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nosce te ipsum
undecim
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斎の問いに、天弥の箸が止まる。すでに限界に近いほど心臓が煩く騒いでいるはずなのに、さらに拍車が掛かっていく。思うように動かない身体を必死に動かし、小さく頷いた。
予鈴と共に教科室を後にし、天弥は教室へと向かった。まだ熱を帯びた頬に静かに触れる。間違いなく、まだ顔が赤い。
昼食後、勉強は一切せずにひたすら斎のキスを受け入れていた。ソファーに押し倒されたと思ったら、すぐに何度も唇を重ねてきた。それは唇だけではなく、首筋や胸、おへそまで、上半身で斎の唇が触れていない所はないのではないかと思うぐらい、何度もキスをされた。
自分の名を呼ぶ甘く切ない声を思い出し、さらに身体が火照るのを感じる。このままでは教室へ行くことが出来ないと思いつつも、斎に焦がれる想いは止まらない。
こんな調子で放課後は大丈夫なのだろうかと考えると、天弥はその場に足を止めて膝を抱え込むようにしゃがみ込んだ。やっと、キスをするのにも慣れてきたばかりなのだ。昼休みの事は、すでに許容を超えている。だが、もう放課後は承諾をしてしまった。とっくに覚悟は決めていたはずだが、後数時間なのだと考えると不安がこみ上げてくる。
少し落ち着きを取り戻そうと立ち上がり、ゆっくりと深呼吸をした。午後の授業に数学がないことを少しだけ感謝し、足を踏み出す。
まだ顔が赤いのを承知しながら、教室のドアを開けた。投げかけられる挨拶を返しながら、自分の机へと向かう。
「遅かったやん」
鞄を机の横にかけていると、聞きなれた声が聞こえてきた。
「うん、病院へ行ってたから」
隣の席へと視線を向け、答えた。
「風邪なんか? なんや顔が赤いけど」
答えに困りながらも、天弥はサイラスに向けて首を横に振る。
「ちょっと体調が悪かっただけだから、そんなたいした事じゃなかったし」
席に着く。
「そんならええけど」
サイラスの言葉を聞きながら、午後の授業の準備を始める。
「そうや、土曜日つき合ってくれた礼を言っとらんかった」
天弥はサイラスの顔を見る。
「あの、土曜日なんだけど……、僕、何かしなかった?」
あの時、一緒にいたサイラスなら知っているかもしれないと考え、土曜日のことを尋ねてみた。
「天弥、覚えとらんの?」
サイラスの言葉に、天弥は不安に苛まれ始める。
「覚えてないっていうか、忘れたっていうか……」
返答に困り、曖昧な言葉を返す。その様子を見ながら、サイラスは少し何かを考え込む表情をした。
「なんや、あんなに俺のこと好きやって言っとったのに、忘れたんか?」
少しからかってみようと思い、サイラスは楽しそうにそう告げた。
「え? 本当に?」
天弥の表情が見る間に変わり、動揺と絶望が彩っていく。
「本当に、僕そんなこと言ったの?」
声を荒げる天弥に、周りの視線が集まる。予想外の事に驚きの表情を浮かべ、サイラスは天弥を見た。少しからかうだけのつもりだったし、いつもなら俯いて困ったように黙り込んでしまうのだ。
もし、サイラスが言ったことが本当だとしたら、そう思うと天弥は居ても立ってもいられずに教室のドアへと向かった。
「天弥?」
予鈴と共に教科室を後にし、天弥は教室へと向かった。まだ熱を帯びた頬に静かに触れる。間違いなく、まだ顔が赤い。
昼食後、勉強は一切せずにひたすら斎のキスを受け入れていた。ソファーに押し倒されたと思ったら、すぐに何度も唇を重ねてきた。それは唇だけではなく、首筋や胸、おへそまで、上半身で斎の唇が触れていない所はないのではないかと思うぐらい、何度もキスをされた。
自分の名を呼ぶ甘く切ない声を思い出し、さらに身体が火照るのを感じる。このままでは教室へ行くことが出来ないと思いつつも、斎に焦がれる想いは止まらない。
こんな調子で放課後は大丈夫なのだろうかと考えると、天弥はその場に足を止めて膝を抱え込むようにしゃがみ込んだ。やっと、キスをするのにも慣れてきたばかりなのだ。昼休みの事は、すでに許容を超えている。だが、もう放課後は承諾をしてしまった。とっくに覚悟は決めていたはずだが、後数時間なのだと考えると不安がこみ上げてくる。
少し落ち着きを取り戻そうと立ち上がり、ゆっくりと深呼吸をした。午後の授業に数学がないことを少しだけ感謝し、足を踏み出す。
まだ顔が赤いのを承知しながら、教室のドアを開けた。投げかけられる挨拶を返しながら、自分の机へと向かう。
「遅かったやん」
鞄を机の横にかけていると、聞きなれた声が聞こえてきた。
「うん、病院へ行ってたから」
隣の席へと視線を向け、答えた。
「風邪なんか? なんや顔が赤いけど」
答えに困りながらも、天弥はサイラスに向けて首を横に振る。
「ちょっと体調が悪かっただけだから、そんなたいした事じゃなかったし」
席に着く。
「そんならええけど」
サイラスの言葉を聞きながら、午後の授業の準備を始める。
「そうや、土曜日つき合ってくれた礼を言っとらんかった」
天弥はサイラスの顔を見る。
「あの、土曜日なんだけど……、僕、何かしなかった?」
あの時、一緒にいたサイラスなら知っているかもしれないと考え、土曜日のことを尋ねてみた。
「天弥、覚えとらんの?」
サイラスの言葉に、天弥は不安に苛まれ始める。
「覚えてないっていうか、忘れたっていうか……」
返答に困り、曖昧な言葉を返す。その様子を見ながら、サイラスは少し何かを考え込む表情をした。
「なんや、あんなに俺のこと好きやって言っとったのに、忘れたんか?」
少しからかってみようと思い、サイラスは楽しそうにそう告げた。
「え? 本当に?」
天弥の表情が見る間に変わり、動揺と絶望が彩っていく。
「本当に、僕そんなこと言ったの?」
声を荒げる天弥に、周りの視線が集まる。予想外の事に驚きの表情を浮かべ、サイラスは天弥を見た。少しからかうだけのつもりだったし、いつもなら俯いて困ったように黙り込んでしまうのだ。
もし、サイラスが言ったことが本当だとしたら、そう思うと天弥は居ても立ってもいられずに教室のドアへと向かった。
「天弥?」
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