apocalypsis

さくら

文字の大きさ
132 / 236
date et dabitur vobis

unus

しおりを挟む
 生活感のしない広いリビングに、アニメ番組の音声が響き渡っていた。サイラスは床に座り込みながら、心ここに在らずという様子でソファーに身を預けている斎を見つめた。コーラ飲料のペットボトルとポテトチップスの袋が手付かずのまま、本と共に斎の目前のテーブルに置かれている。
 斎が本を持ち、家を出たと連絡を受け、すぐにサイラスは外へと飛び出した。天弥の自宅近くの公園にたどり着いた時、そこには斎しか居らず、本を手にしたまま呆然とそこに立ち尽くしていた。
 話しかけても何の反応も示さない斎の腕を掴み、とりあえず自宅まで引きずってきた。ソファーに座ったままの斎をしばらく眺めていたが、何か情報が引き出せる様子ではなかった。どうして良いのか分からずに、とりあえず斎がまともに反応するようになるまで待ってみることにした。
 斎の周囲に漂う悲愴に耐えられず、テレビの電源を入れ深夜放送のアニメを流した。斎に何があったのか気になり、サイラスは放送されているアニメに集中出来ずにいた。
 しばらく、様子を伺いながらアニメを眺めていると何かが動く気配がした。視線を向けると、斎が立ち上がりドアへと向かって歩き出していた。
「先生?」
 サイラスは慌てて立ち上がると斎の腕を掴み、足を止めさせた。
「どこ行くんや?」
 少しの間を置いて、斎はドアから視線を逸らさずに口を開いた。
「天弥を捜しに……」
「天弥がどこにおるのか知っとんのか?」
 サイラスは即座に疑問を口にする。
「いや……、知らない」
 考えるまでもなく、斎は天弥の行動範囲をまったくといって良いほど知らない。いつも平日は校内、休日は車で遠くへと連れ出していたのだ。
「何か手がかりとかあらへんの?」
 斎は力なく視線を落とした。
「いや……。目の前でいきなり消えたんだ。何も分からない……」
 サイラスは、斎が天弥と会っていた事を知る。
「天弥は、誰かと一緒やなかったか?」
 そして目の前で消えたという言葉から、斎と会っていたのがどちらなのかも理解する。
「誰か……?」
 斎の背筋が凍りつく。
「違う……」
 血の気を失った表情で、小さく呟いた。
「あれは人ではなかった……。人の姿を模した別の存在だった」
 サイラスは嫌な考えが浮かぶ。もしかすると、天弥は深きものたちと手を組んだのかも知れない。
「人やないって?」
 自分の考えが徒労に終わるように願いながら、尋ねる。
「……闇」
「闇?」
 少しの間サイラスは考え込む。
「闇……、Darkness……」
 一つの名前が浮かび、一気に血の気が引く。
「The Dweller in Darkness……?」
 次々と、その存在を表す表現が浮かんでくる。
「The Crawling Chaos……、The Faceless God」
 無意識に、それらが口を吐いて出てきた。
「天弥は、ナイアールと呼んでいた」
 斎の口から出た名前に、サイラスの心臓が激しい音を立てた。
「Nyarlathotep……何で、そんなラスボスクラスが顕現しとるんや?」
 最悪だと、サイラスは思う。まだ、深きものたちと手を組んでくれていた方が、遥かにましだった。
「間違いないんか? ほんまにNyarlathotepやったんか?」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】

絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。 下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。 ※全話オリジナル作品です。

女子切腹同好会

しんいち
ホラー
どこにでもいるような平凡な女の子である新瀬有香は、学校説明会で出会った超絶美人生徒会長に憧れて私立の女子高に入学した。そこで彼女を待っていたのは、オゾマシイ運命。彼女も決して正常とは言えない思考に染まってゆき、流されていってしまう…。 はたして、彼女の行き着く先は・・・。 この話は、切腹場面等、流血を含む残酷シーンがあります。御注意ください。 また・・・。登場人物は、だれもかれも皆、イカレテいます。イカレタ者どものイカレタ話です。決して、マネしてはいけません。 マネしてはいけないのですが……。案外、あなたの近くにも、似たような話があるのかも。 世の中には、知らなくて良いコト…知ってはいけないコト…が、存在するのですよ。

10秒で読めるちょっと怖い話。

絢郷水沙
ホラー
 ほんのりと不条理な『ギャグ』が香るホラーテイスト・ショートショートです。意味怖的要素も含んでおりますので、意味怖好きならぜひ読んでみてください。(毎日昼頃1話更新中!)

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

意味が分かると怖い話【短編集】

本田 壱好
ホラー
意味が分かると怖い話。 つまり、意味がわからなければ怖くない。 解釈は読者に委ねられる。 あなたはこの短編集をどのように読みますか?

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

処理中です...