ゲーム世界のキャンセラー~不遇なキャンセルスキルが実はあらゆるものをキャンセル出来る万能スキルだった件~

空地大乃

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第61話 あの2人を見つける

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 ガイの背後から迫るは真っ黒い体をした大型の蜘蛛であった。その牙には呪いの効果があり爪には猛毒――その上ダークウィドウは口から闇の魔力で練られた糸も吐き出してくる。

「やられるかよ! 暴旋斧!」

 ガイが勢いよく回転し斧を振り回した。その衝撃で地面に亀裂が走り、斬撃がより広範囲に広がる。

「ギッ――」

 ガイを狙ったところをカウンターでやられた魔物が飛ばされた。直撃ではなかった為、まだ死んではいないが蜘蛛の攻撃はくらわずに済んだようだ。

 そして蜘蛛の姿がまた闇に同化し始める。

「キャンセル――」

 しかしそれもヒットのスキルで中断された。闇と同化しそこねた蜘蛛の姿が戻る。

「やっ!」

 メリッサの矢玉がダークウィドウに命中した。火の矢であり、その体が火まみれとなった。

「ナイスだメリッサ――」

 洞窟での火はあまり芳しくないが今回は別だった。一匹が火に塗れたおかげで周囲の闇が払拭され闇と同化していたダークウィドウの姿が浮かび上がる。

「……フェンリィ」
「ガウガウ!」

 セイラの掛け声でフェンリィが飛び出し、ダークウィドウに噛み付いた。更にセイラも鞭を振り回しダークウィドウを片付けていく。
 
 メリッサの連射も炸裂し、ダークウィドウはなんとかなりそうだったので、ヒットは再びキャンセルでジャイアントスタンプを転倒させ、直後ガイが止めを刺した。

「どうやら片付いたようだな」
 
 ガイが額の汗を拭いながら言った。斧を片付けた魔物から抜き取り、肩に乗せて振り返る。戦闘が終わり、ジャイアントスタンプとダークウィドウの亡骸だけが残された。

「本当は全部の素材や魔石を回収したいとこだがな」
「……時間がない」
「わかってるって」
 
 確かにこれらの魔物には価値の高い素材を持つものもいる。ダークシャドウの場合は魔石も当然だが爪や牙にも需要がある。

 だが回収している時間がないのも確かだ。とは言え、多少は休憩が必要だろうということでその場で少し休みつつ、ガイとヒットは多少でも素材を回収した。

「さていくか」
「あぁ、そうだな。しかし、アイアンの姿はここにもなかったな」
「うん、そうだね……」
「無事だといいのですが」

 ヒット達はストーンに依頼された鉱夫のことも当然気に留めていた。今もまさか死体でもころがってはしないだろうな、と目を凝らしたり空間を歩いてみたりはしたが手がかりはつかめなかった。

 いや、死体が多すぎたのだ。魔物の犠牲者はかなり多く、それでいて死体はどれも損傷が激しい。これではアイアンかどうかは判別がつかない。

「薄情と思われるかも知れないが、正直言ってもう厳しいと思うぜ。こんなに死体がゴロゴロ転がっているんだ。助かってるとはとても思えない」
「そんな……」
 
 メリッサが顔を伏せ喉をつまらせる。否定しようと思ったようだが、ガイの言っていることが間違っているとも思えない。何せこれだけ凄惨な状況だ。

「……見つかったら僥倖ぐらいに思っていた方がいい。例え死体であっても」
「クゥ~ン……」
「でも、出来れば――」

 フェンリィが儚げに鳴いた。クララも神妙な顔をしている。

「はぁ、辛気臭い顔で悩んでいても始まらないぜ。先を急ぐぞ。俺らの目的は魔物が溢れた原因の究明だ」

 ヒット達は頷き、更に奥へ進んだ。フェンリィがスンスンっと鼻をひくつかせながら進んでいく。魔物も現れたがそれはフェンリィが事前に気がついてくれたので片付けることが出来た。

 途中で三方向の分岐を見つける。フェンリィに聞いてみるがセイラによるとどの先からも腐臭が漂ってくるという。

「臭いがキツすぎてどんな魔物が潜んでいるかまでわからないか」
「……あまり離れていると厳しい」
「私の鑑定も、相手が見えないと駄目なので……」

 死体が多い状況では臭いだけで先まで判断するのは厳しそうだ。

「なら勘だな――よし、左からいこう」

 結局ガイの決めた方へと進むことにする。細い横穴の途中には魔物は出てこなかった。だが――

「ひ、ひぃいいいい! ね、ねぇ! まずいよねこれまずいよねこれ!」
「そ、そうだな! だが、お前は絶対俺が守る!」

 そんな絶望感のある声が奥から聞こえてきた。そしてヒットとメリッサはこの声に聞き覚えがあった。

「ヒット、これって?」
「あぁ、可能性は高いと思う」
「え? 知っている方なのですか?」
「私と最初にパーティーを組んでいた仲間なんです。多分だけど……」
「そ、それなら急がないと!」
「あぁ、いいかふたりとも?」
「同業の冒険者か、戦力が増えるならありがてぇ」
「……いくならいそぐ」
「ガウガウ!」

 そして奥へと急ぐヒット達。少し広がった場所に出ると、そこには確かにネエとソウダナの姿があった。

 2人は巨大なアリに囲まれていた。ソウダナがアリの攻撃を盾で防ぎ、ネエがファイヤーボルトを放っている。だが、アリにはあまり効果がなさそうだ。

「アーマーアントです! 酸を飛ばしての攻撃。それに力も強いですし、体が鎧のように硬いです!」

 中々厄介そうな魔物である。アーマーアントは一生懸命ネエを守ろうとしているソウダナに酸を浴びせていた。盾で守っているが、酸の影響で盾にもかなりのダメージが及んでいる。

「おい、助けてやるからもう火の魔法を使うな! 空気がかなり薄い!」

 確かに少々息苦しく感じる。酸素が大分減っているのだろう。

「メリッサも火以外で頼む」
「うん」
「嬢ちゃんは、あの2人にライトプロテクトをかけてやってくれ。この距離から出来るか?」
「私が協力します!」

 魔法の弩を使った方法で遠くの相手にも魔法が届く。ついでに回復魔法もお願いしておいた。ソウダナのダメージがそれなりに大きいからだ。

「さぁ、今度は蟻狩りだ!」

 そしてガイとヒットが前に出て2人に群がるアリに攻撃を仕掛ける。セイラとフェンリィも動いた。

「中断切り――三刃みつば斬り、キャンセル、三刃みつば斬り!」
 
 ヒットはカウンターからの持続キャンセルで硬いアーマーアントにもしっかりダメージを与えて倒した。
 
 ガイは斧の破壊力がそもそも高い。装甲ごとたたっ切る。セイラとフェンリィはコンビネーションによる怒涛の連続攻撃で倒していた。

 気がついてみればそこまで時間がかかることなくアーマーアントの群れを倒しきっていた。

「ふぅ、ここまでは調子がいいな」
「ふたりとも大丈夫か?」
「あんたか、それにメリッサも。助かったよ本当にありがとう」
「ふぇえええん、メリッサ怖かったよ~」
「あはは、もう大丈夫ですよ」

 ネエがメリッサに駆け寄って抱きついた。どうやらかなり怖かったようだ。

「ところでソウダナとネエはどうしてここに?」
「……ちょっとした依頼があって町まで来ていたんだが、鉱山に魔物が溢れたって冒険者に緊急招集が掛かった。それで」
「なるほど……駆り出されたってわけか。しかし、よく喋るようになったな」

 ソウダナが少し照れたように頬を掻いた。

「ところでこの奥には何があるか知っているか? 特になにもないなら戻るが、原因を突き止めないといけないんだ」
「――奥にはこの原因につながるようなものはないんだが……一緒に逃げていた鉱夫が1人取り残されてしまったようだ……他の冒険者も一緒だったんだが、それも全員やられて……」
「鉱夫が、1人?」

 ヒットは何か嫌な予感がして仕方なかったのだった――
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