親友と婚約者に裏切られ仕事も家も失い自暴自棄になって放置されたダンジョンで暮らしてみたら可愛らしいモンスターと快適な暮らしが待ってました

空地大乃

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第三章 放置ダンジョンで冒険者暮らし編

第103話 ゴブリンの巣窟

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 係長の許可を得て、俺たちはダンジョンに向かった。封鎖された先には講習で見たような穴が見えた。

「これが直下型ダンジョンだな」
「ここに落ちたのかよ」
「うむ。筋肉がなければ這い上がるのは難しそうだな」
「小さな子どもがこんなところに落ちるなんて、きっと不安がってるよ」
「クゥ~ン……」
「ピキュ~……」
「マァ……」

 俺の呟きに熊谷が答え、中山は穴の底を見ながら難しい顔を見せていた。愛川は心配そう眉を落としていて、モコやラム、マールも細い声で鳴いた。

「出来たばかりだからハシゴなんてあるわけないか」
「俺たちもこのまま飛び降りるしかないな」
「うむ。一度降りたらここからはもう戻れないが、準備はいいか?」
「私は覚悟は決まってるよ!」
「ワウ!」
「ピキィ!」
「マァ!」

 ここまで来て腰が引けてるのは誰もいない。俺たちは覚悟を決めて順番に穴から飛び降りた。

「キャッ!」
「むぅ、危ないぞ」

 最後に飛び降りてきたのは愛川だったのだが、それを中山が受け止めた。流石あの筋肉だけあって頼もしいな。

「……あ、ありがとう」
「有無。しかし悪かったな。風間の方が良かったか?」
「な、ななななッ!?」

 俺がダンジョンの様子を見ている後ろで中山と愛川の声が聞こえた。振り向くと愛川の顔が赤くなっていた。

「愛川、顔が赤いけど大丈夫か?」
「も、もう! 大丈夫だよ!」

 何故か愛川が不機嫌なんだが……

「お前らの主人って鈍感なのか?」
「ワウ……」
「ピキィ……」
「マァ……」

 熊谷がモコたちに何か話しかけていた。そして何故か皆に残念そうな目を向けられた。何故!?

「とにかく先に進むか。先頭は俺に任せろ」
 
 熊谷が自分を指さして言った。確かにジョブが盗賊だけあって前衛は熊谷が適任かもしれない。

「俺はいつでも出れるように二番手を歩くとしよう」

 この中で戦闘力が一番高いのは中山だと思うからそれが一番か。その後に俺やモコ、ラム、マール、最後尾は愛川と講習でのダンジョン探索と同じ用な隊列になったな。

「薄暗いけど全く見えないってほどじゃないか」
「それがダンジョンの不思議なところだよな」

 ダンジョン内は、陽の光の入らない場所でもある程度の明るさは確保されている。だから子どもたちはまだ探しやすいか。

 ただ凄く明るいというわけじゃないから注意は必要だろう。

「そっちに罠があるな。チッ、あっちもか。何か罠が多いぞ」

 熊谷は盗賊のスキルで罠の位置がわかる。これは本当助かるな。もし熊谷がいなかったら何かしらの罠に引っかかってしまっていたかもしれない。

「待て! 何か気配を感じるぞ!」

 言って熊谷が壁に耳を当て、その後で床に耳を当てた。

「何か聞こえるの?」
「スキルで聴覚と嗅覚が強化されてるからな」

 愛川の問いかけに熊谷が答えた。そんな強化まであるとは盗賊は優秀だな。勿論それを活かす熊谷も凄いと思う。
 
「声が聞こえる。凄く耳障りな声だ。こっちに近づいてきてるぞ」

 熊谷が説明してくれた。そしてその声は俺たちの耳にも聞こえてきた。

「ギャッ!」
「ギャギャッ!」
「ギャギィ!」

 確かに熊谷の言っているように耳障りな声だった。同時に不安をかられる声でもある。

「不気味な声。何か嫌だな……」
 
 愛川が肩を震わせた。俺たち以上に嫌悪感を抱いているな。一体何がくるかと身構えていると、緑色の肌をした小柄なモンスターが姿を見せた。

 頭には小さな角も生えている。この特徴、覚えがあるな。

「もしかして、ゴブリンか?」
「ゴブリン、そうか。たしかにそんなのもいるって聞いたことがあるな」
「ほう。知っているのか!」

 どうやら中山の知識にはなかったようだな。そして見せてきたのは数匹のゴブリン。確かゴブリンが出る場合その数はかなり多いとかネットで見た気がするな。つまりここはゴブリンの巣窟ということか――
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