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suggestio veri, suggestio falsi
quinque
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頭の中で、第一問である「実数の部分集合には可付番集合と連続濃度集合の二種類しか存在しない」を終え、斎は第二問の「算術の公理が矛盾を導かないことを証明せよ」へと移り証明を始める。
次々と問題を進めるが、第八問はリーマン予想のため、飛ばす。第十問のディオファントス方程式の可解性の決定問題の途中で、天弥の身体から力が抜けており、規則正しい微かな寝息が聞こえることに気がついた。
問題を解くのを中断し、天弥の身体を抱き上げた。そしてベッドへその身体を横たえると、革靴を脱がし床へと置く。
ベッドに腰かけ、安心したような表情で眠る天弥の顔を見て、睡眠もろくに取っていなかったのだと理解をする。
手を伸ばし、静かに天弥の頬に触れた。今、自分達の周りで何が起きているのか、まったく予想が出来ない。今度、何かあった時には、天弥を守ることが出来るのだろうかと、不安が広がる。もし、サイラスが本気でくるなら、勝てる自信は無い。
天弥の寝顔を少しの間見つめると、ゆっくりとその額や頬、唇に何度も口付けを落とした。
危険を知らせるかのような嫌な感覚に、斎は浅い眠りから、意識を引きずり出された。上半身を起こすと手を伸ばし、メガネを取る。確認するまでもなく、この感覚が何なのかを知っている。だが、なぜこんな時間にと思いながら時計を見た後に、視線を窓へと移した。
月の光を浴びた長い金髪が、窓から吹き込む風にたなびくその姿は、夜目にも鮮やかに映える。
「見舞いには遅すぎないか?」
もうすぐ日付が変わる時間だ。そこの窓から忍び込んだのだと予想するが、ここは三階なのだ。どのような方法でここまで登って来たのかが謎である。
「今日は『マジカルミントちゃん』の放送日やから、放課後は来られんかったんや」
サイラスの言葉に、斎は訝しげな表情をする。そして、おそらくアニメ番組の事なのだろうと予測をした。
「先生とミントちゃんやったら、やっぱミントちゃんが優先やろ」
何かを思い出したかのように、サイラスの表情がにやける。
「みんトちゃん最高やわ。俺、今度でるDVD、初回限定版を二つと、通常版を予約したんやで」
なぜ同じものを複数も必要とするのか、斎には理解できず、さらに表情が固まる。
「初回限定版はBOX仕様で、ミントちゃんフィギュアが付いとるんや、すごいやろ?」
サイラスの問いに、斎が首を傾げた。何が凄いのか、斎にはまったく理解できなかったのだ。
「それより、こんな時間に何をしに来たんだ?」
嬉しそうに話すサイラスの質問を無視し、斎は自分の疑問を投げかけた。
その言葉にサイラスは、つまらなそうな表情で、手に持っていた円柱形の赤と金色の缶を放り投げた。それを受け取り、斎は手の中の物を確認する。普段、吸っている煙草の缶タイプだった。
「見舞いや」
その言葉と手の中の煙草の缶に、斎は昨日のサイラスの言葉を思い出した。わざわざ持って来てくれたということなのかと考え、サイラスへと視線を移した。
「それやろ?」
「ああ、すまない」
次々と問題を進めるが、第八問はリーマン予想のため、飛ばす。第十問のディオファントス方程式の可解性の決定問題の途中で、天弥の身体から力が抜けており、規則正しい微かな寝息が聞こえることに気がついた。
問題を解くのを中断し、天弥の身体を抱き上げた。そしてベッドへその身体を横たえると、革靴を脱がし床へと置く。
ベッドに腰かけ、安心したような表情で眠る天弥の顔を見て、睡眠もろくに取っていなかったのだと理解をする。
手を伸ばし、静かに天弥の頬に触れた。今、自分達の周りで何が起きているのか、まったく予想が出来ない。今度、何かあった時には、天弥を守ることが出来るのだろうかと、不安が広がる。もし、サイラスが本気でくるなら、勝てる自信は無い。
天弥の寝顔を少しの間見つめると、ゆっくりとその額や頬、唇に何度も口付けを落とした。
危険を知らせるかのような嫌な感覚に、斎は浅い眠りから、意識を引きずり出された。上半身を起こすと手を伸ばし、メガネを取る。確認するまでもなく、この感覚が何なのかを知っている。だが、なぜこんな時間にと思いながら時計を見た後に、視線を窓へと移した。
月の光を浴びた長い金髪が、窓から吹き込む風にたなびくその姿は、夜目にも鮮やかに映える。
「見舞いには遅すぎないか?」
もうすぐ日付が変わる時間だ。そこの窓から忍び込んだのだと予想するが、ここは三階なのだ。どのような方法でここまで登って来たのかが謎である。
「今日は『マジカルミントちゃん』の放送日やから、放課後は来られんかったんや」
サイラスの言葉に、斎は訝しげな表情をする。そして、おそらくアニメ番組の事なのだろうと予測をした。
「先生とミントちゃんやったら、やっぱミントちゃんが優先やろ」
何かを思い出したかのように、サイラスの表情がにやける。
「みんトちゃん最高やわ。俺、今度でるDVD、初回限定版を二つと、通常版を予約したんやで」
なぜ同じものを複数も必要とするのか、斎には理解できず、さらに表情が固まる。
「初回限定版はBOX仕様で、ミントちゃんフィギュアが付いとるんや、すごいやろ?」
サイラスの問いに、斎が首を傾げた。何が凄いのか、斎にはまったく理解できなかったのだ。
「それより、こんな時間に何をしに来たんだ?」
嬉しそうに話すサイラスの質問を無視し、斎は自分の疑問を投げかけた。
その言葉にサイラスは、つまらなそうな表情で、手に持っていた円柱形の赤と金色の缶を放り投げた。それを受け取り、斎は手の中の物を確認する。普段、吸っている煙草の缶タイプだった。
「見舞いや」
その言葉と手の中の煙草の缶に、斎は昨日のサイラスの言葉を思い出した。わざわざ持って来てくれたということなのかと考え、サイラスへと視線を移した。
「それやろ?」
「ああ、すまない」
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