腐女子剣聖のBL妄想騎士団

カジキカジキ

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ヴァレリウス x 剣聖

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 帝宮の廊下をズカズカと進む一団。

 先頭はリリアーナ王女、パットン伯爵が並び、後ろに私達がついて歩く。

 私達はカレーを食べ終わるとその足で皇帝に会うために帝宮に来たのだけど、何故か帝宮内で私達を止める者はいなかった。

 皆がポカンとした顔で私達を見送っている。

 いよいよ一番奥の玉座の間にたどり着いてしまった。

 大きな扉をくぐり、奥にある玉座を見ると一人の人物と数人の貴族と見られる男達が話している所だった。

 リリアーナ王女が気にせず玉座の目の前まで進むと、私達に気がついた玉座の男性がこちらを見て固まる。

「ご機嫌麗しく、お父様」

 華麗なカーテシーで挨拶するリリアーナ王女。

 じっと固まったまま誰も喋ろうとしない……と思ったら、玉座に座っていた人物がこちらに向かって話し始めた。

「リリアーナ、お前の話は後でゆっくり聞こう。
 後ろの者どもよ、儂に話しを聞いて欲しければ……まずは力で証明せよ。
 この帝国で、玉座の前に立つ資格があるか!」

 そう言うと、皇帝は自ら腰の剣を抜き、玉座からゆっくりと降りてきた。

 周囲の貴族達が慌てて道を開ける。

 リリアーナ王女も驚いた顔で「お父様!?」と声を上げるが、皇帝は笑みを浮かべたまま。

「心配するなリリアーナ。この者達の中に、剣聖の名を冠する者がいるそうじゃないか。ならば、我が直々に相手をしてやろう。儂のスキル『剣豪』は、帝国最強と謳われているぞ!」

 ……なるほど。

 交渉の前に、力を見せろというわけね。

「はぁ」

 私は、小さくため息をつきながら前に出た。

 黒髪を後ろで束ね直し『ガマぐちポシェットくん』から剣を取り出す。

「仕方ないわね。皆んな危ないからちょっと下がってて」

 パットン伯爵もリリアーナ王女も緊張した面持ちで見守る。

 玉座の間が一瞬で決闘場と化した。

 皇帝の剣が閃く。

『剣豪』のスキルは伊達じゃない。

 初太刀から凄まじい速さと重さで圧倒してくる。

 ガキン! ガキン! 金属音が響き渡る。

 私は防戦一方。

 後退を強いられ、息が少し乱れる。

「ほう、剣聖の名は伊達ではないな! だが、まだまだ!」

 皇帝が優勢に笑う。

 貴族達も「陛下こそ最強!」と歓声を上げる。

 しかし剣戟が二度、三度と続くにつれ、皇帝の動きに異変が現れ始めた。

 剣の軌道がわずかに鈍る。

 足取りが重くなる。

 皇帝の顔が赤くなり、集中力が明らかに乱れる。

 私はそれを見逃さず反撃に転じ、皇帝の剣を弾き、隙を突いて一閃。

 皇帝の剣が弾かれ、床に転がる。

 剣先が、皇帝の喉元にぴたりと止まった。

「……私の勝ち、ね」

 玉座の間が静まり返る。

 皇帝はしばらく呆然としていたが、やがて大きな笑い声を上げた。

「ふっははは! 見事だ! 剣聖の名に恥じぬ腕前……よもや、儂がこんな小娘に負けようとは」

 いや……小娘なんて年じゃ無いんだけど……。
 
 皇帝は剣を拾い上げ、鞘に収めながら言った。

「よし、負けを認める。貴様らの提案を聞こう。
 そして……その、匂いの元となる料理をぜひ儂にも食わせてくれ」

 真面目な顔をした直後に、ふっと頬を染めてそんな事いうの止めてもらえますか――
 
「……カレーの匂い、服についちゃってたのかな?」

 私は苦笑いしながら頷いた。

 結局、カレーの力は剣よりも強かったのかもしれない。
 こうして剣での勝負を経て、ようやく本格的な交渉の準備へ取り掛かる前に。

 私達は急ごしらえで、持ち込んだ食材を使ってカレーを作り始めた。

 貧乏麦――つまり稲――の米を炊き、ジャガイモとトウモロコシを具材に。

 香辛料の効いたルーをかけ、熱々のカレーライスを大皿に盛りつける。

 玉座の間に運ばれたカレーの香りが広がった瞬間、部屋中の人々が一斉に反応した。

「これは……何という香りだ……」

 皇帝陛下が、ようやく固まった表情を崩し、鼻をくんくんさせた。

 貴族達もヨダレを拭いながら目を輝かせる。

 リリアーナ王女が優雅にスプーンを手に取り、まず一口。

「お父様、これを食べてください。
 この香り、この味……帝国の未来を変えるものですわ!」

 皇帝陛下が恐る恐るスプーンを口に運ぶ。

 すると、目を見開きすぐに二口、三口と勢いよく食べ始めた。

「う、うむ……これは……! 今まで食したどの料理よりも心を掴む味だ!」

 貴族達も次々とカレーを口にし、部屋中が感嘆の声で満ちた。

 ヨダレを垂らしていた者達は、すっかり正気を取り戻し――

 いや、それ以上に熱狂していた。

 ここぞとばかりに、私は再び交渉を切り出す。

「陛下、いま食べて貰った食べ物はカレーと言います。そして、皿に盛ってある白い穀物は……貧乏麦です」

 貧乏麦と聞いて、一部の人のスプーンが一瞬止まったけれど、やはり我慢できずに再び食べ始めた。

「貧乏麦は、この国では何処にでも生えている雑草だとお聞きしました。
 味も悪くてとても食べられない植物だと、ですが! このように正しく理解して調理すれば美味しく食べられるのです! そして……それはジャガイモも同じです。
 芽が出て緑化したジャガイモにはソラニンという毒が発生します。
 知らずに食べてしまうと腹痛や嘔吐などの症状を引き起こしますが、正しく処理さえすれば安全な食べ物なのです!」

 皆が黙って聞いている。
 
「貧乏麦……稲を水田で栽培すれば、帝国の食糧事情は一変します。
 栄養豊富で連作可能、陸作に比べて草取りなどの手間も少なくて人手が少なくても何とかなります」

「そして我々が持ってきたジャガイモも、本来の調理方法の普及と、育成方法の伝授致します。サツマイモとトウモロコシも同様です」

 ここでゴクリと唾を飲む。
 
「その代わり、戦争の即時終結、二度と周囲の国へ侵攻をしないこと。奴隷制度の段階的廃止を約束して下さい。
 そして、稲作で生産された米の優先購入権を私達に……」

 皇帝陛下は、カレーを頬張りながら頷いた。

「うむ……それについては、大いに検討させてもらおう」

 貴族達も異口同音に賛成。カレーの魔力(?)に完全に落ちたみたい。

 こうして、帝宮での交渉はあっさりと成功した。

 誰も止めなかった理由も、カレーの残り香で衛兵達が魅了されていたかららしい。

 ホッと顔を見合わせる私とリリアーナ。

 その時、皇帝が突拍子もない事を呟いた。

「剣聖よ、儂の嫁にならんか?」

「ぶっ!」

 突然何を言い出すよのこのオヤジは!?

「お父様!?」

 リリアーナも皇帝の突然の言葉にビックリしている。

 周りの臣下の人達もザワザワしているよ? ほら、特にそこのおじ様なんて凄い目でこっち見てるんだけど……。

「結婚なんてしません!!」

 私は今の環境が気に入っているの、マリーやルナと離れて生活するなんて考えられない。

「とにかくお断りです!」

 私はさっさとカレーを食べ終えると、席を立ち一人で食堂を後にした。
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