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第二章 冒険者登録編
第44話 ダンジョンに帰ろう
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「風間さん。今日は突然のことだったのにこんなに遅くまで付き合ってもらってごめんね」
「いやいや、寧ろお礼をいいたいのはこっちだよ。夕食までごちそうになってしまったんだからさ」
「ピキィ~♪」
「ワンワン!」
モコとラムもそうだよ~と言っているように鳴いていた。最初は父親の楓にちょっとビビったりもしたけど、話してみたら面倒見もよくて温かい人だったからな。
「ありがとう。よかったら本当に遠慮なく遊びに来てね。紅葉も喜ぶしお父さんも歓迎してくれると思う」
「そうだね。ただ暫くは筋肉痛に悩まされるかも」
「あはは」
俺の答えを聞いて秋月が笑った。モコとラムも楽しそうにしている。ただ、今後の事を考えたら定期的に通って鍛えてもらうのは悪くないかもしれない。放置ダンジョンとは言え何も起きないとは限らないからな。
「あ、フフッ、やっぱりモコちゃんとラムちゃん疲れちゃったみたいだね」
「うん? あぁ――」
秋月に言われて気付いたがモコもラムもすでに寝息を立てていた。道場でも一杯動いたもんな。それは眠くもなるか。
「――それにしても寝顔も可愛いな」
「うん。ついつい見惚れそうになるよ。気をつけないとね」
秋月が笑って答えた。確かに運転中だからな。だがこの寝顔――思わず抱きしめたくなる愛らしさだ。秋月の気持ちもよくわかる。起こしたらまずいから軽く撫でるぐらいにしておこう。
「こんなに可愛い姿なのに撮れないのが残念だよぉ」
悔しそうに秋月が言った。そういえば動画配信をするのが目的だったな。それなら――
「じゃあ俺のほうで撮っておくよ」
「本当! 嬉しい! 後で送ってもらってもいいかな?」
「はは。勿論だよ」
「それなら後でアドレス交換しようね♪」
秋月の声が弾んでいた。モコとラムの寝顔がそんなに楽しみなんだな。てか流れで連絡先を交換することになったな。何だろう少し顔が熱くなってきた気がする。酒が回ったかな。
「もうすぐつくね。風間さんはお父さんに付き合って呑んでいたけど大丈夫?」
「あぁ。あれぐらいなら問題ないよ」
ちょっと火照ってきた感じはあったけど頭はハッキリしている。このまま寝れば明日に持ち越すことはないだろう。
陰蔵山に入りダンジョンの近くまで来た。だけど、何かおかしい。違和感がある。
「――これは……」
違和感の正体はあっさり判明した。車から降りるとダンジョンの入口に悪口が刻まれていることに気がついたからだ。しかもスプレーまで使ってイタズラ書きをしている。
「酷い! 誰がこんな」
「シッ! 中から声が聞こえる!」
俺が人差し指を立てて秋月に囁いた。ダンジョンの中から声が聞こえてきたからだ。
「折角俺たちがよぉ、ここにふさわしいアートを披露してやったのにどこの馬鹿だよ。掃除なんてしやがって」
「てかテントとか張ってあって笑えるぜ。ホームレスでも住み着いたのか?」
「ま、おかげで菓子とか飲みもんとか手に入ったけどな」
「キャハハ、これがダンジョンの戦利品ってこと? ウケる~」
中からは比較的若いと思われる男女の声が聞こえてきた。こいつら、恐らく俺が来る前から落書きをしたり好き勝手やっていた連中なのだろう。
まさかこのタイミングで出くわすとは、流石に見過ごせないぞ――
「いやいや、寧ろお礼をいいたいのはこっちだよ。夕食までごちそうになってしまったんだからさ」
「ピキィ~♪」
「ワンワン!」
モコとラムもそうだよ~と言っているように鳴いていた。最初は父親の楓にちょっとビビったりもしたけど、話してみたら面倒見もよくて温かい人だったからな。
「ありがとう。よかったら本当に遠慮なく遊びに来てね。紅葉も喜ぶしお父さんも歓迎してくれると思う」
「そうだね。ただ暫くは筋肉痛に悩まされるかも」
「あはは」
俺の答えを聞いて秋月が笑った。モコとラムも楽しそうにしている。ただ、今後の事を考えたら定期的に通って鍛えてもらうのは悪くないかもしれない。放置ダンジョンとは言え何も起きないとは限らないからな。
「あ、フフッ、やっぱりモコちゃんとラムちゃん疲れちゃったみたいだね」
「うん? あぁ――」
秋月に言われて気付いたがモコもラムもすでに寝息を立てていた。道場でも一杯動いたもんな。それは眠くもなるか。
「――それにしても寝顔も可愛いな」
「うん。ついつい見惚れそうになるよ。気をつけないとね」
秋月が笑って答えた。確かに運転中だからな。だがこの寝顔――思わず抱きしめたくなる愛らしさだ。秋月の気持ちもよくわかる。起こしたらまずいから軽く撫でるぐらいにしておこう。
「こんなに可愛い姿なのに撮れないのが残念だよぉ」
悔しそうに秋月が言った。そういえば動画配信をするのが目的だったな。それなら――
「じゃあ俺のほうで撮っておくよ」
「本当! 嬉しい! 後で送ってもらってもいいかな?」
「はは。勿論だよ」
「それなら後でアドレス交換しようね♪」
秋月の声が弾んでいた。モコとラムの寝顔がそんなに楽しみなんだな。てか流れで連絡先を交換することになったな。何だろう少し顔が熱くなってきた気がする。酒が回ったかな。
「もうすぐつくね。風間さんはお父さんに付き合って呑んでいたけど大丈夫?」
「あぁ。あれぐらいなら問題ないよ」
ちょっと火照ってきた感じはあったけど頭はハッキリしている。このまま寝れば明日に持ち越すことはないだろう。
陰蔵山に入りダンジョンの近くまで来た。だけど、何かおかしい。違和感がある。
「――これは……」
違和感の正体はあっさり判明した。車から降りるとダンジョンの入口に悪口が刻まれていることに気がついたからだ。しかもスプレーまで使ってイタズラ書きをしている。
「酷い! 誰がこんな」
「シッ! 中から声が聞こえる!」
俺が人差し指を立てて秋月に囁いた。ダンジョンの中から声が聞こえてきたからだ。
「折角俺たちがよぉ、ここにふさわしいアートを披露してやったのにどこの馬鹿だよ。掃除なんてしやがって」
「てかテントとか張ってあって笑えるぜ。ホームレスでも住み着いたのか?」
「ま、おかげで菓子とか飲みもんとか手に入ったけどな」
「キャハハ、これがダンジョンの戦利品ってこと? ウケる~」
中からは比較的若いと思われる男女の声が聞こえてきた。こいつら、恐らく俺が来る前から落書きをしたり好き勝手やっていた連中なのだろう。
まさかこのタイミングで出くわすとは、流石に見過ごせないぞ――
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