親友と婚約者に裏切られ仕事も家も失い自暴自棄になって放置されたダンジョンで暮らしてみたら可愛らしいモンスターと快適な暮らしが待ってました

空地大乃

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第四章 モンスターバトル編

第180話 熊谷と約束する

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「そういえば前に冒険者通りについて教えてくれたよな?」

 俺は熊谷から届いたメッセージを思い出しながら問いかけた。冒険者にとって役立つ道具や装備が揃っていると聞いたはずだ。

「おお! 実は明後日の休みにでも行こうと思ってたんだ。興味あるか?」
「それなら丁度いい。モンスターバトルに出場するわけだし、みんなに役立つ物があればと思ってるんだよ」

 近々足を運んでみたいと考えていたところだ。前のゴブリン騒動で得た報酬もあるし、ちょっとした装備なら買えるだろう。

「だったら一緒に行くか?」
「そうだな。俺もよく知らないから、同行したい」
「何だ? 何の話だ?」

 柔軟運動を終えた中山が、額の汗を拭いながらこちらに加わってきた。

「あぁ、今度の休みに冒険者通りに行こうって話をしてたんだ」
「それは面白そうだな! 俺の筋肉がさらに輝く品があるかもしれん。一緒していいか?」

 目的が同じなら断る理由もない。

「それなら私も行きたい! アキちゃんもどうかな?」

 愛川が目を輝かせながら秋月を誘う。隣のモコも「ワン!」と尻尾をぶんぶん振って賛成している。

「うん。私も冒険者になったし……」

 秋月がそう笑顔で答えると――

「な! まさかお前、武器とか、か、買うつもりなのか!」

 楓師範が慌てたように声を上げた。

「私のジョブは格闘家だから、武器はそんなに。でも身を守る装備ならあってもいいかなって」
「そ、そうか。それならいいが……しかし、それを買ったら本格的に……」
「貴方。約束したわよね?」

 月見さんが静かに言葉を差し込む。その声音に楓師範は後頭部を擦った。

「うッ! わ、わかってるさ……」

 やっぱり奥さんには頭が上がらないようだ。そんな中「ピキィ♪」とラムが小さく鳴き、秋月の肩で揺れている。

「それなら~私も一緒にぃ~」

 タマがのんびりと手を挙げる。

「タマは駄目だよ。明後日はダンジョン探索があるだろ」
「そ、それは皆に任せるというか……」
「この馬鹿! 女が一度決めたことを簡単に覆すんじゃねぇ!」
「……一度約束を破ったら次も破る」
「まさかそんな半端な気持ちで冒険者やってるんじゃないだろうね! タマ!」

 鬼姫、竹取、十五夜と三連続で畳みかけられ、タマは耳まで真っ赤にして飛び跳ねる。

「うぅ……いつの間にか“タマ呼び”が定着してるしぃ、もう! わかったわよ!」

 周囲から笑いが起きると、マールが「マァ♪」と真似するように鳴き、場が一層和んだ。

「ま、初志貫徹は大事ってことさ。ところで風間。モンスターバトルに使える物が欲しいんだろう?」

 鬼姫が腕を組み、改めて俺へ視線を向けてくる。

「はい。今回はみんなに役立つ物が欲しいなと思ってて」
「それなら睦郎むつろうの店に行ってみな。冒険者通りの奥まった場所にある地味な店だが、あの爺さんの腕は確かさ。風間のモンスターに合わせた品を用意してくれると思うぜ」
「本当ですか! それは助かります」

 俺は深く頭を下げた。鬼姫は「後で地図をアプリで送っとくよ」と笑ってくれる。ゴブが「ゴブゥ♪」と嬉しそうに頷いていた。

 本当にありがたい。こうして冒険者通りに行く約束を交わし、この日の訓練は締めくくられた。

「今日は道場に来てよかった」
「うん。冒険者通り、楽しみだね」
「ワンワン♪」
「ピキィ♪」
「ゴブゥ♪」
「マァ♪」
「モグゥ♪」

 秋月の言葉に、モンスターたちも元気よく鳴いて応える。

「それじゃ明後日な」
「どんなのがあるか楽しみだ」
「筋肉を忘れるなよ」
「いや、筋肉をどう忘れるんだよ」

 中山の真顔のセリフに思わず突っ込んでしまった。
 ……でも確かに俺も初めて行くし、どんなところなのか楽しみだな――。
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