真実の愛がどうなろうと関係ありません。

希猫 ゆうみ

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53(レジナルド)

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春の訪れとともに妻フェルネがオックススプリング侯領の別荘へ避難し、今年から娘のミスティも同行することになり、更には父がミスティ恋しさに同行した。

うっかりすると数日、誰とも会話せず過ごしてしまう私は、墓地を訪れ弟の墓に向かって今後の抱負などを語って聞かせたりしてみたが、これがなかなか満足感を与えてくれた。

「セドリック。ではまた明日。サルトス、じゃあ」

墓守のサルトスが無口というのは承知の上のはずなのに、今日は何故だろうか沈黙の内に帰される深い会釈がどこか寂しい。
愛馬の嘶きにうっかり返事してしまいそうになりながら城へ帰る。

あれでいて居たら絶え間なく話しかけてくる妻フェルネの不在は春を迎える度に大きくなっていたが、娘が産まれてからというもの私たちは実に一心同体といっても過言ではない形態に到達した。

母を亡くした父の嘆き様が我が事のように想像できるようになってしまい、特にこの春という不在の季節、私は酷く感傷的な男に変えられてしまうのだった。春の病に苛まれなかろうと目が潤む己の姿を決して妻と娘に悟らせてはならない。

春を耐え忍び、待ち侘びた夏がやってくる。

父のいるところへ私まで加わってはさすがに団欒が過ぎると思うと迎えに行くのも忍びなく、焦れながら窓の外を眺める己の軟弱さが嫌になるのだが、丘を上って来る馬車がぽつりと視界に飛び込んでくると忽ち気分は晴れ安堵に足取りも軽くなるというもの。

喜びを顔に出さずとも、向こうも再会を喜んでいるとわかる。

「ああ、ただいま。変わりないか?」
「父上、長旅お疲れ様でした」
「否、ミスティとたっぷり過ごせて寿命が延びたよ」

誰よりも嬉しそうな父の姿を見るに、私たち一家は実に均衡のとれた家族である。

「おかえり、フェルネ」
「ええ、帰ったわ。よいしょ」
「さすがの妃殿下も父上がいるとなれば例年のように酒宴を持ち掛け野生に帰りはしなかっただろう」
「ええ。でも別の賑やかさがあったわね」
「何故だ。父も娘も無口じゃないか」
「焚火が燃え移らないようにミスティがお義父様の髭を編み込んだのだけど、それをジェマとアイヴィが面白がって」
「ああ、あの二人をまとめておけば確かに賑やかだ」
「パイのソースが垂れて固まった髭をジェマとアイヴィが必死で梳いて、大騒ぎよ」
「だから少し切ったのか」
「気づいてないかと思ったわ」
「否、触れずにおいた。夏に向けての若作りかと」
「冗談が上手くなったわね。あなたも髭を伸ばしたら?お義父様がお似合いなのだからあなたも様になるでしょう。あと、ミスティも喜ぶ」

なるほどと思い娘の顔を覗き込んで尋ねてみると、フェルネそっくりの美しい琥珀色の瞳で私を凝視し無言のまま頷いた。

この年、私は髭を蓄えると決断した。
もう若くない。しかし人生とは味わい深いものだ。変化を受け入れるのは、存外、楽しい。
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