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剣聖 x 初体験
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王都の中で悪事を働いている人達がいるという。
今回はその悪者のアジトに踏み込んで、悪党共を一網打尽にする計画に私も参加しろと言われた。
えっと、それってつまり人が相手という事ですよね?
私は、人相手はまだちょっと……。
え? そいつらは違法に子供達を攫って奴隷にして売り払っている極悪人!?
なんて酷い悪党共なんでしょう! 分かりました、まだ人相手は難しいですが、子供達を助ける為に私もお手伝い致します!!
なんて軽口を言っていたのは、私がここでも現実逃避をしていたのだと痛感させられた……。
・
・
・
「突入するぞ、外の部隊は出て来た奴らを絶対に逃すんじゃないぞ。一人残らず捉えるんだ」
いよいよ突入の日。
内部に送り込んだスパイからの情報で、悪党共が集まる日だと言う事で大勢の騎士や憲兵達が集まった。
剣聖騎士隊と第四騎士団との合同で総勢百五十名にもなる大きな作戦だ。
「うおらぁー!! 命が惜しかったら抵抗するんじゃねえ! とっとと武器を捨てて投降しろやぁ!」
バァーン! と、悪党共が集まっている建物のドアをヤクザキックでブチ破ると、オーウェン隊長が先頭になって中に入っていく。
こんな時、元第一騎士団団長と言うのは肩書きが分かりやすくて良い。
いや、どっちが悪党なんだかという勢いで突入し悪党共を次々に打ち倒したり、無抵抗のまま連れ出す。
「まだこの辺に居るのは三下共だけだ、もっと奥へ行くぞ!」
建物の上の階は逃げ道も少ないという事で、副隊長とその部隊が向かった。
隊長と私たちは情報で聞いていた地下へと向かう。
木箱で隠された階段を発見して細く薄暗い階段を降りて行くと、階段の突き当たりは扉で閉ざされていた。
そっと扉に耳を当てて、向こう側の音を聞く団長。
耳を離してニヤリと笑うと。
「おらぁ!」
扉を蹴破り中へと突き進んだ。
音聞いてたのは何だったの!?
あまりの勢いに、悪党共も慌てるばかりでどんどん捉えられてゆく。だけど、ある場所に辿り着いてからその勢いが止まった。
むっとする臭いと溢れ聞こえるすすり泣く声、檻に閉じ込められた子供達だ。
泣くなと命じられていたのか、大声で泣いている子はいない。酷い! 子供達は一か所に集められ、汚れたままで放置されていた。
「魔法使っていい?」
小声で隊長に魔法を使って良いか聞くと、黙って頷いていたのですぐにクリーンとキュア、ヒールの魔法を唱える。
これで子供達をとりあえずサッパリとさせ、具合が悪かった子供もキュアとヒールで一応の危険はなくなっただろう。
魔法を感知したのか、さらに奥にあった扉の向こうがザワザワしている、団長と私は視線を合わせて頷くと。
「何やらかしとんじゃオラァ!」
「何しとんねんゴラァ!」
大声で怒鳴りながら扉を突き破り、中へと突入する!
「何だお前らは!」
「何で騎士団がここ迄来てるんだ!?」
中にいた連中が慌てて武器を抜いたり、逃げ出そうとしている。
「――見つけたぞ、クソ野郎ども!」
隊長の怒号が、地下室の冷たい空気を切り裂くように響き渡った。
私の心臓は、まるで胸から飛び出そうなくらい激しく鼓動を打っていた。
震える手で剣を握りしめ、一歩前に出る。
初めて人相手の実戦……。
「剣聖騎士隊だ! 外のものは全員捕えたぞ! 武器を捨てて両手を頭の後ろに組め! 抵抗すれば即座に殺す!」
声が震えて、途切れ途切れになった。
でも、震えていてもいい。
あの檻の中の子供たちの泣き声が、耳にこびりついて離れない。
あの小さな体が、汚れと恐怖にまみれて震えていた姿が、脳裏に焼きついているから。
どうしてこんなことが……どうして人間が、人間にこんな残酷なことを……。
部屋にいたのは五人。
机の上に散らばる金貨の袋、血のように赤い帳簿、奴隷を拘束するための魔術的な首輪。
すべてが、吐き気を催すほどの悪意を放っていた。
彼らは逃げようとしていた。
子供たちの人生を踏みにじって得た富を抱えて、平気で逃げようとしていた。
「ちっ、騎士団の犬どもが……!」
一番奥にいた、顔に醜い傷跡を刻んだ男――きっとこのクズどもの頭目だ――が、腰の剣に手をかけながら、嘲るように舌打ちした。
その目には、罪の意識なんて微塵もない。
ただの苛立ちだけ。
私の胸に、燃えるような怒りが込み上げてきた。
子供たちの叫びが、頭の中で反響する。「お母さん……助けて……」そんな声が、聞こえる気がした。
次の瞬間。
「甘ぇな」
隊長が動いた。影のように消えて、傷顔の男の懐に瞬時に潜り込む。
私の目が追いつかないほどの速さ。
ガキン!
剣を抜くより早く、隊長の拳が男の顎を下から抉るように突き上げた。
鈍い音が響き、男の体が宙を舞う。
壁に叩きつけられる衝撃で、部屋が震えた。
男の目から、初めて恐怖が覗いた。
あの傲慢な表情が崩れ落ちるのを見て、心のどこかで小さな満足感が芽生えた。
でも、まだ足りない。
「頭目は俺がいただく。お前らは残りのクズどもを片付けろ!」
隊長の声に、部下たちが一斉に動き出す。
私は――
「……許さない。絶対に、許さない……!」
剣を握る手に力がこもり、指の関節が白くなる。
まだ人殺しはできない。
血を見るのは怖い。
でも、この怒り、この胸を締め付けるような悲しみは抑えきれない。
子供たちの顔が浮かぶ。
どうして……どうしてこんな目に……!
『プレス』!
逃げようとした二人を、魔法で作った土壁で床に押し付ける。
彼らの悲鳴が、部屋に響く。
「てめぇ、小娘が……!」
もう一人が、短剣を投げてくる。
刃が空気を切り裂く音が耳元で鳴る。
私は咄嗟に身を屈め、短剣が髪をかすめて壁に突き刺さる。
心臓が凍りつくような恐怖が背筋を駆け上がった。
死ぬかも……と思った瞬間、涙が溢れた。
でも、拭わない。
代わりに、怒りを燃料に変える。
「子供たちを……こんな目に遭わせた罪は、絶対に許さない!!」
剣を振り上げ、声が自然と叫びになる。
胸の奥から湧き上がる熱いものが、喉を震わせる。
「動くな小娘! このガキの命が惜しくなかったらな!」
どこに隠れて居たのか、明らかに貴族と思われる男が助け出したはずの子供の一人を盾にして、ナイフを喉に当てていた。
子供の小さな体が震え、涙がぽろぽろ落ちる。
魔法では間に合わない――下手に動いたら子供ごと傷付けるかもしれない。
私の手が震える。
(……殺せない……でも、何とかしなきゃ。子供が……死んじゃう)
震える手が剣に触れ、カチャリと鳴る。
「小娘が!」
その音を攻撃されると思ったのか、男の手にグッと力が入る。
子供の悲鳴――
気が付くと、私は男の腕を切り落としていた。
子供が地面に崩れ落ちる。
私はすぐに駆け寄って子供を抱きしめるけど、手が血で汚れていることに気づいて胸が締め付けられる。
(傷つけた……人を、傷つけた。でも子供が助かった……これで、よかったの?)
男は切られた腕を抑えてうずくまり「……降伏します、命だけは……命だけは……」と泣きながら訴える。
隊長がゆっくりと近づき、その男の襟首を掴む。
顔を近づけ、囁くように言う。
「命? ……おまえら、子供たちから命を奪おうとしておいて、都合良すぎないか?」
ドスの効いた低い声、心臓までギュッと冷たくなるほど、心の底から憎しみが溢れ出している。
「安心しろ死刑にはしねえ、死んだ方が楽だと思える生活にはなるがな」
男の顔が、絶望に歪む。
瞳に映るのは、純粋な恐怖。
隊長は男を縛り上げながら、いつものようにニヤリと笑った。
でも、その目に、僅かな優しさが混じっている気がした。
「おう剣聖様、これで童貞卒業か?」
オーウェン隊長の優しさが、私の最後のストッパーを外した。
「オーウェンさん!! 私は……私は初めて人を切りました、気が付いたら体が動いてて……
本当に切るしか無かったのでしょうか。
もっと方法があったかも知れないのに……」
溢れ始めた涙が止まらない……。
体も震えて、剣を持っていた手が酷く悪いモノに思えて仕方なかった。
「あの場合は、あれが最善の方法だった。
あそこでお前さんが動かなければ、いやお前さんだからこそ間に合ったんだ。
命が救えた事を誇りに思え」
そう言って、肩を抱いてくれた。
「お姉ちゃん、ありがとう」
人質だった男の子が隣に来て感謝を伝えてくれる。
あなたの方が怖かっただろうに、私はぐしゃぐしゃの泣き顔で笑いながら男の子に抱きついて「ありがとう、ありがとう」と繰り返していた。
決めた! 私、今日から本当の“正義”を『剣聖』の役割を果たす!
子供たちの笑顔を取り戻すために、どんな恐怖も乗り越えてみせる。
今回はその悪者のアジトに踏み込んで、悪党共を一網打尽にする計画に私も参加しろと言われた。
えっと、それってつまり人が相手という事ですよね?
私は、人相手はまだちょっと……。
え? そいつらは違法に子供達を攫って奴隷にして売り払っている極悪人!?
なんて酷い悪党共なんでしょう! 分かりました、まだ人相手は難しいですが、子供達を助ける為に私もお手伝い致します!!
なんて軽口を言っていたのは、私がここでも現実逃避をしていたのだと痛感させられた……。
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「突入するぞ、外の部隊は出て来た奴らを絶対に逃すんじゃないぞ。一人残らず捉えるんだ」
いよいよ突入の日。
内部に送り込んだスパイからの情報で、悪党共が集まる日だと言う事で大勢の騎士や憲兵達が集まった。
剣聖騎士隊と第四騎士団との合同で総勢百五十名にもなる大きな作戦だ。
「うおらぁー!! 命が惜しかったら抵抗するんじゃねえ! とっとと武器を捨てて投降しろやぁ!」
バァーン! と、悪党共が集まっている建物のドアをヤクザキックでブチ破ると、オーウェン隊長が先頭になって中に入っていく。
こんな時、元第一騎士団団長と言うのは肩書きが分かりやすくて良い。
いや、どっちが悪党なんだかという勢いで突入し悪党共を次々に打ち倒したり、無抵抗のまま連れ出す。
「まだこの辺に居るのは三下共だけだ、もっと奥へ行くぞ!」
建物の上の階は逃げ道も少ないという事で、副隊長とその部隊が向かった。
隊長と私たちは情報で聞いていた地下へと向かう。
木箱で隠された階段を発見して細く薄暗い階段を降りて行くと、階段の突き当たりは扉で閉ざされていた。
そっと扉に耳を当てて、向こう側の音を聞く団長。
耳を離してニヤリと笑うと。
「おらぁ!」
扉を蹴破り中へと突き進んだ。
音聞いてたのは何だったの!?
あまりの勢いに、悪党共も慌てるばかりでどんどん捉えられてゆく。だけど、ある場所に辿り着いてからその勢いが止まった。
むっとする臭いと溢れ聞こえるすすり泣く声、檻に閉じ込められた子供達だ。
泣くなと命じられていたのか、大声で泣いている子はいない。酷い! 子供達は一か所に集められ、汚れたままで放置されていた。
「魔法使っていい?」
小声で隊長に魔法を使って良いか聞くと、黙って頷いていたのですぐにクリーンとキュア、ヒールの魔法を唱える。
これで子供達をとりあえずサッパリとさせ、具合が悪かった子供もキュアとヒールで一応の危険はなくなっただろう。
魔法を感知したのか、さらに奥にあった扉の向こうがザワザワしている、団長と私は視線を合わせて頷くと。
「何やらかしとんじゃオラァ!」
「何しとんねんゴラァ!」
大声で怒鳴りながら扉を突き破り、中へと突入する!
「何だお前らは!」
「何で騎士団がここ迄来てるんだ!?」
中にいた連中が慌てて武器を抜いたり、逃げ出そうとしている。
「――見つけたぞ、クソ野郎ども!」
隊長の怒号が、地下室の冷たい空気を切り裂くように響き渡った。
私の心臓は、まるで胸から飛び出そうなくらい激しく鼓動を打っていた。
震える手で剣を握りしめ、一歩前に出る。
初めて人相手の実戦……。
「剣聖騎士隊だ! 外のものは全員捕えたぞ! 武器を捨てて両手を頭の後ろに組め! 抵抗すれば即座に殺す!」
声が震えて、途切れ途切れになった。
でも、震えていてもいい。
あの檻の中の子供たちの泣き声が、耳にこびりついて離れない。
あの小さな体が、汚れと恐怖にまみれて震えていた姿が、脳裏に焼きついているから。
どうしてこんなことが……どうして人間が、人間にこんな残酷なことを……。
部屋にいたのは五人。
机の上に散らばる金貨の袋、血のように赤い帳簿、奴隷を拘束するための魔術的な首輪。
すべてが、吐き気を催すほどの悪意を放っていた。
彼らは逃げようとしていた。
子供たちの人生を踏みにじって得た富を抱えて、平気で逃げようとしていた。
「ちっ、騎士団の犬どもが……!」
一番奥にいた、顔に醜い傷跡を刻んだ男――きっとこのクズどもの頭目だ――が、腰の剣に手をかけながら、嘲るように舌打ちした。
その目には、罪の意識なんて微塵もない。
ただの苛立ちだけ。
私の胸に、燃えるような怒りが込み上げてきた。
子供たちの叫びが、頭の中で反響する。「お母さん……助けて……」そんな声が、聞こえる気がした。
次の瞬間。
「甘ぇな」
隊長が動いた。影のように消えて、傷顔の男の懐に瞬時に潜り込む。
私の目が追いつかないほどの速さ。
ガキン!
剣を抜くより早く、隊長の拳が男の顎を下から抉るように突き上げた。
鈍い音が響き、男の体が宙を舞う。
壁に叩きつけられる衝撃で、部屋が震えた。
男の目から、初めて恐怖が覗いた。
あの傲慢な表情が崩れ落ちるのを見て、心のどこかで小さな満足感が芽生えた。
でも、まだ足りない。
「頭目は俺がいただく。お前らは残りのクズどもを片付けろ!」
隊長の声に、部下たちが一斉に動き出す。
私は――
「……許さない。絶対に、許さない……!」
剣を握る手に力がこもり、指の関節が白くなる。
まだ人殺しはできない。
血を見るのは怖い。
でも、この怒り、この胸を締め付けるような悲しみは抑えきれない。
子供たちの顔が浮かぶ。
どうして……どうしてこんな目に……!
『プレス』!
逃げようとした二人を、魔法で作った土壁で床に押し付ける。
彼らの悲鳴が、部屋に響く。
「てめぇ、小娘が……!」
もう一人が、短剣を投げてくる。
刃が空気を切り裂く音が耳元で鳴る。
私は咄嗟に身を屈め、短剣が髪をかすめて壁に突き刺さる。
心臓が凍りつくような恐怖が背筋を駆け上がった。
死ぬかも……と思った瞬間、涙が溢れた。
でも、拭わない。
代わりに、怒りを燃料に変える。
「子供たちを……こんな目に遭わせた罪は、絶対に許さない!!」
剣を振り上げ、声が自然と叫びになる。
胸の奥から湧き上がる熱いものが、喉を震わせる。
「動くな小娘! このガキの命が惜しくなかったらな!」
どこに隠れて居たのか、明らかに貴族と思われる男が助け出したはずの子供の一人を盾にして、ナイフを喉に当てていた。
子供の小さな体が震え、涙がぽろぽろ落ちる。
魔法では間に合わない――下手に動いたら子供ごと傷付けるかもしれない。
私の手が震える。
(……殺せない……でも、何とかしなきゃ。子供が……死んじゃう)
震える手が剣に触れ、カチャリと鳴る。
「小娘が!」
その音を攻撃されると思ったのか、男の手にグッと力が入る。
子供の悲鳴――
気が付くと、私は男の腕を切り落としていた。
子供が地面に崩れ落ちる。
私はすぐに駆け寄って子供を抱きしめるけど、手が血で汚れていることに気づいて胸が締め付けられる。
(傷つけた……人を、傷つけた。でも子供が助かった……これで、よかったの?)
男は切られた腕を抑えてうずくまり「……降伏します、命だけは……命だけは……」と泣きながら訴える。
隊長がゆっくりと近づき、その男の襟首を掴む。
顔を近づけ、囁くように言う。
「命? ……おまえら、子供たちから命を奪おうとしておいて、都合良すぎないか?」
ドスの効いた低い声、心臓までギュッと冷たくなるほど、心の底から憎しみが溢れ出している。
「安心しろ死刑にはしねえ、死んだ方が楽だと思える生活にはなるがな」
男の顔が、絶望に歪む。
瞳に映るのは、純粋な恐怖。
隊長は男を縛り上げながら、いつものようにニヤリと笑った。
でも、その目に、僅かな優しさが混じっている気がした。
「おう剣聖様、これで童貞卒業か?」
オーウェン隊長の優しさが、私の最後のストッパーを外した。
「オーウェンさん!! 私は……私は初めて人を切りました、気が付いたら体が動いてて……
本当に切るしか無かったのでしょうか。
もっと方法があったかも知れないのに……」
溢れ始めた涙が止まらない……。
体も震えて、剣を持っていた手が酷く悪いモノに思えて仕方なかった。
「あの場合は、あれが最善の方法だった。
あそこでお前さんが動かなければ、いやお前さんだからこそ間に合ったんだ。
命が救えた事を誇りに思え」
そう言って、肩を抱いてくれた。
「お姉ちゃん、ありがとう」
人質だった男の子が隣に来て感謝を伝えてくれる。
あなたの方が怖かっただろうに、私はぐしゃぐしゃの泣き顔で笑いながら男の子に抱きついて「ありがとう、ありがとう」と繰り返していた。
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