ゲーム世界のキャンセラー~不遇なキャンセルスキルが実はあらゆるものをキャンセル出来る万能スキルだった件~

空地大乃

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第64話 魔物が増殖した原因

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「お疲れさまですヒットさん」
「あぁ、ありがとうクララ」

 ミルメコレオ、そしてアーマーアントも倒しきった後、ヒットはクララの回復魔法を受けていた。ポーションなどもあるが、魔力はある程度なら自然と回復する。勿論無茶をしてしまい魔力切れを起こしてしまうと大変なので限度があるが、クララにはまだ余裕があるとのことだったのでここは魔法での回復に頼ることとした。

「見つけてきたぜ。何人か残っていた」

 するとガイが何人かの男を引き連れてやってきた。どうやら坑夫のようであり、怯えたような目で周囲の状況を確認するが。

「ほ、本当にあのバケモンを倒したんだな……信じられないぜ」
「うぅ、これで助かることが出来た」
「こっから出れるんだな! 家族に会えるんだな!」

 坑夫は3人生き残っていた。話によると多くの仲間が殺される中、何とか隠れられそうな場所を見つけてじっとそこで息を殺して待ち続けたらしい。

 彼らが潜んでいたのは小さな横穴だった。息が詰まるほどの穴に3人、押し込むようにして入り耐え忍んだらしい。

「全く運がいいな。それで、あんたが?」
「あ、あぁ。俺がアイアンだ」
「良かった。無事だったんだな。俺たちはストーンに頼まれてあんたを探していたんだ」
「あぁ、そこの厳ついのに聞いたよ」
「いや、厳ついって……」
「……十分に厳つい」
「ガウガウ!」

 どうやら意外にもガイは厳ついと言われたことでショックを受けているようだ。ただ、顔も肉体的にも間違いなく厳つい。

「それにしてもストーンがな。しかし、それがあるにしても危険を顧みずこんな場所まで助けに来てくれるとは感謝の言葉もないぜ」
「気にしなくていい。それも冒険者の責務だろ? お礼ならあんたを心配して俺たちに依頼してくれたストーンに言ってあげてくれ」

 アイアンが何度も頭を下げてくるので、ヒットはストーンへの感謝を優先して欲しいと伝えた。アイアンは当然だ、という顔を見せながらも。

「とは言えここまでしてもらって何もしないわけにはいかないからな。親方に何かお礼してもらうよう頼んでみるぜ」
「まぁ、それならそれで、貰わないよりは貰ったほうがいいよな」
「……ちゃっかりしてる」
「俺だって働いたんだ、それぐらいしてもらっても罰は当たらないだろう?」
「勿論、ここにいる全員にお礼できるようしっかり伝えさせてもらうさ」
「あぁ、俺たちだって同じ気持ちだ」
「これでケチくさいこと言いやがったらこんなところで働くのはやめてやらァ!」

 中々に威勢のいい坑夫たちである。だが、これだけの元気があればとりあえずは大丈夫だろう。

「お礼もいいですが、坑夫の皆さんは先ず送り届けないといけないですね」
「そうだな。一回出た方がいいかな?」

 メリッサが提案すると、ガイもその考えに同意を求めるよう聞いてくる。ヒットとしても迷いどころだ。セイラは沈黙して何かを考えている。

 クララは犠牲になった人に祈りを捧げていた。アンデッド化を防ぐ目的もある。

 ネエとソウダナは何やら相談しているようでもあるが。

「調査がまだ終わっていないが……」
「調査?」

 ヒットがつぶやくと、アイアンがその言葉に反応する。

「この鉱山で、突然魔物が溢れた原因を探るのが俺たちの仕事なんだ」
「……だったら、心当たりがある」
「なんだって!」

 アイアンの発言にガイが反応した。

「逃げてきた連中の1人が言っていたんだ。奥で何かとんでもないもんを発掘したって。その直後にこの有様だからな。関係ないとは思えないんだが」
「……無いどころか、大当たり」
「ガウガウ!」

 確信したようにセイラが言った。ヒットも間違いなく関係しているだろうなと考える。

「それを何とかしないと魔物がますます増えるかもしれねぇ」
「それで、一体それは何なんだ?」
「それが何かまではわからないが、紫色の不気味な石だったって話だ」
「……紫色、石――まさか、降魔石……」
「知っているのかクララ?」

 祈りを終えて戻ってきたクララが考え込むようにして呟いた。ヒットが問いかけると、不安そうな顔を浮かべながら顔を上げ。

「私も教会の本で読んだ記憶でしかありませんが、降魔石は魔物を呼び寄せる災いの石なんだそうです」
「それ、まさに今回の原因だろう」
「そんな石があるんですね……」
「……だとしたら、すぐに破壊しないと」
「ガウガウ!」

 確かにそんな石があったら厄介以外の何物でもない。ただ、破壊して済むものなのかと気がかりに思うヒットであり。

「それが、降魔石は物理的には壊れず、しかも衝撃を与えるとより魔物を呼び起こしてしまうそうなんです。しかも時間が経てば経つほどより強力な魔物を呼び寄せてしまう」
「おいおい、だったらどうしたらいいんだ?」
「それを何とか出来るのは教会でも高位の人間だけとか。ジョブでいえばカーディナルぐらいは必要なようです」

 カーディナルは枢機卿のことだ。勿論神官系のジョブではかなり希少なものでもある。

「だったら一度やっぱり戻って教会に相談か?」
「ただ、時間との勝負でもあります。それに教会に常に枢機卿がいるわけではありません」
「ねぇ、それって結局どうしようもないんじゃ?」
「そ、そうだな……」

 ネエとソウダナが不安そうに口にした。ただクララは真剣な目つきで更に続ける。

「いえ、そうとも言い切れません。教会に降魔石を持ち込めば、効果を弱めるぐらいの手段ならある筈です。それで効果を抑え込んでいる間に枢機卿に来てもらうのです」
「なるほど、つまり降魔石を少しでも早く持ち帰ることは大事なんだな」
「はい。これだけの魔物が出ている以上、予断は許されない状況かもしれませんし」
「だったらもう俺たちで降魔石の回収に向かうしか無いな」
 
 ヒットが決断する。一旦ここを出て体勢を立て直していては間に合わないと判断したからだろう。そもそもこの事件で町の冒険者にも多大な被害が出ている。

 その状況で改めて仲間を集めてなどやっていたら、いつ鉱山から魔物が溢れ出るかわかったものじゃない。

「覚悟を決めるほかないか。ただ、坑夫達はどうする? 流石に連れていけないだろう?」
「だったら、私達が坑夫を連れて街に戻るよ」
「そうだな」

 するとネエとソウダナがそんな提案をした。

「今は少しでも戦力が惜しいんだがな」
「それもわかっているけど、坑夫を放ってはおけないだろ? それに、そんな大変な代物なら出来るだけ人数がいた方がいいのも事実だしねぇ」
「そうだな。だから、先ず坑夫を連れて鉱山を出た後、ギルドに行って事情を話す。そして動けそうな仲間を連れて戻ってくる」
「そういうことか」

 確かにこの場では少しでも戦える仲間が欲しいが、いざというときのために増援を呼んできて貰うのも大事なことだ。

「……それでいい。坑夫を送り届ける必要がある以上、それがベスト」
「ま、仕方ないな」
「なにか、俺達のために悪いな……」
「何を言っているのですか。謝る必要なんてないですよ。それも冒険者として当然の務めなのだから」

 メリッサが言う。確かにこんなときに困っている人を助けられないようでは冒険者失格であろう。

「それじゃあ私達はいくよ」
「……無茶はするな。俺たちが、必ず増援を連れてくるから」

 そして一旦元の分岐点に戻った後、ソウダナとネエが坑夫達を連れて出口に向かった。

 坑夫たちから聞いた情報で石がどこにあるかは見当がついている。

「それじゃあ、俺たちも行くとするか」
「おうよ」
「はいヒット!」
「き、緊張します……」
「……フェンリィ、注意して進む」
「ガウガウ!」

 そしてヒット達は降魔石を回収する為、更に奥へと向かうのだった――
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