60 / 236
quaecunque sunt vera
viginti sex
しおりを挟む
当時、セイラム村には判事がいなかったため、セイラム市より判事が招かれた。現在、このセイラム市は魔女の町として有名であり、それが重要な観光資源になっている。そして、アーカムは、このセイラムをモデルとして作られた架空の都市なのだ。
サイラスが、アーカムから来たと言ったのは、この事と関係があるのだろうか。
授業の終わりを知らせるチャイムが鳴り、斎は我に返る。まともに授業が出来ていたのかどうか、自分でも分からない。
「今日は、ここまで」
改めて天弥を見る。いつもと変わらぬ微笑がすぐに返ってきた。教室内の生徒達から多少の視線を感じ、教科書や資料をまとめ、教室から出て行く。
明日も、明後日もこの後も授業のある日は続く。教壇に立つ度に、このような状態になる訳にはいかない。理解はしているが、感情が付いてはいかなかった。
とにかく昼休みに天弥と話すしかない、そう思い足を速めた。
昼休み、斎はソファーに座る天弥を見下ろした。そして、大きくため息を吐く。
「せんせー、どないしたん?」
天弥の横に座るサイラスが、声をかける。
「いや……、何でもない」
斎は肩を落とすと、テーブルを挟んだ天弥とサイラスの向かいのソファーに腰を下ろした。
目の前に仲良く並んで座る二人へ、視線を向ける。なぜ、自分がここであの二人は並んで座っているのか考え込む。本来ならこの時間は、二人だけで過ごすはずだった。
斎の苦悩を余所に、天弥は嬉しそうに弁当を手に取る。サイラスも紙袋からジッパー付きのビニール袋に入った食パンを取り出した。天弥は、それをジッと見つめる。
「なんや?」
視線に気がつき、サイラスが声をかけた。
「サンドイッチ?」
サイラスは思わず自嘲気味に軽く笑う。
「そんなたいそうなもんやないって」
天弥に手にしたものを見せる。
「ただ単に、peanut butterとchocolate creamを塗っただけや」
天弥の瞳が輝いた。
「チョコレート?」
天弥の視線が、サイラスの手の動きに合わせて動く。それに気がついたサイラスは、手にした食パンをあちこちへと動かす。天弥の視線が食パンを追う。
「そうやけど、食いたいんか?」
「うん」
視線を食パンから動かさずに、天弥が答えた。
「ほい」
サイラスが食パンを差し出した。
「いいの?」
嬉しそうに天弥が聞き返す。
「別にかまへん」
天弥は、サイラスに自分の弁当を差し出した。
「じゃあ、僕のお弁当と交換」
自分の前に差し出された弁当に、サイラスは少し戸惑いながらそれを受け取る。
「ありがとう」
食パンを受け取った天弥は礼を言い、嬉しそうに微笑んだ。
斎は、手にした弁当を投げつけたい気持ちを抑えながら、二人のやり取りを見ていた。なぜ、自分が疎外感を感じないといけないのか、そう思いながらサイラスを見る。
「これ、天弥が作ったんか?」
しかも、呼び捨てで天弥を呼ぶサイラスに、さらに怒りがこみ上げる。
「違うよ。お母さんが作ってくれるんだよ」
自分と話す時とは少しだけ違う話し方をする天弥にも、斎は苛立ちを覚える。
「お母はん……」
サイラスは呟きながら、手元の弁当を見つめた。
サイラスが、アーカムから来たと言ったのは、この事と関係があるのだろうか。
授業の終わりを知らせるチャイムが鳴り、斎は我に返る。まともに授業が出来ていたのかどうか、自分でも分からない。
「今日は、ここまで」
改めて天弥を見る。いつもと変わらぬ微笑がすぐに返ってきた。教室内の生徒達から多少の視線を感じ、教科書や資料をまとめ、教室から出て行く。
明日も、明後日もこの後も授業のある日は続く。教壇に立つ度に、このような状態になる訳にはいかない。理解はしているが、感情が付いてはいかなかった。
とにかく昼休みに天弥と話すしかない、そう思い足を速めた。
昼休み、斎はソファーに座る天弥を見下ろした。そして、大きくため息を吐く。
「せんせー、どないしたん?」
天弥の横に座るサイラスが、声をかける。
「いや……、何でもない」
斎は肩を落とすと、テーブルを挟んだ天弥とサイラスの向かいのソファーに腰を下ろした。
目の前に仲良く並んで座る二人へ、視線を向ける。なぜ、自分がここであの二人は並んで座っているのか考え込む。本来ならこの時間は、二人だけで過ごすはずだった。
斎の苦悩を余所に、天弥は嬉しそうに弁当を手に取る。サイラスも紙袋からジッパー付きのビニール袋に入った食パンを取り出した。天弥は、それをジッと見つめる。
「なんや?」
視線に気がつき、サイラスが声をかけた。
「サンドイッチ?」
サイラスは思わず自嘲気味に軽く笑う。
「そんなたいそうなもんやないって」
天弥に手にしたものを見せる。
「ただ単に、peanut butterとchocolate creamを塗っただけや」
天弥の瞳が輝いた。
「チョコレート?」
天弥の視線が、サイラスの手の動きに合わせて動く。それに気がついたサイラスは、手にした食パンをあちこちへと動かす。天弥の視線が食パンを追う。
「そうやけど、食いたいんか?」
「うん」
視線を食パンから動かさずに、天弥が答えた。
「ほい」
サイラスが食パンを差し出した。
「いいの?」
嬉しそうに天弥が聞き返す。
「別にかまへん」
天弥は、サイラスに自分の弁当を差し出した。
「じゃあ、僕のお弁当と交換」
自分の前に差し出された弁当に、サイラスは少し戸惑いながらそれを受け取る。
「ありがとう」
食パンを受け取った天弥は礼を言い、嬉しそうに微笑んだ。
斎は、手にした弁当を投げつけたい気持ちを抑えながら、二人のやり取りを見ていた。なぜ、自分が疎外感を感じないといけないのか、そう思いながらサイラスを見る。
「これ、天弥が作ったんか?」
しかも、呼び捨てで天弥を呼ぶサイラスに、さらに怒りがこみ上げる。
「違うよ。お母さんが作ってくれるんだよ」
自分と話す時とは少しだけ違う話し方をする天弥にも、斎は苛立ちを覚える。
「お母はん……」
サイラスは呟きながら、手元の弁当を見つめた。
0
あなたにおすすめの小説
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。
女子切腹同好会
しんいち
ホラー
どこにでもいるような平凡な女の子である新瀬有香は、学校説明会で出会った超絶美人生徒会長に憧れて私立の女子高に入学した。そこで彼女を待っていたのは、オゾマシイ運命。彼女も決して正常とは言えない思考に染まってゆき、流されていってしまう…。
はたして、彼女の行き着く先は・・・。
この話は、切腹場面等、流血を含む残酷シーンがあります。御注意ください。
また・・・。登場人物は、だれもかれも皆、イカレテいます。イカレタ者どものイカレタ話です。決して、マネしてはいけません。
マネしてはいけないのですが……。案外、あなたの近くにも、似たような話があるのかも。
世の中には、知らなくて良いコト…知ってはいけないコト…が、存在するのですよ。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる