親友と婚約者に裏切られ仕事も家も失い自暴自棄になって放置されたダンジョンで暮らしてみたら可愛らしいモンスターと快適な暮らしが待ってました

空地大乃

文字の大きさ
99 / 190
第三章 放置ダンジョンで冒険者暮らし編

第98話 動揺

しおりを挟む
「ど、どうしよう風間さん。妹が、紅葉が」

 テレビから流れてきた緊急ニュースを目にし、秋月も狼狽してしまっていた。青ざめた顔をしていて放って置くと倒れてしまうんじゃないかと心配になる。

「おい、今のどういうことだ?」
「妹といっていたが、まさかこのニュースの?」
「ダンジョンに巻き込まれたのって秋ちゃんの妹ちゃんなの!?」
 
 秋月の様子を見て講習で一緒だった三人も目を丸くさせ聞いてきた。この状況でごまかす意味はないし、俺は静かに首肯してみせる。

 すると秋月のスマフォが鳴った。

「お父さん――」

 どうやら秋月の父親である楓からの着信のようだった。俺たちの事を気にする秋月に俺は頷いて見せる。こんな事態なのだから遠慮している場合ではないよな。

「ちょっとごめんね……」
 
 秋月が席を立って離れながらスマフォを耳に当てた。他のお客さんのことを考えて迷惑にならないよう移動したのだろう。

「さっきのニュースだと小学校の遠足と言っていたよな?」
「そうなんだ。彼女の妹の紅葉ちゃんはまだ小学生だから」
「まさか、そんな幼い子がダンジョンだなんて」
「モンスターがいたらヤベェじゃねぇか……」
「クゥ~ン……」
「ピキィ~……」
「マァ~……」

 中山も愛川も熊谷もそしてモコ、ラム、マールも心配そうな顔を見せていた。特にモコたちは紅葉と会っていて懐いていたから尚更だろう。

「ごめんね……実は妹がダンジョン災害に巻き込まれてしまって」
「今、風間から聞いたよ」
「うむ……まさかこんなことになるとは」
「心配だよね――」

 三人が声を掛けると秋月がギュッと拳を握りつつ笑顔を見せた。

「心配かけちゃったね。今お父さんから連絡があって、冒険者ギルドも色々動いてくれているみたい」

 秋月が皆にそう話した。だけど取り繕ったような笑顔と肩の震えから、状況が芳しくないのが想像できた。

「――秋月、俺ちょっと現場に行ってくるよ」
「えッ!?」

 俺が自分の考えを示すと、秋月が驚きの声を上げた。

「陽輝山なら何度か登ったことあるから地理感もあるし、さっきのニュースでチラッと発生位置が出ていたから場所も想像つく」
「そんな危険だよ!」

 秋月が不安そうな顔を見せた。確かに危険かもしれない。だけど秋月の妹のことは俺もよく知っているし、このまま指を咥えて見ているなんて出来ない。

「風間。お前まさか一人だけで格好つける気じゃないだろうな?」
「え?」
「うむ。ダンジョンに向かうなら仲間が大いに越したことはないだろう?」
「うん! 私たちだって正式に冒険者になれたんだしね!」
「ワン!」
「ピキィ~!」
「マァッ!」

 中山や熊谷、モコたちも気合い十分な返事を聞かせてくれた。愛川も真剣な顔を見せている。

「皆、本当にいいのか?」
「「「「勿論!」」」」
「ワン!」
「ピキッ!」
「マッ!」

 俺が確認すると皆が真剣な目で答えてくれた。なんだか胸が熱くなったぞ。

「待って皆。そんな危険なこと頼めないよ」
「大丈夫。俺たちだって無茶する気はないさ。巻き込まれた皆を見つけたら脱出を優先させるよ」
「でも――」
「それに、もしかしたら行ったらもう解決してるかもしれないしね」
「うむ。とにかく行くだけ行ってみようではないか」
「あぁ、話はそれからだ!」
「皆、ありがとう――」

 こうして話がまとまり、俺たちはダンジョンの発生地に向かうことにした――
しおりを挟む
感想 25

あなたにおすすめの小説

俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です ~ガチャ引き楽しくてやめられねぇ~

シンギョウ ガク
ファンタジー
仕事中、寝落ちした明日見碧(あすみ あおい)は、目覚めたら暗い洞窟にいた。 目の前には蛍光ピンクのガチャマシーン(足つき)。 『初心者優遇10連ガチャ開催中』とか『SSRレアスキル確定』の誘惑に負け、金色のコインを投入してしまう。 カプセルを開けると『鑑定』、『ファイア』、『剣術向上』といったスキルが得られ、次々にステータスが向上していく。 ガチャスキルの力に魅了された俺は魔物を倒して『金色コイン』を手に入れて、ガチャ引きまくってたらいつのまにか強くなっていた。 ボスを討伐し、初めてのダンジョンの外に出た俺は、相棒のガチャと途中で助けた異世界人アスターシアとともに、異世界人ヴェルデ・アヴニールとして、生き延びるための自由気ままな異世界の旅がここからはじまった。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる

国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。 持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。 これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。

なんとなく歩いてたらダンジョンらしき場所に居た俺の話

TB
ファンタジー
岩崎理(いわさきおさむ)40歳バツ2派遣社員。とっても巻き込まれ体質な主人公のチーレムストーリーです。

異世界から日本に帰ってきたら魔法学院に入学 パーティーメンバーが順調に強くなっていくのは嬉しいんだが、妹の暴走だけがどうにも止まらない!

枕崎 削節
ファンタジー
〔小説家になろうローファンタジーランキング日間ベストテン入り作品〕 タイトルを変更しました。旧タイトル【異世界から帰ったらなぜか魔法学院に入学。この際遠慮なく能力を発揮したろ】 3年間の異世界生活を経て日本に戻ってきた楢崎聡史と桜の兄妹。二人は生活の一部分に組み込まれてしまった冒険が忘れられなくてここ数年日本にも発生したダンジョンアタックを目論むが、年齢制限に壁に撥ね返されて入場を断られてしまう。ガックリと項垂れる二人に救いの手を差し伸べたのは魔法学院の学院長と名乗る人物。喜び勇んで入学したはいいものの、この学院長はとにかく無茶振りが過ぎる。異世界でも経験したことがないとんでもないミッションに次々と駆り出される兄妹。さらに二人を取り巻く周囲にも奇妙な縁で繋がった生徒がどんどん現れては学院での日常と冒険という非日常が繰り返されていく。大勢の学院生との交流の中ではぐくまれていく人間模様とバトルアクションをどうぞお楽しみください!

本物の聖女じゃないと追放されたので、隣国で竜の巫女をします。私は聖女の上位存在、神巫だったようですがそちらは大丈夫ですか?

今川幸乃
ファンタジー
ネクスタ王国の聖女だったシンシアは突然、バルク王子に「お前は本物の聖女じゃない」と言われ追放されてしまう。 バルクはアリエラという聖女の加護を受けた女を聖女にしたが、シンシアの加護である神巫(かんなぎ)は聖女の上位存在であった。 追放されたシンシアはたまたま隣国エルドラン王国で竜の巫女を探していたハリス王子にその力を見抜かれ、巫女候補として招かれる。そこでシンシアは神巫の力は神や竜など人外の存在の意志をほぼ全て理解するという恐るべきものだということを知るのだった。 シンシアがいなくなったバルクはアリエラとやりたい放題するが、すぐに神の怒りに触れてしまう。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。

もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
 ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。

処理中です...