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第三章 放置ダンジョンで冒険者暮らし編
第99話 ダンジョンには入れない?
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秋月の運転する車で俺たちは陽輝山に向かった。しかし予想はしていたが山は立入禁止となっており一般人は入ることが許されない状況だ。
「ダンジョンに落ちた中に私の妹がいるかもしれないんです!」
陽輝山では関係者に対応する受付も設置されていて秋月が職員に訴えていた。どうやら受付にいるのは冒険者ギルドの職員らしい。
「全員がダンジョン災害に巻き込まれたわけではありません。こちらで確認いたしますのでお名前と特徴をお聞かせいただいても?」
「は、はい。山守 紅葉です……特徴は――」
秋月は不安そうな顔を見せながらも質問に答えていた。ここに来るまでかなり不安そうだったが、職員と話している間に少しは落ち着きを取り戻してきているのかもしれない。
「確かに言われてみれば巻き込まれたとは限らないのだな」
「あぁ。だけど被害に合ってる子どもはいるんだろう? やっぱり放ってはおけないぜ」
中山の話を聞き熊谷が答えた。確かに彼の言う通りだ。紅葉が巻き込まれていなければそれが一番だが、だから良いという話ではない。
「――確認してきましたが妹さんはダンジョン災害に巻き込まれてしまったようです」
「そんなッ!?」
淡々と語る職員の言葉に秋月が両手で口を押さえた。もしかしたら無事かもという思いもあったのかもしれない。それだけに突きつけられた現実に動揺が再燃したのだろう。
「とにかく冒険者ギルドとしても救出できるよう動いております。落ち浮いてお待ち頂けると」
「そんなの待ってられないぜ」
「うむ。そのとおりだ」
「私たち冒険者なんです! どうかダンジョンに入る許可をください!」
「え? 冒険者? 本当にかい。冒険者証はあるかな?」
俺たちの話に職員が食いついた。この様子を見るにダンジョンに入れる冒険者が足りてないのかもしれない。
だから俺たちは職員に冒険者証を見せたが、途端に職員が眉を顰めた。
「F級冒険者、しかもまだ活動を始めて日が浅いね。もうしわけないのだけど、これでは許可は出せないよ」
職員が頭を擦りながら答えた。
「どうしてですか! 冒険者の手が足りてないのではないのですか?」
「君たちこそわかっているのかい? これは緊急事態なんだ。経験と実力が伴っていないと救出作業なんて無謀でしかない。君たちがいったところで足手まといにしかならないよ」
「そんな言い方!」
職員の厳しい言葉に愛川が声を荒げた。ただ、職員の言っていることもわからなくはない。確かにF級冒険者では危険を冒すには実力不足だろう。
でもだからといって黙っておくことは出来ない。
「確かに俺たちはF級ですが、出来ることはあると思います。行方不明になっている人たちを探すなら俺の仲間も役に立てる」
そういってモコたちを見ると、皆も真剣な表情で職員を見ていた。
「君はモンスターをテイムしているのか。しかしそんな小さなモンスターじゃな……」
「一体何の騒ぎだ?」
職員と話していると奥から中年の男性がやってきて声をかけてきた。
「係長。実は彼らは冒険者らしくてダンジョンに救出に行きたいと言っていて」
「ほう? 詳しい話を聞いても?」
どうやら係長らしいその男は職員に話しを聞いた後、今度は秋月に視線を向けた。
「巻き込まれたのは君の妹さんなんだね?」
「はい。妹の紅葉がダンジョンに……」
「そうか。それは辛いだろうね。とりあえずもう少し詳しい話を聞きたいから向こうの控室に言ってくれないか? 私から言われたと話してくれるといい」
そう言って係長が秋月に名刺を渡していた。
「あの、皆も私の友だちなんですが」
「あぁ、彼らとは私もちょっと話したいからね。申し訳ないけど一人で向かってもらっていいかな?」
「でも……」
「俺たちの事は大丈夫だから」
チラッと俺たちを気にするような視線を向けてきたから、俺が大丈夫と答えた。秋月は若干迷いがあったようだが、係長に言われた場所に向かった。
「さてと、それで君たちは巻き込まれた人の救出のためにダンジョンに向かいたいということだったね――」
そして改めて係長が俺たちに確認をとってきたわけだが――
「ダンジョンに落ちた中に私の妹がいるかもしれないんです!」
陽輝山では関係者に対応する受付も設置されていて秋月が職員に訴えていた。どうやら受付にいるのは冒険者ギルドの職員らしい。
「全員がダンジョン災害に巻き込まれたわけではありません。こちらで確認いたしますのでお名前と特徴をお聞かせいただいても?」
「は、はい。山守 紅葉です……特徴は――」
秋月は不安そうな顔を見せながらも質問に答えていた。ここに来るまでかなり不安そうだったが、職員と話している間に少しは落ち着きを取り戻してきているのかもしれない。
「確かに言われてみれば巻き込まれたとは限らないのだな」
「あぁ。だけど被害に合ってる子どもはいるんだろう? やっぱり放ってはおけないぜ」
中山の話を聞き熊谷が答えた。確かに彼の言う通りだ。紅葉が巻き込まれていなければそれが一番だが、だから良いという話ではない。
「――確認してきましたが妹さんはダンジョン災害に巻き込まれてしまったようです」
「そんなッ!?」
淡々と語る職員の言葉に秋月が両手で口を押さえた。もしかしたら無事かもという思いもあったのかもしれない。それだけに突きつけられた現実に動揺が再燃したのだろう。
「とにかく冒険者ギルドとしても救出できるよう動いております。落ち浮いてお待ち頂けると」
「そんなの待ってられないぜ」
「うむ。そのとおりだ」
「私たち冒険者なんです! どうかダンジョンに入る許可をください!」
「え? 冒険者? 本当にかい。冒険者証はあるかな?」
俺たちの話に職員が食いついた。この様子を見るにダンジョンに入れる冒険者が足りてないのかもしれない。
だから俺たちは職員に冒険者証を見せたが、途端に職員が眉を顰めた。
「F級冒険者、しかもまだ活動を始めて日が浅いね。もうしわけないのだけど、これでは許可は出せないよ」
職員が頭を擦りながら答えた。
「どうしてですか! 冒険者の手が足りてないのではないのですか?」
「君たちこそわかっているのかい? これは緊急事態なんだ。経験と実力が伴っていないと救出作業なんて無謀でしかない。君たちがいったところで足手まといにしかならないよ」
「そんな言い方!」
職員の厳しい言葉に愛川が声を荒げた。ただ、職員の言っていることもわからなくはない。確かにF級冒険者では危険を冒すには実力不足だろう。
でもだからといって黙っておくことは出来ない。
「確かに俺たちはF級ですが、出来ることはあると思います。行方不明になっている人たちを探すなら俺の仲間も役に立てる」
そういってモコたちを見ると、皆も真剣な表情で職員を見ていた。
「君はモンスターをテイムしているのか。しかしそんな小さなモンスターじゃな……」
「一体何の騒ぎだ?」
職員と話していると奥から中年の男性がやってきて声をかけてきた。
「係長。実は彼らは冒険者らしくてダンジョンに救出に行きたいと言っていて」
「ほう? 詳しい話を聞いても?」
どうやら係長らしいその男は職員に話しを聞いた後、今度は秋月に視線を向けた。
「巻き込まれたのは君の妹さんなんだね?」
「はい。妹の紅葉がダンジョンに……」
「そうか。それは辛いだろうね。とりあえずもう少し詳しい話を聞きたいから向こうの控室に言ってくれないか? 私から言われたと話してくれるといい」
そう言って係長が秋月に名刺を渡していた。
「あの、皆も私の友だちなんですが」
「あぁ、彼らとは私もちょっと話したいからね。申し訳ないけど一人で向かってもらっていいかな?」
「でも……」
「俺たちの事は大丈夫だから」
チラッと俺たちを気にするような視線を向けてきたから、俺が大丈夫と答えた。秋月は若干迷いがあったようだが、係長に言われた場所に向かった。
「さてと、それで君たちは巻き込まれた人の救出のためにダンジョンに向かいたいということだったね――」
そして改めて係長が俺たちに確認をとってきたわけだが――
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