apocalypsis

さくら

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date et dabitur vobis

quindecim

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 乾いた声で、何とか言葉を紡ぎだすのが精一杯の事だった。
 目の前の天弥の姿に、視線が釘付けになる。想い焦がれる相手ではないのは分かっているが、その相貌には無理やり心を奪われてしまう魅力があるのだ。必死に自分自身を律しながら、どうすれば想う相手を取り戻せるのかを考える。
 斎の言葉に天弥は、少し嬉しそうな笑みを浮かべた。その表情が普段の天弥と少し重なり、思わずその身体を抱き寄せてしまいそうになる。
「先生のせいで、僕、凄く苦しいんです」
 天弥は、斎に触れている手をゆっくりと動かし始めた。無駄の無い身体の上を滑らせるように、天弥の手が上へと移動していく。白く華奢な手から伝わる熱に、斎の体温も上がる。
「苦しい? 何でだ?」
 斎が言い終わると同時に、天弥の指がその首筋に触れた。それはシャツの上から感じた熱や感触よりもハッキリとしたもので、斎の鼓動が跳ね上がる。
「先生が知る必要はありません」
「なぜだ? 分からなければ、どうしようもないだろ?」
 目の前で微笑む天弥に、斎は望みを叶えるよりも先に自分が取り込まれてしまいそうになる。自分の理性を保つために、斎は恋焦がれる相手の事を想う。
「必要ありませんよ」
 そう答える天弥の指先に少し力が込められる。斎は反射的に自分の首筋に食い込む天弥の手を掴む。
「だって、先生には消えてもらうのだから」
 斎の視界に映る麗しい容貌が霞む。さらに力の込められた天弥の手から逃れようと、斎はもがくように自分の手に力を込めた。だが、細く華奢な指は構わず斎の首に食い込んでいく。必死にその手を引き剥がそうとするが、ビクともしない。それは、その細い腕のどこにそのような力があるのかと不思議に思う程のものだった。
 苦しくなる呼吸と締め付けられる痛みに、心肺が酸素を求めて悲鳴を上げだす。
「illa me amabat……」
 彼女? 薄れていく意識の中、耳に天弥の言葉が響く。彼女とは誰なのか、そして、その未完了過去の言葉が意味するものは何なのか、鈍くなっていく意識に疑問が浮かぶ。
 自分の首を締め付ける天弥の手から逃れようと足掻き続けるが、それは叶わず意識と視界が暗くなっていく。
「だ…め……」
 意識が途切れそうになった瞬間、新たな言葉が耳に届いた。それと同時に、首を絞める天弥の力が少し緩んだ。何度も否定の言葉を繰り返し呟く天弥の瞳から、涙が溢れ出す。天弥は空いている手で、自分の胸元を掴んだ。
「邪魔しないでください……」
 そう言い、自分の中で騒ぎ出した存在を無理やり押さえ込もうとする。一刻も早く事を終わらせようと、天弥は再び斎の首を絞める指に力を込めようとする。
「だめー!」
 天弥の搾り出すような叫び声が響いたとたん、斎の首にかかる力が無くなり一気に空気が流れ込む。激しい咳き込みと共に力なくその場に膝を付き、新鮮な酸素を求めて荒く呼吸を繰り返す。
「ご……ごめんなさい……」
 謝罪の言葉が聞こえ、斎は気力を振り絞って顔を上げ声の主を見た。まだ意識は朦朧とし、酸素不足だった脳細胞は沸騰しそうなほどの頭痛を訴えている。それでも、不安と心痛に表情を曇らせながら自分を見つめる天弥の姿だけは、ハッキリと分かった。
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