155 / 190
第三章 放置ダンジョンで冒険者暮らし編
第154話 運動を楽しむモンスター達
しおりを挟む
「それでは体力測定の結果を元に、トレーニングを進めていきましょう!」
モンスポ!のインストラクターが爽やかに案内してくれた。ランニングマシーンでの測定はウォーミングアップであり、ここからが本格的なスタートらしい。
俺たちは案内を受けつつ、ベンチプレスやショルダープレス、エアロバイク、ダンベルラックといった器具が並ぶエリアへ移動した。
「ピキィ!」
先陣を切ったのはラム。小さな身体でぐにっと体を伸ばし、ベンチプレスのバーを器用に持ち上げてみせる。
「すごい……スライムなのに! というか可愛い!」
近くにいた女性のインストラクターが、感嘆と癒しが混ざったような声を漏らす。ラムはというと得意げにむんっと膨らみながら、もう一度ぎゅっとバーを押し上げた。
「はぁ、尊い……」
その姿に、見守る愛川も頬を緩ませていた。わかる、俺も今心の中で三度くらい拝んだ。
「ワンワン!」
次に挑んだのはモコ。ショルダープレスマシーンに前足をかけて、後ろ足でしっかりと踏ん張りながら、上体を使ってバーを上下させる。フォームも見事に安定していて、インストラクターからは即座に「完璧です」とお墨付きをもらった。
「ほんと真面目なんだよなぁモコは」
しっかり汗をかきつつもキリッとした顔を見せるモコ。小さな肉球が一生懸命バーにかかっているのが、これまた可愛い。
「モグッ、モグッ!」
ダンベルエリアではモグが両手でミニサイズのダンベルを掴み、懸命に持ち上げていた。ふうふうと鼻を鳴らしながら、それでもあきらめずに繰り返すその姿に、数名の女性会員が目を輝かせた。
「モグラが……こんなに一生懸命……」
「ちょっと感動したかも……」
声をかけられて照れたのか、モグは思わず床に転がって小さく丸まり、顔を前足で隠してしまった。ちょ、可愛すぎる。
「マァ!」
マールはというと、ランニングマシーンを跳ねるように走っていた。蔕のような髪をパタパタ揺らしながら、前を向いて必死に足を動かす姿はまるでちびっこ運動会。
「がんばれー!」
「マスコットが走ってる!」
見ていた人々からも自然と応援の声が上がっていた。マールは振り返って「マァ!」と手を振る余裕まで見せた。場慣れしてきたなマールも。
「ゴブ……ッ」
そしてゴブは、エアロバイクで真剣そのもの。脚の動きは力強く、息もぴったりとリズムを刻む。なぜかスポーツグラスをかけていて、まるでプロ選手みたいだ。
「彼の主さんですよね? あのグラス、私が貸しました」
「えっ、ありがとうございます」
「似合いそうだったので。ここまで真面目に取り組むとは、予想以上でした」
インストラクターの男性が肩をすくめて笑いながら話しかけてくれた。たしかに、真面目にやるゴブの姿には見ているだけで胸にくるものがある。
「うん、みんな偉いなあ……」
そう思ってばかりでもいけないので、俺も改めてトレーニングに励む。インストラクターにフォームを見てもらいながら、汗を流していく。隣では愛川がストレッチエリアで柔軟運動をしていた。彼女の集中した顔を見て、こっちも気合いが入る。
一通りメニューをこなすと、自由時間に突入した。
「皆さん、ここからはご自由にお過ごしください。施設内でしたら何時まででもOKです」
とインストラクターの案内。愛川はすぐに俺に近づいてきて、うれしそうに言った。
「ハルさん、よければこれ試してみませんか?」
指差したのはスカッシュルーム。壁打ちでラリーを競う競技だ。ラケットも貸出自由で、俺たちでも気軽に楽しめそうだった。
「皆もやるか?」
「ワンワン!」
「ゴブゥ!」
「モグッ!」
「マァ!」
「ピキィ!」
揃って元気に答えてくれたモンスター達の声に、俺も自然と笑みがこぼれた。よし、それなら全力で楽しもう――!
モンスポ!のインストラクターが爽やかに案内してくれた。ランニングマシーンでの測定はウォーミングアップであり、ここからが本格的なスタートらしい。
俺たちは案内を受けつつ、ベンチプレスやショルダープレス、エアロバイク、ダンベルラックといった器具が並ぶエリアへ移動した。
「ピキィ!」
先陣を切ったのはラム。小さな身体でぐにっと体を伸ばし、ベンチプレスのバーを器用に持ち上げてみせる。
「すごい……スライムなのに! というか可愛い!」
近くにいた女性のインストラクターが、感嘆と癒しが混ざったような声を漏らす。ラムはというと得意げにむんっと膨らみながら、もう一度ぎゅっとバーを押し上げた。
「はぁ、尊い……」
その姿に、見守る愛川も頬を緩ませていた。わかる、俺も今心の中で三度くらい拝んだ。
「ワンワン!」
次に挑んだのはモコ。ショルダープレスマシーンに前足をかけて、後ろ足でしっかりと踏ん張りながら、上体を使ってバーを上下させる。フォームも見事に安定していて、インストラクターからは即座に「完璧です」とお墨付きをもらった。
「ほんと真面目なんだよなぁモコは」
しっかり汗をかきつつもキリッとした顔を見せるモコ。小さな肉球が一生懸命バーにかかっているのが、これまた可愛い。
「モグッ、モグッ!」
ダンベルエリアではモグが両手でミニサイズのダンベルを掴み、懸命に持ち上げていた。ふうふうと鼻を鳴らしながら、それでもあきらめずに繰り返すその姿に、数名の女性会員が目を輝かせた。
「モグラが……こんなに一生懸命……」
「ちょっと感動したかも……」
声をかけられて照れたのか、モグは思わず床に転がって小さく丸まり、顔を前足で隠してしまった。ちょ、可愛すぎる。
「マァ!」
マールはというと、ランニングマシーンを跳ねるように走っていた。蔕のような髪をパタパタ揺らしながら、前を向いて必死に足を動かす姿はまるでちびっこ運動会。
「がんばれー!」
「マスコットが走ってる!」
見ていた人々からも自然と応援の声が上がっていた。マールは振り返って「マァ!」と手を振る余裕まで見せた。場慣れしてきたなマールも。
「ゴブ……ッ」
そしてゴブは、エアロバイクで真剣そのもの。脚の動きは力強く、息もぴったりとリズムを刻む。なぜかスポーツグラスをかけていて、まるでプロ選手みたいだ。
「彼の主さんですよね? あのグラス、私が貸しました」
「えっ、ありがとうございます」
「似合いそうだったので。ここまで真面目に取り組むとは、予想以上でした」
インストラクターの男性が肩をすくめて笑いながら話しかけてくれた。たしかに、真面目にやるゴブの姿には見ているだけで胸にくるものがある。
「うん、みんな偉いなあ……」
そう思ってばかりでもいけないので、俺も改めてトレーニングに励む。インストラクターにフォームを見てもらいながら、汗を流していく。隣では愛川がストレッチエリアで柔軟運動をしていた。彼女の集中した顔を見て、こっちも気合いが入る。
一通りメニューをこなすと、自由時間に突入した。
「皆さん、ここからはご自由にお過ごしください。施設内でしたら何時まででもOKです」
とインストラクターの案内。愛川はすぐに俺に近づいてきて、うれしそうに言った。
「ハルさん、よければこれ試してみませんか?」
指差したのはスカッシュルーム。壁打ちでラリーを競う競技だ。ラケットも貸出自由で、俺たちでも気軽に楽しめそうだった。
「皆もやるか?」
「ワンワン!」
「ゴブゥ!」
「モグッ!」
「マァ!」
「ピキィ!」
揃って元気に答えてくれたモンスター達の声に、俺も自然と笑みがこぼれた。よし、それなら全力で楽しもう――!
154
あなたにおすすめの小説
小さなフェンリルと私の冒険時間 〜ぬくもりに包まれた毎日のはじまり〜
ちょこの
ファンタジー
もふもふな相棒「ヴァイス」と一緒に、今日もダンジョン生活♪
高校生の優衣は、ダンジョンに挑むけど、頼れるのはふわふわの相棒だけ。
ゆるふわ魔法あり、ドキドキのバトルあり、モフモフ癒しタイムも満載!
ほんわか&ワクワクな日常と冒険が交差する、新感覚ファンタジー!
俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です ~ガチャ引き楽しくてやめられねぇ~
シンギョウ ガク
ファンタジー
仕事中、寝落ちした明日見碧(あすみ あおい)は、目覚めたら暗い洞窟にいた。
目の前には蛍光ピンクのガチャマシーン(足つき)。
『初心者優遇10連ガチャ開催中』とか『SSRレアスキル確定』の誘惑に負け、金色のコインを投入してしまう。
カプセルを開けると『鑑定』、『ファイア』、『剣術向上』といったスキルが得られ、次々にステータスが向上していく。
ガチャスキルの力に魅了された俺は魔物を倒して『金色コイン』を手に入れて、ガチャ引きまくってたらいつのまにか強くなっていた。
ボスを討伐し、初めてのダンジョンの外に出た俺は、相棒のガチャと途中で助けた異世界人アスターシアとともに、異世界人ヴェルデ・アヴニールとして、生き延びるための自由気ままな異世界の旅がここからはじまった。
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
辻ヒーラー、謎のもふもふを拾う。社畜俺、ダンジョンから出てきたソレに懐かれたので配信をはじめます。
月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
ファンタジー
ブラック企業で働く社畜の辻風ハヤテは、ある日超人気ダンジョン配信者のひかるんがイレギュラーモンスターに襲われているところに遭遇する。
ひかるんに辻ヒールをして助けたハヤテは、偶然にもひかるんの配信に顔が映り込んでしまう。
ひかるんを助けた英雄であるハヤテは、辻ヒールのおじさんとして有名になってしまう。
ダンジョンから帰宅したハヤテは、後ろから謎のもふもふがついてきていることに気づく。
なんと、謎のもふもふの正体はダンジョンから出てきたモンスターだった。
もふもふは怪我をしていて、ハヤテに助けを求めてきた。
もふもふの怪我を治すと、懐いてきたので飼うことに。
モンスターをペットにしている動画を配信するハヤテ。
なんとペット動画に自分の顔が映り込んでしまう。
顔バレしたことで、世間に辻ヒールのおじさんだとバレてしまい……。
辻ヒールのおじさんがペット動画を出しているということで、またたくまに動画はバズっていくのだった。
他のサイトにも掲載
なろう日間1位
カクヨムブクマ7000
本物の聖女じゃないと追放されたので、隣国で竜の巫女をします。私は聖女の上位存在、神巫だったようですがそちらは大丈夫ですか?
今川幸乃
ファンタジー
ネクスタ王国の聖女だったシンシアは突然、バルク王子に「お前は本物の聖女じゃない」と言われ追放されてしまう。
バルクはアリエラという聖女の加護を受けた女を聖女にしたが、シンシアの加護である神巫(かんなぎ)は聖女の上位存在であった。
追放されたシンシアはたまたま隣国エルドラン王国で竜の巫女を探していたハリス王子にその力を見抜かれ、巫女候補として招かれる。そこでシンシアは神巫の力は神や竜など人外の存在の意志をほぼ全て理解するという恐るべきものだということを知るのだった。
シンシアがいなくなったバルクはアリエラとやりたい放題するが、すぐに神の怒りに触れてしまう。
おばさん冒険者、職場復帰する
神田柊子
ファンタジー
アリス(43)は『完全防御の魔女』と呼ばれたA級冒険者。
子育て(子どもの修行)のために母子ふたりで旅をしていたけれど、子どもが父親の元で暮らすことになった。
ひとりになったアリスは、拠点にしていた街に五年ぶりに帰ってくる。
さっそくギルドに顔を出すと昔馴染みのギルドマスターから、ギルド職員のリーナを弟子にしてほしいと頼まれる……。
生活力は低め、戦闘力は高めなアリスおばさんの冒険譚。
-----
剣と魔法の西洋風異世界。転移・転生なし。三人称。
一話ごとで一区切りの、連作短編(の予定)。
-----
※小説家になろう様にも掲載中。
A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる
国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。
持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。
これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。
『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』
チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。
その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。
「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」
そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!?
のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる