117 / 236
nosce te ipsum
decem
しおりを挟む
ジッと自分を見つめる斎に向かい、疑問を投げかける。斎は天弥の頬に触れている手を離し、その華奢な身体を抱き寄せた。天弥は、斎の腕の中の温もりと幸福感に包まれながら、目を閉じる。
「とりあえず、昼飯を食うか?」
答えが出ない考えを、自分の中へと押し込めた。
「はい」
嬉しそうな返事を聞くと、その腕を離し立ち上がった。机に向かい、手にした資料や教科書を置くと、鞄から弁当を取り出す。机の上に置いてある煙草の箱も一緒に手にし、ソファーへと戻った。
すでに嬉しそうに弁当を広げている天弥の横へと座り、目前のテーブルに弁当と煙草を置く。
「いただきます」
嬉しそうに、天弥は弁当へと手を付け始めた。斎もその後に続くかのように、テーブルの上から弁当を手に取る。
何かを食べている時の天弥は、とても幸せそうだと思う。特に甘いものだとそれが顕著になる。ふと脳裏に、昨日の天弥の幸せそうな顔と、車中に漂う甘い香りが蘇る。昨日のチョコレートも、水族館への行き帰りの車中で全て食べてしまった。よく、それだけ甘いものを食べられるものだと、いつもながら感心をしてしまった。
自分の弁当のおかずを箸で掴むと天弥に向けて差し出した。
「ほら」
天弥は差し出されたおかずの存在に気が付く。嬉しそうな笑みを浮かべ、それを口に入れる。
「美味しいです」
笑顔を斎に向けてそう言うと天弥は、大好きなおかずである玉子焼きを箸で掴んだ。
「はい」
笑顔と共に差し出された玉子焼きを見て、斎は一瞬ためらうがそれを口に入れた。相変わらず、玉子の味も出汁の味もしない、恐ろしいほどの甘さが口の中に広がる。だが、天弥が一番好きだというものをくれるのだから、喜んでそれを食べる。斎の様子を嬉しそうに見つめると、天弥は再び弁当に箸を付け始める。
「天弥」
名前を呼ばれ、斎へと顔を向けると目の前に端正な顔があり、天弥の心臓が驚きを訴える。
「動くな」
そう言うと斎は天弥の頬に手を置いた。すぐに、天弥は右の口角のすぐ横に触れる斎の唇の感触を感じる。キスにしては位置が変だと考えていると、今度は何か塗れた少しざらつく感じのものが這うのを感じた。ゾクリと背中を駆け抜ける快楽に、それが斎の舌で、唇の横を舐められているということを理解する。とたんに、天弥の心臓が大きな音を立て、一気に体温が上昇した。
「ご飯粒がついていたぞ」
赤く染めた顔をした天弥に向かい、斎は少し意地悪そうな笑みを浮かべると食事を再開した。涼しい顔をしながら食事を続ける斎を、天弥は熱を帯びた目で見つめる。
本当なら土曜日に、斎ともっと深い関係になっていたはずだった。そう考えたとたん、天弥を羞恥が支配する。斎の形の良い唇、少しはだけた胸元、長い指をした綺麗な手、どれもが天弥の中の情欲を掻き立てる。
「どうした?」
いつもと同じ表情と声音の斎に、一人で邪な想いを浮かべている自分を知られたくなくて、天弥は首を横に振ると視線を逸らした。
どう反応してよいのか分からず、とりあえず弁当に箸を付け、機械的に口元に運ぶ。味など少しも分からない。盗み見るように、何度も斎へと密かに視線を向ける。
「天弥、今日は少し遅くなっても平気か?」
「とりあえず、昼飯を食うか?」
答えが出ない考えを、自分の中へと押し込めた。
「はい」
嬉しそうな返事を聞くと、その腕を離し立ち上がった。机に向かい、手にした資料や教科書を置くと、鞄から弁当を取り出す。机の上に置いてある煙草の箱も一緒に手にし、ソファーへと戻った。
すでに嬉しそうに弁当を広げている天弥の横へと座り、目前のテーブルに弁当と煙草を置く。
「いただきます」
嬉しそうに、天弥は弁当へと手を付け始めた。斎もその後に続くかのように、テーブルの上から弁当を手に取る。
何かを食べている時の天弥は、とても幸せそうだと思う。特に甘いものだとそれが顕著になる。ふと脳裏に、昨日の天弥の幸せそうな顔と、車中に漂う甘い香りが蘇る。昨日のチョコレートも、水族館への行き帰りの車中で全て食べてしまった。よく、それだけ甘いものを食べられるものだと、いつもながら感心をしてしまった。
自分の弁当のおかずを箸で掴むと天弥に向けて差し出した。
「ほら」
天弥は差し出されたおかずの存在に気が付く。嬉しそうな笑みを浮かべ、それを口に入れる。
「美味しいです」
笑顔を斎に向けてそう言うと天弥は、大好きなおかずである玉子焼きを箸で掴んだ。
「はい」
笑顔と共に差し出された玉子焼きを見て、斎は一瞬ためらうがそれを口に入れた。相変わらず、玉子の味も出汁の味もしない、恐ろしいほどの甘さが口の中に広がる。だが、天弥が一番好きだというものをくれるのだから、喜んでそれを食べる。斎の様子を嬉しそうに見つめると、天弥は再び弁当に箸を付け始める。
「天弥」
名前を呼ばれ、斎へと顔を向けると目の前に端正な顔があり、天弥の心臓が驚きを訴える。
「動くな」
そう言うと斎は天弥の頬に手を置いた。すぐに、天弥は右の口角のすぐ横に触れる斎の唇の感触を感じる。キスにしては位置が変だと考えていると、今度は何か塗れた少しざらつく感じのものが這うのを感じた。ゾクリと背中を駆け抜ける快楽に、それが斎の舌で、唇の横を舐められているということを理解する。とたんに、天弥の心臓が大きな音を立て、一気に体温が上昇した。
「ご飯粒がついていたぞ」
赤く染めた顔をした天弥に向かい、斎は少し意地悪そうな笑みを浮かべると食事を再開した。涼しい顔をしながら食事を続ける斎を、天弥は熱を帯びた目で見つめる。
本当なら土曜日に、斎ともっと深い関係になっていたはずだった。そう考えたとたん、天弥を羞恥が支配する。斎の形の良い唇、少しはだけた胸元、長い指をした綺麗な手、どれもが天弥の中の情欲を掻き立てる。
「どうした?」
いつもと同じ表情と声音の斎に、一人で邪な想いを浮かべている自分を知られたくなくて、天弥は首を横に振ると視線を逸らした。
どう反応してよいのか分からず、とりあえず弁当に箸を付け、機械的に口元に運ぶ。味など少しも分からない。盗み見るように、何度も斎へと密かに視線を向ける。
「天弥、今日は少し遅くなっても平気か?」
0
あなたにおすすめの小説
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
BL 男達の性事情
蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。
漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。
漁師の仕事は多岐にわたる。
例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。
陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、
多彩だ。
漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。
漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。
養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。
陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。
漁業の種類と言われる仕事がある。
漁師の仕事だ。
仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。
沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。
日本の漁師の多くがこの形態なのだ。
沖合(近海)漁業という仕事もある。
沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。
遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。
内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。
漁師の働き方は、さまざま。
漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。
出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。
休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。
個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。
漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。
専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。
資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。
漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。
食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。
地域との連携も必要である。
沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。
この物語の主人公は極楽翔太。18歳。
翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。
もう一人の主人公は木下英二。28歳。
地元で料理旅館を経営するオーナー。
翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。
この物語の始まりである。
この物語はフィクションです。
この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。
女子切腹同好会
しんいち
ホラー
どこにでもいるような平凡な女の子である新瀬有香は、学校説明会で出会った超絶美人生徒会長に憧れて私立の女子高に入学した。そこで彼女を待っていたのは、オゾマシイ運命。彼女も決して正常とは言えない思考に染まってゆき、流されていってしまう…。
はたして、彼女の行き着く先は・・・。
この話は、切腹場面等、流血を含む残酷シーンがあります。御注意ください。
また・・・。登場人物は、だれもかれも皆、イカレテいます。イカレタ者どものイカレタ話です。決して、マネしてはいけません。
マネしてはいけないのですが……。案外、あなたの近くにも、似たような話があるのかも。
世の中には、知らなくて良いコト…知ってはいけないコト…が、存在するのですよ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる