3年も帰ってこなかったのに今更「愛してる」なんて言われても

希猫 ゆうみ

文字の大きさ
1 / 3

しおりを挟む
私には婚約者がいる。
伯爵令息レーノルドは家柄も釣り合い、年齢も近く、親の決めた相手でも恋に落ちた。私は彼を愛していた。今も愛している。
彼も私を愛していると言っていた。

でも、そんな私を放っておいて、レーノルドは趣味に打ち込んでいる。世界を旅するのが好きで帰ってこない。

もう3年になる。
顔も見ていない。声も忘れそう。どうして手紙ひとつくれないの?

そんな事を考えて泣いた夜も過ぎ去ってしまった。
彼がいない日々が、私の日常。

私はただ婚約者という存在に縛られているだけ。

本当にこれでいいの?
私の人生は、ただレーノルドの帰りを待つだけのもの?

いっそ永遠に帰って来なければいいのに。
私はもう自由になりたい。

待つ事に飽きた。嫌気がさした。
それのなにがいけないっていうの?

「お父様、私、もう待ち続けるのは嫌です」

私たちの婚約がどうすれば白紙に戻るのか、父は考え始めた。
そしてそれを実行しようとした。

ちょうど、その頃だった。

レーノルドが帰って来たのだ。

「やあ、ハンナ。元気だったかい?会いたかったよ!」
「……レーノルド」

どうして笑っていられるのかわからなかった。
私がどんな気持ちで待っていたのか、待ちくたびれたのか、そんな事を考えもしないで、再会を喜んでいる婚約者にがっかりした。

私の事、忘れていたでしょう?
嬉しそうに、会いに来ないでよ。

「レーノルド。あなたも、元気そうでよかったわ」
「聞いてくれよ!あっちで面白い男と知り合ったんだ。ある伯爵の3男で」
「あっちって?」
「え?君、僕がどこに旅していたかも知らないの?」

急に帰ってきて、今度は怒りだした。

「君、それでも僕の婚約者なのか?僕の事をいつも気にしてくれなきゃ、婚約者失格だよ?」
「……は?」

どこに行くかも告げず、どこにいるか手紙もくれずに、いつ帰るかさえ知らせてくれなかったくせに。
私を責めるの?

「待っていたのに失格?」
「待ってるのは当然だろう?婚約者なんだから」
「当然って……」
「その態度はなんなんだよ!さっきから、ちっとも嬉しそうじゃないじゃないか!」

私が悪者?

「せっかくこの僕が帰って来たのに、どうしてそんなにつれない態度をとるんだよ!ずっと君に会いたかったのに!」
「噓、言わないで……」
「えっ、なに?」

私に会いたかったなんて、絶対に嘘よ。

「嘘言わないで、レーノルド。私に会いたかったなら手紙くらい書いてくれるはずだわ!あなたは私を愛していない!私の事なんて忘れていたのよ!」
「なんて酷い事を言うんだ!もういい!君との婚約は破棄する!!」
「ええいいわ!あなたなんて嫌い!!」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが

ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。 定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──

【完結】真実の愛とやらに目覚めてしまった王太子のその後

綾森れん
恋愛
レオノーラ・ドゥランテ侯爵令嬢は夜会にて婚約者の王太子から、 「真実の愛に目覚めた」 と衝撃の告白をされる。 王太子の愛のお相手は男爵令嬢パミーナ。 婚約は破棄され、レオノーラは王太子の弟である公爵との婚約が決まる。 一方、今まで男爵令嬢としての教育しか受けていなかったパミーナには急遽、王妃教育がほどこされるが全く進まない。 文句ばかり言うわがままなパミーナに、王宮の人々は愛想を尽かす。 そんな中「真実の愛」で結ばれた王太子だけが愛する妃パミーナの面倒を見るが、それは不幸の始まりだった。 周囲の忠告を聞かず「真実の愛」とやらを貫いた王太子の末路とは?

婚約破棄されたので、もうあなたを想うのはやめます

藤原遊
恋愛
王城の舞踏会で、公爵令息から一方的に婚約破棄を告げられた令嬢。 彼の仕事を支えるため領地運営を担ってきたが、婚約者でなくなった以上、その役目を続ける理由はない。 去った先で彼女の能力を正当に評価したのは、軍事を握る王弟辺境伯だった。 想うことをやめた先で、彼女は“対等に必要とされる場所”を手に入れる。

花嫁に「君を愛することはできない」と伝えた結果

藍田ひびき
恋愛
「アンジェリカ、君を愛することはできない」 結婚式の後、侯爵家の騎士のレナード・フォーブズは妻へそう告げた。彼は主君の娘、キャロライン・リンスコット侯爵令嬢を愛していたのだ。 アンジェリカの言葉には耳を貸さず、キャロラインへの『真実の愛』を貫こうとするレナードだったが――。 ※ 他サイトにも投稿しています。

幼馴染、幼馴染、そんなに彼女のことが大切ですか。――いいでしょう、ならば、婚約破棄をしましょう。~病弱な幼馴染の彼女は、実は……~

銀灰
恋愛
テリシアの婚約者セシルは、病弱だという幼馴染にばかりかまけていた。 自身で稼ぐこともせず、幼馴染を庇護するため、テシリアに金を無心する毎日を送るセシル。 そんな関係に限界を感じ、テリシアはセシルに婚約破棄を突き付けた。 テリシアに見捨てられたセシルは、てっきりその幼馴染と添い遂げると思われたが――。 その幼馴染は、道化のようなとんでもない秘密を抱えていた!? はたして、物語の結末は――?

婚約者の座は譲って差し上げます、お幸せに

四季
恋愛
婚約者が見知らぬ女性と寄り添い合って歩いているところを目撃してしまった。

婚約者には既に美しい妻が居た…私を騙そうとした愚か者たちには、天罰が下りました。

coco
恋愛
婚約者には、既に美しい妻が居ました。 真実を知った私は、嘆き悲しみましたが…二人には天罰が下ったようです─。

貴方が要らないと言ったのです

藍田ひびき
恋愛
「アイリス、お前はもう必要ない」 ケヴィン・サージェント伯爵から一方的に離縁を告げられたアイリス。 彼女の実家の資金援助を目当てにした結婚だったため、財政が立て直された今では結婚を続ける意味がなくなったとケヴィンは語る。 屈辱に怒りを覚えながらも、アイリスは離縁に同意した。 しかしアイリスが去った後、伯爵家は次々と困難に見舞われていく――。 ※ 他サイトにも投稿しています。

処理中です...