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suggestio veri, suggestio falsi
duo
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荒くなる天弥の息遣いの中に、微かに享楽を思わせる声が混じりだす。
「あ……」
首筋に移動した斎の唇により、天弥の中に一気に快楽が走りぬけ、思わず声が出る。いつのまにか、天弥の瞳から溢れていた涙が止まり、代わりに快楽で潤む。
「ちょー! そこまでや!」
突然のサイラスの声に、斎は顔を上げた。
「ここは病院やで」
言葉を続けるサイラスを余所に、斎はメガネをかけると、意識が朦朧としている天弥を抱きしめた。
「分かっている」
不機嫌な声で斎が答える。サイラスはため息を吐くと、陶酔した表情の天弥に向かってアイスココアの缶を差し出した。反射的に手を出し、それを受け取る。
「俺のは?」
斎の問いに、サイラスはその顔を見た。
「教師が生徒にたかるんか?」
そう答えながら、椅子へと腰かけ、手にしているコーラ飲料のペットボトルの蓋を開けた。
「ったく、廊下で待っとる俺の身にもなって欲しいわ」
言い終えるとペットボトルに口を付ける。いかにもアメリカ人が好みそうなその飲料を、美味そうに飲む。
天弥は、自分を間に挟んで交わされる会話と、手の中にある冷たい感触に徐々に意識を取り戻す。うっすらと霞む思考の中で、サイラスの姿が認識されたとたん、天弥の意識が一気に覚醒をする。自分が斎の膝の上で抱きしめられている事を思い出し、慌ててその腕から逃れようと動き出す。
「あ、あの……」
天弥の抵抗にも構わず、斎はその身体を強く抱きしめた。
「先生!」
泣き出しそうな表情で、天弥は必死に斎に訴える。自分との事が露見したりしたら、困る事になるのだ。
「大丈夫だ」
天弥を落ち着かせるように、その耳元で優しく囁く。その言葉に、天弥はおそるおそる視線をサイラスへと向けるが、特に変わった様子もない。
「知ってたの?」
僅かに震える声で、尋ねた。
「あー、まぁ」
返事を聞いたとたん、天弥の顔が赤くなる。知られているなど、露程も思っていなかったため、恥ずかしさのあまり、まともにサイラスを見ることが出来ない。
「あ、あの僕……」
今更、何をどう言えば良いのかと考えるが、何も浮かばずに天弥は困惑する。
「顔を洗ってきます」
とりあえず、この場から消えたくて思わず適当な言葉が口を吐く。その言葉に斎の腕の力が緩むと、慌ててそこから抜け出し部屋の外へと出ていった。
「あーそうや、この前言った事、取り消すわ」
天弥が出て行ったドアを見つめる斎に、サイラスは声をかける。斎は、少し考えるような表情をサイラスに向けた。
「どれの事だ?」
「天弥と別れろって言ったやろ? あれや」
確かに言われたと思い出す。だが、天弥と別れる気など端からないため、斎にとっては無意味なものだった。
「あぁ、それなら間違っても別れようなどと思うことはないから、言うだけ無駄だ」
「さよか」
聞くまでもない答えを聞き、サイラスも感情のこもらない返事をする。
「なんでいきなり方針を変えたんだ?」
サイラスは、大きなため息を吐きそうになった。あの時点では、天弥を確保するのに邪魔となる斎を排除するだけでよかったのだ。
「色々と事情が変わったんや……」
「あ……」
首筋に移動した斎の唇により、天弥の中に一気に快楽が走りぬけ、思わず声が出る。いつのまにか、天弥の瞳から溢れていた涙が止まり、代わりに快楽で潤む。
「ちょー! そこまでや!」
突然のサイラスの声に、斎は顔を上げた。
「ここは病院やで」
言葉を続けるサイラスを余所に、斎はメガネをかけると、意識が朦朧としている天弥を抱きしめた。
「分かっている」
不機嫌な声で斎が答える。サイラスはため息を吐くと、陶酔した表情の天弥に向かってアイスココアの缶を差し出した。反射的に手を出し、それを受け取る。
「俺のは?」
斎の問いに、サイラスはその顔を見た。
「教師が生徒にたかるんか?」
そう答えながら、椅子へと腰かけ、手にしているコーラ飲料のペットボトルの蓋を開けた。
「ったく、廊下で待っとる俺の身にもなって欲しいわ」
言い終えるとペットボトルに口を付ける。いかにもアメリカ人が好みそうなその飲料を、美味そうに飲む。
天弥は、自分を間に挟んで交わされる会話と、手の中にある冷たい感触に徐々に意識を取り戻す。うっすらと霞む思考の中で、サイラスの姿が認識されたとたん、天弥の意識が一気に覚醒をする。自分が斎の膝の上で抱きしめられている事を思い出し、慌ててその腕から逃れようと動き出す。
「あ、あの……」
天弥の抵抗にも構わず、斎はその身体を強く抱きしめた。
「先生!」
泣き出しそうな表情で、天弥は必死に斎に訴える。自分との事が露見したりしたら、困る事になるのだ。
「大丈夫だ」
天弥を落ち着かせるように、その耳元で優しく囁く。その言葉に、天弥はおそるおそる視線をサイラスへと向けるが、特に変わった様子もない。
「知ってたの?」
僅かに震える声で、尋ねた。
「あー、まぁ」
返事を聞いたとたん、天弥の顔が赤くなる。知られているなど、露程も思っていなかったため、恥ずかしさのあまり、まともにサイラスを見ることが出来ない。
「あ、あの僕……」
今更、何をどう言えば良いのかと考えるが、何も浮かばずに天弥は困惑する。
「顔を洗ってきます」
とりあえず、この場から消えたくて思わず適当な言葉が口を吐く。その言葉に斎の腕の力が緩むと、慌ててそこから抜け出し部屋の外へと出ていった。
「あーそうや、この前言った事、取り消すわ」
天弥が出て行ったドアを見つめる斎に、サイラスは声をかける。斎は、少し考えるような表情をサイラスに向けた。
「どれの事だ?」
「天弥と別れろって言ったやろ? あれや」
確かに言われたと思い出す。だが、天弥と別れる気など端からないため、斎にとっては無意味なものだった。
「あぁ、それなら間違っても別れようなどと思うことはないから、言うだけ無駄だ」
「さよか」
聞くまでもない答えを聞き、サイラスも感情のこもらない返事をする。
「なんでいきなり方針を変えたんだ?」
サイラスは、大きなため息を吐きそうになった。あの時点では、天弥を確保するのに邪魔となる斎を排除するだけでよかったのだ。
「色々と事情が変わったんや……」
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