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date et dabitur vobis
sedecim
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力が入らず、上手く動かない身体に苛立ちを感じながらも、斎は天弥に向かって手を伸ばした。それを見て天弥は、力なく首を横に振りながらゆっくりと後退る。
「たか……み」
斎に名前を呼ばれ、天弥の表情に切なさが浮かぶ。自分にむかって差し出されたその手を、掴みたかった。だが、自分のせいで斎は落命をするところだったのだ。
「ごめんなさい」
天弥はそう告げると、背を向けその場から立ち去ろうとした。
「天弥!」
自分を呼び止める声に続き、腕を掴まれ足を止める。振り向いたら、斎から離れられなくなりそうで、天弥はそのまま立ち尽くす。
「悪かった……」
まだ少し辛そうな声が、天弥の耳に届き、静かに顔を伏せた。
「天弥を傷つけてばかりで、本当にすまないと思っている」
天弥は首を横に振る。元はといえば、斎は巻き込まれただけなのだ。十二年前に出会っていなければ、別の人生を送っていたはずなのだ。謝るべきなのは自分なのだと天弥は思う。
「天弥、お前が好きだ。許してくれるなら、やり直したい」
胸が締め付けられ、天弥の瞳から涙が零れ落ちる。
「でも、僕は……」
その先の言葉が続けられず、口を噤む。自分の正体を告げるべきなのだと思いつつも、嫌われるのが怖くて口に出来ずにいる。本当の天弥の記憶から、自分の正体も真実も知った。自分は、斎に想ってもらえるような価値のあるものではない。
「天弥?」
天弥は首を横に振った。自分は天弥ではないのだ。その名前に答えることは出来ない。その様子と言葉を詰まらせ涙を流す天弥に、もう無理なのかと斎は打ちのめされる。だが、自分のした事を考えれば、それも当然の事なのだ。
「僕は……」
力のない天弥の声が聞こえる。今まで、成瀬天弥として過ごしてきた。今更、違うのだと言われても、天弥として過ごしてきた記憶や感情しかないのだ。これからどうすれば良いのか分からない。
「もう……、俺の事は嫌いか?」
いっその事、ハッキリと天弥の口から嫌いなのだと告げられれば、諦めもつくかもしれない。そう思い、斎は張り裂けそうな胸の痛みに耐えながら立ち上がった。
その言葉にゆっくりと振り返り、天弥は斎を見上げた。涙が溢れ続ける瞳を斎に向け、天弥は首を横に振る。その様子に、斎の表情が安堵の色に彩られる。
「でも……、僕のこの想いは作られたものだって……」
斎を見つめている事が出来ず、天弥は俯いた。
作られた想いだというのなら、斎を想い苦しくなる胸や、切なくなる感情も偽者なのだろうか。それならなぜ、こんなにも辛いのか分からなかった。天弥の腕を掴んでいる斎の手が離れた。その動作に、やはり斎に想ってもらえる資格も価値もないのだと、さらに胸を締め付けられる。
斎を失い、さらに自分自身の存在も無くした今、総てを終わらそうと考える。最後に一目、最愛の相手を見ようと斎の顔を見上げた。その瞬間、勢いよく抱き寄せられ、そのまま強く抱きしめられた。
「俺が好きか?」
天弥は斎の胸に顔を埋めた。
「好きです」
迷い無く答え、天弥は斎の身体に腕を回す。
「それは偽りなのか?」
天弥は思わず斎の顔を見上げ、首を横に振った。
「先生が好きです」
「たか……み」
斎に名前を呼ばれ、天弥の表情に切なさが浮かぶ。自分にむかって差し出されたその手を、掴みたかった。だが、自分のせいで斎は落命をするところだったのだ。
「ごめんなさい」
天弥はそう告げると、背を向けその場から立ち去ろうとした。
「天弥!」
自分を呼び止める声に続き、腕を掴まれ足を止める。振り向いたら、斎から離れられなくなりそうで、天弥はそのまま立ち尽くす。
「悪かった……」
まだ少し辛そうな声が、天弥の耳に届き、静かに顔を伏せた。
「天弥を傷つけてばかりで、本当にすまないと思っている」
天弥は首を横に振る。元はといえば、斎は巻き込まれただけなのだ。十二年前に出会っていなければ、別の人生を送っていたはずなのだ。謝るべきなのは自分なのだと天弥は思う。
「天弥、お前が好きだ。許してくれるなら、やり直したい」
胸が締め付けられ、天弥の瞳から涙が零れ落ちる。
「でも、僕は……」
その先の言葉が続けられず、口を噤む。自分の正体を告げるべきなのだと思いつつも、嫌われるのが怖くて口に出来ずにいる。本当の天弥の記憶から、自分の正体も真実も知った。自分は、斎に想ってもらえるような価値のあるものではない。
「天弥?」
天弥は首を横に振った。自分は天弥ではないのだ。その名前に答えることは出来ない。その様子と言葉を詰まらせ涙を流す天弥に、もう無理なのかと斎は打ちのめされる。だが、自分のした事を考えれば、それも当然の事なのだ。
「僕は……」
力のない天弥の声が聞こえる。今まで、成瀬天弥として過ごしてきた。今更、違うのだと言われても、天弥として過ごしてきた記憶や感情しかないのだ。これからどうすれば良いのか分からない。
「もう……、俺の事は嫌いか?」
いっその事、ハッキリと天弥の口から嫌いなのだと告げられれば、諦めもつくかもしれない。そう思い、斎は張り裂けそうな胸の痛みに耐えながら立ち上がった。
その言葉にゆっくりと振り返り、天弥は斎を見上げた。涙が溢れ続ける瞳を斎に向け、天弥は首を横に振る。その様子に、斎の表情が安堵の色に彩られる。
「でも……、僕のこの想いは作られたものだって……」
斎を見つめている事が出来ず、天弥は俯いた。
作られた想いだというのなら、斎を想い苦しくなる胸や、切なくなる感情も偽者なのだろうか。それならなぜ、こんなにも辛いのか分からなかった。天弥の腕を掴んでいる斎の手が離れた。その動作に、やはり斎に想ってもらえる資格も価値もないのだと、さらに胸を締め付けられる。
斎を失い、さらに自分自身の存在も無くした今、総てを終わらそうと考える。最後に一目、最愛の相手を見ようと斎の顔を見上げた。その瞬間、勢いよく抱き寄せられ、そのまま強く抱きしめられた。
「俺が好きか?」
天弥は斎の胸に顔を埋めた。
「好きです」
迷い無く答え、天弥は斎の身体に腕を回す。
「それは偽りなのか?」
天弥は思わず斎の顔を見上げ、首を横に振った。
「先生が好きです」
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