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23(ロバート)
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「お前の失態が尾を引いて、ワージントン伯爵家はもう貴族社会を干されてしまいそうだ。慰謝料のみならず賠償金まで搾り取られ、金も名誉も失った。やはりさっさとお前を勘当するべきだった」
「父上!」
信じられない。
父がそんな間違った考えに囚われるとは。
「お待ちください。何度も申し上げたはずです。僕はパトリシアに騙されただけです」
「それとこれとはもう話が違うのだ」
「どういう意味ですか!?」
聞けば晩餐会でワイズ子爵に貶められたらしい。
レーラは僕の小さな過ちをいつまでも根に持ち、鬱陶しい事この上ない。
ワイズ子爵もいけ好かない奴だ。
性格の悪い似たもの夫婦。いつか痛い目を見るに違いない。
愛してやると言ったのに。
結婚してやると言ったのに。
そんな僕の寛大さを拒絶したのは自分のくせに、いつまで僕の邪魔をする気だ。
所詮、強がって別の男と結婚しようと、僕に未練があるという事だろう。
しつこく慰謝料を請求してきたのも、僕を忘れられないからだ。
支払いが済んだ今も、僕は外出禁止。僕の人生は陰湿なレーラのせいで台無しだ。
ただでさえ耐えがたい状況なのに、父がついに最悪の決断を下そうとしている。
「レーラは悲劇の令嬢と持て囃され、同情と人気を一手に集め成功した。我々は悪役として歴史に名を残すだろう」
「父上、女一人に何を弱気な」
「その女一人よりお前が愚かだったのだ」
「父上!」
もう何を言っても無駄なのか。
僕は何も間違っていない。ただレーラを、それからパトリシアを愛しただけだ。僕は愛情深い、いい人間だ。
それなのに、どうして……
「僕を勘当するなんて間違っています。僕は被害者です!」
「ああ、そうだ。我々は女に負けたのだ」
「そんな馬鹿な!」
「ブルックの悪女に負けたのだ!お前のせいで!!」
「!」
信じられない事が起きた。
父が僕を殴り飛ばした。
「お前のせいでワージントン伯爵家が潰えるなど、耐えられん」
「父上……!?」
「お前には後継者の資格が、その資質がないのだ。もううんざりだ。もう守ってやるものか。女に振り回されたいなら勝手にしろ!勘当だ!!」
無慈悲だった。
父に命令された使用人が、次期当主であるはずの僕を、まるでコソ泥を追い出すような乱暴さで叩き出した。
「ロバート。最後に一つ、助言してやる」
父が侮蔑を込めた冷たい目を僕に向ける。
その姿はもう、父とは呼べない冷酷な暴君そのものだ。
「誰が言い出したか、お前が修道士になるという噂を聞いた。娼婦に養われたくなければ、そういう道もいいかもしれん。野垂れ死ぬ次にまともな選択肢だ」
「……父、上……っ」
「お前は誰だ?私に息子はいない。だが、わずかでも貴族としての誇りがあるのなら、選ぶべき道は心得ている事だろう」
そして父は、僕に、消えろと言った。
正確には、声は出していない。その目が、背中が、存在そのものが、僕を拒絶し、否定していた。
それからというもの着の身着のまま街を彷徨い歩く日々が始まった。
誰も仕えてはくれない。
もてなしもしない。
助けてさえくれない。
やがて僕は襤褸を纏い施しを請う、物乞いに成り下がった。
どれだけ恨んでも、父も、レーラも、パトリシアも、遥か彼方、手の届かない、雲の上の存在だ。
僕は地に落ちた。
この世は地獄だと、そう思い知らされた。
「父上!」
信じられない。
父がそんな間違った考えに囚われるとは。
「お待ちください。何度も申し上げたはずです。僕はパトリシアに騙されただけです」
「それとこれとはもう話が違うのだ」
「どういう意味ですか!?」
聞けば晩餐会でワイズ子爵に貶められたらしい。
レーラは僕の小さな過ちをいつまでも根に持ち、鬱陶しい事この上ない。
ワイズ子爵もいけ好かない奴だ。
性格の悪い似たもの夫婦。いつか痛い目を見るに違いない。
愛してやると言ったのに。
結婚してやると言ったのに。
そんな僕の寛大さを拒絶したのは自分のくせに、いつまで僕の邪魔をする気だ。
所詮、強がって別の男と結婚しようと、僕に未練があるという事だろう。
しつこく慰謝料を請求してきたのも、僕を忘れられないからだ。
支払いが済んだ今も、僕は外出禁止。僕の人生は陰湿なレーラのせいで台無しだ。
ただでさえ耐えがたい状況なのに、父がついに最悪の決断を下そうとしている。
「レーラは悲劇の令嬢と持て囃され、同情と人気を一手に集め成功した。我々は悪役として歴史に名を残すだろう」
「父上、女一人に何を弱気な」
「その女一人よりお前が愚かだったのだ」
「父上!」
もう何を言っても無駄なのか。
僕は何も間違っていない。ただレーラを、それからパトリシアを愛しただけだ。僕は愛情深い、いい人間だ。
それなのに、どうして……
「僕を勘当するなんて間違っています。僕は被害者です!」
「ああ、そうだ。我々は女に負けたのだ」
「そんな馬鹿な!」
「ブルックの悪女に負けたのだ!お前のせいで!!」
「!」
信じられない事が起きた。
父が僕を殴り飛ばした。
「お前のせいでワージントン伯爵家が潰えるなど、耐えられん」
「父上……!?」
「お前には後継者の資格が、その資質がないのだ。もううんざりだ。もう守ってやるものか。女に振り回されたいなら勝手にしろ!勘当だ!!」
無慈悲だった。
父に命令された使用人が、次期当主であるはずの僕を、まるでコソ泥を追い出すような乱暴さで叩き出した。
「ロバート。最後に一つ、助言してやる」
父が侮蔑を込めた冷たい目を僕に向ける。
その姿はもう、父とは呼べない冷酷な暴君そのものだ。
「誰が言い出したか、お前が修道士になるという噂を聞いた。娼婦に養われたくなければ、そういう道もいいかもしれん。野垂れ死ぬ次にまともな選択肢だ」
「……父、上……っ」
「お前は誰だ?私に息子はいない。だが、わずかでも貴族としての誇りがあるのなら、選ぶべき道は心得ている事だろう」
そして父は、僕に、消えろと言った。
正確には、声は出していない。その目が、背中が、存在そのものが、僕を拒絶し、否定していた。
それからというもの着の身着のまま街を彷徨い歩く日々が始まった。
誰も仕えてはくれない。
もてなしもしない。
助けてさえくれない。
やがて僕は襤褸を纏い施しを請う、物乞いに成り下がった。
どれだけ恨んでも、父も、レーラも、パトリシアも、遥か彼方、手の届かない、雲の上の存在だ。
僕は地に落ちた。
この世は地獄だと、そう思い知らされた。
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