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ドアが閉まると同時に、天弥の声が斎の耳をくすぐった。
「いや。それより、よく眠れたか?」
シートベルトをしながら、斎が尋ねる。
「はい」
同じく、シートベルトをしながら天弥が答えた。
「そうか」
斎は天弥に向かって手を伸ばし、髪に触れる。
「どこか、行きたい所はあるか?」
本当は、今すぐにでも天弥が欲しいと思うが、会ってすぐにというのは、さすがに気が引けた。とりあえず、天弥が行きたいという所へ連れて行き、夕食の後にでもと考える。
「今日、晩ご飯までに帰らないと行けないので、それまでに帰れる所が良いです」
天弥の言葉に、先ほど立てた予定が役に立たなくなった事を知り、考え直す。今すぐでも良いかと思うが、夕食までに帰すとしたら、三、四時間しか無い。時間的には無理ではないと考えながら、天弥を見る。
「あの……、ごめんなさい」
いつもと違う斎の表情に、天弥は謝罪を口にした。
「なんで謝る?」
潤んだ瞳で天弥は斎を見つめる。
「今日、あまり時間がないから……」
昨日、母親に遅くなると伝えておいたが、さすがに帰るのが遅すぎた。寝ずに待っていた母親に見つかり、咎められた。もう時間も遅いという事で、その場ではさして怒られはしなかったが、昼ごろに目を覚ましてから先ほどまで、ずっと叱られていた。説教が終わった後、出かけると言うと夕食までには帰ってくるようにと釘を刺された。
「別に、謝ることじゃないだろ」
沈んだ表情の天弥に、声をかける。理由は予想が付く。昨夜の事は自分に落ち度があるため、天弥が謝る必要はないと考える。
落ち込んだその様子と、初めてだというのに時間に追われてというのも天弥がかわいそうに思え、今日の予定を断念することにした。
「そんな顔するな」
抱きしめてキスしたい衝動を抑えながら、天弥の頭を撫でる。ふと、自分を見つめるその顔に引っかかりを覚え、記憶を漁る。昨日、胡桃沢から預かった物を思い出し、シートの後ろへと視線を向けた。そして、目に付いたチョコレートの箱と写真を手に取る。
「天弥、これ胡桃沢教授から預かってきた」
古い写真を手渡す。天弥は受け取った写真を見つめ、表情を変えた。
「これ……、お母さん……?」
自分とよく似た写真の中の少女を見つめながら、呟いた。
「教授と天弥のお祖父さんは、知り合いなんだそうだ」
その言葉に天弥は、驚きの表情を素直に斎へと向けた。
「天弥に渡して欲しいと頼まれたが、詳しいことは聞いていない」
「そうだったんですか……。僕、本当のお母さんのことは何も覚えていなくて……」
天弥は再び写真の中の母親を見つめ、静かに口を開いた。全くと言ってよいほど、天弥の中に実の母親の記憶はない。
写真を見つめる天弥の憂いに満ちた表情を見つめる。少しでも浮上すればと思い、胡桃沢からの土産のチョコレートを天弥に向かって差し出した。
「教授からの土産だ」
天弥は、ナッツ入りのチョコレートの箱へと視線を向ける。すぐに表情が変わり、斎の顔へと視線が移動した。
「食べてもいいんですか?」
「いや。それより、よく眠れたか?」
シートベルトをしながら、斎が尋ねる。
「はい」
同じく、シートベルトをしながら天弥が答えた。
「そうか」
斎は天弥に向かって手を伸ばし、髪に触れる。
「どこか、行きたい所はあるか?」
本当は、今すぐにでも天弥が欲しいと思うが、会ってすぐにというのは、さすがに気が引けた。とりあえず、天弥が行きたいという所へ連れて行き、夕食の後にでもと考える。
「今日、晩ご飯までに帰らないと行けないので、それまでに帰れる所が良いです」
天弥の言葉に、先ほど立てた予定が役に立たなくなった事を知り、考え直す。今すぐでも良いかと思うが、夕食までに帰すとしたら、三、四時間しか無い。時間的には無理ではないと考えながら、天弥を見る。
「あの……、ごめんなさい」
いつもと違う斎の表情に、天弥は謝罪を口にした。
「なんで謝る?」
潤んだ瞳で天弥は斎を見つめる。
「今日、あまり時間がないから……」
昨日、母親に遅くなると伝えておいたが、さすがに帰るのが遅すぎた。寝ずに待っていた母親に見つかり、咎められた。もう時間も遅いという事で、その場ではさして怒られはしなかったが、昼ごろに目を覚ましてから先ほどまで、ずっと叱られていた。説教が終わった後、出かけると言うと夕食までには帰ってくるようにと釘を刺された。
「別に、謝ることじゃないだろ」
沈んだ表情の天弥に、声をかける。理由は予想が付く。昨夜の事は自分に落ち度があるため、天弥が謝る必要はないと考える。
落ち込んだその様子と、初めてだというのに時間に追われてというのも天弥がかわいそうに思え、今日の予定を断念することにした。
「そんな顔するな」
抱きしめてキスしたい衝動を抑えながら、天弥の頭を撫でる。ふと、自分を見つめるその顔に引っかかりを覚え、記憶を漁る。昨日、胡桃沢から預かった物を思い出し、シートの後ろへと視線を向けた。そして、目に付いたチョコレートの箱と写真を手に取る。
「天弥、これ胡桃沢教授から預かってきた」
古い写真を手渡す。天弥は受け取った写真を見つめ、表情を変えた。
「これ……、お母さん……?」
自分とよく似た写真の中の少女を見つめながら、呟いた。
「教授と天弥のお祖父さんは、知り合いなんだそうだ」
その言葉に天弥は、驚きの表情を素直に斎へと向けた。
「天弥に渡して欲しいと頼まれたが、詳しいことは聞いていない」
「そうだったんですか……。僕、本当のお母さんのことは何も覚えていなくて……」
天弥は再び写真の中の母親を見つめ、静かに口を開いた。全くと言ってよいほど、天弥の中に実の母親の記憶はない。
写真を見つめる天弥の憂いに満ちた表情を見つめる。少しでも浮上すればと思い、胡桃沢からの土産のチョコレートを天弥に向かって差し出した。
「教授からの土産だ」
天弥は、ナッツ入りのチョコレートの箱へと視線を向ける。すぐに表情が変わり、斎の顔へと視線が移動した。
「食べてもいいんですか?」
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