apocalypsis

さくら

文字の大きさ
177 / 236
errare humanum est

duodeviginti

しおりを挟む
 ただ一人しか、思い当たる人物は居なかった。おそらく、すべての元凶であろうその人物に、会って詳細を聞きたいと願う。
 しばし考え込んでいると腕の中の天弥が動いた。
「天弥?」
 呼びかけに応えるように、ゆっくりと目が開く。二、三度、瞬いた後、天弥の視線が斎に向けられた。
「先生……?」
 表情と話し方で、どちらなのかはすぐに分かった。
「大丈夫か?」
 ゆっくりと天弥が身体を起こす。それを手伝うように斎の腕が支える?
「なんで、先生がここに?」
 不思議そうな表情と声音だった。天弥はゆっくりと周囲を見回す。
「あれ? ここ……」
 見慣れた風景に、天弥は首を傾げた。斎は、腕の中の天弥を強く抱きしめる。
「先生? もしかして……僕、戻ってこれたんですか?」
 抱きしめる斎の腕に身体を預ける。
「あぁ……」
 安堵した表情を浮かべるが、すぐに天弥の表情が変わる。
「サイラスくんは?」
 装甲車の無事を確認する。
「無事だ」
 天弥の様子から、戻ってきた経緯を知らないと判断する。そうならば、今回のことをすべて聞くのは難しい。それ以前に、尋ねても話してくれるのかどうかが分からなかった。
「今はまだ、入院している」
「え? どこか怪我したとか……」
 一気に、天弥に表情が不安に彩られた。
「火傷があちこちにあったが、普通に動ける状態だった」
 天弥も、あちこちに火傷があったが、今は痕すら残っていない。
「先生……」
 なにか縋るような視線を斎に向ける。
「なんだ?」
 少し顔を俯向け、斎に向かい口を開く。
「あの……サイラスくんのお見舞いに行っても良いですか?」
 斎は天弥の身体を抱き上げるとソファに向かい、そこに座らせた。
「そうだな……」
 どういう経緯で、二人が南極へ行ったのかが分からない。状況から、同行者の身の安全が気になるのだろう。
「今から行くのか?」
「大丈夫なら、行きたいです」
 大丈夫というのは、斎のことを不安に思い口にした。サイラスと二人で行動したことを怒っているに違いないのだ。
「なら、一緒に行く」
 天弥は、ジット斎の顔を見つめる。反対されると思っていたのだ。
「ありがとうございます」
 ソファに座る天弥に向かい、手を差し出す。その手を掴み、立ち上がるとすぐに斎に抱きついた。
「体調は大丈夫なのか?」
 確認のように尋ねる。まだ、回復していないと言っていたことを思い出したのだ。
「はい。大丈夫です」
 抱きついた斎の顔を見上げる。すぐに、唇が重ねられ、一瞬、驚きで目を見開くが、すぐに目を閉じ、斎の唇を受け入れた。
 ありとあらゆるものを吸い取られような感じは無かった。ただの、普通のキスに、状況を考える。二人は別の存在だと主張していることから、その存在によってなにかが違うのだろうか。そう思いながら唇を離した。
 唇が離れると天弥は、斎の身体に顔を埋める。なぜ、今ここに無事な状態で居るのかは分からなかったが、巻き込んでしまったサイラスの状態をまずは確認したかった。
「行くぞ」
 斎の言葉に、天弥は抱きついている腕を話す。
「はい」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】

絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。 下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。 ※全話オリジナル作品です。

女子切腹同好会

しんいち
ホラー
どこにでもいるような平凡な女の子である新瀬有香は、学校説明会で出会った超絶美人生徒会長に憧れて私立の女子高に入学した。そこで彼女を待っていたのは、オゾマシイ運命。彼女も決して正常とは言えない思考に染まってゆき、流されていってしまう…。 はたして、彼女の行き着く先は・・・。 この話は、切腹場面等、流血を含む残酷シーンがあります。御注意ください。 また・・・。登場人物は、だれもかれも皆、イカレテいます。イカレタ者どものイカレタ話です。決して、マネしてはいけません。 マネしてはいけないのですが……。案外、あなたの近くにも、似たような話があるのかも。 世の中には、知らなくて良いコト…知ってはいけないコト…が、存在するのですよ。

10秒で読めるちょっと怖い話。

絢郷水沙
ホラー
 ほんのりと不条理な『ギャグ』が香るホラーテイスト・ショートショートです。意味怖的要素も含んでおりますので、意味怖好きならぜひ読んでみてください。(毎日昼頃1話更新中!)

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

意味が分かると怖い話【短編集】

本田 壱好
ホラー
意味が分かると怖い話。 つまり、意味がわからなければ怖くない。 解釈は読者に委ねられる。 あなたはこの短編集をどのように読みますか?

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

処理中です...