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黒の王子 x ジャガイモ
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「みてください」
見守る? 何の事でしょう? ただ待っているだけではつまらないので黒の王子を裏庭に誘ってみました。
もちろん白の王子は呼ばないでも付いてきた。
私の畑のジャガイモが、そろそろ収穫できる頃合いになっていたのでお見せしようと思ったのだ。
「ガイルさん、どんな感じですか?」
畑をみて貰っている庭師のガイルさんにジャガイモの様子を聞いてみる。
「剣聖様が言われていた状態まで育っております。そろそろ収穫してもよろしいかと」
試しにひと株選んで掘ってもらうと、私の握りこぶし大のジャガイモがゴロっと現れた。
ちなみに従来の畑の方のジャガイモは小粒だったので、すべて来年用の種イモに回す事になった。
「これを食べるのか?」
黒の王子に土の付いたジャガイモをひとつ渡すと、訝しげな顔でジャガイモと私の顔を見比べている。
何?! 私の顔はジャガイモですか!?
「先日のパーティでもお出ししましたよ? ポテトサラダにフライドポテト、ジャガバターのベーコン添え」
そう聞くと「あれか!?」と目を見開いてジャガイモをしげしげと眺める。
「このジャガイモが、寒い地方や痩せた土地でも育てられる作物です。
土地の状態が良くなれば収穫量も増えるので、土地の改善もやっぱり必要ですけれど」
「この畑のジャガイモは、親になるジャガイモ三十六個を植えています。一つに六個程のジャガイモが育ったとして、ここで二百強のジャガイモが取れます」
「そのジャガイモを元に、全て半分に割って種イモに使って育ててゆくと……次は六倍の二千四百個、つぎの植え付けでは三万程のジャガイモが、その次には三十六万個ほどのジャガイモが育つ事になります。
そこまで増やして日に四個を食べるとして、およそ三千人が一月で消費する分量になります」
「三千か……まだまだ足りんな」
「ご心配なく、すでにガイルさんの畑の方でも増産に当たっております。そちらは千個の種イモを植えてありますので、晩秋には六千個のジャガイモが育つ予定です」
「それを来春の種イモにして一万二千個を植え、育てば七万二千、その次は八十万を超えるジャガイモが育つ予定です。
それをさらに増やしたのちに、王子の国に種イモとして持参しましょう。四輪荷馬車で十五台もの作物を持っての凱旋帰国です……国王様にも提言しやすくなるかと思いませんか?」
「もちろん……農業指導者も付けますよ。
それに、私も同行します。お兄上様の病状を診なくてはなりませんからね。
そして、その後も我が国で増産した作物を王子の国へ供給致します」
王子は難しい顔をして黙り込んでしまった。
毒が効きすぎたかな?
「……何故? どうしてノルトルンドにそこまでしてくれるのだ?」
「ノルトルンドだけではありません、他国にも……ゆくゆくは帝国にも同じ事をするつもりです」
「「なっ!?」」
帝国と聞いて驚く王子達。
「私は……親が奴隷だから、その子も一生奴隷でなければならないというこの制度が、どうしても許せないんです。
親が犯した罪や負った借金は、親自身が背負うべきものです。
それを無垢な子にまで押しつけるなんて、理不尽すぎる。
生まれたばかりの子どもに、何の罪があるというのですか? 子どもたちは、親の過去に縛られることなく、自分の道を選ぶ自由があって当然です。
好きなことを追いかけ、笑って、夢を見て、失敗して、また立ち上がって……そんな当たり前の幸せを、奪う権利は誰にもないはずです。
だからこそ、私はこのしきたりを変えたいんです。
子どもたちに、鎖のない未来を贈りたいんです」
二人とも黙り込んでしまった……。
まあかなり無理を言っているのは理解している。
いきなり奴隷制度を止めろと言っても貴族や奴隷を扱う豪商から総スカンを食らうだろう。
その辺にもメリットを示しながら徐々に減らしてゆける方法を考えないとね。
んー。仕方がない、固くなった空気を柔らかくしてあげましょう(私の所為だとは言わない)
「あっ、マリーちょうど良かった」
ちょうどマリーさんが厨房から出てきたところだった。
お二人に、他の食材も試してもらいましょうか。
マリーさんが持つ盆に乗っているのは、鮮やかな黄色に茹で上がったトウモロコシ。
「これは?」
聞いてきたのは白の王子、黒の王子もジッと見ている。
「トウモロコシと言います。
この黄色いつぶを食べるのですが、先ずは食べてみましょう」
カットされたトウモロコシを手に取って、そのままガプッとひと噛み――んーっプチプチした食感と噛むたびに溢れる甘味がいいよねっ!
私がダイレクトにかじったのを見て呆れている王子の二人、ガイルさんも肩を震わせて笑っている。
私が毒味を済ませた事で、王子達もトウモロコシを手に取り口へと運ぶ。
「「!!」」
「美味い」「なんだこの甘みは」
とたんに目を見開き、ペロリと食べ切ってしまった――お気に召して貰えたようですね。
「トウモロコシも成長が早い作物で、およそ九十日で収穫できます。
肥料が比較的必要なので、畑を作ってからになりますが、この一本から五、六百の種が取れますから増やすのは簡単かと思います。それに茎や葉は家畜の飼料にもなりますから無駄がないのもメリットですね」
「もう一つは、冬前に収穫できる作物ですがサツマイモです。これは冬の備蓄食料としても有能ですし、連作も出来るのがよいと思います」
さらに蒸したサツマイモをひと口。
こちらもほろっと優しい甘い味わいが心を癒してくれる。
これはガイルさんが気に入ってくれたみたい。
四人で新しい作物を試していると"くぅぅ"と可愛らしい音が聞こえてきた。
横を見るとマリーが顔を真っ赤にして下を向いている。
「マリーもおひとつどうぞ」
私はサツマイモをひとつ取ってマリーの口に運んであげる。
はわはわしながら差し出されたサツマイモを口に入れると、優しい笑顔になるマリーさん。
やっぱり女子はお芋好きだよねー。
私がマリーに「あーん」したのを見て、白の王子が黒の王子をチラチラ見てる――
「んにゅふふふふふ」
思わず変な声が漏れて、白の王子に白い目でみられてしまったけれど。
私とマリーはしっかり堪能させて頂きました――
供給ありがとうございます!
最初の奴隷制度の話からすると、随分と緩い空気になってしまったけれど。
エボルス王子に本気で考えて貰うよい機会になったと思う。
王様への提言、お願いしますね!
まあゴネたとしても「これ全部お酒にもなるんだけどなー」って呟けば決定的だと思うけど。
今でも、毎日『ガマぐちポシェットくん』からジャガイモ三袋を出してマジックバッグに入れている。
王子が国に帰るまでは『ガマぐちポシェットくん』はジャガイモ優先で取り出す事になりそうです。
見守る? 何の事でしょう? ただ待っているだけではつまらないので黒の王子を裏庭に誘ってみました。
もちろん白の王子は呼ばないでも付いてきた。
私の畑のジャガイモが、そろそろ収穫できる頃合いになっていたのでお見せしようと思ったのだ。
「ガイルさん、どんな感じですか?」
畑をみて貰っている庭師のガイルさんにジャガイモの様子を聞いてみる。
「剣聖様が言われていた状態まで育っております。そろそろ収穫してもよろしいかと」
試しにひと株選んで掘ってもらうと、私の握りこぶし大のジャガイモがゴロっと現れた。
ちなみに従来の畑の方のジャガイモは小粒だったので、すべて来年用の種イモに回す事になった。
「これを食べるのか?」
黒の王子に土の付いたジャガイモをひとつ渡すと、訝しげな顔でジャガイモと私の顔を見比べている。
何?! 私の顔はジャガイモですか!?
「先日のパーティでもお出ししましたよ? ポテトサラダにフライドポテト、ジャガバターのベーコン添え」
そう聞くと「あれか!?」と目を見開いてジャガイモをしげしげと眺める。
「このジャガイモが、寒い地方や痩せた土地でも育てられる作物です。
土地の状態が良くなれば収穫量も増えるので、土地の改善もやっぱり必要ですけれど」
「この畑のジャガイモは、親になるジャガイモ三十六個を植えています。一つに六個程のジャガイモが育ったとして、ここで二百強のジャガイモが取れます」
「そのジャガイモを元に、全て半分に割って種イモに使って育ててゆくと……次は六倍の二千四百個、つぎの植え付けでは三万程のジャガイモが、その次には三十六万個ほどのジャガイモが育つ事になります。
そこまで増やして日に四個を食べるとして、およそ三千人が一月で消費する分量になります」
「三千か……まだまだ足りんな」
「ご心配なく、すでにガイルさんの畑の方でも増産に当たっております。そちらは千個の種イモを植えてありますので、晩秋には六千個のジャガイモが育つ予定です」
「それを来春の種イモにして一万二千個を植え、育てば七万二千、その次は八十万を超えるジャガイモが育つ予定です。
それをさらに増やしたのちに、王子の国に種イモとして持参しましょう。四輪荷馬車で十五台もの作物を持っての凱旋帰国です……国王様にも提言しやすくなるかと思いませんか?」
「もちろん……農業指導者も付けますよ。
それに、私も同行します。お兄上様の病状を診なくてはなりませんからね。
そして、その後も我が国で増産した作物を王子の国へ供給致します」
王子は難しい顔をして黙り込んでしまった。
毒が効きすぎたかな?
「……何故? どうしてノルトルンドにそこまでしてくれるのだ?」
「ノルトルンドだけではありません、他国にも……ゆくゆくは帝国にも同じ事をするつもりです」
「「なっ!?」」
帝国と聞いて驚く王子達。
「私は……親が奴隷だから、その子も一生奴隷でなければならないというこの制度が、どうしても許せないんです。
親が犯した罪や負った借金は、親自身が背負うべきものです。
それを無垢な子にまで押しつけるなんて、理不尽すぎる。
生まれたばかりの子どもに、何の罪があるというのですか? 子どもたちは、親の過去に縛られることなく、自分の道を選ぶ自由があって当然です。
好きなことを追いかけ、笑って、夢を見て、失敗して、また立ち上がって……そんな当たり前の幸せを、奪う権利は誰にもないはずです。
だからこそ、私はこのしきたりを変えたいんです。
子どもたちに、鎖のない未来を贈りたいんです」
二人とも黙り込んでしまった……。
まあかなり無理を言っているのは理解している。
いきなり奴隷制度を止めろと言っても貴族や奴隷を扱う豪商から総スカンを食らうだろう。
その辺にもメリットを示しながら徐々に減らしてゆける方法を考えないとね。
んー。仕方がない、固くなった空気を柔らかくしてあげましょう(私の所為だとは言わない)
「あっ、マリーちょうど良かった」
ちょうどマリーさんが厨房から出てきたところだった。
お二人に、他の食材も試してもらいましょうか。
マリーさんが持つ盆に乗っているのは、鮮やかな黄色に茹で上がったトウモロコシ。
「これは?」
聞いてきたのは白の王子、黒の王子もジッと見ている。
「トウモロコシと言います。
この黄色いつぶを食べるのですが、先ずは食べてみましょう」
カットされたトウモロコシを手に取って、そのままガプッとひと噛み――んーっプチプチした食感と噛むたびに溢れる甘味がいいよねっ!
私がダイレクトにかじったのを見て呆れている王子の二人、ガイルさんも肩を震わせて笑っている。
私が毒味を済ませた事で、王子達もトウモロコシを手に取り口へと運ぶ。
「「!!」」
「美味い」「なんだこの甘みは」
とたんに目を見開き、ペロリと食べ切ってしまった――お気に召して貰えたようですね。
「トウモロコシも成長が早い作物で、およそ九十日で収穫できます。
肥料が比較的必要なので、畑を作ってからになりますが、この一本から五、六百の種が取れますから増やすのは簡単かと思います。それに茎や葉は家畜の飼料にもなりますから無駄がないのもメリットですね」
「もう一つは、冬前に収穫できる作物ですがサツマイモです。これは冬の備蓄食料としても有能ですし、連作も出来るのがよいと思います」
さらに蒸したサツマイモをひと口。
こちらもほろっと優しい甘い味わいが心を癒してくれる。
これはガイルさんが気に入ってくれたみたい。
四人で新しい作物を試していると"くぅぅ"と可愛らしい音が聞こえてきた。
横を見るとマリーが顔を真っ赤にして下を向いている。
「マリーもおひとつどうぞ」
私はサツマイモをひとつ取ってマリーの口に運んであげる。
はわはわしながら差し出されたサツマイモを口に入れると、優しい笑顔になるマリーさん。
やっぱり女子はお芋好きだよねー。
私がマリーに「あーん」したのを見て、白の王子が黒の王子をチラチラ見てる――
「んにゅふふふふふ」
思わず変な声が漏れて、白の王子に白い目でみられてしまったけれど。
私とマリーはしっかり堪能させて頂きました――
供給ありがとうございます!
最初の奴隷制度の話からすると、随分と緩い空気になってしまったけれど。
エボルス王子に本気で考えて貰うよい機会になったと思う。
王様への提言、お願いしますね!
まあゴネたとしても「これ全部お酒にもなるんだけどなー」って呟けば決定的だと思うけど。
今でも、毎日『ガマぐちポシェットくん』からジャガイモ三袋を出してマジックバッグに入れている。
王子が国に帰るまでは『ガマぐちポシェットくん』はジャガイモ優先で取り出す事になりそうです。
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