5 / 5
私の大好きなお父さん
しおりを挟む
その後、私は警察と言う所に連れていかれた。そこで聞かされた話は、お父さんの選んでくれたどの物語よりも詰まらなかった。
「長い間大変だったね。あの男に嫌なことされなかった? 大丈夫だった?」
優しくされ、語りかけられる。それでも警戒心は解けず、ひたすらお父さんを求めた。
悪夢の中にいる感覚が取れない。目覚めて温もりを探す、あの日常を描いてしまう。
「……お父さんに会いたい……」
「あのね、信じられないかもしれないけど、君のお父さんはもういないんだよ」
「私のお父さんはいるよ……」
「あのね、ナナミちゃん。あの男は君のご両親を酷い目に遇わせて、君を連れ去った犯罪者なんだよ。君はね、洗脳されてるんだ」
「……でも、お父さんは優しかったわ」
男の言いたいことが分からず、ひたすら思い出に逃げる。
二人で静かに暮らせれば、それで幸せだったのに――なんて後悔はもう遅かった。
「きっと、その内分かるから」
その言葉の意味が分かったのは、それからずっと後のことだ。
*
成長するにつれ、私は真実を理解していった。
情報源は主にラジオだ。お父さんが真夜中に聞いていた声だと気付いた時、激しく驚愕した。と同時に悲しくなった。
恐らく、あの時お父さんは情報収集していた。
私が保護された時、警察は大まかな居場所を掴んでいたらしい。それを知って、お父さんは逃げようとしたのだろう。
本当の両親は殺されていた。その犯人こそがお父さんで、私を誘拐する為に殺したとの供述が報じられていた。酷く後悔しているとも。
不思議とショックは浅かった。未だに信じられていない自分がいて、まるで物語のようにニュースを聞いている。
ごめんねの意味も、悲しげな顔も、記憶を失ったであろう出来事も、外出を禁じられた理由も、全部分かったのに。全てが真実であるとも分かっているのに。
それでも、私はまだ。
ラジオを聞いていると、一つだけ思う。こんな形じゃなければ良かったのに、と。
本当の両親がいたとして、仲良くなる切っ掛けはあったはずだ。全くの他人だったとしても、殺しより容易い方法など幾つでも転がっていただろう。
別の方法で仲良くなっていれば、それこそ何年も何十年も、共に過ごせたかもしれないのに。
こんなに寂しい思いだって、しなくて済んだかもしれないのに。
お父さんは馬鹿だ。大馬鹿だ。でも、仇になるはずの彼を、やっぱり私は求めてしまう。
私は、今も目が見えない。でも、そんな私を傍らで守ってくれる人はもういない。
あの、優しかったお父さんはもういない。
「長い間大変だったね。あの男に嫌なことされなかった? 大丈夫だった?」
優しくされ、語りかけられる。それでも警戒心は解けず、ひたすらお父さんを求めた。
悪夢の中にいる感覚が取れない。目覚めて温もりを探す、あの日常を描いてしまう。
「……お父さんに会いたい……」
「あのね、信じられないかもしれないけど、君のお父さんはもういないんだよ」
「私のお父さんはいるよ……」
「あのね、ナナミちゃん。あの男は君のご両親を酷い目に遇わせて、君を連れ去った犯罪者なんだよ。君はね、洗脳されてるんだ」
「……でも、お父さんは優しかったわ」
男の言いたいことが分からず、ひたすら思い出に逃げる。
二人で静かに暮らせれば、それで幸せだったのに――なんて後悔はもう遅かった。
「きっと、その内分かるから」
その言葉の意味が分かったのは、それからずっと後のことだ。
*
成長するにつれ、私は真実を理解していった。
情報源は主にラジオだ。お父さんが真夜中に聞いていた声だと気付いた時、激しく驚愕した。と同時に悲しくなった。
恐らく、あの時お父さんは情報収集していた。
私が保護された時、警察は大まかな居場所を掴んでいたらしい。それを知って、お父さんは逃げようとしたのだろう。
本当の両親は殺されていた。その犯人こそがお父さんで、私を誘拐する為に殺したとの供述が報じられていた。酷く後悔しているとも。
不思議とショックは浅かった。未だに信じられていない自分がいて、まるで物語のようにニュースを聞いている。
ごめんねの意味も、悲しげな顔も、記憶を失ったであろう出来事も、外出を禁じられた理由も、全部分かったのに。全てが真実であるとも分かっているのに。
それでも、私はまだ。
ラジオを聞いていると、一つだけ思う。こんな形じゃなければ良かったのに、と。
本当の両親がいたとして、仲良くなる切っ掛けはあったはずだ。全くの他人だったとしても、殺しより容易い方法など幾つでも転がっていただろう。
別の方法で仲良くなっていれば、それこそ何年も何十年も、共に過ごせたかもしれないのに。
こんなに寂しい思いだって、しなくて済んだかもしれないのに。
お父さんは馬鹿だ。大馬鹿だ。でも、仇になるはずの彼を、やっぱり私は求めてしまう。
私は、今も目が見えない。でも、そんな私を傍らで守ってくれる人はもういない。
あの、優しかったお父さんはもういない。
0
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(1件)
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
嘘をつく唇に優しいキスを
松本ユミ
恋愛
いつだって私は本音を隠して嘘をつくーーー。
桜井麻里奈は優しい同期の新庄湊に恋をした。
だけど、湊には学生時代から付き合っている彼女がいることを知りショックを受ける。
麻里奈はこの恋心が叶わないなら自分の気持ちに嘘をつくからせめて同期として隣で笑い合うことだけは許してほしいと密かに思っていた。
そんなある日、湊が『結婚する』という話を聞いてしまい……。
6年分の遠回り~いまなら好きって言えるかも~
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
私の身体を揺らす彼を、下から見ていた。
まさかあの彼と、こんな関係になるなんて思いもしない。
今日は同期飲み会だった。
後輩のミスで行けたのは本当に最後。
飲み足りないという私に彼は付き合ってくれた。
彼とは入社当時、部署は違ったが同じ仕事に携わっていた。
きっとあの頃のわたしは、彼が好きだったんだと思う。
けれど仕事で負けたくないなんて私のちっぽけなプライドのせいで、その一線は越えられなかった。
でも、あれから変わった私なら……。
******
2021/05/29 公開
******
表紙 いもこは妹pixivID:11163077
遠回りな恋〜私の恋心を弄ぶ悪い男〜
小田恒子
恋愛
瀬川真冬は、高校時代の同級生である一ノ瀬玲央が好きだった。
でも玲央の彼女となる女の子は、いつだって真冬の友人で、真冬は選ばれない。
就活で内定を決めた本命の会社を蹴って、最終的には玲央の父が経営する会社へ就職をする。
そこには玲央がいる。
それなのに、私は玲央に選ばれない……
そんなある日、玲央の出張に付き合うことになり、二人の恋が動き出す。
瀬川真冬 25歳
一ノ瀬玲央 25歳
ベリーズカフェからの作品転載分を若干修正しております。
表紙は簡単表紙メーカーにて作成。
アルファポリス公開日 2024/10/21
作品の無断転載はご遠慮ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
おもしろい!
お気に入りに登録しました~