41 / 236
quaecunque sunt vera
septem
しおりを挟む
視界がその正体を捉えた瞬間、斎の鼓動が大きく鳴り響き、身の毛がよだつと同時に頭の中で警鐘がなる。斎は無意識に後退り、玄関のドアへとぶつかり足を止めた。
目の前には、ありえないものが存在していたのだ。
「あや……こ?」
そこには、六年前と変わらぬ容姿で微笑を浮かべながら佇む、かつての恋人の姿があったのだ。
音も気配も何もなく、絢子はゆっくりと近づいて来た。
「斎くん」
懐かしい声が囁くように自分の名を呼ぶ。昔と声も呼び方も同じだが、今は本能的に恐怖や違和感があり、身体から嫌な汗があふれ出した。相変わらず、頭の中では警鐘が鳴り響き、状況を判断しようと辺りの様子を確認しだす。
「やっと会えた」
嬉しそうに微笑み喜びを伝える目の前の存在は、確かに斎が知る絢子の姿そのものだった。四年以上も一緒にいた相手を、間違えるはずが無かった。
「私、神楽にも会ったのよ。相変わらず綺麗だったわ」
楽しそうに語るその姿は、昔となんら変わるところがない。だが、自分の知る絢子とは何かが違うと違和感を覚えずにはいられない。姿も声も話し方も、何もかも昔と同じはずなのに、まるで別のものにしか思えないのだ。
「なんで、ここに……?」
なんとか声を振り絞り疑問を投げかける。なぜ、死んだはずの絢子がここにいるのか、必死で理由を考え出す。
「なんでって、斎くんに会いに来たのよ」
絢子は笑みを絶やさずに答えた。
「今まで、どこにいたんだ?」
絢子は死んだと彼女の両親から聞かされただけで、実際には通夜も葬式も出ておらず、最後の姿も見てはいない。死んだというのは嘘で、本当は生きていたのだろうか。
「どこ……?」
呟くと同時に、目の前の絢子の様子が変わりだす。恐怖を感じているかのように小刻みに身体が振るえ、風も無いのに長い髪がふわりと浮き上がった。
「違う……。違うの……」
絢子が呟く言葉に合わせるかのように、冷たい風が辺りに渦巻きだす。先程、手に傷を付けたものと同じ気配を感じ、斎は頭を逸らした。その瞬間、何かが頬をかすり手の甲と同じ赤い筋を付けた。何が起きているのか判断できず、ただ絢子を見つめる。
「Stop!」
背後から声が聞こえたとたん風が収まり、絢子は恐る恐る振り返る。
「I found you at last」
震える絢子の視線の先、声のする方へ斎も視線を向けた。そこには、珍しいストロベリーブロンドの長髪を後ろで一つに束ねた、白人の少年が立っていた。
「いや……。嫌よ、あそこは嫌……。助けて……」
叫ぶように言いながら、絢子は斎の腕を掴む。それは女の力とは思えないほど強いものであり、あまりの痛みに、思わず斎の顔が歪む。斎の腕を掴み怯えながらも絢子は、金髪の少年を見つめていた。
「She doesn't know the difference between right and wrong. Therefore, allow her, please」
少年が、その翠の瞳で斎を見据えながら言った。
「Who are you?」
目の前には、ありえないものが存在していたのだ。
「あや……こ?」
そこには、六年前と変わらぬ容姿で微笑を浮かべながら佇む、かつての恋人の姿があったのだ。
音も気配も何もなく、絢子はゆっくりと近づいて来た。
「斎くん」
懐かしい声が囁くように自分の名を呼ぶ。昔と声も呼び方も同じだが、今は本能的に恐怖や違和感があり、身体から嫌な汗があふれ出した。相変わらず、頭の中では警鐘が鳴り響き、状況を判断しようと辺りの様子を確認しだす。
「やっと会えた」
嬉しそうに微笑み喜びを伝える目の前の存在は、確かに斎が知る絢子の姿そのものだった。四年以上も一緒にいた相手を、間違えるはずが無かった。
「私、神楽にも会ったのよ。相変わらず綺麗だったわ」
楽しそうに語るその姿は、昔となんら変わるところがない。だが、自分の知る絢子とは何かが違うと違和感を覚えずにはいられない。姿も声も話し方も、何もかも昔と同じはずなのに、まるで別のものにしか思えないのだ。
「なんで、ここに……?」
なんとか声を振り絞り疑問を投げかける。なぜ、死んだはずの絢子がここにいるのか、必死で理由を考え出す。
「なんでって、斎くんに会いに来たのよ」
絢子は笑みを絶やさずに答えた。
「今まで、どこにいたんだ?」
絢子は死んだと彼女の両親から聞かされただけで、実際には通夜も葬式も出ておらず、最後の姿も見てはいない。死んだというのは嘘で、本当は生きていたのだろうか。
「どこ……?」
呟くと同時に、目の前の絢子の様子が変わりだす。恐怖を感じているかのように小刻みに身体が振るえ、風も無いのに長い髪がふわりと浮き上がった。
「違う……。違うの……」
絢子が呟く言葉に合わせるかのように、冷たい風が辺りに渦巻きだす。先程、手に傷を付けたものと同じ気配を感じ、斎は頭を逸らした。その瞬間、何かが頬をかすり手の甲と同じ赤い筋を付けた。何が起きているのか判断できず、ただ絢子を見つめる。
「Stop!」
背後から声が聞こえたとたん風が収まり、絢子は恐る恐る振り返る。
「I found you at last」
震える絢子の視線の先、声のする方へ斎も視線を向けた。そこには、珍しいストロベリーブロンドの長髪を後ろで一つに束ねた、白人の少年が立っていた。
「いや……。嫌よ、あそこは嫌……。助けて……」
叫ぶように言いながら、絢子は斎の腕を掴む。それは女の力とは思えないほど強いものであり、あまりの痛みに、思わず斎の顔が歪む。斎の腕を掴み怯えながらも絢子は、金髪の少年を見つめていた。
「She doesn't know the difference between right and wrong. Therefore, allow her, please」
少年が、その翠の瞳で斎を見据えながら言った。
「Who are you?」
0
あなたにおすすめの小説
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。
女子切腹同好会
しんいち
ホラー
どこにでもいるような平凡な女の子である新瀬有香は、学校説明会で出会った超絶美人生徒会長に憧れて私立の女子高に入学した。そこで彼女を待っていたのは、オゾマシイ運命。彼女も決して正常とは言えない思考に染まってゆき、流されていってしまう…。
はたして、彼女の行き着く先は・・・。
この話は、切腹場面等、流血を含む残酷シーンがあります。御注意ください。
また・・・。登場人物は、だれもかれも皆、イカレテいます。イカレタ者どものイカレタ話です。決して、マネしてはいけません。
マネしてはいけないのですが……。案外、あなたの近くにも、似たような話があるのかも。
世の中には、知らなくて良いコト…知ってはいけないコト…が、存在するのですよ。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる