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第二章 冒険者登録編
第23話 過去を話した
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「酷いです! 浮気をした上にミスを擦り付けるなんて!」
俺の話を聞くなり山守が怒ってくれた。自分には関係ない話だろうに人のためにここまで怒れるなんてな。
「まぁ、俺にも隙があったんだろうな。今思えば迂闊だったと思うよ」
「何を言うんですか! 風間さんは悪くないじゃないですか!」
「ワウワウ!」
「ピキィ~!」
山守だけじゃなくモコとラムも怒ってくれてるみたいだ。何となく俺が嫌な目にあったんだと感じ取ってくれているのかもな。
「何か考えるだけで腹が立ってきましたよ。会社にしっかりと訴えて謝罪させましょうよ!」
「はは。俺のためにそこまで言ってくれるのは嬉しいけど、もういいんだ。これといった証拠もないから仕方ない」
山守が俺のために怒ってくれているのはわかったけど、証明出来なければどうしようもないからな。
「うぅ。風間さん甘いですよ」
伏し目がちに山守が呟いた。甘いか……そうかもしれないけど。
「でもほら、悪いことばかりじゃなかったからさ。モコやラムとも仲良くなれたし」
俺は憤る山守にそう伝え、モコとラムの頭を撫でてあげた。
「ワフ~♪」
「ピキュ~♪」
二匹とも頭を撫でられるのが本当に好きみたいだな。そして俺も二匹から癒やしをもらっている。実にウィンウィンな関係だ。
こんな関係になれたのもダンジョンで過ごそうと思ったから、つまり会社を辞めたからとも言えた。そうでなきゃ俺はモコやラムと知り合うこともなかっただろう。
勿論あの二人を許せないという気持ちもあるが、世の中悪いことばかりじゃないと心から思えてもいる。
そういう環境にいられるだけ、まだ俺は幸せな方なのかもな。だから俺の件については一旦切り上げて、山守の問題について聞くことにする。
「俺のことよりも君は本当にいいのか? お金が掛かって大変なんだろう?」
「いいんですよ。私もそれにきっとダンジョンも風間さんに使ってもらいたいにきまってますから。それよりも私にそのジョブストーンについて教えてもらってもいいですか?」
彼女はジョブストーンを受け取る気が本当にないようだ。困ってるだろうに欲のない子だな。ただ石がどんな物なのかには興味があるようから俺はタブレット端末でネットの情報を見せつつジョブストーンについて教えた。
「なるほど。このジョブストーンがあればジョブという特殊な力が身につくのですね」
「まぁ扱い的には特殊な職業みたいなところだけど、ジョブの効果で色々とスキルを覚えられるから力といえば力だな」
ジョブは肉体にも影響を与えるみたいだし、そう考えると中々の不思議要素だ。
「そういえばそのジョブストーンで身につくジョブは何だったのですか?」
「それが農民というジョブらしくてね。畑を耕したり作物を育てたりが得意なジョブみたいだ。ゲームで言えば生産職といったところかもしれない」
俺がそう説明すると山守が顎に手を添えて考えだした。その後自分のスマホも取り出して何かを見ている様子。
「あ、すごい! 見てください! 何かジョブストーンを手に入れた冒険者という人が配信してますよ。視聴数もすごく多い」
「あぁ。確かにダンジョンが出来てから探索の様子なんかを配信する人も増えたようだからな」
「はい。でもそれだけじゃなくて魔法を披露したりビルからビルに飛び回る様子を流したり色々あるみたいですね」
「あぁ、ま、そうだけど、中には目立つために本来認められていない配信をしてる奴もいるからな」
今、山守が言っていた魔法披露とビルから飛び移る配信がまさにそれだ。見る限りダンジョン以外での行動だが、ジョブの能力は基本ダンジョン内でのみ使用が認められている。
当然だこんな力、外で好き勝手使われていたらどんな事件に発展するかわからないんだから。
「そうなんですね……でもダンジョン内の配信なら大丈夫なんですよね?」
「まぁそうかな?」
「でしたら! その、私に協力してもらえませんか! ここでの生活を是非配信したいんです!」
「えぇ!」
「ワウッ!?」
「ピキィ!?」
俺が驚くとモコとラムも飛び上がって驚いていた。意味を理解しているかはわからないけど、しかし意外な方向に話が進んできたな。
俺の話を聞くなり山守が怒ってくれた。自分には関係ない話だろうに人のためにここまで怒れるなんてな。
「まぁ、俺にも隙があったんだろうな。今思えば迂闊だったと思うよ」
「何を言うんですか! 風間さんは悪くないじゃないですか!」
「ワウワウ!」
「ピキィ~!」
山守だけじゃなくモコとラムも怒ってくれてるみたいだ。何となく俺が嫌な目にあったんだと感じ取ってくれているのかもな。
「何か考えるだけで腹が立ってきましたよ。会社にしっかりと訴えて謝罪させましょうよ!」
「はは。俺のためにそこまで言ってくれるのは嬉しいけど、もういいんだ。これといった証拠もないから仕方ない」
山守が俺のために怒ってくれているのはわかったけど、証明出来なければどうしようもないからな。
「うぅ。風間さん甘いですよ」
伏し目がちに山守が呟いた。甘いか……そうかもしれないけど。
「でもほら、悪いことばかりじゃなかったからさ。モコやラムとも仲良くなれたし」
俺は憤る山守にそう伝え、モコとラムの頭を撫でてあげた。
「ワフ~♪」
「ピキュ~♪」
二匹とも頭を撫でられるのが本当に好きみたいだな。そして俺も二匹から癒やしをもらっている。実にウィンウィンな関係だ。
こんな関係になれたのもダンジョンで過ごそうと思ったから、つまり会社を辞めたからとも言えた。そうでなきゃ俺はモコやラムと知り合うこともなかっただろう。
勿論あの二人を許せないという気持ちもあるが、世の中悪いことばかりじゃないと心から思えてもいる。
そういう環境にいられるだけ、まだ俺は幸せな方なのかもな。だから俺の件については一旦切り上げて、山守の問題について聞くことにする。
「俺のことよりも君は本当にいいのか? お金が掛かって大変なんだろう?」
「いいんですよ。私もそれにきっとダンジョンも風間さんに使ってもらいたいにきまってますから。それよりも私にそのジョブストーンについて教えてもらってもいいですか?」
彼女はジョブストーンを受け取る気が本当にないようだ。困ってるだろうに欲のない子だな。ただ石がどんな物なのかには興味があるようから俺はタブレット端末でネットの情報を見せつつジョブストーンについて教えた。
「なるほど。このジョブストーンがあればジョブという特殊な力が身につくのですね」
「まぁ扱い的には特殊な職業みたいなところだけど、ジョブの効果で色々とスキルを覚えられるから力といえば力だな」
ジョブは肉体にも影響を与えるみたいだし、そう考えると中々の不思議要素だ。
「そういえばそのジョブストーンで身につくジョブは何だったのですか?」
「それが農民というジョブらしくてね。畑を耕したり作物を育てたりが得意なジョブみたいだ。ゲームで言えば生産職といったところかもしれない」
俺がそう説明すると山守が顎に手を添えて考えだした。その後自分のスマホも取り出して何かを見ている様子。
「あ、すごい! 見てください! 何かジョブストーンを手に入れた冒険者という人が配信してますよ。視聴数もすごく多い」
「あぁ。確かにダンジョンが出来てから探索の様子なんかを配信する人も増えたようだからな」
「はい。でもそれだけじゃなくて魔法を披露したりビルからビルに飛び回る様子を流したり色々あるみたいですね」
「あぁ、ま、そうだけど、中には目立つために本来認められていない配信をしてる奴もいるからな」
今、山守が言っていた魔法披露とビルから飛び移る配信がまさにそれだ。見る限りダンジョン以外での行動だが、ジョブの能力は基本ダンジョン内でのみ使用が認められている。
当然だこんな力、外で好き勝手使われていたらどんな事件に発展するかわからないんだから。
「そうなんですね……でもダンジョン内の配信なら大丈夫なんですよね?」
「まぁそうかな?」
「でしたら! その、私に協力してもらえませんか! ここでの生活を是非配信したいんです!」
「えぇ!」
「ワウッ!?」
「ピキィ!?」
俺が驚くとモコとラムも飛び上がって驚いていた。意味を理解しているかはわからないけど、しかし意外な方向に話が進んできたな。
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