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date et dabitur vobis
quinque
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ドアが閉まると斎は辺りを見回した。先程までは余裕がなく、部屋の様子など何も気にしてはいなかった。今、多少の落ち着きを取り戻して周囲を観察してみると、西洋の古い家屋のようなアンティークな造りが施されている。見覚えのあるそれらの造りは、西洋漆喰をベースにした落ち着いた色合いにランダムな刷毛模様で仕上げられた壁、天然石を敷き詰められ磨かれた床、高い天井には柔らかな光を灯すアンテークランプを模した照明が等間隔に設置されている。
先程まで居た部屋の造りを思い出し、間違いなく姉の神楽が居住するマンションであると確信する。
迷うことなくエレベーターへと向かいながら、サイラスの居た生活感のない部屋を思い出す。家族が居た様子はなかった。あの広い部屋に、一人で居るのだろうかと考える。教団の事といい、なぜあの年齢でそのような生活をしているのか、不思議でならない。
エレベーターホールへとたどり着くと、下へ向かうためのボタンを押した。移動を知らせる表示の点滅を眺めながら、天弥の事を想う。
今の状況では、天弥自身を引きずり出すのは無理な事である。それなら、出て来ざるを得ない状況を作り出せばよい。そう考え、天弥と共に居た存在を思い浮かべる。
あの存在がナイアルラトホテップと呼ばれる神なのだとしたら、破壊や死よりも混乱や狂気を喜ぶはずだ。直接手は下さず、人間が自ら自滅するように仕向けるのを好む。そのために必要なものは惜しみなく授けてくれる。
エレベーターが到着した音で我に返り、開いたドアへ向かって足を踏み出し乗り込んだ。一階のボタンを押し閉まるドアを見つめながら、手にしている本の事を思い浮かべた。
総ては、二十五年前に天弥の祖父がこの本を手に入れた事から始まっている。この本を天弥の祖父に与えたのは、彼の神なのではないかと思えてならない。もしそうなのだとしたら、目的は間違いなく狂気や混乱である。ならば、これを望んだ天弥の祖父の目的は何かを考える。
胡桃沢の予想である、神の召喚は間違ってはいないと思う。問題は、何を呼び出そうとしたのかと、天弥の役割だ。
公園でやり取りされた会話を細かく思い浮かべる。普段の天弥を取り戻す事に必死で、それ以外の事柄に関しては深く思案している余裕はなかった。
目的の階にたどり着いたことを知らせる音が響き、目の前のドアが開いた。足を踏み出しエントランスへと出ると、そのまま広い玄関のドアへと足を向けた。オートロックのガラス戸をくぐり、自宅へと向かって夜道を歩き出す。
あの存在が開口一番に言った言葉は、面白いものを作っただった。それに対して天弥は勝手に作られたと答えた。作られたもの、それは間違いなく自分であり、作ったものは普段の天弥なのだと理解できる。そして思い当たる事は一つ、天弥からの輸血しかない。
先程まで居た部屋の造りを思い出し、間違いなく姉の神楽が居住するマンションであると確信する。
迷うことなくエレベーターへと向かいながら、サイラスの居た生活感のない部屋を思い出す。家族が居た様子はなかった。あの広い部屋に、一人で居るのだろうかと考える。教団の事といい、なぜあの年齢でそのような生活をしているのか、不思議でならない。
エレベーターホールへとたどり着くと、下へ向かうためのボタンを押した。移動を知らせる表示の点滅を眺めながら、天弥の事を想う。
今の状況では、天弥自身を引きずり出すのは無理な事である。それなら、出て来ざるを得ない状況を作り出せばよい。そう考え、天弥と共に居た存在を思い浮かべる。
あの存在がナイアルラトホテップと呼ばれる神なのだとしたら、破壊や死よりも混乱や狂気を喜ぶはずだ。直接手は下さず、人間が自ら自滅するように仕向けるのを好む。そのために必要なものは惜しみなく授けてくれる。
エレベーターが到着した音で我に返り、開いたドアへ向かって足を踏み出し乗り込んだ。一階のボタンを押し閉まるドアを見つめながら、手にしている本の事を思い浮かべた。
総ては、二十五年前に天弥の祖父がこの本を手に入れた事から始まっている。この本を天弥の祖父に与えたのは、彼の神なのではないかと思えてならない。もしそうなのだとしたら、目的は間違いなく狂気や混乱である。ならば、これを望んだ天弥の祖父の目的は何かを考える。
胡桃沢の予想である、神の召喚は間違ってはいないと思う。問題は、何を呼び出そうとしたのかと、天弥の役割だ。
公園でやり取りされた会話を細かく思い浮かべる。普段の天弥を取り戻す事に必死で、それ以外の事柄に関しては深く思案している余裕はなかった。
目的の階にたどり着いたことを知らせる音が響き、目の前のドアが開いた。足を踏み出しエントランスへと出ると、そのまま広い玄関のドアへと足を向けた。オートロックのガラス戸をくぐり、自宅へと向かって夜道を歩き出す。
あの存在が開口一番に言った言葉は、面白いものを作っただった。それに対して天弥は勝手に作られたと答えた。作られたもの、それは間違いなく自分であり、作ったものは普段の天弥なのだと理解できる。そして思い当たる事は一つ、天弥からの輸血しかない。
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