ゲーム世界のキャンセラー~不遇なキャンセルスキルが実はあらゆるものをキャンセル出来る万能スキルだった件~

空地大乃

文字の大きさ
9 / 68

第9話 刺々しい

しおりを挟む
 冒険者ギルドについて一通り話を聞いた後、ヒットはゴブリンの巣で隠し部屋を見つけたが、そこで他の冒険者に襲われたことを明かし、その連中が持っていたギルドカードも提示した。

「これは、驚きだにゃん。ホブゴブリンやゴブリンシャーマンを退治したのも驚きだったのに……こうなったらちょっと報告してくるにゃん。2人とも待ってて欲しいにゃん。それと今聞いた話はこれ以上他で話すなにゃん」

 そしてニャムは一旦カウンターから離れた。仕方がないのでそこで待つことにする2人だったが。

「メリッサ、随分と災難だったな~」

 ふと後ろから野太い声が届いた。メリッサの名前が出たので一緒に振り返る。

 ヒット歩幅で見て2、3歩分先に3人の男が立っていた。その中で一番ガタイのいい男が半歩前に出てメリッサを見やる。

「だから前から言ってただろう? パーティーを組むなら俺たち、棘の車輪、とがいいってよ」

 親指で自分の顔を指し、メリッサにアピールした。ツルッとした才槌頭で厳つい顔をした男だ。背中には金属製の大槌の頭が見えている。随分とトゲトゲした槌だ。トゲっぽい鋲付きの革ベルトを左右の肩から交差するように掛けているので、それで固定しているのだろう。

 よくみると中々独特な格好をした男でもあった。肩には巨大で棘付きの肩当てをしているし、ズボンの上からもやはり棘付きの膝当てをしている。どれだけトゲが好きなんだよと思わなくもない。
 そういえばパーティー名からして棘だし、よくみると他の2人も棘付きの兜を被っていて棘付きの棒状の武器を持っているし、もう一人は格好はプリーストっぽくモーニングスターを手にしている。

「だからよ、今からでも遅くねぇしうちに入れよ。このスパイク様が守ってやっから」
「え~と、ご、ごめんなさい!」

 名前までトゲっぽい男だったが、そんな厳つい彼に向けてメリッサは頭を下げた。尤も悪いと思ってのものではなくお断りしますという意味合いのものだろう。何せこの男に声をかけられてからかなり困った顔をしていた。

「おいおい、なんでだよ。あの連中には裏切られたんだろ? だったらもう気兼ねなんていらないだろう?」
「え~と、それは」
「悪いけど、メリッサは俺とパーティーを組むと言ってくれたんだ。だからあんたのとこに行く気はないと思うぞ?」

 メリッサに詰め寄ろうとするスパイクだが、ヒットが遮るように割って入った。スパイクの表情が瞬時に変わり、鬱陶しそうにヒットを見下ろしてくる。

「テメェがメリッサとパーティーだと? ふざけんな! 昨日今日入ったばかりの新人になんて任せられるか!」
「それはお前が決めることじゃないろう? メリッサが決めることだ」
「そうか。ならメリッサこんな奴はやめとけ。こんな弱そうな奴、いざとなったら他の連中みたくお前をおいて逃げ出すぞ」

 酷い言われようである。どうやら自分をアピールする為なら他者を貶めるぐらい平気なタイプなようだ。

「全くの赤の他人だったにも関わらず、危険を顧みずゴブリンから私を救ってくれたヒットがそんな真似するとは思いません」
「ひ、ヒットだぁあぁ! テメェ! 俺だってそんな親密そうに呼ばれたことないのに、俺のメリッサに何しやがったコラッ! このわがままおっぱいをどうにかしやがったのか! ゴブリンから助けたお礼にとかいってテメェのゴブリンぶつけたのかコラ!」

 酷い言われようだ。どうやらこの男の中では名前を呼び捨てされるというのは、それなりの関係に発展したということに繋がるらしい。
 
 ただ、当然だがヒットはそんな真似はしていない。お互い敬称をつけないのはその方が楽だからと認識している。

「そ、そんな、私とヒットは、まだそこまで……」

 若干もじもじしながらブツブツ呟いているメリッサに疑問符が浮かぶヒットだが、とりあえず溜息まじりスパイクに返す。

「俺とメリッサはその場で打ち解けたから気軽に呼び合ってるだけだ。馬があったとも言えるかな」
「か、体があっただと! テメェふざけるな!」
「いや、誰もそんなことは言ってないぞ」
 
 ドン! ドン! と激しく床を踏み鳴らし、怒りの形相で訴えてきた。ヒットが違うと訴えるが聞く耳を持ってくれない。

「こんな、こんな弱そうな奴がなんで!」
「よ、弱くなんてないです。ヒットはゴブリンシャーマンもホブゴブリンもほぼ一人で倒してしまいました」
「いや、ホブゴブリンに関してはメリッサの手助けも大きかったよ」
「で、でも、あそこまで追い詰めたのはヒットでしたし、それに私にとっては大事な命の恩人で」
「俺の前でイチャイチャすんじゃねぇええええぇえええ!」

 スパイクが吠えた。ヒットは目を丸くさせる。本人としてはイチャイチャした覚えがない。だが、スパイクから見ればそうではなかったのだろう。

「メリッサ、お前は騙されてるんだ!」
「騙す?」
「そうだ! テメェはきっとゴブリンシャーマンやホブゴブリン相手に、たまたま持っていた魔道具でも使ったんだろう。実力もない癖にそんな卑怯な真似でメリッサの気を引こうとしたんだよこいつは!」

 スパイクの言い分にヒットは首を傾げた。

「俺は魔導具なんて持ってはいないが、例え持っていたとしてもそれのどこが卑怯なんだ?」
「な、なに?」

 ヒットがぶつけたのは率直な疑問だったがスパイクは目を瞬き、声を漏らす。

「別に魔道具禁止の試合をやってたわけじゃない。下手したら命を落としかねない魔物との戦いで、魔道具を使うのは卑怯というのは意味がわからない」
「だ、黙れ黙れ黙れ! 俺が言いたいのは所詮道具だよりの強さのくせに、俺のメリッサ相手に偉ぶるなと言ってるんだ!」
「別に偉ぶった覚えはないんだけどな。それと今のは例えで俺本人は魔道具なんて使ってない」
「ふん、口でならなんとでも言えるさ」
「そうは言ってもな。だが、これ以上は話が平行線だ。うん、そうだ。なら今後の俺とメリッサの仕事ぶりでも見守っててくれ。俺は冒険者の仕事で皆に認めてもらえるよう頑張るよ。それじゃあそういうことで」
「ちょっと待てコラ!」
 
 ヒットは話を打ち切ろうとしたがそうは問屋が卸さなかったようだ。

「何、俺のメリッサと勝手にパーティー組めた気分になってるんだコラ!」
「あ、貴方のものじゃありません!」

 メリッサが抗議した。先程から聞いてるにむしろ彼女は避けてる印象の方が強いが、この男は気づいていないのか認めたくないのかとにかくしつこい。

「メリッサが俺とパーティーを組むと言ってるんだから問題ないだろう」
「大ありだ! テメェにメリッサは任せられねぇ! だから俺と勝負しやがれ! 俺が勝ったらメリッサは俺たちのもんだ!」

 ヒットは首を傾げた。

「判ったな!」
「判らないし嫌だ。なぜ俺がそんな勝負を受けないといけないのか理解が出来ない。それにメリッサは物じゃない。彼女を勝手に賭けの対象にはできない」
「なるほどつまり負けを認めるんだな。なら俺の勝ちだ。さぁメリッサ今日からお前は俺たちの仲間だ」
「キャッ!」

 スパイクがわけのわからない持論を展開し、メリッサの腕を掴んで強引に引っ張っていこうとする。他の2人は下卑た笑みを浮かべていた。

「キャンセル」
「……あれ?」
「大丈夫かメリッサ?」
「ヒット、ありがとう……」
「な! お前いつの間に!」

 スパイクが自分の腕を見た後、ヒットに顔を向け叫んだ。彼は何がどうなったのか気がついていないが、メリッサの腕を掴んだ直後ヒットがキャンセルで腕を放させ、メリッサを引き寄せたのである。

「テメェ、俺を怒らせたらどうなるか判ってるのか!」
しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

異世界へ転生した俺が最強のコピペ野郎になる件

おおりく
ファンタジー
高校生の桜木 悠人は、不慮の事故で命を落とすが、神のミスにより異世界『テラ・ルクス』で第二の生を得る。彼に与えられたスキルは、他者の能力を模倣する『コピーキャット』。 最初は最弱だった悠人だが、光・闇・炎・氷の属性と、防御・知識・物理の能力を次々とコピーし、誰も成し得なかった多重複合スキルを使いこなす究極のチートへと進化する! しかし、その異常な強さは、悠人を巡る三人の美少女たちの激しい争奪戦を引き起こすことになる。

勇者パーティーを追放されたので、張り切ってスローライフをしたら魔王に世界が滅ぼされてました

まりあんぬさま
ファンタジー
かつて、世界を救う希望と称えられた“勇者パーティー”。 その中で地味に、黙々と補助・回復・結界を張り続けていたおっさん――バニッシュ=クラウゼン(38歳)は、ある日、突然追放を言い渡された。 理由は「お荷物」「地味すぎる」「若返くないから」。 ……笑えない。 人付き合いに疲れ果てたバニッシュは、「もう人とは関わらん」と北西の“魔の森”に引きこもり、誰も入って来られない結界を張って一人スローライフを開始……したはずだった。 だがその結界、なぜか“迷える者”だけは入れてしまう仕様だった!? 気づけば―― 記憶喪失の魔王の娘 迫害された獣人一家 古代魔法を使うエルフの美少女 天然ドジな女神 理想を追いすぎて仲間を失った情熱ドワーフ などなど、“迷える者たち”がどんどん集まってくる異種族スローライフ村が爆誕! ところが世界では、バニッシュの支援を失った勇者たちがボロボロに…… 魔王軍の侵攻は止まらず、世界滅亡のカウントダウンが始まっていた。 「もう面倒ごとはごめんだ。でも、目の前の誰かを見捨てるのも――もっとごめんだ」 これは、追放された“地味なおっさん”が、 異種族たちとスローライフしながら、 世界を救ってしまう(予定)のお話である。

老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!

菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは 「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。  同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう  最初の武器は木の棒!?  そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。  何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら 困難に立ち向かっていく。  チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!  異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。  話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい! ****** 完結まで必ず続けます ***** ****** 毎日更新もします *****  他サイトへ重複投稿しています!

異世界でぼっち生活をしてたら幼女×2を拾ったので養うことにした【改稿版】

きたーの(旧名:せんせい)
ファンタジー
【毎週火木土更新】 自身のクラスが勇者召喚として呼ばれたのに乗り遅れてお亡くなりになってしまった主人公。 その瞬間を偶然にも神が見ていたことでほぼ不老不死に近い能力を貰い異世界へ! 約2万年の時を、ぼっちで過ごしていたある日、いつも通り森を闊歩していると2人の子供(幼女)に遭遇し、そこから主人公の物語が始まって行く……。 ――― 当作品は過去作品の改稿版です。情景描写等を厚くしております。 なお、投稿規約に基づき既存作品に関しては非公開としておりますためご理解のほどよろしくお願いいたします。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@2025/11月新刊発売予定!
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。 《作者からのお知らせ!》 ※2025/11月中旬、  辺境領主の3巻が刊行となります。 今回は3巻はほぼ全編を書き下ろしとなっています。 【貧乏貴族の領地の話や魔導車オーディションなど、】連載にはないストーリーが盛りだくさん! ※また加筆によって新しい展開になったことに伴い、今まで投稿サイトに連載していた続話は、全て取り下げさせていただきます。何卒よろしくお願いいたします。

無能と追放された俺の【システム解析】スキル、実は神々すら知らない世界のバグを修正できる唯一のチートでした

夏見ナイ
ファンタジー
ブラック企業SEの相馬海斗は、勇者として異世界に召喚された。だが、授かったのは地味な【システム解析】スキル。役立たずと罵られ、無一文でパーティーから追放されてしまう。 死の淵で覚醒したその能力は、世界の法則(システム)の欠陥(バグ)を読み解き、修正(デバッグ)できる唯一無二の神技だった! 呪われたエルフを救い、不遇な獣人剣士の才能を開花させ、心強い仲間と成り上がるカイト。そんな彼の元に、今さら「戻ってこい」と元パーティーが現れるが――。 「もう手遅れだ」 これは、理不尽に追放された男が、神の領域の力で全てを覆す、痛快無双の逆転譚!

処理中です...