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皇帝 x 剣聖
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アウレリア帝国の玉座の間は、今日も重苦しい空気に満ちていた。
ヴァレリウス・エリオス・アウレリトス皇帝は、銀色の髪を乱れさせ、鋭い青い瞳を細めて報告書を睨みつける。
三十五歳の若き絶対君主は、黒い帝衣を纏い、腰に佩いた長剣の柄に手を置いていた。
その剣は、ただの装飾品ではない。
彼自身の『剣豪』スキルの証だった。
「またか……隣国からの奴隷納入が遅れているだと? 指定した数さえ揃えられぬとは何事だ!」
声は低く、冷徹に響く。
側近の臣下たちは、息を潜めて跪いていた。
「そう焦るな、ヴァレリウス。北の蛮族の土地はすでに手中に収めた。領民もこちらへ移送中で間もなく到着するはずだ」
荒れる皇帝に臆することなく、穏やかな声をかける一人の男がいた。
ヴァレリウスがその顔を認めると、鋭く尖っていた瞳がわずかに和らいだ。
「レオニダスか。北の土地など、ろくに作物も育たぬ痩せ地だろう」
「それがな、最近奇妙な話しが流れている。北の厳しい土壌でも育つという新たな作物があるらしい」
「出所は?」
「ルーカスからの密書だ」
皇帝の苛立ちは、しかし収まる気配を見せなかった。
帝国の統一どころか大陸全土の掌握という大志を支えるカリスマは健在だったが、今は不満と焦燥が頂点に達していた。
自国民からの不平不満は、日増しに強くなっている。戦争の連続で税は重く、食料は不足。
元老院の老獪な議員どもは、表向きは忠誠を誓いながら、裏でイヤミを囁き、皇帝の若さを嘲笑う。
「ふん……あの老いぼれどもが。帝国の統一を阻むのは、外部の敵だけではないようだな」
五年前の失策が、今も皇帝の胸を焼いていた。
隣国ノルトルンドを強迫し、アースガルドの豊かな土地を狙って侵攻させた。
あの肥沃な平原を手に入れれば、奴隷も資源も充足し、帝国はさらに強大になるはずだった。
だが、失敗した。
ノルトルンドの軍は撤退を余儀なくされ、損失だけが残った。
最近、噂が届いた。アースガルドに「剣聖」と呼ばれる者が現れたという。
一振りの剣で軍勢を薙ぎ払う、伝説級の剣士。
ノルトルンドがアースガルドと接近しているのも、その剣聖の影響か。
皇帝は拳を握りしめた。
爪が掌に食い込む痛みさえ感じない。
「剣聖……か、面白い。奴隷が足りぬなら力で奪うまでだ。ノルトルンドを落とし、あの剣聖の首もアースガルドごと跪かせてみせよう」
冷たい笑みが、皇帝の唇に浮かんだ。
苛立ちは、燃え上がる野心に変わっていた。
それから間も無く、事前の連絡も無しにルーカスが入国してきた。
ルーカスとは、隣国ノルトルンドの貴族で我が国に通じている狐だ。
ノルトルンドの動きを随時知らせる窓口であり、第一王子の暗殺を示唆している。
前回、かなり順調に進んでいると聞いていたのだが一体どうしたという事なのか。
『剣聖』の仕業か!
ルーカスの計画がバレて逃げ出してきたとこ事。
屋敷には火を放ち、証拠は全く残っていないと言うが……。
なに?! 痩せた土地でも育つ新しい作物だと?
最近知らせていてきていたアレを、上手く持ってきたと言うのか!
でかした!
手に入れた北の土地でも育てられれば、食料不足にも目処が立てられるやもしれん。
数ヶ月後……アウレリア帝国の辺境領地では、奇妙な病が広がり始めていた。
新たに導入された作物——北の痩せた土壌でも育つという、異国の塊茎——を栽培した農民たちが、次々と倒れたのだ。
症状は苛烈だった。
激しい腹痛、嘔吐、そして幻覚。
重症の者たちは、苦しみながら床に伏せ、時には命すら落とす。
領主の屋敷では、医師たちが慌てて対応に追われていたが、原因は不明。
作物自体が毒を含んでいるのではないか、という疑念が囁かれ始めた。
そんな中、玉座の間ではヴァレリウス皇帝が、ルーカスからの新たな密報を受け取っていた。
「アースガルドの剣聖が、毒の作物を意図的に持ち込んだという噂を、帝国内で流せと?」
皇帝の声は冷ややかだったが、瞳には野心の炎が宿っていた。
「そうです……陛下。
ノルトルンドの連中が慌てて栽培を始めたところ、早速中毒者が続出している。
剣聖の仕業だと吹聴すれば、アースガルドの信用は地に落ちる。
国際的な非難を浴びせ孤立させた上で、こちらが介入する口実ができる」
ルーカスは、ノルトルンドの屋敷を焼いて逃げてきた身ながら、狐のような笑みを浮かべていた。
持ってきた種芋は、確かに北の土地で収穫を約束するものだったが……。
ヴァレリウスは、ゆっくりと頷いた。
「良かろう。噂を広めろ! 剣聖が毒を撒いたと。
食べた者たちが狂い、死に至ると。民の恐怖を煽り、ノルトルンドとアースガルドの同盟を揺るがせ」
臣下たちが即座に動き出す。
帝国内の街々で、旅人や商人を通じて、噂は急速にノルトルンドや他の国々へと広がっていった。
「アースガルドの剣聖が、ノルトルンドに毒の作物を送り込んだらしいぞ」「食べると腹が裂けるような痛みで、幻を見て死ぬんだと」「奴は一剣で軍を薙ぎ払うだけでなく、毒で民を殺す怪物だ」
噂は風のように大陸を駆け巡り、アースガルドの名は一夜にして毒の代名詞となった。
・
・
・
「やっぱり、やってきたわね」
予想通りの反応、きっと自国で栽培したジャガイモを食べて中毒を起こした人が出たのだろう。
さて、それではボチボチ行きますか!
ヴァレリウス・エリオス・アウレリトス皇帝は、銀色の髪を乱れさせ、鋭い青い瞳を細めて報告書を睨みつける。
三十五歳の若き絶対君主は、黒い帝衣を纏い、腰に佩いた長剣の柄に手を置いていた。
その剣は、ただの装飾品ではない。
彼自身の『剣豪』スキルの証だった。
「またか……隣国からの奴隷納入が遅れているだと? 指定した数さえ揃えられぬとは何事だ!」
声は低く、冷徹に響く。
側近の臣下たちは、息を潜めて跪いていた。
「そう焦るな、ヴァレリウス。北の蛮族の土地はすでに手中に収めた。領民もこちらへ移送中で間もなく到着するはずだ」
荒れる皇帝に臆することなく、穏やかな声をかける一人の男がいた。
ヴァレリウスがその顔を認めると、鋭く尖っていた瞳がわずかに和らいだ。
「レオニダスか。北の土地など、ろくに作物も育たぬ痩せ地だろう」
「それがな、最近奇妙な話しが流れている。北の厳しい土壌でも育つという新たな作物があるらしい」
「出所は?」
「ルーカスからの密書だ」
皇帝の苛立ちは、しかし収まる気配を見せなかった。
帝国の統一どころか大陸全土の掌握という大志を支えるカリスマは健在だったが、今は不満と焦燥が頂点に達していた。
自国民からの不平不満は、日増しに強くなっている。戦争の連続で税は重く、食料は不足。
元老院の老獪な議員どもは、表向きは忠誠を誓いながら、裏でイヤミを囁き、皇帝の若さを嘲笑う。
「ふん……あの老いぼれどもが。帝国の統一を阻むのは、外部の敵だけではないようだな」
五年前の失策が、今も皇帝の胸を焼いていた。
隣国ノルトルンドを強迫し、アースガルドの豊かな土地を狙って侵攻させた。
あの肥沃な平原を手に入れれば、奴隷も資源も充足し、帝国はさらに強大になるはずだった。
だが、失敗した。
ノルトルンドの軍は撤退を余儀なくされ、損失だけが残った。
最近、噂が届いた。アースガルドに「剣聖」と呼ばれる者が現れたという。
一振りの剣で軍勢を薙ぎ払う、伝説級の剣士。
ノルトルンドがアースガルドと接近しているのも、その剣聖の影響か。
皇帝は拳を握りしめた。
爪が掌に食い込む痛みさえ感じない。
「剣聖……か、面白い。奴隷が足りぬなら力で奪うまでだ。ノルトルンドを落とし、あの剣聖の首もアースガルドごと跪かせてみせよう」
冷たい笑みが、皇帝の唇に浮かんだ。
苛立ちは、燃え上がる野心に変わっていた。
それから間も無く、事前の連絡も無しにルーカスが入国してきた。
ルーカスとは、隣国ノルトルンドの貴族で我が国に通じている狐だ。
ノルトルンドの動きを随時知らせる窓口であり、第一王子の暗殺を示唆している。
前回、かなり順調に進んでいると聞いていたのだが一体どうしたという事なのか。
『剣聖』の仕業か!
ルーカスの計画がバレて逃げ出してきたとこ事。
屋敷には火を放ち、証拠は全く残っていないと言うが……。
なに?! 痩せた土地でも育つ新しい作物だと?
最近知らせていてきていたアレを、上手く持ってきたと言うのか!
でかした!
手に入れた北の土地でも育てられれば、食料不足にも目処が立てられるやもしれん。
数ヶ月後……アウレリア帝国の辺境領地では、奇妙な病が広がり始めていた。
新たに導入された作物——北の痩せた土壌でも育つという、異国の塊茎——を栽培した農民たちが、次々と倒れたのだ。
症状は苛烈だった。
激しい腹痛、嘔吐、そして幻覚。
重症の者たちは、苦しみながら床に伏せ、時には命すら落とす。
領主の屋敷では、医師たちが慌てて対応に追われていたが、原因は不明。
作物自体が毒を含んでいるのではないか、という疑念が囁かれ始めた。
そんな中、玉座の間ではヴァレリウス皇帝が、ルーカスからの新たな密報を受け取っていた。
「アースガルドの剣聖が、毒の作物を意図的に持ち込んだという噂を、帝国内で流せと?」
皇帝の声は冷ややかだったが、瞳には野心の炎が宿っていた。
「そうです……陛下。
ノルトルンドの連中が慌てて栽培を始めたところ、早速中毒者が続出している。
剣聖の仕業だと吹聴すれば、アースガルドの信用は地に落ちる。
国際的な非難を浴びせ孤立させた上で、こちらが介入する口実ができる」
ルーカスは、ノルトルンドの屋敷を焼いて逃げてきた身ながら、狐のような笑みを浮かべていた。
持ってきた種芋は、確かに北の土地で収穫を約束するものだったが……。
ヴァレリウスは、ゆっくりと頷いた。
「良かろう。噂を広めろ! 剣聖が毒を撒いたと。
食べた者たちが狂い、死に至ると。民の恐怖を煽り、ノルトルンドとアースガルドの同盟を揺るがせ」
臣下たちが即座に動き出す。
帝国内の街々で、旅人や商人を通じて、噂は急速にノルトルンドや他の国々へと広がっていった。
「アースガルドの剣聖が、ノルトルンドに毒の作物を送り込んだらしいぞ」「食べると腹が裂けるような痛みで、幻を見て死ぬんだと」「奴は一剣で軍を薙ぎ払うだけでなく、毒で民を殺す怪物だ」
噂は風のように大陸を駆け巡り、アースガルドの名は一夜にして毒の代名詞となった。
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さて、それではボチボチ行きますか!
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