親友と婚約者に裏切られ仕事も家も失い自暴自棄になって放置されたダンジョンで暮らしてみたら可愛らしいモンスターと快適な暮らしが待ってました

空地大乃

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第四章 モンスターバトル編

第178話 午後の待ち合わせ

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 香川さんとのやり取りを終え、ギルドを出た。
 空を見上げれば昼時。午後にはグラヴィス姉弟との約束がある。

「少し早いけど、昼食を食べてから行こうか」
「そうですね。その方がゆっくり話せますし」

 秋月の提案に頷き、冒険者通りのレストランへ。
 テラス席ならモンスターたちも同席できる。店員に勧められ、モンスター用のランチセットも注文する。

「ワン!」
「モグゥ♪」
「ピキィ♪」
「マァ~♪」
「ゴブゥ♪」

 モンスターたちは専用プレートに盛られた肉や野菜を嬉しそうに食べ、俺たちは日替わりランチで軽く腹を満たす。
 食後、会計を済ませて席を立った。

――さて、ここからが本番だ。

 向かった先は、モンスターバトルの登録施設。巨大なドーム型の建物で、外壁には過去の大会ポスターやスポンサー広告がずらりと並んでいる。
 入口前には既に何組もの選手たちが集まっており、それぞれモンスターを連れていた。

 大型の双頭の馬に跨る男や、翼を持つ小型ドラゴンを肩に乗せた少女。長い尻尾を引きずる爬虫類型や、二足歩行の熊型など、種類も大きさも様々だ。
 モンスターたちは互いに興味を示しつつも、選手の指示で大人しく待機している。

「おーい、風間!」

 人混みの向こうから手を振る声。
 グラヴィス姉弟だ。姉の嵐舞は鋼色の体毛を持つ大型狼型モンスター――バルグレイヴのパルを連れ、弟の流麗は赤橙色の鱗を纏ったサラマンダーのサラちゃんを伴っている。

「久しぶりだな!」
「お久しぶりです」

 モコが弾丸のように飛びつき、嵐舞の胸に収まる。ラムは流麗の手のひらにちょこんと乗り、マールとモグはパルとサラちゃんに興味津々だ。

 ゴブは控えめに会釈しつつ、パルとサラちゃんにも丁寧に挨拶をした。

「元気そうで何よりだよ」
「そっちもね。じゃあ、早速登録しようか」

 ドームの中へ入り、カウンターで登録手続きを進める。冒険者証とモンスター登録証を紐付け、クラス分けや勝敗条件、反則行為などの説明を受けた。

 クラスに関してはグラヴィス姉弟から聞いていたとおりだ。

「対戦はシングルバトルとチームバトルがあります」

 シングルバトルは文字通り一対一での試合形式になるようだ。チームバトルは三対三でのバトルとなる。

「勝敗に関してはシングルバトルでは場外負けと戦闘不能でも決着が基本です。チームバトルでは上記の条件で離脱となり全員が敗北するか生き残った数が多いほうが勝利となります」

 そうなるとやはりチームバトルは連携を含めた戦略がかなり大事になりそうだな。

「アリーナには特殊な結界が張られています。生命を奪いかねない攻撃を感知すると、自動で発動し相手を守ります。ちなみにこの結界はリングを覆う形でも展開されています」
「そんな仕組みが……」
「はい。数年前、試合中にモンスターが命を落とす事故があり、批判が殺到しました。その対策として導入されたんです。ただし結界が発動した時点で、そのモンスターは即負け扱いとなります」
「なるほど……だから安全だけど、同時に負けも確定するわけか」

 説明を聞きながら、俺はモンスターたちの動きを思い浮かべた。

「試合中はマスターはリングの外から応援する形となり、指示やサポートも可能です。ただしスキルなどを使用したサポートには制限がありますのでご注意ください」
「ま、そのあたりは俺たちからも教えるさ。実戦形式でな」

 言って嵐舞がニヤリと笑った。頼もしくもありちょっと怖くもあるな。

「じゃあ――早速模擬戦で慣らしてみようか」
「確かに大事だもんな。お手柔らかに頼むよ」

 そして俺たちは練習場へ移動。
 山守家の道場では俺も含めて鍛えてきたが、モンスターバトルならではの戦い方もあるだろうからな。
 
 チームバトルの事もあるし、モンスター同士の連携訓練も大事だろう。

「モコは前で撹乱! ラムは相手の足を止めろ!」
「マールは状態異常で牽制! モグは死角から奇襲!」
「ゴブは全体を見て指示と支援だ!」

 グラヴィス姉弟は流石にランクが高いだけあって指示も的確だな。
 短時間でも各自の役割が噛み合い、指示への反応が早くなっていくのがわかる。

 嵐舞とパル、流麗とサラちゃんの見事な連携も披露され、俺たちのモンスターも刺激を受けたようだ。

「今日はここまでにしておこう。次はもっと実戦的な動きを試そう」
「はい!」

 練習後、汗を拭きながら外へ出る。
 夕暮れの空の下、秋月がふと呟く。

「専用の装備も考えた方がいいかもね」
「……そうだな。試合までに準備できるものは整えておこう」

 モコたちの元気な鳴き声を聞きながら、俺たちは帰路についた――
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