて現場リーダーに抜擢されたらしい。仲間もできて充実していると言っていた。
だが、ここにいることは誰にも言わないでくれと頼まれた。捺美にも伝えるなと言われた。もう捺美を苦しめたくないのだと、悲しそうな表情で言っていた。
捺美のお父さんはお父さんで、長年苦しみ続けてきたのかもしれない。
お父さんに会う前に、捺美の継母と継姉と直接対決していたので、あいつらの異常さは骨身に染みている。言って理解してくれるような輩じゃないし、そもそも会話にならない。
捺美のお父さんは、自分の人生を歩み出した。もう彼は捺美を傷つけたりしないと思った。いつか、捺美に教えてあげたい。お父さんは頑張っているよと。
そして、捺美の継母と継姉だが、あれはなかなか手強かった。
また捺美に接触してきたら大変なので、弁護士を引き連れて彼女たちと会った。
もう二度と捺美と接触しないことに同意する書面にサインさせるためだ。しかし、『家族なのに会えないなんてそっちが法的におかしい』だの、『会うなというなら慰謝料よこせ』だのワーワーギャーギャー騒ぎ立てて、なかなかサインしない。
金を払えば収まるなら、金で解決しようかと思ったが、それはなんか癪に障る。長年捺美を苦しめ続けてきた張本人だ。天罰を下そうと思った。
こういうことにやたら頭が回るのは高城という男。彼女たちが捺美に接触することを阻止し、なおかつ天罰が下る方法はないかと一任した。
『お任せください』
高城はそう不気味に笑うと、とんでもないやり口で彼女たちを一撃で仕留めた。
元々継母は、鍼治療のかたわら怪しいスピリチュアルで患者を洗脳し、高額な物品を売っていたそうだ。それが問題となり、夜逃げのような形で引っ越すことになるのだが、それを徹底的に調べ上げ、かつ現在の仕事もなにやら怪しいことを親子でやっていたそうで、詐欺罪で入獄させた。
借金があるので保釈金も払えず、親子揃って刑務所入り。掘れば掘るほど罪状が出てくるありさまなので、しばらくは出てこられないだろう。
そして最も驚いたのが、佐伯だ。
捺美と離れさせるために海外勤務を打診させたが、捺美に振られたので、これまで通り国内営業でいいかなと思っていたら、なんと、東南アジア希望を出してきた。
本人いわく、『今、一番大変なところで、修行したい』だそうだ。
さすがに可哀想すぎるので、国内に残るように今度は逆に説得したのだが、本人はもう聞く耳を持たなかった。
『行かせてくれないなら辞める』とまで言い出したので、一年という条件つきで許可を出した。嫌になったらすぐに帰ってきていいよと言ってあるが、佐伯の性格上、一年しっかり勤め上げる気がする。
ちなみに東南アジアの支店長は大喜びだった。猫の手も借りたい状態に、これだけ優秀な人が派遣されるのだからそりゃ助かるだろう。
復興しつつ利益を上げる。そんなこと普通ならできないが、佐伯ならやりそうな期待感がある。一皮も二皮も剥けて帰ってきてくれることを願っている。
こうなると次に問題となるのは、捺美の上司だ。
これまでは佐伯の営業事務として働いていたが、佐伯がいなくなる以上、誰の下に就かせるかが問題だ。
佐伯の下で頑張ってくれていたので、今度は楽に仕事ができる人の下に就かせてあげたいと思っていたら、ちょうど桂木昌の営業事務が辞めた。
桂木といえば捺美と一緒にランチを食べた女だ。相性が良さそうだしいいのではないかと営業部長は勧めてきたが、お前の目は節穴か? と言いたい。
あの桂木だぞ? とんでもないトラブルメーカーだぞ? 今まで以上に捺美が苦労するのは目に見えている!
俺は絶対反対だった。仲良くなる程度なら文句はないが、絶対に一緒に仕事したくないと誰もが思う相手だと俺は見ている。現に、辞めた営業事務の子も、桂木のあまりのトラブルの多さに精神的に滅入ってしまったらしい。
会社内でも桂木の処遇をどうするか悩んでいるのに、それに可愛い妻をあてがうのは反対だ。反対だったのに……。
捺美が『やる』と言ってしまった。捺美の性格上、『やる』と言ったら『やる』タイプだ。大変な状況だからこそ燃えるタイプだ。こうなるともう、やらせるしかない。案の定、とんでもなく大変だったようだ。
『佐伯さんの仕事量は多くて大変だったけれど、桂木さんは別の意味で大変。とにかく雑だしミスは多いし、事務じゃなくて秘書になっている』
連日残業続きで体調が不安だったが、だんだん慣れてきたのか早く帰れる日が多くなってきた。
『桂木さんの扱い方がわかってきたの。トラブルになったら大変だけど、未然に防ぐことができるようになってきた。それに、桂木さんってなぜかお金持ちに好かれるから、一回の商談の額がとんでもなく大きいのよ。だから多く当たらなくていい分、時間に余裕が出てきた』
そう嬉しそうに語っていた。二人は正反対なのだが、それが上手く作用しているらしい。公私共に仲良くなってきて、捺美がどんどん明るくなっていく。最初はどうなることかと思ったが、いい方に転がっている。
さて、肝心の俺たちだが、もちろん周りが呆れるくらいのラブラブ夫婦だ。
夫婦だからってイチャイチャしてはいけないなんて誰が決めた。
俺は毎日「綺麗だね」って言うし、「愛しているよ」なんて甘い言葉も囁く。十年後も二十年後も毎日言うつもりだ。
たぶん捺美は『また言っているよ』みたいな冷たい反応をするだろうけれど、本当は嬉しがっていることを俺は知っている。あれは照れ隠しだ。
たまに甘えてきたと思ったら、マイペースでそっけない反応もする。猫のように気ままなツンデレ妻を俺は全力で愛している。
誓うよ。病めるときも健やかなるときも、君を愛し、敬い、慰め合い、共に助け合って、命ある限り真心を尽くすよ。本当だ、嘘だと思うなら、俺にずっとついてくればいい。人生を懸けてそれを証明するから。
愛している、捺美。
【完】
今なら世界を獲れそうな気がする。そんなことを言ったら、高城に仕事を増やされた。あいつは鬼だ、容赦がない。でも、捺美奪還に向けて尽力してくれたので、特別ボーナスを支給したら、目を輝かせて喜んでくれた。可愛い奴め。
捺美が帰ってきてから、色々なことが変わった。
まず、捺美のお父さん。正直、俺は捺美のお父さんは好きになれない。捺美の意思を自在に操るラスボス的な悪の存在だった。
でも、どうやら彼も被害者だったらしい。捺美が死にたいと思うほど実家が嫌いで、長年苦しみ続けてきたということを知ったお父さんは、なんと行方不明になった。
捺美のお父さんが行方不明になったと知った俺と高城は、慌てて探し出すよう探偵に依頼をかけた。
また捺美の前に突然現れて、捺美に余計なことを吹き込んで連れ去られたら、たまったものじゃない。
捺美にはお父さんが行方不明になったことは伏せ、秘密裏に探した。そして三ヶ月ほど経った頃、ようやく見つけ出した。
こんなに時間がかかったのも無理はない。見つけた場所は九州の田舎町だった。住み込みで、大手工場の製造業をしていた。
高城と二人で会いに行ったら、日焼けをし、筋肉もついて別人のような顔つきになっていた。最初は下働きが多く、肉体労働が主できつかったが、仕事ぶりが認められて現場リーダーに抜擢されたらしい。仲間もできて充実していると言っていた。
だが、ここにいることは誰にも言わないでくれと頼まれた。捺美にも伝えるなと言われた。もう捺美を苦しめたくないのだと、悲しそうな表情で言っていた。
捺美のお父さんはお父さんで、長年苦しみ続けてきたのかもしれない。
お父さんに会う前に、捺美の継母と継姉と直接対決していたので、あいつらの異常さは骨身に染みている。言って理解してくれるような輩じゃないし、そもそも会話にならない。
捺美のお父さんは、自分の人生を歩み出した。もう彼は捺美を傷つけたりしないと思った。いつか、捺美に教えてあげたい。お父さんは頑張っているよと。
そして、捺美の継母と継姉だが、あれはなかなか手強かった。
また捺美に接触してきたら大変なので、弁護士を引き連れて彼女たちと会った。
もう二度と捺美と接触しないことに同意する書面にサインさせるためだ。しかし、『家族なのに会えないなんてそっちが法的におかしい』だの、『会うなというなら慰謝料よこせ』だのワーワーギャーギャー騒ぎ立てて、なかなかサインしない。
金を払えば収まるなら、金で解決しようかと思ったが、それはなんか癪に障る。長年捺美を苦しめ続けてきた張本人だ。天罰を下そうと思った。
こういうことにやたら頭が回るのは高城という男。彼女たちが捺美に接触することを阻止し、なおかつ天罰が下る方法はないかと一任した。
『お任せください』
高城はそう不気味に笑うと、とんでもないやり口で彼女たちを一撃で仕留めた。
元々継母は、鍼治療のかたわら怪しいスピリチュアルで患者を洗脳し、高額な物品を売っていたそうだ。それが問題となり、夜逃げのような形で引っ越すことになるのだが、それを徹底的に調べ上げ、かつ現在の仕事もなにやら怪しいことを親子でやっていたそうで、詐欺罪で入獄させた。
借金があるので保釈金も払えず、親子揃って刑務所入り。掘れば掘るほど罪状が出てくるありさまなので、しばらくは出てこられないだろう。
そして最も驚いたのが、佐伯だ。
捺美と離れさせるために海外勤務を打診させたが、捺美に振られたので、これまで通り国内営業でいいかなと思っていたら、なんと、東南アジア希望を出してきた。
本人いわく、『今、一番大変なところで、修行したい』だそうだ。
さすがに可哀想すぎるので、国内に残るように今度は逆に説得したのだが、本人はもう聞く耳を持たなかった。
『行かせてくれないなら辞める』とまで言い出したので、一年という条件つきで許可を出した。嫌になったらすぐに帰ってきていいよと言ってあるが、佐伯の性格上、一年しっかり勤め上げる気がする。
ちなみに東南アジアの支店長は大喜びだった。猫の手も借りたい状態に、これだけ優秀な人が派遣されるのだからそりゃ助かるだろう。
復興しつつ利益を上げる。そんなこと普通ならできないが、佐伯ならやりそうな期待感がある。一皮も二皮も剥けて帰ってきてくれることを願っている。
こうなると次に問題となるのは、捺美の上司だ。
これまでは佐伯の営業事務として働いていたが、佐伯がいなくなる以上、誰の下に就かせるかが問題だ。
佐伯の下で頑張ってくれていたので、今度は楽に仕事ができる人の下に就かせてあげたいと思っていたら、ちょうど桂木昌の営業事務が辞めた。
桂木といえば捺美と一緒にランチを食べた女だ。相性が良さそうだしいいのではないかと営業部長は勧めてきたが、お前の目は節穴か? と言いたい。
あの桂木だぞ? とんでもないトラブルメーカーだぞ? 今まで以上に捺美が苦労するのは目に見えている!
俺は絶対反対だった。仲良くなる程度なら文句はないが、絶対に一緒に仕事したくないと誰もが思う相手だと俺は見ている。現に、辞めた営業事務の子も、桂木のあまりのトラブルの多さに精神的に滅入ってしまったらしい。
会社内でも桂木の処遇をどうするか悩んでいるのに、それに可愛い妻をあてがうのは反対だ。反対だったのに……。
捺美が『やる』と言ってしまった。捺美の性格上、『やる』と言ったら『やる』タイプだ。大変な状況だからこそ燃えるタイプだ。こうなるともう、やらせるしかない。案の定、とんでもなく大変だったようだ。
『佐伯さんの仕事量は多くて大変だったけれど、桂木さんは別の意味で大変。とにかく雑だしミスは多いし、事務じゃなくて秘書になっている』
連日残業続きで体調が不安だったが、だんだん慣れてきたのか早く帰れる日が多くなってきた。
『桂木さんの扱い方がわかってきたの。トラブルになったら大変だけど、未然に防ぐことができるようになってきた。それに、桂木さんってなぜかお金持ちに好かれるから、一回の商談の額がとんでもなく大きいのよ。だから多く当たらなくていい分、時間に余裕が出てきた』
そう嬉しそうに語っていた。二人は正反対なのだが、それが上手く作用しているらしい。公私共に仲良くなってきて、捺美がどんどん明るくなっていく。最初はどうなることかと思ったが、いい方に転がっている。
さて、肝心の俺たちだが、もちろん周りが呆れるくらいのラブラブ夫婦だ。
夫婦だからってイチャイチャしてはいけないなんて誰が決めた。
俺は毎日「綺麗だね」って言うし、「愛しているよ」なんて甘い言葉も囁く。十年後も二十年後も毎日言うつもりだ。
たぶん捺美は『また言っているよ』みたいな冷たい反応をするだろうけれど、本当は嬉しがっていることを俺は知っている。あれは照れ隠しだ。
たまに甘えてきたと思ったら、マイペースでそっけない反応もする。猫のように気ままなツンデレ妻を俺は全力で愛している。
誓うよ。病めるときも健やかなるときも、君を愛し、敬い、慰め合い、共に助け合って、命ある限り真心を尽くすよ。本当だ、嘘だと思うなら、俺にずっとついてくればいい。人生を懸けてそれを証明するから。
愛している、捺美。
【完】
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