親友と婚約者に裏切られ仕事も家も失い自暴自棄になって放置されたダンジョンで暮らしてみたら可愛らしいモンスターと快適な暮らしが待ってました

空地大乃

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第二章 冒険者登録編

第25話 冒険者ギルドにやってきた

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「ここがギルドのある建物みたいですね」
「そうみたいだな」

 ナビのとおりに進むとあっさり冒険者ギルド支部につくことが出来た。しかしなんというか思ったよりもずっと役所っぽい建物だな。

 まぁ当然といえば当然だけど異世界のような中世っぽい建物を多少は期待していただけに肩透かしだった。

 鉄筋コンクリート製の箱型の建物で入り口も含めて実に普通だ。そして駐車場もしっかりある。駐車スペースが広いのは助かるけど。

「これなら駐車にはこまらないな」
「そうですね。でもそれなりに止まっている車がありますね」

 山守が感想を述べた。確かに駐車場のうち六割ぐらいは埋まってると思う。いやそれでも余裕はあるんだけどな。
 
 山守が車を駐車場に入れ俺たちはギルドの入り口に向かった。ドアは手で開くタイプだな。中に入ると広めのエントランスとなっていて正面には受付案内と記されたカウンターがあり三十代そこそこといった感じの女性が立っていた。

「あの、ちょっといいですか?」
「はい。本日はどのようなご用件で?」

 俺が問いかけるとメガネを掛けたその女性が淡々とした口調で対応してくれた。その目は一瞬モコとラムに向けられたが特に驚く様子もない。場馴れしてるなといった感じだ。

「実はジョブストーンを手に入れたので冒険者として登録したいのですが」
「これから登録ですか?」

 だけど俺の話を聞いた途端表情が変わった。な、何か不味いことを言ったかな?

「見たところそちらの生き物はモンスターと思われますが、ギルドに登録してないうちからテイムしたのですか?」

 あ、しまった。そう来たか。確かに順番で言えば逆かもしれない。女性の射抜くような視線で俺の頭は少しパニックに陥ってしまった。

「し、仕方なかったんです。その、彼は生産系のジョブストーンを手に入れてつい装備してしまったのですがその結果食べ物に特殊な効果がついてしまいそれをこの子たちが食べてしまって懐いたんです。不可抗力なんです!」

 するとここで助け舟を出してくれたのは山守だった。しっかり最初の設定を踏まえてモコとラムが懐いた理由を説明してくれた。

「食べ物で、ですか。確かにそういう事例もあるにはありますが」
「そ、そうですよね! いやぁ本当びっくりしちゃって。でもほら、見ての通りこの子たちは大人しいし可愛いし人懐っこいしで全く害はないんですよ」

 このチャンスに俺は畳み掛けた。すると受付の女性の目がモコとラムに向けられる。

「クゥ~ン……」
「ピキュ~……」

 モコとラムが縋るように鳴いた。すると女性がメガネを直す仕草を見せ息を吐く。

「まぁいいでしょう。どちらにしても鑑定をすれば人に危害を与えていないか判明しますので」
 
 よかった。だけど鑑定なんてものがあるんだな。

「それでは冒険者登録ということでしたのでご案内します。先ず冒険者への新規登録はその通路を直進した先、新規登録受付所にて行います。その際に個人番号証、印鑑、住民票の写し、履歴書の四点が必要となりますが本日はお持ちですか?」
「え? えっと印鑑は三文判でも?」
「構いません」
「それなら個人番号証と印鑑はあります。ただ住民票の写しと履歴書は……」
「それならばそこの端末に個人番号証を通せば住民票の写しがプリントされます。一通二百円となります。履歴書は新規登録受付所に用紙が用意されてますのでそちらをお使いください。証明写真は向こうの機械で撮ることが出来ます」

 受付の女性は淡々とはしていたが親切丁寧に教えてくれた。それにしてもまさかそこまで色々必要になるなんて思わなかった。

 とにかく、折角ここまで来たのだから登録はして帰りたい。それに流石にモコとラムを見られているのにやっぱりやめますとも言えないからな。

 俺は案内してくれた女性にお礼を伝え準備に掛かることにした。

「先ずはここで住民票の写しをとるんですね」
「そうだな」

 俺は個人番号証をつかって住民票を一通とり証明写真も撮った。そして奥の新規登録受付所に向かう。

 白い壁が続く細長い通路を進むとT字路につきあたりその正面に目的の部屋があった。中に入ると長椅子が幾つか置かれていて待っている人も結構いた。

「新規登録希望者は番号札を取ってお待ち下さいか……」

 カウンター近くに端末が置かれておりそこにそんな表記がされていた。この端末で番号札を取り待つことになるようだ。それなりに時間が掛かりそうだから履歴書への記入を済ませておくか。

 壁際に設置された記載台に用紙が置かれているのが見えた。あれが履歴書専用の用紙なのだろう。

「待っている間に書いてしまおうか」
「ワン!」
「ピキ~」

 俺たちは番号札を取った後で台に向かい紙をとった。基本的な情報を書く用紙とは別に履歴を書く用紙もある。二枚書く必要があるってことか。

「おいおい。何で会社を首になった馬鹿がこんなところにいるんだよ」
「あら本当。何よあんた冒険者になるつもりなの?」

 履歴書の項目を確認していると聞き覚えのある声がして横を見た。そこには正直もう見たくもない二人の顔があった。

 なんてこった。まさかこのタイミングでこいつら、元カノの未瑠と俺を裏切って彼女を奪った阿久津に出会うなんてな。本当最悪すぎる――
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