apocalypsis

さくら

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quaecunque sunt vera

viginti quinque

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 自分の心が狭い事は理解しているが、それを差し引いたとしても、天弥があのサイラスの傍にいるのは不安を煽られる。素性も目的も、何も分からない相手なのだ。
 いつもと同じ授業時間が、斎にはとても長く感じられる。天弥は、昨日の様子を知っているはずだ。なのになぜ、サイラスと親しそうにしているのかと苛つく。
「Stop whispering!」
 天弥とサイラスが何かを話しているのは分かった。だが内容が分からずに、つい声を荒げる。それでもまだ、サイラスに向けて英語を使うだけの余裕はあった。
「せんせー、俺、日本語わかるんやけど」
 サイラスから日本語が返ってきた。教室内に少し笑い声が響き、斎は冷静さを取り戻す。
「あー、せやけど、やっぱ英語の方が楽やな。そっちで話してくれるんなら、ありがたいわ」
 斎は軽く息を吸い込み、ゆっくりと吐き出す。
「What is your purpose? 」
 授業中だということは、もちろん理解している。だが、思わず疑問が口から出てしまった。
「Do you want to know?」
 今度は、英語でサイラスが応えた。
「Sure」
 答えを聞くと、サイラスは片方の口角を僅かに上げた。
「Too bad. It can't teach. savvy?」
 サイラスの返事に、斎は声を荒げそうになる。
「Ok, There's no use talking about it any more」
 何とか冷静を保ち、言葉を返す。
「Yeah, I have the duty to protect privileged information」
 これ以上、何も聞き出せないと理解すると斎は、サイラスから視線を逸らした。
「授業を再開する」
 手にしたチョークで先ほどまでの続きを黒板に書き出す。教室内がざわつき、斎は手を止めた。
「私語は禁止だ」
 いつもの斎とは違う様子に、生徒達は戸惑いながら、授業を続けた。
 守秘義務? と斎は先ほどのサイラスの言葉を思い出す。何かの機関に属しているということなのだろうか。今朝、サイラスに関する資料を見た限りでは、アメリカ合衆国マサチューセッツ州ケンブリッジから来た事になっている。
 マサチューセッツ州は、サイラスが口にしたアーカムという架空の都市が存在しているとされている州だ。
 そしてケンブリッジは、全米を代表する大学都市であり、チャールズ川を隔てて州都ボストンの対岸に位置する。そのボストンから車で三十分程の場所に、かつてセイラム村と呼ばれていたダンバースという町がある。
 そこは、北米一恐ろしい廃墟といわれるダンバース精神病院の廃墟が存在し、1692年3月1日から始まる一連の裁判、セイラムの魔女裁判として有名な場所である。それは、牧師サミュエル・パリスの娘エリザベスと、その従姉妹アビゲイル・ウィリアムス、友人であるメアリ・ウォルコット、スザンナ・シェルドン、アン・パトナム、マーシー・ルイスが始めた占いが発端だった。それはやがて、総勢十人もの少女達が集まる事になり、事件は起こる。はじめにエリザベスが奇怪な行動を取り出し、アビゲイルがそれに続いた。それらは悪魔憑きと診断され、魔女探しが始まってしまう。エリザベス達は、次々と無実の村人を魔女と告発し、十九名が処刑、一名が拷問中に死亡、五名が獄死し、最終的に二百名近い村人が、魔女として告発された。
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